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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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四百六十八話 魔族たちの朝

 ──時を少し遡り、数時間前。"九つの世界・世界樹ユグドラシル・第一層・神の国・ヴァナヘイム"。


 同じ"世界樹ユグドラシル"の最下層にてライたちが目覚めた時、第一層にて"ヴァナヘイム"を拠点としていた魔族の者たちの中でシヴァとアルモ・シュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレドの"ラマーディ・アルド"メンバーと見張りを行う数人の兵士たちがいち早く目覚めていた。

 目覚めたシヴァたちは白亜の石柱の前にある折れた柱に腰を掛けており、神の国らしく神聖な街並みを眺めながら今後について話し合う。

 

「何やかんや、今日から二日目だ。どういう訳か魔族(俺たち)の国から多数の兵士たちも来ている。ー事で、今起きてる俺たちと数人の兵士たちで今後について話す事にする。数が多けりゃ、出来る事の選択肢が増えるからな」


 眠そうな目を擦り、気ダルそうに話すシヴァ。睡眠を取らずとも数年は行動可能なシヴァだが、寝起きとあっては話は別。睡眠を取っていたという事は、先程まで脳も停止していた状態だったのでまだ身体が作られていないという事だ。

 いざという時は寝起き直ぐでも戦闘体勢へと入る事も出来るが、今居る"ヴァナヘイム"には敵の気配も無く敵地である事に変わりないが比較的平穏なので油断している状態という事である。


「んじゃ、早速だが。何か策がある奴は居るか?」


 頭を掻き、シュタラたちを見て訊ねるシヴァ。先ずは他の者たちから何らかの策を聞く事で話を広げ、より確実な方法にしようという魂胆なのだろう。

 十人十色と言うように、一人一人には個々の考えがある。なので他の者が浮かべるアイデアを聞く事は重要な事なのだ。

 そんな中、先ず始めにシヴァの側近であるズハルが挙手した。


「良し、ズハル!」

「正面突破」

「乗った!」

「却下です」

「「…………」」


 即答だった。

 挙手したズハルにシヴァが訊ね、そのアイデアに乗った。しかしシュタラが即答で拒否したのだ。

 今回は策を練るのが目的。魔族の者たちからすれば、正面突破が一番楽で個人的にも楽しい方法なのだろうが、多くの命を預かる身でそれは出来ないと判断したのだろう。


「冗談だよ。まあ、立場が立場だからな。個人的には"世界樹ユグドラシル"ごと破壊して進むのが楽で良いんだけどな」


「シヴァ様。貴方が言うと冗談に聞こえませんから。ズハルさん。貴方もです」


「「すんませーん」」


 普段から割りとおちゃらけているシヴァは兎も角、普段は基本的に真面目なズハルもこの始末。シュタラは呆れたように頭を抱え、その隣ではウラヌスとオターレドが苦笑を浮かべていた。


「まあ取り敢えずだ。敵の主力が相手になったら、数百人や数千人居ようが兵士たちは勝てねェ。だから、お前たちは相手の兵士を足止めしててくれや。生物兵器は少し苦労しそうだが、まあ何とかなるだろ。この"終末の日(ラグナロク)"にゃ、魔族の国(俺たち)の主力も全員参加だからな。一部の主力は生物兵器の相手も任せるつもりだ」


「「「はっ!」」」


 敬礼をし、シヴァの考えに同意する兵士たち。まだ眠っている主力と兵士たちが居るので大まかな事しか決めていないが、基本的には主力と主力。兵士と兵士をぶつけ合う作戦に決まった。

 この作戦が一番手っ取り早く、実力差的にも丁度良い作戦だからだ。大抵の者は思い付く事だろう。


「後は他の奴らが起きてからだな。当然、敵は正面から相手をしてこない可能性もある。寧ろ、不意を突かれたり個々でバラけた時に仕掛けて来る可能性の方が高いだろうよ。だから、幹部たちと側近たち。そして残りの兵士たちが起きたらチームを作る。半分以上はこの"ヴァナヘイム"に居ねェから、捜索隊と進行隊で分けるって事だ。全員起きるまでどれくれェか知らねェが、起きたら詳しく説明する。んじゃ、解散!」


 シヴァの合図と共に、この場に集っていた者たちが各々(おのおの)の行動に移る。と言っても街を見て回ったり、外の様子を警戒するだけで特に何かをしようという訳では無い。

 全ては他の主力と兵士。魔族の国の戦士たちが起きてから話すらしい。ある程度は決まっているらしく、何も考えていないように見えるシヴァだったがしっかりと考えていたようだ。

 魔族の国の者たちの過ごす早朝。それは敵の襲撃なども何も無く、朝特有の静けさと共に過ぎていった。



*****



 ──早朝の話し合いから数時間。魔族の国の者たちが主力から兵士たちまで全員が目覚めており、彼らは早朝の話し合いで出された策についてシヴァから概要を聞いていた。


「──って事で、探索隊と進行隊で分ける事にした。他にも連れて来られた兵士たちが居る事と、先に進まなくちゃならねェ事を踏まえての提案だ。両チームには強力な主力。そして何かあった時の為に即座に戻れるよう、"テレポート"か"空間移動"の魔法・魔術を使える奴が必ず入る事を義務付ける。そのチーム分けを今からする」


 説明を終え、主力たちと兵士たちの顔を窺うシヴァ。誰からも不平不満は出ず、全員が納得した面持ちで頷いていた。

 中には戦闘を行えるなら良いと考えている者もおり、どんな形であれ戦闘を行える事に変わり無いシヴァの提案を否定する意味は無いのだ。


「けれど、チーム分けをするとして、どの様な形にしますか? それらを踏まえた上で、敵のどの様な主力が相手でも戦えるよう、均等なチームにしなくてはなりませんよね?」


 小さく挙手し、シヴァに訊ねるアスワド。

 チーム分けを行うに当たって重要な事は戦力の差。敵にも支配者クラスの者が居るので、どんな相手が来ても渡り合える程の力は必要だった。

 対し、シヴァはアスワドの質問を肯定するように頷いて返す。 


「ああそうだな。まず先に決めるのは魔族の国で一番の強さを誇る俺と、俺に次ぐ力のアルモ・シュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレドの四人。そして魔族の国でも随一の力を持つ幹部たち。ダーク、シャドウ、ブラックの三人。魔法・魔術の使い手かつ力の強いゼッル、アスワド、ルミエ・アステリの三人。そして限りなく万能に近い力を持つキュリテ。強いってくくりなら主力全員を入れても良いが、今挙げたのは作戦を実行する上で重要な奴らだ。幹部五人。側近は俺の側近を含めて六人。計十一人が戦闘と移動向きの奴らだな。コイツらの誰かを二チームのいずれかに必ず入れるのが義務だ」


「分かりました」

「面倒ですけど……まあ分かりました」

「ウーッス」

「お任せあれ」

「「はい」」

「ああ」

「ええ。分かりました」

「ああ、分かった」

「はーい」


 シヴァに指名された者たちが各々(おのおの)で返事をし、改めて二つのチームに分ける。

 移動と戦闘。この"終末の日(ラグナロク)"では、それらを両立させる事で効率良く作戦を実行に移せる。なので重要な者たちにそのメンバーが選ばれたのだ。


「幹部で唯一俺の名前が挙がらなかったのは気に掛かるが、まあしょうがねェ。俺は単純な剣士だからな。素の力もダークよりは低い。ンで、シヴァさん。今言った者たちをチームに組み込むに当たって、どンなチームメンバーにするかは決めてるンで?」


「ああ。何より優先する事は均等。それはもう決めている。実力って言うなら俺一人で全員分補えるが、それじゃ意味がねェ。敵も数は居るからな。昨日みてェに俺だけ離される可能性もあるってこった」


 自分の実力は、幹部全員と側近全員を合わせたものよりも高いと誇らずに述べるシヴァ。

 幹部たちと側近たちはシヴァの性格と実力を理解しているので、特に突っ込まず静聴していた。その結果、シヴァ一人の孤軍奮闘でも意味がないと言う。理由は敵の数。本人は負ける気など更々無いが、支配者クラスが複数相手では少々分が悪い。それに加え、分離させられる可能性もあるのでチームを組む事が重要だと述べたのだ。


「うし。回りくどいのは面倒だし、腹も減ったし話し合いは退屈だからさっさと独断で決めたメンバーを言う。何か気に食わねェ事があったら意見してくれ」


「「「はっ!」」」


 頭を掻きつつ、欠伸あくびをして話す。気ダルそうな雰囲気ではあるが、シヴァの性格がそんな感じなので主力たちは短く返事をして言葉を待った。

 その様子を確認しながら、シヴァは独断で決めたと言うメンバーを告げる。


「先ず進行隊。要するに最上層へ進む奴らだ。リーダーは俺。支配者のシヴァ。そして俺の暴走を止める為に副リーダーとしてシュタラを入れる。後、面倒だから一人一人別々じゃなく、大まかな所は幹部の街で指名だ」


 先ず決めたのは、シヴァのチーム。リーダーにシヴァ。副リーダーにシュタラ。シュタラを入れた理由は時折シヴァが一人で進む事もあるのでそれを抑制する為らしい。自分の意思で止めれば良いかもしれないが、やはり魔族である以上そう簡単には行かないのだろう。

 そして、基本的に一つの街とチームで決めるらしい。一人一人分けるのも良いが、元々一つの街を収める者たちには幹部も側近も均等の実力バランスがあり、片寄らないように派遣されているので街一つのチームで分ける方が良いという事である。


「で、他のメンバーはさておき、リーダーと副リーダーから決める。探索隊はリーダーがブラック。副リーダーがアスワドだ。それに伴い、ブラックたちの"マレカ・アースィマ"とアスワドたちの"タウィーザ・バラド"の側近たちも入れておく。魔族の国の奴らが来ているっーなら"マレカ・アースィマ"の王、マルス・セイブルと妹ヴィネラ・セイブル。そして執事のカディルも来ているかもしれねェからな。どうせ探すなら慣れ親しんだテメェらの方が良いだろ」


「はっ!」

「はい!」


 次に決めたのは探索隊。リーダーとして剣魔術を扱うブラック。副リーダーとして高レベルの魔法を扱うアスワドが選ばれた。

 どうやら、他の者たちが連れて来られている事を懸念し、魔族の国の"マレカ・アースィマ"で王を努めるマルスたちも呼ばれている可能性を見定めた結果ブラックがリーダーとなったようだ。アスワドが選ばれた理由は、撤退の為の"空間移動"の魔法が使えるからである。


「で、愈々(いよいよ)両チームのメンバーだ。リーダーも含めて言うからしっかり聞いておけよ」


「「「はい!」」」


 最後に告げられるのがリーダー格以外のメンバー。主力たちは神妙な面持ちでシヴァの言葉を待つ。顔を確認し、シヴァも真剣な顔となって口に出した。


「始めに進行隊。俺率いるチーム。

──"ラマーディ・アルド"の者たち。俺、アルモ・シュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレド。

──そして"レイル・マディーナ"のダーク、キュリテ、ザラーム(弟)、オスクロ。

──"イルム・アスリー"のゼッル、ジュヌード、チエーニ、スキアー、シャバハだ。

次にブラック率いる探索隊。

──"マレカ・アースィマ"のブラック、サイフ、ラビア、シター。

──"タウィーザ・バラド"のアスワド、ナール、マイ、ハワー、ラムル。

──"シャハル・カラズ"のザラーム・モバーレズ、ファーレス、サリーア、ロムフ、ラサース。

──"ウェフダー・マカーン"のシャドウ、ルミエ・アステリ、ジャバル、バハル、アルフ。

以上。此処に居る兵士たち約三〇〇人。うち、二〇〇人が俺たち進行隊。一〇〇人が探索隊だ。これで主力が一街分足りない俺たちにも数が増え、不備は無いって事になる」


 それを聞き終え、神妙な顔付きを解く主力たち。不平不満、文句などは一つも出ず、戦闘メインの主力と移動メインの主力も均等に分ける事が出来た。これならばバランスも良く、あらゆる事柄にも臨機応変に対応出来る事だろう。

 魔族の国の主力たちと兵士たちが過ごす朝の話し合い。それは今日行動するチームを決めて終了した。朝食を終えたら直ぐにでも行動に移る事だろう。

 全員起きてから数十分。シヴァたちは次いで朝食の準備に取り掛かった。

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