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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二十二章 ユグドラシルとラグナロク
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四百六十二話 幻獣兵士たち

 ──"九つの世界・世界樹ユグドラシル・黒い妖精の国・スヴァルトアールヴヘイム"。


 小さな街を進み、ひらけた場所に出た幻獣の主力たちは辺りの様子を確認していた。

 此処が他と比べて比較的安全圏である事に変わり無いが、それでも何処に敵が潜んでいるか分からない。なので辺りの様子を確認しつつ、確実な安全を確保しようという魂胆なのだろう。

 それから数分。ある程度確認したが特に怪しいところも無く、ようやく一息吐けるようになった幻獣たちは休息に入っていた。


『何はともあれ、一日目は我ら全員が無事に過ごせたみたいだな。ようやく人心地つけたところでそれを話すのも気に掛かる。故に、先ずは我らの安否確認を喜ぼう』


 一息吐いたところで話すのは、幻獣の国にて支配者を努めているドラゴン。敵の主力級とはあまり出会っていないが、それでも無事だった事について素直に喜色の顔を見せていた。

 今この場に居る幻獣の国の主力。支配者のドラゴンを筆頭に側近のジルニトラ、沙悟浄、猪八戒の一匹と二人。幹部のワイバーン、フェニックス、ガルダ、ユニコーン、フェンリルの五匹。彼らはみなほぼ無傷の状態でこの国に辿り着いている。これは中々に幸運な事だろう。


『さて、次に本題へと移るが、明日からの行動はどうするかだ。常に上を目指し続ける事についての変更は無い。恐らく今日はもう安全なのだろうが、敵の主力はこれからも攻めて来るだろう。その主力達についての対策が第一優先だな』


『ああ。それが良いだろう。日が暮れてから、まだ数十分しか経過していない。明日あすの早朝に行動するとしても就寝まで暫く話し合いは出来そうだな』


 幻獣たちは、眠ろうと思えば数十、数百年単位の眠りに就く事も出来る。だが、本来の睡眠時間はそれ程多くないのだ。

 というのも、数十年から数百年単位で眠るので数年くらいならば睡眠時間が少なくても問題無いのである。何とも便利な身体だろうか。

 それはさておき、今回の騒動は"終末の日(ラグナロク)"。休むに越した事が無いのは事実。多少の睡眠不足は無問題だが、それでも数百分の一秒でも感覚が狂えば即座に戦況が不利になる程の実力者が相手となる。なので話し合いは数時間程度で切り上げるつもりなのだろう。


『はてさて果たして。敵がどの様にけしかけて来るか……それも分からぬ。ある程度の作戦は考えているのだろうな、ドラゴンよ』


『まあ、ある程度はな。基本的に戦わぬ事で切り抜けるつもりだが、戦わざるを得なかった時の為に使おうと思っている策はある。が、どうしても敵の不意を突かなくてはならない。多数で攻めて来られると少々厄介だな』


 作戦会議が始まったところで、最初に訊ねるのはワイバーン。

 支配者であるドラゴンは戦闘能力も去る事ながら、知能もかなり優秀である。なので多少の作戦はあると踏んだらしく、思惑通りドラゴンも実際考えている分には考えているようだ。

 しかし口を濁しているという事から、確実に成功する作戦では無いと推測出来る。それも踏まえて策を練るという事だ。


『成る程。策はあるが、それを実行するには障害があるという事か。策は上手く行かない方が多いのは当たり前の事。今から話し合うのは奥の手を考える事だな?』


『ああ。そう思ってくれて構わぬ。さて、どの様な事を考えるか』


 幻獣たちは集まり、円状となる。周囲に敵の気配などな無いので、ある程度は有意義な話し合いが出来る事だろう。

 今後の方針。そして作戦。それを行う為、幻獣たちの話し合いが本格的に始まった。



*****



 ──話し合いから早数時間。幻獣たちは各々(おのおの)で楽な体勢となり、伸びをしていた。

 そう、話し合いはたった今終わったという事だ。なので肩の荷が降り、本当の意味で一息が吐けるようになったという事である。


『これくらいで良いか。不測の事態が起こった場合にも対応出来る。ありとあらゆる可能性を考慮した上でのものだからな』


『ああ。話し合いの最中さなかも常に警戒を張っていた。敵の気配は無く、無事に話し合いを終えたな』


『あー、疲れた。一時も気が抜けないってのは嫌なものだねぇ。早く国に戻りたいよ』


 警戒は解いていないが、体勢を楽なものにする事で多少の休みは取れる。ドラゴン、フェンリル、ジルニトラの言葉を筆頭に休む幻獣たち。

 ──しかしその時、何やら黒い妖精の国での、先程通った街から騒がしい音が聞こえてきた。

 幻獣たちは話を止め、耳を澄ませる。その音は一つでは無く複数。それも、十人百人では無く更に多い声だ。


『……。何事だ?』

『さあ。だが、かなりの数居るという事は確かのようだな』

『なら、私が見て来よう。他の皆は数が多い。私ならば大きさは普通の人間サイズ。この姿でも本領を発揮出来る』


 物音、というには大き過ぎる音。それを聞き、警戒を高める幻獣たちに名乗ったのは沙悟浄だった。

 幻獣たちは通常の人間よりも大きく、小さな黒い妖精の街では目立ってしまう。なので人間サイズの沙悟浄が行こうと提案したのだ。

 幻獣たちも、大きさを変えるならば人化すれば良い。だが、それでは力が半減してしまうので本来の姿でも戦闘に置いて問題が無い沙悟浄が名乗り出たのである。


『そうか。気を付けて行ってくれ。この声は遠く、よく聞こえないが少なくとも戦闘意欲や殺気というものは感じない。敢えてそうしている可能性もある。それに気を付けるんだ』


『勿論。私も中々の長生きだ。まあ、既に天界へ居るから生きているのか死んでいるのかも分からないがな。だが、潜入ならば何度か経験がある。心配せずとも直ぐに戻る』


 ザッと踏み込み、青を除いたあらゆる色を無効化する水のように景色へ溶け込んで消え去る沙悟浄。水を司る妖怪で、位の高い"捲簾大将けんれんたいしょう"の異名を持つ沙悟浄だからこそ成せる技だ。

 大きさだけならば猪八戒の方が小さいが、景色に溶け込めるので名乗り出たのだろう。結果、最も潜伏に向いているのが沙悟浄という訳だ。

 相手に気配を読まれたり、匂いなどで読み取られれば位置がバレてしまうが、それでも多少のラグがある。直ぐに見て直ぐに戻れば敏感過ぎる者でなければバレないだろう。


『して、あれから数分。見てくるだけならばもうそろそろだが……』


 その後、沙悟浄が街の様子を見に行ってから数分が経過していた。幻獣たちはその場から動かずに待っており、時間潰しの為の談笑くらいしかしていない。改めて作戦を見直すという話し合いもしていたが、一息吐いた事でほんの少しだけ気が抜けてしまい特に変更点は無い。


『む? 戻ってきたようだぞ』

『……!』


 遠方を見ていたワイバーンから一言。ドラゴンたちはそれに反応を示し、ワイバーンの視線の先を見やる。そこには一部だけ空間の歪んだ場所があり、空間が水面みなものように、奇妙に揺れていた。

 その事から、幻獣たちはそこに沙悟浄が居ると理解する。徐々に歪みが大きくなり、ついにはその歪みが消え去った。


『見てきたぞ。敵では無いようだが……言わば敵よりも厄介な存在だな。しかし、それと同時に頼もしい存在でもある』


『なにっ?』


 沙悟浄の第一声。それは幻獣たちを迷宮へといざなった。敵では無く、厄介だが頼もしい存在。そんなものが居るのかと、全員が訝しげな表情をして沙悟浄の答えを待つ。それを察した沙悟浄は、回りくどい言い方をせずに単刀直入に述べた。


『居たのは、幻獣の国にて我らの部下を努めている兵士たちだ』


『なんだと……? 何故だ……?』


 率直に告げた沙悟浄。一番始めに反応を示したのはドラゴン。それもその筈。この世界に送られて来た時、他の兵士たちの姿は一つもなかったのだから。

 それに、後から来たとしても何故この場所が分かったのかと、残る疑問は多数存在していた。


『成る程。厄介という意味はどの様な方法で連れて来られたのか分からぬ故に厄介……そして頼もしいとは、味方が増えたから頼もしいという事か……』


『……。どうする? ドラゴンよ。とはいっても、もう既に決まっているか』


『そうだな。街の方へ行ってみるとしよう。そして、どうしてこの世界に来れたのかを聞く必要がある』


 ドラゴンの言葉に頷いて返す幻獣たち。ワイバーンはそうなると知った上でドラゴンに訊ねたのだが、もしもの可能性もある。

 警戒して行かない可能性も考慮した上で訊ねたのだ。しかしそれは杞憂だったらしい。本当に部下たちが来たのならば、行かない訳にはいかないという事だろう。

 ドラゴン率いる幻獣の国の主力たちは、みながドラゴンの意見に賛成して"スヴァルトアールヴヘイム"の街の方へ向かう事になった。



*****



 ──"スヴァルトアールヴヘイム"・黒い妖精の街。


『お前たち!』


『その声は……! ドラゴン様!』

『支配者様!』

『幹部と側近の皆様方!』


 街に着き、第一声と共に兵士たちを呼ぶドラゴン。それを見、心の底から安堵したような表情の幻獣兵士たちがドラゴンたちの前に集まった。

 この表情からするに、敵の変装などではなく本当にドラゴンを始めとする幻獣のに仕えている兵士たちは本物という事だろう。多数居る兵士たちに偽物が混ざっていれば、長年連れ添ったドラゴンたちには容易に分かるのだ。


『聞きたい事はお互いに多数ある筈だ。しかし一旦落ち着いて貰いたい。最も気になるであろう場所だけは教えておく。此処は"世界樹ユグドラシル"が覆う九つの世界。そのうちの一つ、黒い妖精の国"スヴァルトアールヴヘイム"だ』


『スヴァルトアールヴヘイム……話には聞いた事があります。成る程、ドラゴン様たちが今日一日姿を見せなかったのはこの世界に居たからですか』


『ああ。というのも、無理矢理呼び出されたのだがな。言い訳に聞こえるかもしれぬが、決して俺たちの意思でこの世界に居るという訳ではない』


『ええ。信じます。我ら兵士たちは貴方様方を信頼しておりますから』


 ドラゴンたちの登場で、パニックになり掛けていたこの場は他の者たちが質問する前にドラゴンが自分の言葉で落ち着かせて収束させた。

 いつ敵が来るか分からぬ状況。騒ぎになっては大きな問題が生じる。なので落ち着かせ、騒ぎになる前にこの世界についてほんの少しでも話したのだ。

 余計な混乱を生まぬドラゴンのやり方は、流石と言うべきだろう。長年支配者という立場に努めているからこそ成せる年の功という訳だ。そしてそれは、ドラゴンに対して信頼があるからこそだろう。


『一つ訊ねたい。お前たちは誰によってこの世界に連れて来られた? この世界は相手の誰かが意図的に創り出した世界。此処に来るには、次元の単位で空間を移動出来る力を持つかその者達の誰かに連れて来られなくてはならないからな。恐らくお前たちも連れて来られ来られたのだろう』


 そして、幻獣たちに訊ねるドラゴン。

 ドラゴンの言うように、この世界は敵の主力達の誰かが創った世界。故に、異世界へ移動出来る術を持つ者と創り出した本人にしかこの世界へ入る事が出来ないのである。なので敵について知る為、詳しい話を聞こうとしているのだ。


『はい。気付いたらこの世界に居たという感覚で、詳しくは見ていません。しかし、三つの頭がある龍……いや、蛇でした』


『……。成る程。アジ・ダハーカか』


『アジ・ダハーカ……!? 神話に出てくる、世界の三分の一を貪るという特定の者にしか倒せぬ魔物ですか……!?』


 部下の目撃情報に、心当たりのあるドラゴン。というのも、自分たちをこの世界に連れて来た者と同一者なので即座に理解出来たのだ。しかし伝説の魔物の名を聞き、驚愕の表情を見せる部下。

 それもその筈。魔物の国の情報は世間には知られていない。なのでアジ・ダハーカが魔物の国に居る事を。この世に居る事を知らないので驚愕の表情を見せたのだ。


『……となると、この国だけでなく他にも兵士たちが連れて来られている可能性があるな。数万は居る兵士たち。この場に集まっている者は少な過ぎる』


『ああ。けど、恐らく向こうもいきなり兵士たちを潰していくって事はしなさそうだ。態々(わざわざ)夜中に連れて来たのだからな。今日は一先ず休み、兵士たちに概要を説明した方が良いだろう』


『うむ。そうするか。他の者たちが連れて来られている可能性は悪魔で推測だが、高いだろう。ならば、部下たちの捜索も兼ねて明日に備え休むとするか』


 連れて来られた部下たちが来て早々殺されるという可能性は低いと考えるドラゴンたち。というのも、相手の大多数は戦闘を楽しんでいる。幻獣は昼間に活動する者も多いので、楽しみたいのなら態々《わざわざ》自分たちの有利な状況で戦うのでは無く、ある程度纏まってから戦うと推測しているのだ。

 ただでさえこの九つの世界は創造した相手に有利。それならば、これ以上のハンデは要らぬと考えている筈。なのでドラゴンたちは、部下たちへの説明を兼ねて休む事にした。全ては明日あす分かる事だろう。

 これにて、幻獣の国の主力たちの波乱に満ちた一日はあまり戦闘を行わずに済むような終わりを告げた。

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