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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第三章 最初の街“レイル・マディーナ”
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三十五話 戦闘開始

「"ウィンド"!!」

「"リヤーフ"!!」


 二つ詠唱が響き、二つの暴風が空中で激突する。

 その衝撃で木々や岩は舞い上がり、風に巻き込まれて消し飛んだ。

 国が違えば呪文も違う。しかし呪文が違えど、二つの風は更に勢いを増してぶつかり合い、二つの風が消滅する。

 その様子を見たオスクロが笑みを浮かべながらフォンセへ言う。


「中々やるじゃねえか! 完全な本気じゃないとはいえ、俺の風と互角たァよ!」


「フッ、そうか。私もまだまだ全然本気じゃないぞ?」


 オスクロの言葉に挑発を交えて返すフォンセ。要するにどちらも本気では無いという事である。


「口の減らねえ女だ!!」

「お前もな!」


 ──その刹那、オスクロは挑発に敢えて乗り、再びお互いに暴風を繰り出した。

 このままでは森が吹き飛んでしまうのではと錯覚するほどの轟風は、ぶつかっては消滅し、ぶつかっては消滅し。を繰り返す。


「やっぱ面倒だ!! 俺が行くぜ!!」


 同じ事の繰り返しに飽きたオスクロは、足に風を纏い加速を付けてフォンセに向かう。その速度は中々で、常人ならば避ける事が出来ない程だ。


「正面から来るのなら、返り討ちだ! ……"ファイア"!!」


「何っ?」


 そんなオスクロを確認したフォンセは風攻撃を止め、拳に熱を発生させて炎を放出させた。

 オスクロは真っ直ぐに向かってくるが、思わぬ炎に声を上げる。


「テメェ! 炎も使えんのか!? ハッ! スゲェじゃねえか!!」


 炎魔術を見たオスクロは叫びながら更に加速を付け、フォンセの炎に突撃する。

 そして、


「ま、炎は中々熱かったぜ……?」


 炎を消し去り、フォンセの目の前に立っていた。


「やるじゃないか……!」

「ありがと……よッ!!」


 言葉と同時に風で拳を加速し、フォンセを殴り付けるオスクロ。


「くっ……!」


 加速したオスクロが放つその拳を受けたフォンセは木々を砕き、遠方の大木に叩き付けられる。

 至近距離にて高速の拳が放たれた。闘技場の怪物とは動きが違い、だからこそフォンセはそれを見切る事が出来なかったのだ。


「まさか次は私が叩き付けられるとはな……」


 口から少量の血を吐き、口元を拭うフォンセ。パラパラと木の欠片が落ち、髪の毛に付いた葉を払う。そして、既に直ぐ近くまで来ていたオスクロは笑って言う。


「ハッ! 因果応報って奴だ! 俺は男でも女でも容赦しねえからな!」


「そう……か!」


 そんなオスクロの言葉を軽く流したフォンセは、次いで大地を操り、土の壁をオスクロの前後左右上下に創り出す。

 その壁はオスクロを囲み、オスクロの逃げ場がなくなっていた。


「!? テメ……土も操れるのか!?」


 四大エレメントのうち、三つを操ったフォンセに驚きの表情を見せるオスクロ。突然だ。世界的に見ても四大エレメントを全ての操れる者は上位的な立ち位置の者だけなのだから。フォンセが操ったのは三つだけだが、フォンセは小さな笑みを浮かべ一言。


「全部使えるぞ……?」

「ん何ィッ! ?」


 言葉を続ける間もなく、オスクロは土の壁に押し潰される。

 フォンセが扱えるエレメントは全て。四大エレメント全てを操れるのである。


「さて……どうしたものか……」


 オスクロを押し潰した壁を見やり、まだ生きているだろうがこの壁からはそうそう抜け出せないと考え、フォンセは次の作戦を練ることにした。



*****



「で、お前ははどっちやるんだ?」


「さあね……。まあでも、あの人間の子……中々可愛いじゃない!」


「ひ……!」


 一方のライ、レイ、エマ、リヤンの四人。此方こちらは魔族が二人やって来た。

 レイは自分を見る魔族の女性が出した視線に肩を竦ませて怯え、ライの後ろに隠れる。

 それを見た魔族の男性は女性の方を見て言う。


「オイオイオイオイ……隠れちまったぞ?」


 魔族の男性に言われ、魔族の女性はガッカリした。しかしレイの方を見、誘うように手招きをする。


「えー……。出ておいでよ。子猫……ちゃん!」


「……え!?」


 魔族の女性が手を振った刹那、どういう訳かレイが女性の元に引っ張られた。

 突然引かれたようにレイの身体が浮き上がり、相手の方へ進んで行く。


「レイ!!」


 それを見たライは何とか引かれるレイの腕を掴み、それを止めた。

 そして、二人組の方を見て呟くように言う。


「……一体何をしたんだ?」


 その疑問が解決する前に、魔族の男性が大きな刀を取り出し──


「いちいち面倒な事をしなくてもよ……纏めて切っちまえばいいだろ!!」


 ──その刀をライたち四人に向けて振るった。

 その斬撃は風を切り裂き、木々を絶ちながらライたちの方へ向かう。


「危ない!!」


 次の瞬間、レイが剣を取り、その斬撃を受ける。


「……っ!」


 しかし,予想以上に重かったその威力によってレイが力負けしてしまった。

 その威力に負け、斬撃は防いだが背後の木へ向けて飛ばされてしまうレイ。


「おっと!」


 ライは飛ばされたレイを受け止めた。そして二人は、再び相手の二人組へ向き直る。


 ──次の瞬間、エマが飛び出し二人組に攻撃を仕掛けた。


「ハアッ!」


「んだと!?」

「きゃ!」


 不意討ちに近い形で放たれた、ヴァンパイアであるエマの怪力。それによって二人組が座っていた木は抜かれ、投げ飛ばされた。


「大丈夫か!? レイ!」


 二人が投げ飛ばされたのを確認し、ライは腕に抱いたレイを心配そうに見る。

 二人組みを吹き飛ばしたエマと、案内役のリヤンも駆け寄りレイを囲う。


「……大丈夫?」

「う……うん……。大丈夫」


 倒れるレイを見、心配そうな表情でリヤンが言い、返すと同時に立ち上がるレイ。

 どうやら大丈夫そうで、目立った外傷というものもない様子だった。


「あー! もう最悪!!」

「イラつくぜ……! クソッタレ!」


 そして、直ぐ様二人組が戻って来る。

 木ごと投げ飛ばされたが、汚れはあれどもダメージは無いようだ。その二人組を見たライは立ち上がって言う。


「お前達が先に仕掛けたんだろ? 自業自得だ」

「うるせー! 正論ほざくんじゃねえよ!!」


 よっぽど苛立っているのか、話を聞ける様子でもない。それを見たライは頭を掻きながら言う。


「ったく……子供かよお前は……。多分だけど、俺よりも年上だろうが」


「んだとテメェ!!」


 ライが挑発し、あっさりと乗る魔族の男性。そんな魔族の男性は言葉を続ける。


「子供とか子供じゃねえとかどうでも良いんだよ!! ムカつく奴だ!! この『ザラーム』が相手してやるぜ!!」


 聞いてもいない名を名乗り、刀を向けるザラームと名乗った男。確かな実力はあるのだろうが、如何いかんせん乗りやすいようだ。

 そんなザラームに続き、女性も流れにそって名乗る。


「ザラームって挑発に弱いのよね~。あ、私は『キュリテ』。よろしくね?」


 キュリテと名乗った女性は武器を使わず、素手で構える。

 剣を扱うザラームと、謎の力を扱うキュリテ。そんな二人に向け、レイとエマが名乗り出た。


「此処は私たちが行くか……」

「うん、そうだね。やられっぱなしじゃ私も気分悪いし……!」


 そんなレイとエマ。二人はやる気満々であり、止めても意味が無いだろうとうかが えた。

 そして二人の様子を見て、ライはため息を吐きながら言う。


「どうせ俺には、"怪我を治してから来い"……って言うんだろ?」


「うん」

「そうだ」


 即答で返すレイとエマ。そんな会話をする三人を見たザラームは肩を竦めて言葉を発する。


「……んだよ? 小僧が相手じゃないのか?」


 ザラームはてっきりライが来るものかと思っていたらしいが、期待外れだったのか落胆したように肩を落とす。

 そんなザラームを見たレイは、不馴れながらに挑発してみる。


「はっ! 貴方なんか私だけで十分って事だよ!」


「良い度胸じゃねえか!! 今度は吹き飛ばすだけじゃなくその身体を切り刻んでやるよ!!」


 挑発されたザラームはあっさりそれに乗り、レイに構える。やはりかなり扱いやすいタイプの者である。

 それを見たキュリテもガッカリしたように言う。


「私はその子の方が良かったなー」


「ふふ……ならば私と戦わなくても良いんじゃないか? 貴様らは悪魔で見回りみたいな物なのだろう? 生憎だが私は、『手加減するのが苦手』なんだ」


 ガッカリしたキュリテを挑発するように言うエマ。キュリテはムッと眉を顰めて言う。


「はん! そんな傘を持っていて私に勝てると思ってんの?」


「やれば分かるだろう?」


「良いわ! 生意気な小娘が……!」


 "私の方が年上なのだがな……"という言葉を飲み込み、構えを取るエマ。そして此方の二人はレイとエマの二人が相手をする。



*****



「オラァ!!」


 刹那、オスクロは土の壁を砕いて壁から抜け出した。土魔術によって造り出された土の壁。オスクロはそれを抜け出したのだ。

 そして周りを見渡すが、そこにフォンセの姿は無かった。


「クソッ! 何処行ったァ!?出てこいやァ!!」


 時間もそれほど経っていないのでまだ近くにいるはずと考えたのか、オスクロはフォンセを探す。

 そのように捜索するオスクロは、再び風を自分の周囲に発生させる。その動きを読んで居場所を突き止めようとしているのだろう。


「いっそのこと森ごと吹き飛ばしてやるぜェ!!」


 その風の威力は増し、森の木々を浮かせる。このままでは他の場所にも影響が及ぶだろう。

 しかしその暴風は威力と引き換えに、自身の視界にも影響が出る。

 様子をうかがっていた者は風によって周りが見えにくいという隙を突き、オスクロへ仕掛けた。


「"ファイア"!!」


 風の隙間をフォンセの放出した火炎が通り抜け、オスクロの元へ向かう。


「そこかァ!!」


 熱の流れを読み、フォンセの居場所を突き止めたオスクロは全部の風をそちらへ放出した。


「そんなもの!!」


 そしてフォンセは、その風に向かって炎をぶつけて相殺する。


「オイオイ……何で炎で風が消されるんだ?」


 炎と風がぶつかり合い、それら二つが消滅した事に少々驚くオスクロ。そんなオスクロに向け、フォンセは軽く笑って言う。


「さあな、お前の魔力が弱かったんじゃないか?」

「あ?」


 フォンセが挑発を織り交えて返した言葉にオスクロは眉をピクリと動かして反応する。


「いちいち鼻に付く言い方しやがるな……それで俺の集中を削ごうって作戦か?」


「さあ、どうだろうか?」


 しらばっくれるフォンセに、オスクロは諦めたようにため息を吐き、頭を掻きながら話す。


「まあ、そんなことは『どうでも良い』。テメェはどうせ俺に負けるんだからなァ!!」


 ──刹那、オスクロの周りを暴風が包み込んだ。

 その風によって木々や岩、ついには地面が浮き上がる。その振動は森全体に響き渡り、幻獣・魔物が騒ぐ声が聞こえてくる。


「さあ……魔族の娘よ……楽しませてくれ」

「ふふっ……。急に落ち着いたな」


 風を放出しつつ、落ち着きを取り戻したオスクロを見て笑うフォンセ。

 フォンセとオスクロの戦いは決着に向かっているのだった。



*****



「やあっ!」

「ゼァッ!」


 ガキィン! と、金属同士がぶつかるかのような音が鳴り火花が散る。

 剣と刀。形や切れ味、強度は違うがどちらも生き物を殺める道具ということは変わらない。

 そんな金属の凶器を振るい、人間の少女と魔族の男性が戦う。


「オゥ──ラァッ!!」

「くっ……!」


 ザラームは刀を横に薙ぐ。その切れ味は最早もはや人智を凌駕していた。

 レイは何とか剣を出して自分へのダメージを防ぐが、その斬撃によって遠方にあった小さな山が切断された。


「こっちの番──!!」

「おっとォ……!!」


 次いでレイが剣を横に薙ぐ。ザラームの刀は小さな山を切ったが、レイの剣は森を消し去る。

 人智を超越した二つの金属凶器はぶつかり合い、文字通り火花を散らす。

 その一つ一つが周りに大きな影響を及ぼすだろう。

 レイとザラームは自らの武器を自在に操れる程の実力がある為、周りへの被害は最小に抑えられていた。


「お前人間の癖にやるじゃねえか! 嫌いじゃないぜ! そういうの!」


「貴方に気に入られても嬉しくない!」


 ザラームはそういう意味で言ったのでは無いのだが、これ程までバッサリと切られるとそれなりにダメージがありそうだ。

 しかしザラームは気にせず、


「ハッ! そうかよ! だったらコレで分からせてやるか!!」


 地面を蹴り、レイとの距離を縮めて刀を振り回す。


「どうした、どうしたァ!?」

「……くぅ……!」


 その刀にレイの剣は押され、自分の身を守るのに必死だ。

 ザラームの太刀筋は一見滅茶苦茶に見えて、しっかりと計算されて放たれている。

 剣士としてこれほどやりにくい相手はいないだろう。


「やあっ!」

「うおっ!?」


 しかし一瞬の隙を突き、レイの剣はザラームの顔に傷を入れる。

 レイも遊びで剣士をやっている訳ではないのだろう。ライとの旅でそれなりの敵を見ている。

 元々常人よりは剣の腕があったレイ。自分が戦ったことは少ないが、ザラームの動きに付いていけるレベルは始めからあったのだ。


「ハハハ!! 良いぜ良いぜ!! 人間の小娘にしては中々刀を知っているじゃねえか!! いや、お前は剣だったな?」


「次は捉える!」


 ザラームは楽しそうに笑い、レイは狙いを定める。此方の戦いも白熱していた。



*****



「ハアッ!」


「……ッ! 中々速いじゃない……!」


 エマは飛び回り、キュリテの死角からみずからの怪力で攻撃を仕掛ける。

 キュリテはその攻撃を防ぐが、エマを捉える事自体には難航している様子だ。


「そうだな。私は速さに自信を持っている。まあしかし、私の仲間はこれをあっさり見切る者もいるがな?」


「へー、……そう!」


 エマに返すキュリテは手を天に挙げ、『遠方の岩を持ち上げた』。

 手を使わずに、遠方の岩を数個持ち上げたのだ。


「……レイに使った技か……!」


 エマはそれを見、レイを引っ張った技と理解した。だがしかし、その技が魔法なのか魔術なのか、それとも全く別の技術なのかが分からなかった。

 キュリテはエマを見て笑いながら言う。


「いくら速くても、闇雲に攻撃されたら大変じゃない?」


 次の瞬間、キュリテは持ち上げた岩を投げ付けた。

 その岩は空気を切り、さながら威力の抑えられた隕石の如くエマに振りかかる。

 普通の落石よりは威力が高いだろう。

 その岩をエマは──


「フッ、遅いな……!」


 ──悠々とかわした。

 岩が地面に着く前に、落下地点を読み、走ることも無く、優雅に歩きながらかわす。

 その岩は地面にぶつかり、クレーターが生み出される。


「だったら……!」


 続いてキュリテは森の木々を次々浮かせ、その全てをエマに向ける。

 その木々は槍のようで、空気を切り裂きながら真っ直ぐエマの元へ向かう。


「成る程……お前の能力は大体理解した」


 ヒョイヒョイとその木々を全て避けたエマは、木々を穿つキュリテに言い放つ。その間にも槍のような木々は地面に突き刺さり、エマの背後で粉塵を上げていた。

 そんなエマの言葉を聞いたキュリテは訝しげな表情で返す。


「大体理解した……? 寧ろ分からなかった方がおかしいでしょ?」


「まあ、そうだな。遠くの物を操る能力というのは始めから知っていたさ。……しかし、お前の技は魔法・魔術に近いが、そうじゃない……だろ?」


 エマの言い放った言葉に眉を動かすキュリテ。そんなのを気にする事も無く、エマは言葉を続ける。


「お前の技は魔法でも魔術でもない……俗に言う"超能力"って奴だな? お前がさっきから岩を浮かせたりする為に使っているのは"念動力"ってところか……」



 ──"超能力"とは、魔法・魔術とはまた違った特殊能力だ。


 魔法・魔術が自身の魔力と引き換えに森羅万象を操り、自然現象を起こすモノだとすれば、超能力は森羅万象を『産み出すモノ』だ。


 魔法・魔術と違い、人に教えることは難航を極める。

 自身の能力だけで奇跡を起こす力だからである。



 エマの話を静聴していたキュリテはフッと笑い、


「へー? 本当の意味で理解したって事ね……まあ、そんなの関係ないけど!」


 直ぐ様エマへ攻撃を仕掛ける体勢に入る。

 念力だけでは駄目だと判断したのか、"空間移動"とは違う、"テレポート"か何かで姿をくらます。


「……消えた……? いや……」


 エマはキュリテの姿を探すが、それが無駄だと知ってそれを止め、周りの気配を感じる為に五感を集中させる。

 そんなエマの上からは、森には無いような物体が降ってくる。

 "アポート"で遠くの物を引き寄せたのだろう。


猪口才ちょこざいなッ!」


 エマは飛び、降ってきた物を踏み台にして更に跳躍する。

 キュリテから見れば的が見通しの良い場所に移動したようなものだが、エマは勿論そのことを理解している。

 エマの狙いは高所からキュリテを探すことなどではないのだ。


「この森の何処かに居るのだろう……ならば簡単だ……!」


 エマは呟くように言い、天に手をかざした。



 ──刹那、快晴だった空は突如として雲に包まれ、曇天の空模様に急変する。

 ただ曇りにして自分が行動しやすいようにするという訳ではない、それなら飛ぶことが無いからだ。



「これでどうだァ!!」


 そしてエマはかざした手を振り下ろす。

 それと同時に、──『いかづちが森へ降り注いだ』。

 そう、エマの狙いはキュリテを探すことでもなく、見渡しの良いところに行くのでもなく、『森ごとを焼き払ってキュリテを炙り出す』事だったのだ。

 しかし、森全体を焼き払えば多くの生物が死に至るだろう。なので生物が少ないところを狙っている。

 雷が降り注ぐ中ならば、雷がキュリテに当たらなくとも危機を感じて姿を現す可能性が高いからである。

 その作戦は見事成功を収めた。


「ちょっとー! 当たったらどうするのよぉー!! てゆーか! 貴女ってもしかしてヴァンパイア!? 全体的に幼いし小さいけど力が強くて天候を操るし!!?」


 稲妻が起こした静電気によって髪が立ち、怒り顔のキュリテが姿を現したからだ。


「ふふ……お前が隠れて攻撃をするからだ。そしてそうだ。私はヴァンパイア。……超能力には肉体強化もあると聞く、お前自身が来たらどうだ?」


「……っ! 良いわよ! 太陽が隠れたとはいえ、昼間のヴァンパイアなんかに負けたら魔族の名がすたるから!」


 そして、エマvsキュリテの戦いも白熱する。

 フォンセvsオスクロ・レイvsザラーム・エマvsキュリテと、あちこちで魔族の戦いが広がり続けるのだった。

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