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三百二十四話 vsレヴィアタン・決着?

『キュルオオオォォォォッッ!!!』

「……ッ!!」


 レヴィアタンの尾が当たり、ライの身体が弾き飛ばされ山を数百座貫通して吹き飛んだ。

 それから少し遅れて山が崩れ、半径数十キロを巻き込む大爆発が起こる。

 論ずるに値しないが、爆発といっても熱が生まれるような物では無い。

 当然空気との摩擦によって生じる熱はあるが、それとは別である。

 何はともあれ、爆発のような何かが起こったという事だ。


「ふう、面倒だ……」


 呟いて踏み込み、舞い上がった粉塵を消し飛ばしながら加速するライ。

 それによって背後の山は砕け、その衝撃は直線上に進みながら星を飛び出して天空にある全てを消滅させた。

 高所で無ければ衝撃が宇宙に逃げず、この星が消えていた可能性のある破壊力だ。


「レヴィアタンッ!!」

『キュルッ!?』


 刹那にして吹き飛ばされた距離を縮めるライ。

 レヴィアタンはそれに気付いたが光を超える速度に反応出来る筈が無く、一瞬にして貫かれ身体が木っ端微塵に粉砕した。

 しかし即座に再生し、肉片同士がくっ付いて元の形を形成する。

 無論直接的なダメージを与えた箇所は再生しなかったが、巨大過ぎる故に再生する箇所の方が多いのだ。


『キュルオッ!!』

「……っと!」


 再生した瞬間に尾を放ち、ライを狙うレヴィアタン。

 音速を超えるその速度は常人、もしくは幹部の側近などからすれば速いがライにとっては遅いもの。

 容易くかわし、尾をいなしてから空気を蹴りレヴィアタンの顔へと向かう。


「ほらっ!」

『キュ……!』


 そのまま回し蹴りを放ち、レヴィアタンの顔を蹴りあげる。

 蹴りあげられたレヴィアタンは数十キロ以上の巨躯を誇る肉体を舞い上げ、天空へと立ち上った。


「そらっ!!」

『……ッ!!』


 一瞬にして天空のレヴィアタンへ近付いたライは続け様に踵落としを食らわせ、海面へ叩き付ける。

 海面からは巨大な水柱が上がり、視界を海で包む。それは山一つを容易く超える大きさだった。


「オラァ!!」


 次いで加速し、水柱を砕きながらレヴィアタンの頭へ拳を放つライ。

 その熱と衝撃が辺りに響き、水柱を蒸発させてレヴィアタンの頭を粉砕する。

 如何なる武器も通さぬと謂われている不死身の身体を持つレヴィアタンだが、魔王の前では不死身という概念などあって無いようなモノなのだろうか。

 しかし攻撃の範囲外ならば再生出来ているので、不死身の肉体は健在。如何なる武器を通さぬ身体が不在という事だろう。


『キュルオオオォォォッ!!』

「おっと……!」


 そして例の如く即座に再生するレヴィアタン。

 再生したレヴィアタンはライに向き直り、大口を開けて炎を吐き付けた。

 吐かれた炎を跳躍して避け、改めてレヴィアタンの懐へ進み行くライ。


「……」

『……』


 刹那を置かずに現れたライは拳へ力を込め、上空へと拳を放つ。

 正面に放てばこの星が危うい。なので上空へと放つのだ。

 放たれたライの拳は武器を通さぬレヴィアタンの身体を貫通し、貫いた肉体からは鮮血が噴出する。

 しかしその程度の攻撃、先程から何度も行っている事だ。レヴィアタンは再生し、下方に居るライへ大口を開けて突撃する。


『キュルオオオッ!!』

「でっかい口だな」

『……ッ!!』


 拳を放ってその口を砕き、再び吹き飛ばすライ。

 殴られたレヴィアタンは第三宇宙速度程度で吹き飛び、数キロ先にて停止する。


「食らえ……!!」

『ギュルッ!?』


 次いで指先に八割を纏い、デコピンのように指を弾いてレヴィアタンを打ち砕く。

 その破片は光速で吹き飛び、空気の摩擦によって気化した。

 その肉片は目にも止まらぬ速度で再生し、ライの方へと──


「そーらよっと!!」

『──ッ!!』


 ──向かおうとした刹那、ライはかかと落としを食らわせて海面に叩き付け、レヴィアタンの巨躯を大きく浮かせた。


『キュルオォォ!!』

「……ッ、やっぱ一筋縄じゃいかないか」


 浮くと同時に身体を捻り、ライへ肉体をぶつけるレヴィアタン。

 受けたライは吹き飛び、再び山を数座砕き進んだ。


『……キュルッ──』

「速いな……!」


 次いで山に埋まったライ目掛け、大口を開けた状態で構えるレヴィアタン。

 その口には熱が籠っており、何時でも炎を放てるような体勢へとなっていた。


『──オォッ!!』

「……!」


 そして、放たれた。

 吐かれたのは数キロに及ぶ大きな炎。それはライの埋まった山を焼き尽くし、回りを流れ行く海水を蒸発させて大爆発を起こした。

 その爆発は比喩的な物では無く、海水が蒸発した事で発生した水蒸気にレヴィアタンの炎が引火した事で起こる、れっきとした爆発である。

 一瞬にして辺りは目映い光に包まれ、大きな熱と衝撃が走り抜けた。


「ふう、結構熱いな……」


 消し炭となった山にて、服が焦げ皮膚にすす汚れの付いたライが起き上がる。

 泥やすすなどの汚れはあるが炎によるダメージは無く、山が消えたがライ自身は消えていない。

 多少の熱は感じたライだが、ダメージは無く終わったようだ。


『キュルッ!!』

「休ませる気は無い、か」


 次いで消えた山の上に居るライへ尾を放ち、山の欠片ごと粉砕しようと試みるレヴィアタン。

 大きな尾がぶつかり、水飛沫と共に粉塵を巻き上げた。


「やっぱ痛いな」


 レヴィアタンの尾が直撃し、大地と尾に押し潰されたライは仰向けの状態で呟く。

 ダメージは少ないが痛みはあるらしく、頭に付いた土を払いながら起き上がり──


『キュルオオオォォォォッ!!』

「またか……」


 ──レヴィアタンが連続して尾を打ち付け、起き上がった刹那に何十回もライを叩き付けた。

 轟音と共に打ち付けられる尾。その速度と激しさは増し、徐々に粉塵も大きくなって広がる。

 視界が全て消え去り何も見え無くなった時、そんなレヴィアタンの攻撃が収まった。


「終わったか?」

『……!?』


 刹那、瓦礫の山から飛び出したライは拳に力を込めており、レヴィアタンの頬を打ち抜く。

 打ち抜かれたレヴィアタンは大きく揺れ崩れ、少し遅れて全てが粉砕する。


『キュルッ!』

「……!」


 そして常例通り再生した後、空中に居たままのライを口の中に閉じ込めた。

 肉片がライを囲み、そのままレヴィアタンが再生した事によって閉じ込める事に成功したのだ。


「成る程、このまま俺を噛み砕くつもりか」


 一方、口の中に居るライ。

 レヴィアタンの身体は広く、幾つかの都市を造る事が可能な広さである。

 口の中でも小さな街なら収まりそうな程だ。

 そんな口内にて、レヴィアタンの歯が今にもライを押し潰そうと降り注ぐ。


「ほら!」

『……ッ!!』


 それに向けて繰り上げ、レヴィアタンの上顎を粉砕するライ。

 上顎から脳に掛けて吹き飛んだレヴィアタンは怯み、赤黒い肉片と共に鮮血が噴出する。


「身体に悪い物を食べようとすれば、何かしらの不調が起こるって覚えて置きな。レヴィアタン……!」


『……! ……ッ!』


 身体を赤く染めながら話すライと上顎が無くなり、話す事がままならない様子のレヴィアタン。

 それも再生するが、七割のライでもレヴィアタン相手に善戦していた。

 いや、寧ろレヴィアタンを押している程である。


『キュルル……』


「……にしても、これが本当に最強生物レヴィアタンなのか? なんーか、思ったよりも大した事無いな……魔王の力が強過ぎるのか?」


 再生し終え、低く唸るように音を出すレヴィアタン。

 そんなレヴィアタンを見、神話よりも強く感じない事を疑問に思うライ。

 如何なる武器も通さぬ身体と不死身の肉体。世界を滅ぼす事が出来る力。

 確かに再生力は面倒でその力も容易く山を粉砕出来る程だが、悪魔でその程度。

 この星にあるこの世界で無ければ滅ぼす事が出来るかもしれないが、この世界のレベルは宇宙的に見てもかなり上位に君臨する。

 というか、何なら宇宙を創った者達が居る程だ。

 そんな世界ではレヴィアタン程の力を秘めた生物だとしても滅ぼす事が出来ない。

 しかし、神話ではこの世界を滅ぼす力があると伝えられている。

 なのでおかしいのだ。それ程の力ならば、全体的な世界のレベルが上がったとしても相応の力を使える筈なのだから。


「全盛期に近い……けどまだ全力じゃないって事か……?」


 その事から、レヴィアタンはまだ戻りつつあるだけで本来の力では無いと推測する。

 魔王(元)は戻っているかもしれないと言ったが、まだ全盛期では無かったという事だろう。


『キュルオォ……』


「……つまり、これからが本番って見て良いんだな」


 そしてそのレヴィアタンは、再生すると同時に目付きが変わった。

 先程まで放っていた凄まじい威圧感に威圧感が上乗せされ、ただならぬ雰囲気を醸し出す。

 これからするに、正しく今のレヴィアタンが全盛期の力を持っているという事だ。


「さて、やるか……」

『……』


 呟き、構えるライ。

 レヴィアタンは依然として悠然とした態度でたたずみ、ユラユラ揺れる。

 その揺れによって海の濁流が静かに流れていた。



*****



『キュルオオオォォォォッ!!』

「……ッ!!」


 レヴィアタンの尾が光速で激突し、光の速度を超えてライを吹き飛ばした。

 その衝撃で大陸と海を割り、数万キロ先まで吹き飛ぶ。

 何とか空中で体勢を整えたライだが、幻獣の国からかなり離れてしまった。

 しかし他国という訳では無く、何時ものように幻獣の国に創られた海とは違う、普通の海の上である。


「急激に速くなったな……」

『……キュルッ!!』

「ほらな」


 レヴィアタンが本気となり、早数十分。

 今現在レヴィアタンは光の速度を越えており、攻撃の破壊力も大きく変化していた。

 そう、それは七割の力を纏ったライが苦戦する程に。

 速度を見極めたライは呟き、光の速度で激突するレヴィアタンに吹き飛ばされる。


「オラァ!!」

『……!』


 次いで先程のように空中で停止したあと跳躍して拳を放つライ。その拳はレヴィアタンを直撃し、レヴィアタンの鱗を剥がした。


「硬さも上がっているな……」

『キュルオオオォォォォッ!!』

「……ッ! まだだッ!」


 そのままライは弾かれ、追撃するかのように放たれたレヴィアタンの尾が直撃して再び吹き飛ぶ。

 しかし何度も飛ばされるライでは無く、海の上で何とかこらえて立ち止まり、そのまま海水を蹴り上げて加速した。

 加速すると同時にレヴィアタンの懐へ潜り込み、先程弾いて剥き出しになった肉の間に腕を突き刺し回転するように正面を向きながら力任せにレヴィアタンを投げ飛ばす。

 投げられたレヴィアタンは何度も海をバウンドし、数十キロの巨体を海面にぶつけて沈み行く。


『キュルオオオォォォォッ!!』

「まあ、直ぐ浮かんで来るか。自力でな」


 続け様に炎を吐く体勢のまま海から飛び出すレヴィアタン。

 口内には熱が広がっており、口内から僅かに生じる熱だけで周りの海が蒸発した。


「成る程、これがレヴィアタンか」

『オオオオォォォォォッ!!!』


 その瞬間、レヴィアタンは空中に居るライへ向けて灼熱の轟炎を放った。

 炎はライを包んで飲み込み、周囲の海水とレヴィアタンの顔の先にある天空の雲々が消滅する。


「ヤバイな、この星って……こんなに狭かったか?」


 レヴィアタンの炎を消し去り、呟くように話すライ。

 星という物は、決して狭くない。しかし自分のレヴィアタンの放つ一撃一撃の大きさから星が狭く感じる程となっているのだ。


『キュルオオオォ!!』

「いや、レヴィアタンや魔王が規格外なだけか……」


 次いで激突し、数百キロの海が一人と一匹の放った熱と衝撃で気化した。そしてその海は元に戻る。

 幻獣の国にしか影響が見られなかった再生だが、どうやら少なからず星全体に影響を及ぼすらしい。

 なので星が吹き飛ぶ攻撃にも耐えられるようだ。


「……やっぱ、惑星粉砕覚悟で行かなきゃならないって事かな……けど、上空に放ったとしても太陽を消しでもしたら大変だよな……ていうか銀河系を消してしまう可能性もあるな……」


 たたずむレヴィアタンを見、ため息を吐いて呟くライ。

 今のライが、周りを気にせずに更に上の力を出せるのなら八割、九割、十割の力で勝てるだろう。

 しかしそれを行った場合、征服する予定の世界や大切な仲間たちが消えてしまう。

 レヴィアタンを倒せるが全てが消える。レヴィアタンを相手に時間が掛かり結果として仲間たちが危険に晒され最悪失ってしまう。一方を取れば一方が失われる二つのジレンマ。

 そのジレンマを打破したいのだがそういう訳にも行かない。ライにとって、何とも悩ましいところなのだ。


【クク、考えていても意味無ェだろ。この世界には創造神が多い。消えたらその瞬間に再生させる事も可能だろ。ま、それでも何かしらの影響が及ぶかも知れ無ェが……そん時はそん時だ。世界を征服してェなら、それなりの覚悟を決めとけ】


 そんなライに向け、クッと笑うような声音で話す魔王(元)。

 魔王(元)の言うように、この世界には創造神が居る。

 その創造神が居るので、世界を破壊しても問題無いとの事。


(……。……ああ、覚悟を決めるってのには同意だ。……だが、世界が壊れても良いってのには反対だな。もう何度も大陸や星々を破壊している俺が言うのも何だけど……やっぱ思うところがあるんだ)


【……なら、どうするんだ?】


 それに対し、あまり賛成出来ないと告げるライ。

 余波などで多くの山河や大陸を粉砕してきたライだが、やはりあまり多くの破壊を行いたくないらしい。

 しかしそれでは決着が付かない。怪訝そうな声で尋ねる魔王(元)と、それに返すライは、


(……ッ。なら、片手に八割纏う。どの方向に向けるかは、俺が決める……!!)


 魔王の力八割を纏う事に決めた。

 一応懸念し、片手のみに纏う事で移動によって生じる破壊は防ぐつもりなのだろう。

 しかし片手だけとは言え、本来ならば莫大な被害を生み出す魔王の力。しっかりと方向を確かめなければ、余計な破壊を生み出してしまう。

 なので太陽が無く、生き物も居ない星々のある方向を狙うようだ。


【そうこなくちゃなッ!! 確かに広範囲を破壊するが、もしもの事を考えていたんじゃキリが無ェからな!!】


(ああ、お前の思考、少し羨ましいぜ)


 魔王(元)はそれに対して称賛し、ライの片腕に八割の力を纏った。


『……!!』


 それを見、何かを感じるレヴィアタン。

 野生の勘というやつだろう。最強生物とは言え、恐ろしい感覚は伝わる。

 かつて世界を支配していた魔王、ヴェリテ・エラトマのその力。レヴィアタンにとっても驚異的という事だ。


「……行くぞ」

『……キュルッ!?』


 ──刹那、ライは一瞬にしてレヴィアタンの前へ躍り出た。

 そこからレヴィアタンの身体を一瞥し、空や海、雲に遠方を流れるであろう宇宙の星々。それら全てに視線を向けて最善の方向を導き出す。


『キュ、キュルオオオオオォォォォォォッッッッ!!!』


「レヴィアタン!!」



 ──そして、海面と天空が消し飛んだ。



 それは比喩にあらず、訂正なども無い。

 レヴィアタンが動こうと揺れた瞬間、ライは片手に纏った力を放った事で天空の雲と星々、海面に流れる水が吹き飛んだのだ。

 そのまま秒も掛からず、レヴィアタンの身体は粉微塵に粉砕する。

 今回の範囲は宇宙の星々。レヴィアタンの巨躯など、容易く消し去る事の出来る衝撃であった。



*****



「……ふう、終わったのか……?」


 海が戻り、近くの岩礁がんしょうたたずむライ。

 八割の衝撃は底知れず、辺りにはレヴィアタンの肉片すら残っていない。

 全てが消し飛び、その場にはライだけが残ったのだ。


「なら、早く皆の所に行かなくちゃな……」


せわし無ェな。まあ、俺は力が振るえるならそれで良い】


 遠方を見やり、休まずに動き出そうと試みるライ。

 レヴィアタンを倒したのならば、早くに向かい手助けをする必要があるからだ。


「何か……あっさりしている気もするけどな……」


 魔王の力を纏い、第四宇宙速度で幻獣の国へ戻るライ。

 何かの違和感を覚えたが、時間的にもそれを考えている暇は無い。なので幻獣の国へと向かったのだ。

 何時もは即座に再生するレヴィアタン。そんなレヴィアタンが一瞬で再生しなかった。なので倒した可能性が高い。

 違和感はあるが、今は国が優先である。そう、違和感はあるが。

 焦りを覚えつつ第四宇宙速度で海を割って進むライは、ゆらゆら沈み行く一つの肉片に気付けなかった。

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