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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第二章 海底都市
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二十三話 ライとレイの海底探索

 チームを決めたあと、興味深そうに海底都市を歩くライとレイ。そのチームはライ、レイとエマ、フォンセに別れた。

 そんな二人が海底都市を見れば見る程、発展していた街だったのだと伝わってくる。

 ライが見たことの無い技術を建造物に施されており、建物の一部一部に金属を使って強度を上げたりしている。

 その程度なら今の国もやっているが、今では使われていない金属が使われていた。

 あらゆる物質を絶妙に配合し、より頑丈に、より美しく造られている。

 "まことの銀"と謂われる"ミスリル"のような金属だった。

 寧ろ今より昔の方が技術力が上だったのでは? と思ってくる造りだ。

 因みに移動手段だが、水の球体をもう一つ創り移動できるようにしたのだ。


「さて……俺は一番気になったあの建物を調べたいけど……レイが先に見てみたいって物はある?」


 まずライが建物に指を差しながら一言。

 水の球体で共に行動する為、自分勝手な行動は出来ないのでライはレイが行きたい場所や見てみたい所があるか聞く。

 その質問を聞き、レイは顎に手を添えて少し考え、


「うーん……。無いかなあ……? うん。私もあの建物を調べるよ」


 特に見てみたい所も無かったのでライに合わせるらしい。

 それを聞き、ライもそうか。と相槌を打って返す。そんな二人がまずはビル棟──もとい長くて巨大な建物を調べる事にした。



*****



 ──一方のエマとフォンセ。

 こちらの二人も興味深そうに海底都市を見て歩いている。

 海ということもあり、魚が廃墟となった街の建物に棲み付いている様子だ。

 チラチラと顔を覗かせる魚は可愛いという印象が付くかもしれない。


「ふふ……人工物が形を残しておこうと、結局は別の生き物の巣となるのだな」


 そんな魚達の様子を見て笑いながら言うエマ。人の手が加わろうと、いずれそれは自然に還る。自然の摂理には、如何なる人工物も敵わないと笑ったのだ。


「ああ、そうだな。かつて発展していただろう街も廃墟と化した。幾ら支配しようとしても、結局は自然の摂理に従って死に行くのだろう。かつての魔王も結果的には無力化されている。今の支配者も何れ滅び行くのだろうな」


「……ふふ、随分と大人びているものだな……」


 それに返すフォンセの言葉を聞き、エマは思わず苦笑を浮かべる。

 ライもフォンセもまだまだ若いというのに、言い回しといい、行動といい、魔族というものは大人染みた振る舞いをするのだろうか。とでも言いたそうな表情だ。

 いや、どちらかといえば子供を見守る親のような心境なのだろう。


「さて、何処を探索する? ライはあの建物を気に掛けていたから、恐らく彼処あそこに行くだろうな」


 そんなフォンセを横に、エマはビルに指を差して尋ねた。それは、ライたちなら向こうの建物へ行っていると推測したからだ。

 フォンセもチラッとその方向にあるビルを見つつ、腕を組みながら考える。


「うーむ……。私もあの建物が気になっていたが、全員があの建物を調べても収穫が少なくなるだろうな」


 全員が同じ行動を取っても得られる情報は少ない。そう考えている様子のフォンセ。

 そんなフォンセを見たエマは提案するように言葉を発する。


「なら、民家を調べよう。私もあの建物を気になっているが、あの建物を造り上げた技術力があったのならば、普通の民家にも何かしらの工夫が施されているかも知れぬ」


 それは住宅街を調べるということ。

 確かに巨大な建物を造る為に使った技術力は一般の家にも応用されているだろう。

 エマの提案を聞いて賛成するフォンセ。それを見たとして、何が分かるか定かでは無いが興味が湧いたから見るのである。そして二人は、ビル以外の街を調べることにした。



*****


 ライとレイは僅かな光すら入って来ない暗いビル──建物の中を探索していた。

 しかしライの炎を使っているので明かりについては問題ない状態だ。


「うぅ……外ですら不気味だったのに……更に暗くて不気味になってる……」


「あ、ああ。……けど、あまりくっつかないでくれ……歩きにくい。俺も内心ビビってるけどさ……」


「だってぇ……」


 レイは怯え、ライにしがみつくよう歩いていた。本当にこのような雰囲気と空間が苦手なのだろう。

 そんなレイに向け、ライは歩きにくいと意見する。かく言うライも内心ビビっているので説得力は無いが、レイよりは落ち着いている様子だ。


【ったく情けねえなあ……俺を宿している魔族と勇者の野郎が残した血族がこのザマとはよ……。特にお前。お前は魔族なんだからよ、闇は魔族にとって安らぎを与えるモンだ。そろそろ慣れても良いだろ?】


 そんな二人を見た魔王(元)は、呆れながら言った。魔族という種族は、基本的に闇を好む。中には例外も居るが、そのほとんどは暗闇を好いているのだ。

 にもかかわらず、基本的に闇を恐れているライが魔族らしからぬと気になっているのだろう。


(そんな事言ってもなあ……まあ確かに最近は暗闇でも視界が明るくなって来ているけど……まあ、取り敢えず慣れていくさ)


【ああ、そうして貰わなければ『俺が困る』。俺自身の力をフルに使えないからな】


 魔王(元)の言葉に内心で頷くライ。

 レイはライの様子を見て、"また魔王と話してるのかあ"。的な表情だ。

 そのように、魔王(元)と話していたライ気を取り直してレイに話し掛ける。


「さて、ただ歩いているだけじゃ調べようが無い。部屋が多いようだから、そのどこかの部屋に入ろう」


「うん、そうだね。そうしよっか」


 それはこの建物を詳しく調べてみるとの事。ライとレイ。二人はかなり気になっている事だ。なのでレイはライの意見に賛成しする。そして二人は建物内の部屋を見て回る事にした。


「うーん……。この部屋には何も無いな」


「……あるのは机? に椅子っぽい物と……建物の破片くらいかあ……」


「よし。次だ次」


 先ず一つ目の部屋。そこに目ぼしい物がなかったので即座に部屋を移るライとレイ。

 それから一つ一つ部屋を見て回るが、殆ど流されてしまったのだろうか、机みたいな物に椅子のような物しか部屋には無かった。

 読めないとしても文字が書かれた書物でもあれば良いのだが、それは贅沢だろう。


「この部屋も駄目か……。建物は広いんだけど、同じような部屋しかないな」


「そうだね。似たような部屋が多いって事は……何かの組織的集まりに使われていた建物か何かだったのかなあ?」


「かもな」


 それからもライとレイは探索を続けるが、興味を引かれる物などは見つからない。

 この建物に入ってから数十分は経過しているだろう。この建物にある部屋は一ヵ所を除いて全て見た。


「この部屋を調べたとして、何も無かったらどうする? 他の建物を調べるか、もう一度この建物を見て回るか、エマたちと合流して次の街に向かうか」


 ライは最後の部屋の前に立ち止まり、扉に手を掛ける前にレイへと聞く。

 同じところでウロウロとしているだけでは先に進めないので、レイからもこれからの行動をどうしたいか聞いたのだ。

 それに対し、レイは応える。


「うーん。私は別に……──」



 ──そしてレイが話そうとした刹那、触れていない扉がゆっくりと開いた。



「「…………!?」」


 ライとレイは反射的に後ろへ飛んで扉から距離を取る。

 扉には誰も触れていない。一番扉に近かったライは扉を触れる前にレイへと聞いたのだ。波で開いたとかそういうものではなかった。

 そこには確かに『手』があったのだ。


「……幻獣か魔物か……。それとも……」


「……っ」


 ライとレイは警戒を高め、推測するように思考する。警戒する理由は、こんな海底に人がいる筈がないからだ。

 もし扉の向こう側に人がいたとしても、扉に近付いていた時点でライは気付くだろう。


「レイ。下がっていてくれ、扉を破壊して開ける……!」


「うん……!」


 しかし待っていても埒が明かない。なのでライは構え、レイは腰の剣に手を伸ばして向き直っていた。


「……」


 そしてライが右手に力を込める。しかし魔王の力を解放していない。

 魔王の力を使うとこの建物全てが消し飛んでしまう為、それより遥かに威力が低いライ自身の持つ魔族の力で扉を開けようとしているのだ。


「オラァッ!!」


 そしてライは吼えるように声を上げ、扉に向かって拳を放つ。

 それによって生じた金属がひしゃげる音と共に扉を砕いてじ開けた。

 砕け散った扉の破片は水の力に負けず部屋の壁に当り壁に小さな風穴を開ける。

 真っ直ぐ壁に向かったということは、先程見た謎の手の持ち主がそこにいなかったということだ。

 ライとレイは警戒しながら部屋に入り、部屋に入った二人は部屋を見渡す。

 その部屋は今までの部屋より広かった。恐らく何かの会議などが行われていた部屋なのだろう。そんな部屋を軽く一瞥したあと、ライは口を開く。


「……いない……のか?」


 パッと見生き物の影や気配は無い。

 しかし逃げた跡もなく、逃げられる筈もない。

 この部屋の出入り口はライが砕いた扉だけで窓は無かった。

 先程砕いた扉の破片で壁に穴が空いているが、とても生き物が抜け出せるほどの穴ではない。

 だが恐らく、小魚ならばギリギリ抜け出せるだろう。しかし、先程見た手が魚では無い事は確かだ。


「……成る程……」


 ライが確信したように呟く。

 そうか、『生きている物で無いのか』と。

 そして姿を消せるという訳では無く、『死角に移動した』のだろう、と。


『…………』


 水の中なので、"それ"の音は聞こえない。

 しかし、この『死体』ならば水の中で息が出来なくとも問題無く行動出来るだろう。


「……"スケルトン"の群れ、か……!」



 ──"スケルトン"とは、いってしまえば動く骸骨である。


 一説では魔法使いや魔術師によって命を与えられた死体と謂われる。

 他の説では魂が宿り、自分が死んだことに気付いておらず、生きている者を妬んだり、血肉が欲しいが為に人々を襲うとも謂われているのだ。


 その種類は多く、武器を扱う者、魔法・魔術を操る者。と、普通の人間のように戦うのだ。

 しかし、レベルでいえばゾンビよりも低いらしい。

 ゾンビより厄介な事といえば、魔法・魔術や武器を操る事くらいだろう。



 ライはそれを見て、面倒臭そうに言う。


「やれやれ、一人一人? 一体一体? ……まあ取り敢えず、一つずつじゃ弱いから群れを成して襲ってくるか……まあ、物理攻撃が効きそうな相手で良かったよ……!!」


「うん。これなら私にも対応できる……!」


 スケルトンも幽霊的なモノといったらその通りだが、骨を粉々にする事で無力化出来る。なので数は多いが、その点ではライとレイにとって都合が良かったのだ。


『…………!!』


 スケルトンは無言で武器を手に取り襲ってくる。

 いや、音が水に遮断されているから聞こえないと言った方が良いだろうか。


「ま、この球体の外に出たら息が出来ないし、そこら辺はスケルトンの方が有利だな」


「ふふ。けど、ライなら外に出ても私よりは行動出来るんでしょ?」


「まあな」


 ニッと笑って相槌を打ち、球体の範囲を広げるライ。

 ライも水の技が使えるので、球体を拡張する事自体は造作もないのだ。


『ウオォ……!』


 ガシャガシャと骨が軋む音と共に低く唸り、響くような声を上げてライとレイに近付くスケルトン。

 何処から音が出ているのか疑問に思うところだが、気にすること無くライは、


「ほらっ!」


 ──スケルトンに有無を言わせずハイキックを食らわせた。

 ライの蹴りを食らったスケルトンは粉々に砕け、その衝撃で球体から追い出せれて波に揉まれて消える。


『ウゥゥ……』


 しかしスケルトンの攻撃は止まない。

 元々が白骨死体なので脳が無く、情や思考という物がないのだろうか。

 だとしたら死ぬ間際に思ったという、生者への怨念だけがスケルトンを突き動かしているのだろう。


「やあッ!」


 ライに続き、レイがスケルトンへ剣を食らわせんとばかりに横に薙ぐ。

 その剣は水を断ちながらスケルトンに向かい、スケルトンを切断した。

 切断された海水は元の位置に戻る為吸い込まれるように渦を巻く。


「飛んでいけ!」


 球体の中で二つに別れたスケルトン。

 そのスケルトンはまだ動いている為、ライが蹴飛ばして球体の外へ追いやる。


『…………』


 蹴り飛ばされたスケルトンは仲間のスケルトンに当たり、仲間を巻き込んで粉砕した。

 それによって生じた骨の欠片が海水に揉まれ、辺りを白く濁らせる。


「あとは纏めて……!!」


 そんなモノを横に、ライは魔王の魔力を借り両手の掌に水を創り出す。

 そして、


「吹き飛べッ!!」


 それを一気に水を放出し──建物ごとスケルトンを吹き飛ばした。

 水が水を貫き、渦を巻きながらスケルトンを吹き飛ばす。

 水に絡まったスケルトンは為す術なく海中で粉々になって消え去ったのだった。


「……終わったな。はてさて、成仏はしたのかねえ?」


 一仕事終えたライは水の球体を一回り小さくし、最初と同じくらいの大きさに戻しつつ言う。

 魔法か魔術か、本当に死者が生き返っていたのかは定かではないが、怨念は残ったままなのかが気になっていたライ。

 ライの言葉に返すようレイが言う。


「分からない……。けど、このまま此処に留まるよりは良い結果になったと思うよ、私は」


「ハハ、確かにそうかもな」


 そしてスケルトンとの対決が終わり、改めて最後の部屋を探索するライとレイだった。

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