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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第九章 支配者の街“ラマーディ・アルド”
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二百六話 -273.15℃

 ──"シヴァが創造した星"。


「オォ────」

「ハッ────」


 その瞬間、ライとシヴァは互いに向けて駆け出し、光の速度を置き去りにして互いへ狙いを定めた。


「────ラァ!!!」

「────シャラァ!!!」


 そして二人は激突し、辺り一帯に衝撃を解き放って周囲を爆散させる。

 それと同時にライとシヴァの姿が消え去り、至るところで激突するような衝撃を撒き散らしていた。


「ハァ!!」


 二人がぶつかる中、"テレパシー"を使ってシヴァの思考を読み、次に出現する場所を推測したキュリテが己の超能力を一気に放出する。

 放たれた超能力は"サイコキネシス"・"パイロキネシス"・"ヴォルトキネシス"・"アクアキネシス"・"エアロキネシス"・"フォトンキネシス"に"フォノンキネシス"と、キュリテが扱える多種多様の様々な能力だった。

 それら全てはシヴァの出現ポイントに命中し、大陸一つを消し飛ばした。


「ハッ! テメェもやる気になったか! それは良い事だ!!」


「……ッ!!」


 その刹那、キュリテの前に現れたシヴァはキュリテの腹部を蹴り上げ、キュリテを遠方へ吹き飛ばす。

 シヴァはキュリテを殺さぬよう、細心の注意を払った弱い力で蹴ったが、それでもその威力は凄まじく、蹴られたキュリテは内蔵が傷付いたのか吐血して木々を砕き、草原を更地に変えて吹き飛んだ。

 そして遠方で何かの爆発音が響き、轟音と共に粉塵を巻き上げて破裂した。

 キュリテはそれで止まっただろうが、生きているのかすら危うい状態だろう。


「……キュリテ! 今、私が──「させねェよ?」……!?」


 エマがキュリテの名を呼び、キュリテの元へ向かおうとした次の瞬間、シヴァはエマの前に姿を現してエマを木っ端微塵に砕いた。

 それによって辺りには赤い水溜まりが出来、それすらもシヴァの放った風圧で消え去る。


「……貴様……!」


 それでも尚即座に再生したエマ。

 エマはシヴァの方を見、己も戦闘を行う体勢に入る。


「ハッハ……恐ろしい再生力だな、ヴァンパイア。だがしかし、テメェは日光に弱いんだろ?」


「……!?」


 その瞬間、シヴァは小さな太陽を創造してエマへ放った。

 エマは咄嗟に反応するが、時既に遅く身体の一部が灰と化す。


「……ッ! 久々の痛みだ……ッ!」


 それによって身体が煙を出して崩れ、膝を着くエマ。

 外的要因・内的要因問わず、身体が即座に再生するエマにとってこの痛みは想像を絶するものだった。

 煙を出す身体からは何かが溶けるような音が聞こえ、ポロポロと皮膚が焼けただれて落ちる。


「……ッ、だ、だが……」


 そしてエマは上を見上げ、


「……お陰で助かった……ありがとう──ライ……!」


「……ああ、けど……」


 小さな太陽を砕いたライに礼を言った。

 ライはシヴァとエマの間に入っており、片手には太陽だった物が握られている。

 そして一瞬でそれは消え去った。

 そんなライはエマの方を一瞥し、何か言いにくい事があるのかそわそわしていた。


「……ふふ、心配するな。この程度の傷は休めば再生する。……まあ、直接太陽に当たったから少し再生が遅くなるけどな」


 その思考を読み取ったエマはフッと笑ってライに話す。

 ライが気になっていたのは太陽を受けてエマが無事かどうかという事。

 ライが小型太陽を砕いたので直撃は避けたが、それでも日光を受けた事に変わりは無い。なのでライは不安だったのだ。


「ハッ! 次はテメェの番だよ!」

「却下だ!!」


 そしてシヴァはライへ向かい、ライはそれを迎え撃つように拳を放った。

 ライとシヴァは激突し、熱と衝撃で草原が蒸発して大爆発を起こす。

 それと同時に巨大なクレーターが造り出され、辺りには塵一つ残っていなかった。


「……ライ。別に私を庇わなくても大丈夫だぞ……?」


 そして近くに居たエマやキュリテはというと、ライがシヴァへ拳を放った瞬間に力を調整した為、エマとキュリテの場所だけは大地が残っている状態だった。


「まあ、一応さ。日差しが直撃したんだ。その腕も再生し切れていないみたいだし……何にせよ、今のエマは力が落ちているよ……」


 そんなエマに返すライ。

 ライはエマの腕や欠けた身体を一瞥し、日光の影響によって再生力が著しく低下していると推測したのだ。

 ヴァンパイアの持つ、最大にして最も有名な弱点──太陽。

 とある人間は蝋の翼で空を飛び、太陽に近付き過ぎた為に蝋が溶けて墜落死した。ヴァンパイアは太陽に近付く事も出来ずに灰となる。

 太陽にはあらゆるモノが宿る神聖なモノだが、"者"によってはその"モノ"が驚異となる。

 つまり要するに、生まれながらにして太陽に嫌われたエマはその太陽によって現在の能力が下がっているのだ。


「……ふふ、そうか。ならば仕方無いな……私も戦うが、殆どをライに任せる事になるぞ……」


「……任せな。元々俺一人で決着を付けなきゃならない戦いだ。エマやキュリテに頼って二人を傷付けたら俺は後悔する……!」


 ライの言葉を聞いたエマはフッと笑って言い、それに返すライは力を込めた言葉を放った。

 曰く、他の者たちは自分の力で支配者の側近を倒しているが、支配者を自分一人でまだ倒せていないので今の戦いでエマ、キュリテを傷付ければライ自身が後悔の念にさいなまれるという事だ。


「関係無ェだろ!! テメェらは俺一人に倒されるんだからなァ!!」


 その瞬間、シヴァはライの眼前に迫り、その拳を向けていた。


「それは嫌だな!」


 そしてライは脚を向け、シヴァの拳に脚をぶつける。

 その衝撃で再び大地が抉れ、巨大なクレーターを更に広げた。

 エマはその風圧に煽られたからか髪を抑えており、キュリテは遠方から出てくる気配が無い。


「ハッハッハ!! もう殆どテメェ一人じゃねェか!! 後はテメェを沈めりゃ俺の勝ちだな!!」


「ハッ! (大将)がそう簡単に沈む訳ねえだろ支配者さんよ!!」


 そして二人は光の速度を超えて移動し、秒も掛からない一瞬で数百万キロ先の場所まで進んだ。

 そこで数千回ぶつかり、惑星サイズの巨大なクレーターを幾つも造り出しながら激突するライとシヴァ。

 そのクレーターは更に更に巨大化し、最終的には何も見えなくなる大きさになっていた。


「オラァ!!」

「遅い!!」


 ライは光の速度を超えた拳を放ち、それを軽く避けるシヴァ。

 そしてシヴァはそのまま三叉槍トリシューラを構え、


「そこッ!」

「おっと……!」


 三叉槍トリシューラを突き刺した。

 ライは辛うじてそれをかわし、数少ない足場の大地に着地する。

 着地と同時にヒビが入り、数少ない大地は更に粉砕した。


「ハッ!」

「……ッ!」


 その刹那、シヴァは三叉槍トリシューラ石突いしつきをライの腹部に叩き付け、ライを遠方へ吹き飛ばす。

 ライは飛び、大地を抉りながら数百万キロ進んで始めの場所に戻った。


「……ライ……」

「……ライ君……」


「……ああ、此処まで戻されたか……」


 エマとその近くに戻っていたキュリテがライの名を呼び、ライはどれ程の距離を移動したのか理解する。


「ハッハ! どうせやるんなら纏めて潰した方が良いから……なッ!!」


「ああそう……かい!!」


 そしてシヴァとライは衝突し、辺りに巨大な谷を形成する。

 その谷は次の瞬間に砕け、奈落の底に大地の欠片を落とす。


「……私だって!」


 その時、キュリテは"サイコキネシス"で大地の欠片を拾い上げ、弾丸のようにそれをシヴァへ向けて飛ばした。

 その欠片は一つ一つが山サイズであり、音速に近い速度でシヴァへと向かう。


「ハッハッハァ! 良いぜ! その調子だキュリテ! 折角遠距離から攻める技があるってのに使わないのは勿体ねェだろ!」


 キュリテの攻撃方法を見たシヴァは笑い、幾つもの山を創造してそれを防いだ。

 キュリテが放った山サイズの弾丸はシヴァの創った山にぶつかって砕け散り、その山ごと崩れ落ちる。


「オ──」


「次はテメェだな!」

「──ッ!」


 そして光の速度を超えて近付くライの拳を見、ライを叩き落とした。

 叩き落とされたライは大地を砕き、谷のような亀裂に落下する。


「そらっ!!」

「ハッハ! まあ、当然のように無事だな!!」


 それからライは、光の速度で谷のような亀裂にあった土塊つちくれを投げた。

 それの大きさも山サイズだが、その速度からキュリテの放った欠片とは威力が大きくかけ離れている。

 シヴァは軽くそれを防ぎ、奈落の底から飛び出したライに向けて言葉を発した。


「……そろそろか。……もう少し楽しみたいところだが、致し方ないな……!」


「……。アンタは何を言いたいんだ?」


 そんなシヴァは、何やら意味深長な事を言う。

 ライはそれを聞き、"?"を浮かべて訝しげな表情でシヴァに尋ねた。


「……まあ、要するに……だ。此処に居る奴ら、全員の活動を停止させようか……って考えているのさ……」


「……活動を停止させる……?」


 その問いに対してシヴァは話すが、ライはその事がよく分からなかった。

 しかし、シヴァが何かをしようとしている事は見て取れる。

 そんなシヴァはクッと歯を剥き出しにして獰猛に笑い、


「ハッハ……今直ぐに分かる!! こういう事だよッ!!」


 両手を広げ、高らかに話した──


「「……!?」」

「……!!」



 ──その刹那、周りの気温が一気に低下する。



 先程までは暖かな気候で穏やかな空間だった草原跡地だが、みるみるうちに気温が低下し大地が白く染まり始める。

 エマが創り出した曇天の空からは白い氷晶ひょうしょうが降り出し、一瞬で吹雪と化した。


「……! な、私の脚が……!」

「わ……私の身体も……!!」


 それと同時にエマ、キュリテが白く染まり、ピキピキと音を立てて凍ってゆく。

 二人は何とかしようとするが、エマの再生力もキュリテの"パイロキネシス"も追い付かない速度で凍り、二人は美しく輝く氷の彫刻となってしまった。

 その二人だけでは無く、遠方に寝転がっているレイ、フォンセ、リヤンも白く凍っていた。


「レイ! エマ! フォンセ! リヤン! キュリテ!」


 何故か凍っていないライは凍り付いた者たちの名を呼び、不安に駆られた表情で焦っている。

 それもその筈。先程まで動いていた者たちが凍って停止したのだ。そしてもう、五人はピクリとも動かない彫刻となっていた。


「"絶対零度(タマーム・セフル)"……全てのエネルギーは停止して万物が凍り付く……ま、そういうのが無効化されるテメェにゃ通じなかったみたいだけどな……」


「……!」


 絶対零度。それによって辺りは完全に停止し、大地や雲、終いには空気すら凍り付いた。

 ライには効かなかったが、それによって感じる寒さは半端なモノでは無い。

 空気が無く息も出来ないこの状況だがライ自身の力と魔王の力が合わさり、ライはこの空間で行動できる。

 しかし、他の者たちを放っておけばものの数分で死に至るだろう。


「……支配者……!! それじゃあ、アンタの側近たちも凍っちまうぞ!!」


 それを見たライは怒り、叫び、シヴァに向けて威圧を放ちながら言った。

 仲間たちの命が掛かっているのだ。ライは先程までの態度を取り消し、怒りを露にしていた。


「ハッハッハ! 大丈夫だ、問題ない! 俺は創造神、命の一つや九つ、軽く創造する事が出来るからな! 記憶も全て保管した状態で再生させりゃ問題無ェだろ!!」


「大アリに決まっているだろ支配者バカが!!」


 そんなライに対してシヴァは笑っており、己の力で創造する事が可能だから問題が無いと告げた。

 それを聞いたライは怒りを広げ、シヴァに向けて声を上げる。


「ハッハッハ……まあ、俺にとって都合の良い側近を創る事は出来るが……俺的にも今の側近には愛着がある」


「……」


 ライの声を聞いたシヴァは軽薄な笑みを消し、何かを言おうとしていた。

 ライは感情を抑えて清聴し、シヴァは言葉を続けて話す。


「……つまり、だ。俺はさっさとテメェを倒して、俺の能力を消そうと考えているって事だ。戦いが長引けば長引く程仲間の命が失われる。その条件は俺もテメェも同じ……両者おれたちが決着を付けなきゃ、仲間が死ぬ最悪の戦いだ! これが本当の最終戦って訳だッ!」


 シヴァが考えている事、それは両者がさっさと決めなければ両者の仲間が死んでしまうという戦闘。

 シヴァは己の側近を生け贄にし、ライとの戦いに決着を付けようと考えていたのだ。


「ふざけるな!! 確かに死んだらアンタが生き返らせるかもしれないが、仲間が死んで嬉しい奴なんか居る訳無いだろ!!」

「当たり前だッ!! だから俺もテメェと決着を付ける為にこの方法を選んだんだからなァ!!」


 ライは怒鳴り、シヴァはそれに返すように叫ぶ。

 何時まで経っても終わりの無いじり貧の戦闘。それを終わらせる為に仲間を犠牲にと考えるシヴァ。


「だったら俺は、今すぐアンタを消滅させてやるよ!!」


「来い!! 侵略者ァ!! 今、テメェの存在を破壊してやるよ!!」


 そしてライは──『魔王の力を十割纏ってシヴァへと駆け出した』。

 対するシヴァも第三の眼を再び開眼させ、三叉槍トリシューラを振り回しながら向かう。

 ライは既に限界を超えている。しかし、身体を砕こうともレイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの仲間たちを救うのが最優先なのだ。

 それはシヴァも同じ、己の側近の命を懸ける事で限界を超える背水の陣。



 そしてライとシヴァは数億キロの場所に移動してぶつかり、銀河系サイズの惑星を大きく揺らした。

 ライvsシヴァの戦いは、いよいよ決着が付こうとしているのだった。



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