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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第九章 支配者の街“ラマーディ・アルド”
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百九十三話 洪水・軍隊

「"ウォーター"!」

「"大砲雨(ミドファウ・マイヤ)"!!」


 その瞬間、フォンセの水魔術とオターレドの洪水魔術。その応用版がぶつかり、沼地地帯を吹き飛ばした。

 沼地地帯が大きな水に飲み込まれ、辺りは泥水で埋まる。

 そしてオターレドは雷速で移動し、フォンセの背後に回り込む。


「魔術の質が高くても、貴女は魔術を纏う事は出来ていない! つまり貴女は私の速度に着いて行けずられるわ!」


 それと同時に早口で言い、フォンセの間近で洪水魔術を放った。

 雷速で移動したオターレドの放った洪水魔術。それによってフォンセの背後は洪水に──


「見えなくとも、防げれば問題ないだろう?」


 ──飲まれるより早く、土魔術の壁を造り出してその水を防いだ。その洪水はフォンセを通り過ぎ、沼地に新たな沼を造り出す。


「そう! 何も洪水だけが水関連の災害じゃないわ! "竜巻イサール"!!」


 刹那、オターレドは一言だけ言い放ってフォンセへ竜巻魔術を放つ。

 それは旋風を起こし、沼地の泥を巻き上げてフォンセへ向かった。


「竜巻……? まあ、多少の水分は含んでいる……のか? 水上に発生する事もあるからな……」


 そんな竜巻を見上げ、呟くように考えるフォンセ。

 オターレドは洪水魔術のみならず、嵐魔術を使った事から風関連の魔術も使えると推測した。

 自然災害と言うものは"雨"・"地震"・"豪雪"・"暴風"・"火山"など、その他にも数十を優に超える災害がある。

 何を述べたいのかと言うと要するに、オターレドはある程度の水分を含む災害系は扱えるという事だ。

 恐らく洪水の災害魔術とは名ばかりに、雪なども扱えるであろう。


「取り敢えず今はこれか……」


 フォンセは思考を停止し、眼前に迫った竜巻へ視線を移す。

 竜巻というものは、その場を通り過ぎるだけで建物や草木のような自然を消し去る威力を持つ。

 つまり、今はオターレドが扱う魔術を推測するよりも竜巻を何とかする事の方が優先という事だ。


「"竜巻トルネード"!!」


 刹那、竜巻魔術に風魔術の竜巻をぶつけるフォンセ。

 竜巻の災害魔術と風魔術の竜巻は少し違う。その差は僅差きんさだが、風魔術の竜巻は竜巻の姿を顕現けんげんさせているだけであり、自然の竜巻を創り出している訳では無い。

 つまり自然その物の竜巻と風魔術の竜巻は根本から違っており、要するにオターレドの災害魔術とフォンセの魔術は相違点が多いのだ。

 オターレドの魔術とフォンセの魔術がぶつかり合い、沼地を大きく吹き飛ばした。


「"サンダー"!!」

「"ラアド"!!」


 そして舞い上がった沼地の水や泥を貫通し、フォンセとオターレドが放った雷魔術が激突する。

 辺りに雷撃が広がり、ぶつかった衝撃で熱せられた空気が高温で膨張した。

 それによって轟音でゴロゴロという音が響き、辺りを一瞬目映(まばゆ)く照らす。

 その衝撃は雷速で千里を駆け、辺りに木霊して消えた。


「……へえ?」


 最後に光って消え去る雷撃。

 互いの魔術をぶつけたオターレドは消える雷を見てフッと笑う。


「中々やるじゃない……いえ、かなりやるわね……少し生意気だけど……やっぱり貴女を仲間に入れたい気がするわ。ふふ、貴女達を……かしらね……」


 そしてフォンセを勧誘するように話した。

 今まで仲間に入れるような話をしていなかったのだが、"やっぱり"と言う言葉からシヴァたち支配者組みメンバーはライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤンの五人を仲間に率入れたいのだろう。

 因みにキュリテだが、キュリテは元々魔族の国側なので含まれていない。


「……やっぱり? 何を言っているのか分からないが……取り敢えずお前達は私たちを支配者側に付かせようとしているのか……? ……私はライが言うならばそうするが、お前達の言う事を聞くつもりはないぞ?」


 そんなオターレドの言葉に返すフォンセは首を傾げながら話す。

 オターレド達がフォンセたちを仲間に入れるつもりだとしても、フォンセはライが言わなければ言う事など聞く気は無いのだ。


「……ふうん……随分と信頼されているのねえ……貴女達のリーダーは……。私も支配者さんを尊敬しているけど、信頼出来る人が上に立つのは良い事ね」


 フォンセの言葉を聞き、信頼出来るリーダーが居るのは良い事だと告げるオターレド。

 信頼出来るリーダーが居れば部下は行動を起こし易くなる。

 信頼出来ない者が上に立てば反乱やその他の問題が起こるが、信頼出来る者の場合は部下も着いて行き、あらゆる問題と直面した時真っ直ぐ進む事が出来る。

 何はともあれ、信頼出来る者と出来ない者では、圧倒的に信頼出来る方へ部下は着いて行きたがるだろう。


「取り敢えず、さっさと続きと行こう……長話をしている場合じゃないだろ……私たちを仲間に入れたければ私たちを全員倒さなくてはならないぞ?」


「……!」


 リーダーどうこうは兎も角、今重要な事は目の前の敵を倒す事。

 フォンセはオターレドの話に付き合っている暇は無いと言い放った。


「……やっぱり生意気ね……! けど、貴女の意見にはおおむね同意だわ……。そんなに望むならさっさと倒して上げるわよ!!」


「フッ、そうこなくてはな……」


 フォンセの言葉に返すオターレド。

 オターレドの回りを水や風、その他の渦が纏わってオターレドの身体を飾った。

 それを見たフォンセは軽く笑い、己も魔術に力を込める。

 フォンセとオターレドの戦いはまだ続く。



*****



「撃ちなさい!!」


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 シュタラの合図と同時に、シュタラが創り出した兵士達が銃を放った。

 その弾丸はいずれにしても音速を超えており、空気を貫き熱しながらリヤン、キュリテの元へ直進する。


「この速さなら……!」


 そしてその弾丸の軌道を読み、辛うじてかわすリヤン。

 銃弾はリヤンに当たらず直進し続け、近くの地面を貫通して砕け散った。

 一部の弾丸は地面で砕け、一部の銃弾は岩に当たって破裂する。

 兵士達の数は万を優に超える程。リヤンは野生の力を使って兵士達の銃口を見、銃口から発せられる弾の軌道を推測して避けているのだ。

 音速を超える弾丸。リヤンはそれを確実に目視出来る訳ではない。

 ライならば音速など容易く見切り、一つも食らわずに兵士達を一振りで消し去れるだろう。

 しかし、リヤンにはそれ程の動体視力も破壊力を持つ攻撃方法も無い。

 ある程度は纏めて吹き飛ばせるが一人で軍隊を相手にするのは中々の苦行だろう。


「邪魔だよ! リヤンちゃんの邪魔をしないで!」


 そして空を移動するキュリテが"サイコキネシス"を使い、遠方から銃やその他の重火器を放つ兵士達を浮き上がらせた。

 そう、リヤンには味方として超能力者のキュリテが着いている。

 如何に優れた重火器を持っていようと、見えない場所や見えない力を防ぐ事は出来ない。

 キュリテの姿は見えているので、この場合は見えない力だ。

 キュリテの放つ"サイコキネシス"は目視する事が出来ず、兵士達は為す術無く武器を取り上げられた。


「お返し!」


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 そしてその重火器を兵士達へ向け、一斉に放つキュリテ。

 "念力"で引き金や諸々の起動する箇所を押し、一斉に放出したのだ。

 重火器が一発で破壊出来る範囲は精々数十メートルから数百メートル。

 最大級の爆弾でも精々街一つを消し飛ばす程度であり、その攻撃力は魔王を一割纏ったライの半分くらい。

 その破壊力を誇る物がキュリテの手によって一斉に放たれれば、恐らく半径数キロは消し飛ぶだろう。

 つまり現在、キュリテはシヴァの側近兼侍女を勤めているシュタラごと吹き飛ばそうとしているのだ。


「あらら……困りましたね……」


 迫り来る弾丸や砲弾を見るシュタラは少しだけ慌てたように話す。

 しかし、その口振りから全く慌てていないようにも見えた。


「……なら……!」


 そして少し思考をした素振りを見せたシュタラは兵士達を一度全員消し去り、新たに武器を持たせた兵士達を創り上げる。

 今更だが、シュタラは武器も創れるらしい。


「空中で爆破させるまでです!」


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 シュタラの合図と同時に兵士達も一斉に重火器を放ち、空中から向かってくるキュリテが放った弾丸、砲弾に自分達の弾丸、砲弾をぶつけて空中で大爆発を起こした。

 空中でぶつかり合った化学兵器の弾は黒煙を上げ、リヤン、キュリテ、シュタラの視界を埋め尽くす。

 その衝撃によって爆風がこの星を包み、数キロが火薬の匂いで埋め尽くされた。

 やがて黒煙は晴れ、リヤン、キュリテ、シュタラの視界が開ける。


「……凄い爆発……」


「ケホッ……! ケホッ……! うわー……不味い……」


「……まだ来てませんね……」


 三者三葉の意見を言い、遠方に居る者たちを見るリヤン、キュリテ、シュタラの三人。

 リヤンは正直な感想を言い、キュリテは口の中に入ってしまった火薬を吐き出している。

 シュタラは爆発の隙にリヤンとキュリテが近付いて来ていないかを確認し、来ていないのを見て安堵した。

 シュタラの兵士達は何人か爆発に巻き込まれて爆ぜたが、殆どは無事な様子だ。


「重火器で遠方から攻めるのはキュリテさんが居る限り上手く行きませんね……。皆さん! 武器を剣、槍、大槌、モーニングスターなどの近接武器に変えます! 陸を行くリヤンさんは近接武器班が! 空を飛ぶキュリテさんには飛行用の幻獣を用意します!!」


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 ザッザッザとシュタラが生み出した兵士達は武器を持ち替え、リヤンに向けて進む。

 そして空を飛び交うキュリテ対策に、空を飛ぶ竜のような見た目をしている幻獣を用意したシュタラ。

 近接武器に飛行用の幻獣。それらを整えた兵士達は一斉に駆け出した。


「空を飛ぶ幻獣……? そんなモノまで創り出すなんてねぇ……魔法・魔術の一種にしてもかなりの上位レベル……」


『ギャア!』

『ギャア!』

『ギャア!』


 竜のような幻獣に乗る兵士達は空を飛び、空中に居るキュリテへ飛び出した。

 竜のような幻獣は鳴き声を上げ、両翼を羽ばたかせてキュリテへ直進する。


「陸地の皆さんには馬などのような移動用生物を用意します!」


「……色々創ってる……」


 そして馬を創り出すシュタラ。そしてそれを、幻獣・魔物の目を使って怪訝そうに見るリヤン。

 どうやらシュタラは人間や魔族のみならず、その他の動物を創り出せる力があるらしい。

 だがしかし、召喚士サモナーとはまたベクトルが違う能力のようだった。

 召喚士サモナーは無から幻獣・魔物を創り出してけしかける魔術師。しかしシュタラの場合、生物は生物でも主に人間・魔族のように本来なら高い知能のある生き物を創り出している。

 戦闘メインならば幻獣・魔物の方が明らかに優れているだろう。そこがリヤンの疑問だった。

 となると、召喚士サモナー召喚士サモナーでも差違がある召喚士サモナーだろう。


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 リヤンの思考を横に、馬にまたがった兵士達が駆け出した。

 馬の速度は全速力で時速約60~80㎞。通常速度は時速40~50㎞である。

 先程の銃弾に比べれば圧倒的に遅く、フェンリルやブラックドッグの力を纏ったリヤンの方が圧倒的に速い。

 数の多さを除けばある程度は優位に戦えるだろう。


「……早く側近の所に行かなきゃ……!」


 そこまで思考をし、再び駆け出したリヤン。

 何よりも先ずはシュタラを倒す事が優先だからだ。

 むしろシュタラは、指揮官のように数万の兵士達に指示を出し的確な合図をしている事から指揮の能力も高いと見受けられる。

 そもそもシュタラの創り出した兵士達であり、武器などもシュタラが創り出しているのだが、やはりそれでも指揮能力が高いのだろう。

 戦況を左右するのは最強の個々では無く、一つ一つが小さくともそれらに的確な指示を出す指揮官である。


「リヤンちゃんが走った……。……じゃ、私も仕掛けよっか……!」


 空からリヤンの様子を眺めていたキュリテ。

 キュリテは目の前に迫り来る幻獣にまたがった兵士達を見、自分も動き出す。


「「やぁ!!」」


 そして陸地に居るリヤンと空中に居るキュリテは同じタイミングで同じような声を上げ、リヤンはイフリートの魔術で、キュリテは"パイロキネシス"で兵士達を迎え撃つ。

 リヤンが使ったイフリートの魔術はイフリートが得意とする炎魔術。それを駆けながら放ち、遠方の兵士達を焼き捨てる。

 本当の生き物ならリヤンも躊躇していたが、あの兵士達や馬はシュタラ創り出した魔力の塊。

 躊躇する意味が無いモノだった。

 そしてキュリテも、リヤンと似たような理由で竜のような両翼を持つ幻獣とそれにまたがった兵士達を発火させる。

 キュリテは熱の範囲を広げ過ぎ無いよう、兵士達と幻獣の身体から直接発火させたのだ。

 発火した兵士達と幻獣は燃え、焼けながら力無く落下した。


「やはり遠距離班も必要ですかね……」


 そしてシュタラは片手を上げ、後方で控えていた兵士達を前に出す。

 兵士達の武器は近接武器から銃や矢に変えられており、腰に剣を携えられていた。

 取り敢えず今は遠距離からの援護が重要と考えたのだろう。


「今です!」


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 シュタラの合図を受け、兵士達は一斉に銃や弓矢を放った。

 放たれた銃弾と矢は空気を切り裂き、二人目掛けて進む。


「次は銃弾と矢……」


 空から降り注ぐそれらを見るリヤン。

 リヤンは加速し、銃弾や矢の雨を掻い潜って進む。

 移動する際に、近付いていた馬に乗っている兵士達の下を潜る事によって銃や矢の雨を効率的にかわしているのだ。


「何とかしたいけど……此方も此方で大変なんだよねぇ……。ゴメン、リヤンちゃん」


 そんなリヤンを空から見るキュリテは目の前にまだ居る兵士達を一瞥し、リヤンに対して申し訳なさそうな表情だった。

 しかしリヤンならば余程の事が無ければ問題ないと目の前の敵に集中する。


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 そんなキュリテに向け、武器を振り回し幻獣の乗りながら攻撃を仕掛ける兵士達。

 その速度は時速数百キロといったところだろうか。


「はあ!」


 そして再び超能力を使い進行を阻止するキュリテ。

 今回使った超能力は"ヴォルトキネシス"。空気中の分子を振動させ、擦り合わせて電撃を創る。

 空中で感電した幻獣と兵士達は再び落下した。


「えい!」


 リヤンは馬に跨がる兵士をユニコーンの角のように硬質化させた腕で殴り付け、フェンリルやブラックドッグの力で吹き飛ばす。

 それだけで数人の兵士が馬から落下して進行が止まった。


「……まだまだですね……私の兵士達も……」


 そしてリヤンとキュリテの手によって減る兵士達を増やし、解き放つシュタラ。

 二人vs数万の軍隊の戦いは更に激しさを増して行く。

 魔術と超能力、物理的な力に化学兵器が飛び交う戦場。

 フォンセvsオターレドの戦いとリヤン&キュリテvsシュタラ達の戦いは大地を揺らし、辺りを大きく破壊して続いて行くのだった。

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