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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第九章 支配者の街“ラマーディ・アルド”
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百八十九話 三割

「オ────ラァッ!!」

「おおっ!」



 ──そしてライは、『第三宇宙速度で山を放り投げた』。



 ライによって投げ飛ばされた山は勢いを止めず、第三宇宙速度でシヴァに向かって直進する。


「ハッハー! 投擲とうてき速度もテメェの速さに比例するのか! じゃあその気になれば山や建物を光の速度で放る事も出来るって事か!!」


 シヴァはそれに伴った風を受けて髪を揺らしつつ、自分目掛けて直進する山に対し微動だにしていない。その前でただ片手を構えているだけだった。


「やっぱ普通の星じゃ一挙一動で崩壊しちまうな!」


 そして第三宇宙速度でやって来る山を砕いた。

 片手に軽く力を入れ、少し触れるだけで山を粉砕したのだ。

 しかし触れた瞬間に重い一撃を入れて山を粉砕した様子はライも見ていた。


「オ──」


 そして、山を砕いたシヴァの後ろにはライがおり、既に次の行動に入っていた。

 身体に力を入れ、足を後ろに下げ、蹴りを放つ体勢に入る。


「……ハッ、俺は破壊神って謂われているが、創造神でもあるんだぜ?」


「……?」


 唐突にシヴァが言い、ライが"?"を浮かべる。



 ──その刹那、『山が再生した』。



「……! な……!」


 シヴァは山の欠片を使い、新たな山を創造したのだ。

 その山はライを囲み、質量と大きさを増してゆく。そしてそのままライは為す統べ無く山に閉じ込められてしまった。

 ズズーンと音を立て、山は大地に佇む。山は動かず、自然の一部として早くも完全に馴染んでいるようだ。


「オラァ!」


 そしてその山は粉々に崩れ落ちる。

 山からライが飛び出し、山の土塊つちくれと共に勢いよく躍り出た。次いで地面に足を着け、ニヤリと笑ってシヴァを見るライ。


「ハハ、まさか山を再生させるとはな……確かにあり得た事だ。破壊神や創造神としての力を使わずに戦っていたから気付くのが遅かった……」


 シヴァの方を見、油断したと反省するライ。

 シヴァは"破壊神"・"創造神"・"天候神"と謂われている。

 しかし、一割、二割、三割と今までのライと戦っていた時は全て拳や足を使った平凡な技で戦っていた。

 それは様子見を兼ねて力を使わなかったからだろう。

 つまり、シヴァはまだまだ底を隠しているのだ。

 それはライにも当て嵌まる事だが、ライとは全力のベクトルが違う。

 シヴァの場合は全力を"出さない"であり、ライは全力を"出せない"のだ。


「そこんとこ気を付けないとな……」


 ライはそれだけ呟き、第三宇宙速度で再びシヴァの元に向かった。

 砂埃を巻き上げ、空気を突き抜けて加速するライ。

 ライは一瞬にしてシヴァとの距離を詰め、拳を放つ。


「ハッ、また拳か?」


 シヴァは横向きになってその拳を避け、目の前を横切るライの腹部に蹴りを──


「悪かったな!」


 ──当てる前にライが空気を蹴り、シヴァの蹴りを避ける。

 そのまま空中で回転し、シヴァの後ろに回り込んだ。

 シヴァの背後に移ったライは構え、次の攻撃を繰り出そうと、


「いいや、問題ない……!」


 する前に、一瞬でシヴァがライの方向を向いて蹴りを放つ。


「そうかい……」


 そしてその蹴りを難なく避けるライ。そのまま跳躍して距離を取り、シヴァと数百メートル程あける。ライとシヴァはどちらも数百メートル先で互いに睨み合い、


「「…………!!」」


 超速で加速した。

 ライは第三宇宙速度でシヴァに近寄り、シヴァはそれに等しい速度で駆ける。

 二人が動いた事で辺りは再び大きく荒れ、地盤沈下が起こった。

 それと同時に二人の姿は消え、一瞬にして幾つものクレーターが形成される。

 姿の見えぬ攻防は星を大きく振動させ、大地を沈めて大地を浮かす。

 そして浮かんだ大地、沈んだ大地全てが粉砕した。


「これならどうだ……!」


 何度か攻防を広げたライとシヴァ。

 ライは何かを思い付き、大地をその場で踏み砕いた。それによって大地は大きく浮き上がり、ライの前に一つの壁が造られる。


「……?」


 ライの行動を理解しがたい様子のシヴァ。

 ライはシヴァを気に掛けず、


「オラァ!!」


 その壁を勢いよく蹴り飛ばした。


「……ほう?」


 その破片は全てが第三宇宙速度で吹き飛び、鋭利な形となってシヴァへ向かう。

 その破片は木々に風穴を空け、回りの岩や山の土塊つちくれにも穴を空ける。


「数撃ちゃ当たるって寸法か? ハッハ! そりゃ無意味だ!!」


 そしてシヴァは一つの土を片手に握り、


「盾となる一つの壁を造ればそれも防げるんだよ!」


 壁を創造した。

 一つの土、その土に含まれる砂鉄──磁鉄鉱じてっこうの質量を増やし、巨躯で分厚い壁を創造したのだ。

 磁鉄鉱じてっこうの壁はライが飛ばした鋭利な土塊つちくれの破片を全て防ぎ、シヴァには破片の一つも食らわなかった。


「オラッ!!」

「そして背後に回り込み、死角を狙うって魂胆だな……」


 ライはそんなシヴァの背後に回り込んでおり、回し蹴りを放つ体勢となっている。

 しかし、シヴァはそれを読んでおり、足を軽く動かして裏拳の体勢に入った。


「「オラァ!!」」


 そしてライの回し蹴りとシヴァの裏拳がぶつかり、辺りを大きく破壊した。

 視界が無くなる程の土煙が舞い上がり、次の瞬間にその土煙が一気に晴れる。

 未だ漂う少しの煙。その場に二人の姿は無く、虚無のみが残っていた。


「「…………!!」」


 そしてまたもや山が崩れ落ちる。

 ライとシヴァが広げた攻防。それは僅か数分である。しかし、その程度の時間とは思えない程地形が変わっていた。

 それでも尚地形は変わり続け、大地が凹んでひしゃげ、浮き上がり、粉砕する。

 大地は半径数キロが空中に浮き上がり、それが粉々に砕け散る。

 流星のように飛び散るそれは空気を揺るがし、更に大きく爆裂した。


「オイオイ……気が付けば少し肌寒くなっているな……」


 そして暫くぶつかり合った後、ライは辺りを見渡して話す。

 辺りの空気は温暖気候から少しだけ肌寒くなっていた。


「……ん? ああ、そうだな。……まあ、結構な広さを誇っているこの星だが……その分寒暖の差も大きくなるんだよ。少し動くだけで暖かくなったり寒くなったりとな」


 曰く、この星では気候が頻繁に変わるらしい。

 広ければ逆に変わらなさそうなモノだが、そういう訳では無いようだ。


「へえ……。じゃあ、気候が変わったし俺も次の力に行こうかな……」


【お、良いぞ良いぞ! どんどん力を使って行け! 俺もまだまだ暴れ足りねェからな! 折角広い舞台があるのに使わねェのは勿体ねェ!!】


 ライは呟くように言い、それをライの中で聞いていた魔王(元)は嬉々としてライに話す。


「クク……良いじゃん。やれよ、早く最終段階の攻撃と戦いてェ!!」


 シヴァは仰々しく両手を広げ、牙を剥き出しにして笑う。

 ライは己の力を四割に引き上げた。



*****



 ──"沼地の星"。


「"豪雨(マタル・ガゼィール)"!!」


 その時、オターレドはフォンセに向けて雨を降らせた。

 いや、一つ訂正を加えよう、辺り一体に槍のような大雨を降らせたと。

 一つ一つの雨粒が空気を切り裂いて降り注ぎ、泥濘ぬかるみの沼地に穴を空ける。

 あちこちに感じていた生き物の気配は無くなっており、一部からは血の臭いが漂っていた。


「滅茶苦茶だな……環境を破壊している……沼地にと生物が居るだろうに……支配者の側近がそれで良いのか?」


 槍のような豪雨が降り注ぐ中、土魔術の傘を造って雨を凌ぐフォンセはオターレドに向けて言う。

 しかし土魔術の傘にも所々穴が空いてしまい、再生させるのにも少し時間が掛かっていた。


「ハンッ! 雨っていうのは恩恵をもたらすけどそれと同時に破壊ももたらすのよ! それが自然の摂理! この星の管理は主に私がしているわ! 増え過ぎた動物は悲しいけど環境を整える為に流さなきゃならないのよ! つまり、此処に居た動物の殆どが数を減らす対象なのよ!」


 曰く、オターレドは星の管理と同時に環境を整える為に動物の処分を任されていると言う。

 増え過ぎた生き物は時に破壊を招く。シヴァは星を創造するがその星を管理する為にも時に生物を消し去るらしい。


「……ふむ、よく分からないが……まるで神にでもなったようだな……いや、元々この星にとっては神そのモノか。創造者の側近だからな。どちからと言えば天使か? 取り敢えず、それがお前の使命のようなモノなのか」


 オターレドの言葉を聞き、考えながら話すフォンセ。

 オターレドのやっている事は生き物の選別。

 正義感の強い者なら反発しそうだが、オターレドが消し去っているのは悪魔で生態系に大きく影響しそうな生物。そしてその生物も大量に消している訳では無い。

 増え過ぎた最悪の場合を想定して消しているのである。

 そう、その生物が増え過ぎた場合にこの星その物を破滅させてしまわない為に。

 その事を理解しているフォンセは大きな反応は示さなかった。

 この星を創ったのがシヴァならば、シヴァが創らなければそもそもこの星の生物が生まれる事すらなかったからである。

 だからと言って消して良いのかはまた疑問に思うところだ。


「まあ、エゴと言えばエゴだが……その程度の雨じゃ私にダメージを与える事は出来ないぞ? 自分に当たらぬよう操作する事も出来ているがこのままじゃジリ貧だ」


「……!」


 刹那、フォンセは風魔術で加速し、オターレドの前に移動した。雨で視界が悪い中、フォンセはオターレド前にその姿を示す。


「"ファイア"!」

「……ッ!」


 そしてその瞬間、轟炎がオターレドを大きく包んだ。

 血肉を焼き尽くす轟炎は爆発的に広がり、槍のような雨を全て蒸発させた。


「……ッ、熱いじゃない!」


 自分を包み込んだ炎。それを普通の豪雨で消すオターレド。

 オターレドの身体からは煙が上っており、所々に火傷の痕があった。


「ふふ、お陰で雨が止んだな……槍のようは雨が降り続けていたのでは厄介だ……」


 天に手をかざし、雨が収まったのを確認したフォンセ。

 フォンセにはオターレドが降らせた槍のような雨による負傷は無く、そもそもダメージすら無い様子だった。


「……ふん! その余裕がいつまで持つかしら? 私の力は雨を降らせたり洪水を起こすだけじゃないんだからね!」


 オターレドはそれだけ言ってフォンセに向き直り、


「……成る程」


 フォンセの目の前から姿を消した。

 フォンセは特に驚かず、冷静にオターレドが何をしたのか理解する。


「……全く……頭が回る人が相手って嫌ね」


 そして、フォンセの背後に移動したオターレドが愚痴を言うようにフォンセへ話した。

 オターレドの回りには一筋の稲光がはしり、空気を軽く痺れさせる。


「ああ、お前が速く動く事が出来るってのは聞いたからな。そして前にもそんな奴と戦った事がある……まあ、それは私じゃなく私たちのリーダーだがな……」


 フォンセはオターレドの言葉に返した。

 前にもそのように、力を纏って戦闘を行う者と戦った事がある。

 戦ったのはフォンセでは無くライだが、その場にフォンセは居り、ライからも聞いていた。


「ゾフルね……あの馬鹿。けど、同じような力があるとは言ってもその差は歴然、私の方がより強い使い方を出来るわ!!」


 そんなフォンセに向け、オターレドは自信満々に話した。

 事実、普通の魔術と災害の魔術。その破壊力には大きな差があるのだ。


「……ほう……。……まあ、魔術を纏うゾフルと自然その物を纏うお前……似ても似つかない能力だな……だが、ゾフルよりも強いのは確かだ……」


 オターレドの言葉を聞いたフォンセは確かにと納得し、改めてオターレドに向き直る。


「速度は雷速、力や耐久力はよく分からないな……」


 そして呟き、魔力を両手に込めた。

 先程の雨によって沼地は更に動きにくくなっているが、魔術を使うフォンセにはあまり意味が無いだろう。


「"ウォーター"!」

「"洪水ファヤダーン"!」


 その瞬間、フォンセの水魔術とオターレドの洪水魔術がぶつかり合った。


「"ラアド"!!」

「……ッ!」


 そしてその時、雷速でフォンセの背後に回り込んだオターレドは雷魔術を放つ。

 フォンセは咄嗟に避けるがかすってしまい、一瞬にして身体全体へ雷が駆け巡る。

 それを受けたフォンセは片足を着いて前のめりに倒れる。が、何とか踏ん張っていた。

 雷というモノは、かするだけで死に至る事もある。

 沼地や先程の魔術のぶつかり合いで少し濡れているフォンセはより雷を通すのだ。


「アハハ! ようやくひざまずいたわね! 少し此処でこうやって……「"サンダー"!!」……ッ!!」


 フォンセをひざまずかせ、少し余裕の態度を示していたオターレド。

 そんなオターレドへ雷魔術を放って返すフォンセ。


「……少し此処でこうやって……何だ? 聞こえなかったが」


「……ッ! 生意気!」


 刹那、フォンセとオターレドは再び魔術を放ってぶつけ合う。

 フォンセが放ったのは風魔術。オターレドが放ったのは洪水魔術。そんな二つの魔術はぶつかり合い、沼地の水と泥を吹き飛ばす。


「"アーセファ"!!」

「"土の壁(ランド・ウォール)"!!」


 そして次に嵐を放ち、フォンセは壁でそれを防ぐ。

 沼地は大きく荒れ果て、泥を大きく巻き上げる。

 それでも尚二人の攻防は続き、沼地が既に更地となりつつあった。

 四割を解放したライとベクトルが違う二つの魔術をぶつけ合うフォンセとオターレド。

 徐々にあちこちの惑星で戦闘が始まって行く。

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