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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第九章 支配者の街“ラマーディ・アルド”
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百八十五話 舞台1

 ──"シヴァが創り上げた星"。


「……ん? アレ? そういやレイたちは何処だ?」


 "ラマーディ・アルド"にあったシヴァの住む建物から移動したライとシヴァ。

 いざ戦い始めようとした時、ライは唐突にレイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテとシュタラ、ズハル、ウラヌス、オターレドの存在が居なくなっている事に気付いた。


「ん? ああ、そういや言ってなかったな……補足ついでに説明してやろう」


 ライの言葉を聞き、シヴァはレイたちとシュタラ達がいない理由を話してくれるらしい。


「へえ……随分とまあご親切に……」


 その事に対して笑いながら話すライ。

 しかし実際、わざわざ説明をするというのはご苦労なモノだろう。


「ハッハ! 当たり前だ。……例えば俺が教えなかったとしてよ、"それが気になって力を込める事が出来ませんでした"……ってのはナシにしたいからな。……そうだな……仲間の安否……とかのような戦いに支障をきたしそうな事は教えてやるよ。取り敢えずそのくらいだ」


「ふぅん。……じゃ、早速教えて貰おうか? レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの五人は何処だ?」


 シヴァの話を聞き、納得した様子のライは改めてシヴァへ尋ねた。

 シヴァはクッと喉を鳴らして笑い、言葉を続ける。


「じゃ早速……先ず、無論の事テメェの仲間は全員生きている。で、その居場所は此処とは環境が違う星だ。それも俺が創った星だが……それは別に良いとしよう。要するにテメェの仲間達はランダムで俺の側近が待つ星へ送られた」


「へえ……」


 始めにシヴァが話したのはレイたち五人の安否。

 レイたちは全員が無事らしく、バラバラでシヴァの創った星に居ると言う。


「……で、詳しいルールってのもあって……いや、ルールって訳じゃねェな……まあそれはさておき……俺が創った星に送られた俺の側近。そいつらがテメェの仲間と戦闘を行う。基本は一対一だが……テメェの仲間の方が俺たちより少し多い……だから何処かでは二対一になるだろうな」


「……?」


 シヴァは淡々と説明を続ける。が、ライはシヴァの言い回しに違和感を覚えた。

 その事を気に掛けたライは説明を続けるシヴァに向けて問うた。


「『何処かでは』……って……俺の仲間たちが何処で戦っているのか分からないのか?」


「あん?」


 ライが気に掛かった事。それはシヴァの言った言葉──"基本一対一だが何処かでは二対一"。という事は、シヴァはレイたちが何処で戦っているのか知らないという事になるからだ。

 シヴァの口振りから、もう既にレイたち五人も各々(それぞれ)の惑星に送られている筈。

 しかし、シヴァは誰がどの星へ送られたのか分からない様子だった。


「…………。クク、そう言う事か……」


 少し黙り込んだシヴァは、暖かな風に煽られ髪を揺らしながら直ぐ様クッと笑い直し、呟くように言葉を発する。そしてそのまま言葉を続けた。


「ああ、俺はテメェの仲間と俺の側近が何処に行ったか分からねェ。俺が創った万を軽く越える星……そのどれかに居るってのは確実だがな……。まあ、完全にランダムで送ったんだよ。それに、バラバラに送ったけどちゃんと出会えるような配慮はしておいたし一人だけが一つの星に送られるって事は無い。だけど俺が理解している訳でもない。そこんとこ夜露死苦」


 曰く、シヴァの側近とライの仲間。この九人が出会わなくて終わるという事は無いと言う。

 出会わずに終わるというのは、バラバラに送られたが故に全員が全員別の星へ行ったという訳じゃないとの事。

 必ずライの仲間とシヴァの側近は出会い、戦闘を行う事が出来るらしい。


「後は……環境で死ぬ事は無いってのを詳しくだが、一応人間やヴァンパイアでも暮らせる環境の星だからな。大きな災害の有無はあるが、基本的な基盤は俺たちの生活している本来の星と違いは無い」


 ライの質問に答えるシヴァは、レイたちが行ったであろう星は空気があり、暑過ぎず寒過ぎないので環境によって死ぬ事は無いと言い放った。

 人間や魔族といった生き物が生活するに置いて、重要なのは"空気"と"適温"。

 それらが無ければ容易く死に至る。人間・魔族・幻獣・魔物は脆く、儚い生き物だ。

 本来の世界に住むそれらは、この世界が一番過ごしやすくリスクが少ない世界であろう。

 しかし、その世界が存在する為には適切な位置に適切な惑星が並ばなければならなかったりする。

 しかし、シヴァはそんな事を気にせずに生物が暮らせる星を創ったのだからその力は凄まじいモノ。

 もう既にシヴァの強さは理解しているライだったが、"底無し"という表現がピッタリ当て嵌まるシヴァに対して生じた冷や汗が頬を伝った。


「ご説明ありがとさん……じゃあ、俺たちが居るだだっ広いこの惑星……十分堪能してやろうじゃねえかよ……支配者さん……」


「ハッハ! 鼻っからそのつもりだ侵略者ァ! 空間を移動する時によ……何の為にテメェを俺の目の前に移したと思ってやがる! 狭過ぎる惑星から脱出したこの世界で存分に暴れる為だろ!」


 説明を聞き終えたライは再び警戒を極限まで高め、魔王の力を纏いつつシヴァに話す。

 それに返すシヴァは全力で戦う為にこの舞台を用意したと言い、身体の力を高める。

 そしてこの時、ライvsシヴァの再戦が行われようとしていた。



*****



 ──"???"。


「……此処は……」


 ヒュウ。と冷たい風がレイの頬を撫で、そのまま上空へ吹き抜けた。

 レイも辺りを見渡し、此処が何処なのかを考える。

 辺りに生物の気配は無く、シンと静まり返っている場所。

 冷え込む静かな空間で、レイは少しもの寂しさを感じていた。

 その肌に感じる冷たい空気から秋、もしくは"ラマーディ・アルド"と同じく冬の気候だという事が窺える。

 冬は冬でも、ほんのりと感じる日差しの暖かさは春のモノか、秋ならば残暑の名残なごりか、何はともあれ寒い空間の中にも確かな暖かさがあった。


「何処だろう……」


 この場所の空気を感じるレイは辺りを見続け、何かしらのモノを見る。

 先ず自分の周りは草原のように背丈の短い草が生えており、高い木は無い。

 しかし少し遠くを見れば森のような場所があり、多くの木々が生い茂っていた。

 山や海は無いが、何処からか水の気配を感じる。恐らく森の奥で湖か河川が流れているのだろう。


「……」


 改めて辺りの気配に集中する。

 どういう訳でこの場所に移動しかのか分からないが、昨日シュタラから聞いた言葉からするにシヴァの手によって移動させられたのは推測出来る。

 これが舞台というやつで、戦闘を行う場所となるのだろう。

 なのでレイは辺りに集中し、敵を探しているのだ。


「居ない……訳無いよね……?」


 しかし、幾ら気配に集中しても生物の気配を感じない。

 一旦集中を切らし、ふと辺りを見渡した──その刹那、


「……!?」


 何処からともなく、レイの足元で"地割れ"が起こった。

 レイはそれを見て地割れの軌道とは逆の方向に飛び退いて避ける。地割れは地面を大きく抉り、遠方を破壊したのが分かる。

 それを確認したレイ直ぐ様立ち上がり、地割れが来た方向を見やった。


「森……彼処あそこから……?」


 そして、その地割れを見ると、地割れは森から繋がっていた。

 つまり、森に居る何者かがこの地割れを起こしてレイに攻撃を仕掛けたという事。


「あー……あの人か……」


 そして、レイが思うに地割れのような技を使う者は一名に絞られていた。

 その者はレイがの記憶にある限りかなりの強敵だ。

 その者を一人で倒せるかどうか危うい。


「……」


 レイは少し黙り込み、胸に握り締めた手を当てて森の方を確認した。

 それと同時に冷たい風が吹き、レイの髪の毛を揺らす。


「……」


 そしてレイは軽く走り、その森へ向かって行く。



*****



 ──"???"。


「……ふむ……」


 ザァ。と風が吹き、周りの木々を揺らす。

 辺りは暗く、闇を生きるヴァンパイアのエマで無ければ視界が見えにくいだろう。

 木々に囲まれた森のような場所。ライたちと始めて出会った森を彷彿とさせた。

 空からは朧気おぼろげな月が覗き、草木がざわめく。

 そしてその月を囲っていた雲が風に流され、月光が辺りに降り注ぐ。

 その光によって、常人でも視界を確保できそうな明るさへと変化した。

 雲が晴れた事によって満天の星空がエマの紅い目に映し出され、月と星のパレードが始まったと錯覚する程。

 無論、辺りは静かな場所でありパレードなど行われていない。


「此処は……ふむ。……さしずめ支配者が創り上げた場所か……ゲーム盤……惑星……まあそのどれかだな……」


 適当な木に触れ、その感触を確かめるエマ。

 シヴァが創った空間という事は理解したが、この空間に存在する物はエマが知る物なのかを確かめようとしているのだ。


「……」


 そしてエマはその木の枝を一本折り、自分に近付けた。

 上下左右。あらゆる方向から枝を見、少し経ったら木と枝をくっ付けて歩き出す。

 因みに、くっ付けた枝というのは再生させた訳では無く、半ば無理矢理に嵌め込んだのである。


「木は本物……土も岩も草も……全て私が知る自然物だ……」


 ある程度確認を終えたエマは適当な岩に腰掛け、この空間にある物質が自分たちの居た場所と同じという事を確認した。

 つまり、環境が似ている場所という事である。


「この星空は私たちの世界のモノじゃないな……つまりシヴァは私たち? を別の宇宙へ放り出したという事か……」


 満天の星空を眺め、あらゆる世界を見たエマは自分の星とは違う星と推測した。

 どんな場所からも見える星などもあったのだが、この場所からはそれが見えないのだ。

 私たち? と、疑問を浮かべた理由は自分以外が他の空間に移されたのか知らないからである。


「これが例の舞台とやらか……」


 思考を続けるエマはシュタラの言葉を思い出し、この場所がシヴァの手によって招かれた舞台と推測した。

 その証拠に視界に映る星の位置やエマが居る現在の場所。その他諸々の相違点などが挙げられる。


「ああそうさ。此処は支配者さんが用意した舞台。そして同じく此処に送られた俺がアンタの相手って事だ」


「……!」


 そして、思考を続けていたエマに向けて話し掛ける者が一人。

 その者は木の上におり、風に髪をなびかせながらエマの方を見ていた。


「成る程。貴様がこの場所に配置された側近という事か」


 その声を影を見、エマは木の上へ視線を移して話す。

 木の上に居た者は笑ったような動きを見せ、立ち上がった。


「……」


 そしてそれと同時に木から飛び降り、スタッと着地して辺りに砂埃を上げながらエマの前に躍り出る。


「その通り……俺が配置されたウラヌスだ。名前と容姿は知ってるよな? 昨日今日で忘れる程バカそうじゃないし……むしろ知識が豊富で博識……頭の良い部類に入る生物だと思うな、俺は」


 木からエマを見下ろしており、飛び降りた者──ウラヌス。

 ライたちがこの街で上着を購入した時、店の外に出た瞬間襲い掛かってきたならず者である。

 いや、支配者の側近なのでならず者という言葉には少し語弊ごへいがある。

 しかし、襲ってきたのは事実なのでならず者という事で良いだろう。


「ふむ……確か最初の戦いには参加していなかったな……貴様ならみずから志願していそうなモノだが……」


 そんなウラヌスを一瞥したエマは、ウラヌスが昨日の戦いに参加しなかった事が気に掛かっていた。

 とはいえ、別に気にする必要も無い事だというのは勿論エマ自身も理解している。


「ああ、それねぇ……何でも、参加した支配者さん以外の二人が……"ウラヌス、テメェは一度戦っているんだから今回は俺たちに譲れ"……って言って聞かなくてな……だから傍観ぼうかんを決めさせて貰った次第よ……」


 ポリポリと頭を掻きながら、軽い欠伸あくびをして話すウラヌス。

 欠伸あくびというのは、主に眠い時か退屈な時にするらしい。

 別に眠くなさそうなウラヌスが欠伸あくびをしたという事は、一々説明するのが面倒なのだろう。


「ふふ、退屈させてしまったかな? いや、説明をしたくないだけか。……悪く思わないでくれ。私も色々あって聞きたい事が多いんだ……」


 そんなウラヌスを見たエマは、悪戯っぽく笑ってウラヌスに話す。

 ウラヌスは参加したかったらしいが、ズハルとオターレドによって参加をやめさせられたらしい。

 なんともまあ、残念な事である。


「ああ、退屈したよ……折角やっと戦えるってのに長話に付き合わされているんだ。気も滅入るってもんよ……」


 エマ言葉を聞き、依然として退屈そうに頭を掻きながら話すウラヌス。

 面倒臭そうにしているが、いつぞやのダークとは面倒臭いのベクトルが違っていた。

 ダークの場合は戦闘を含めた意味の面倒臭いだが、ウラヌスの場合は戦闘を行えないのが嫌だ。という事である。


「フッ、そうか。しかし妙だな……貴様と会話を始めてから、私が言った言葉は今言っている言葉を含めず49文と65文……計114文の二言だけなのだが……それすら長話に感じたか?」


 ウラヌスの愚痴を聞き、三桁前半の短い文。それだけなのにそこまで面倒臭がるのかと告げるエマ。

 エマは悪戯っぽい笑みを消さずに話していた。


「オイオイ……"成る程。貴様がこの場所に配置された側近という事か"……の30文が抜けてるぜ? 計144文だ」


 そしてそんなエマが茶化すように言った言葉に返すウラヌス。

 細かい事を気にする性格なのだろうか。


「ふふ、そうだったか。すまないな」


 それを聞いたエマはおっと失敬と笑い、言葉を続ける。


「まあ、確かに少し要らぬ事を話してしまったな……少し反省しよう。では、さっさと始めようじゃないか……」


 ザァ。エマの言葉に共鳴するように風が吹き抜けた。

 それによって宵闇に包まれた草木は揺れ、月に雲が被さって朧月おぼろづきと化す。

 月の光が遮断され、空を更に雲が覆って星を飲み込んだ。

 淡い光が、風でなびくエマの金髪を光らせ、血液よりも紅い目を光らせる。


「ハッハ……さっさと始めようってアンタが質問をしたんじゃないか……けど、始めてくれるならありがたい。昨日の戦いではほぼ圧倒されたから消化不良だったんだよ……」


 エマの動きを見、ウラヌスも構えを取る。

 それによって周りの空気が変化し、熱かったり冷たかったり、重かったり軽かったりとあらゆる空気へと体現した。

 この瞬間、シヴァの手によって送られたがエマはウラヌスと出会い、戦闘を行う体勢に入った。

 別の星を行くレイも直ぐに刺客となる側近に出会うだろう。

 先ずはエマが側近の一人と出会い、戦闘を行う事となりそうな状況に陥る。

 そしてレイも側近の元へ向かい進む。

 こちらの二人の戦闘ゲームが、今始まった。

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