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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第九章 支配者の街“ラマーディ・アルド”
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百七十八話 災害の魔術

 ──"ラマーディ・アルド"・市街地。


「オラァ!!」

「ハッ、その程度か!?」


 ライとシヴァの拳がぶつかり合い、それによって生じた衝撃は街全体に伝わる。

 それと同時に粉塵を巻き上げながら建物を粉砕して打ち砕く。


「……まだだッ! (魔王!! 六割纏う!!)」


【ハッハー!! 任せとけ!!】


 ライは己の力を五割から六割に引き上げ、更に力を得た。

 ライが纏っていた先程までの力は五割、そして『五割の全力』である。

 つまり、六割はまだ使っていなかったのだ。


「……オラァ!!」

「……速い……!」


 そしてライは、第六宇宙速度──光の速度でシヴァのふところを殴り付けた。

 第五宇宙速度(秒速1000㎞)から第六宇宙速度(秒速30万㎞)の急激な変化により反応できなかったシヴァは光の速度で放たれた拳を受け、『初めて吐血した』。


「……お、やっと入ったな……」


「……ハッ、久々に痛かったぜ侵略者……! だが、だからこそ面白い!!」


 ライはシヴァへの手応えを感じ、シヴァはダメージを受けた事に喜びながら口元の血を拭った。

 シヴァは魔族だがマゾという訳では無く、純粋に自分へダメージを与える事の出来る存在が居たという事を実感できたのが嬉しいのだろう。


「……ってか、いつの間にか街に戻って来ちゃってるな……良いのか?」


 そして、戦いに集中していたので"ラマーディ・アルド"の街まで戻って来ている事に気付かなかったライは、建物の上から辺りを見渡してシヴァに言う。

 シヴァも建物の上から辺りを軽く一瞥し、


「そういやそうだな。……ま、良いんじゃねェの?」


 適当に返した。

 実際、既に街は地割れが起きていたり建物が崩れていたりでボロボロだ。

 なので、今更街の心配をしても意味が無いのだろう。

 しかし自分が生活している街なのに無関心なのはどうかと思う──


「……へえ? ……ま、確かにこの有り様じゃ街の心配をする暇も無いな……」


 ──訳も無く、そんなシヴァの言葉に軽く返すライ。

 ライとシヴァ。互いの態度は軽く、今は目の前の敵にしか興味が無い様子だった。


「……取り敢えず、一応教えておくとして、今のは俺の六割だ。五割から六割の変化はアンタが今さっき実感したようにとてつもないぜ?」


 そしてライはシヴァに向け、自分の力を六割使ったと告げる。

 それを聞いたシヴァはクッと笑い、獰猛に牙を剥き出しで話した。


「ハッ! 今のが六割か!? そいつは良い! つまり、テメェはあと凄まじい変化を四段階残しているって事だろ!!」


 シヴァが笑った理由、それは現在使ったライの力が六割なら、七割、八割、九割、そして全力。と、シヴァにとって対等レベルで戦える力を隠していると分かったからだ。


「ハッハッハ! 実を言うとだな、ぶっちゃけ俺はテメェら侵略者を軽く侮っていた! 精々俺の足元……いや、爪先つまさきレベルの力があれば良いとな! だが、現実は違った! 勿論良い意味でだ! これ程の力を隠して持っているなら、俺もそれなりの態度で示さなきゃならねェよなァ!!」


 シヴァは歓喜に震えて叫び、ライに向けて話す。

 それを見たライもクッと笑い、言葉を続ける。


「ハハ、力を六割使ってようやくアンタもその気になったか……」


 ライが六割を使った時、その速度から一挙一動で大陸一つが海に沈む。

 最悪、この星そのものがライの移動によって砕けるだろう。

 もしかしたらライその者がブラックホールになってしまうかもしれない。

 しかし、シヴァにとってはそれ程の力がようやくスタートラインなのだ。

 呆れ半分で感心するライに向け、シヴァは言葉を続けて言う。


「まあ、三割は使ってやろうかな?」

「喜んで……!」


 シヴァが三割の本気を出すと言い、ライは笑みを浮かべながら即答で返す。

 そして二人は向き直り、互いに力を込める。



*****



「……ウソ……あの子……支配者さんと互角で渡り合っている……?」


「……いや、流石にシヴァさんが一枚上手だ……が、まだどっちも本気を出していねえ……」


 そして此方ではシヴァの側近二人、オターレドとズハルがライの様子を見て驚愕していた。

 確かに傍から見れば支配者と互角に渡り合っているように見えるだろう。

 その事実だけで支配者の側近は驚愕するのはおかしくない。

 何故なら、支配者という存在はそれ程絶対的な力だからだ。

 そんな者と互角に戦っている──ように見える少年が現れれば誰だって驚愕する。


「確かに俺たち側近じゃ侵略者のリーダーに勝てる訳無いな……」


「ええ、悔しいけどね……」


 そしてズハルは自分がライに勝てないと悟ってため息を吐く。

 それに同意するように返すオターレド。


「……あの人が支配者……」

「……何て力と……気配……威圧を持っているんだ……」

「……私は侵略者と戦ったら死ぬかもな……不死身が不死を無効にする者以外に負けるとは……お笑いだな……」

「…………」

「やっぱり……支配者さんは凄いな……」


 対するレイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの五人。

 五人はレイ、フォンセ、エマ、リヤン、キュリテの順で言い、支配者──シヴァの強さを犇々(ひしひし)と感じていた。


「「……まあ、今は……」」


 そして、エマとズハルが同時に呟くよう一言。


「「むこうが先決だな……」」


 刹那、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテとズハル、オターレドは駆け出した。


「纏めて砕けろ!! "震動ハザ・オーリア"!!」


 そしてズハルは大地に手を当て、そのまま震動させてレイたちに向け衝撃波を放つ。

 その衝撃は街の建物を粉砕して突き進み、地割れを造り出しながら瓦礫を巻き上げて直進する。


「何度も食らうか! "浮遊風(フロート・ウィンド)"!」


 それを確認したフォンセが風魔術を使い、レイ、エマ、リヤンを浮かせた。

 キュリテも空中浮遊で空におり、ズハルの衝撃を避けていた。


「これは……なぜ私たちも?」


 そして、空に居るエマは訝しげな表情をしながらフォンセへ尋ねた。

 リヤンも困惑したような表情をしており、フォンセはエマとリヤンを一瞥して説明する。


「……あの側近……ズハル……。奴が操るのは震動や土魔術で、地面に着いている限り全てを破壊出来るらしい」


「……成る程。だから空に避難して衝撃波を避けたって事か……」

「……へえ」


 フォンセの説明に頷くエマ。リヤンも納得したように頷いていた。

 ズハルの衝撃波はフォンセたちに当たらず、フォンセたちの背後にあった建物を崩した。

 そして崩れた建物により、その木材や煉瓦レンガが粉微塵になって辺りに広がる。


「ふん! 空にも逃げ場は無いわよ!」


 そして、そんな風に視界の悪い中一つの水で出来た球体が空に居るレイたちへ向かっていた。


「逃げないよ……!」


 水の球体へイフリートの魔術を放ち、それを砕くのはリヤン。

 砕かれた水の球体は光を反射し、キラキラと輝きながら散ってゆく。


「……ッ! こうもあっさりと……!」


 オターレドはリヤンに防がれた事へ悪態を吐いて返す。

 本人の負けず嫌いな性格から、己の技が容易く防がれるのは納得し難いのだろう。


「か、簡単だよ……!」


 そんなオターレドへ向けて不慣れながらも挑発するように声を張るリヤン。

 普段は大声を出さない控え目な性格のリヤンだが、取り敢えず挑発という事にチャレンジしてみたのだろう。


「言ってくれるわね……! あまり舐めないで頂戴!!」


 負けず嫌いなオターレドはリヤンの挑発にあっさりと乗り、両手に魔力を込めて体勢を整えた。


「貴女達に水害の恐怖を教えてあげるわ!! "洪水ファヤダーン"!!」


 刹那、オターレドの言葉と同時にオターレドの両手から大量の水が放出された。

 その水はただの水魔術とは違い、少し茶色く濁り、中には瓦礫や木々の残骸があった。

 それを受けたら最後、身体は瓦礫や木々にズダズダにされてグチャグチャになるだろう。

 その水の色から、仮に助かっても傷口から細菌が入って壊死する可能性が高い。


「ハッ、じゃあ俺も少しだけ本気を出すか……"地震ゼルザール"!!」


 オターレドが洪水を放出したのを見たズハルは大地を大きく震動させ、ゴゴゴゴと地殻の動く音が辺りに響く。

 大地は再び地割れを起こし、遠方から悲鳴のような声が聞こえた。


「洪水に地震……やはりアイツらが使うのは災害系の魔術か……!」


 水と震動、二つの衝撃が具現化してレイたちに向かう。

 レイたち五人はそれを避け、そのうちフォンセはズハルとオターレドが災害魔術を使うという事に気付く。いや、薄々気付いていた事が確信へ変わった。というのが正しいだろう。


「災害魔術……四大エレメントの殺傷力や範囲を広げた種類の魔術か……」


 災害とは、天災──つまり天から与えられた災いである。

 それによって人間の国、魔族の国、幻獣の国、魔物の国問わずあらゆる生物が死に至っている。

 それらを物理的に生み出す技が災害魔術なのだ。


「形の無い災害を防ぐのは厄介だな……洪水なら塞き止める事が出来るが、地震となると……」


「「「……うん……」」」

「……ああ」


 フォンセはそれを見て言い、レイ、エマ、リヤン、キュリテも頷いて返す。


「ハッハッハ! 止めてみろ!」

「これもね!!」


 そしてズハルとオターレドは再びレイたちに向けて災害系の魔術を放出しようとする──



 ──その瞬間、



「「オラァ!!」」


「「「…………ッ!?」」」

「「…………!」」


「「…………!?」」


 ライとシヴァの拳がぶつかり、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテ、ズハル、オターレドを、『災害の魔術ごと吹き飛ばした』。

 レイ、リヤン、キュリテとズハル、オターレドはそれなりに大きな反応を示し、エマとフォンセは他の四人よりは軽い反応を示す。

 地震魔術と洪水魔術は消散し、辺りには瓦礫だけが残る。

 その衝撃によって飛んだ七人は瓦礫の山や、まだ形が残っている建物に激突しつつ、それらを粉砕して勢いが止まる。


「……あ、悪い! レイ、エマ、リヤン、フォンセ、リヤン、キュリテ! 注意してなかった!」


「あ、大丈夫か? ズハルにオターレドー?」


 その衝撃を放った二人はレイたちとズハル達に気付き、互いが互いの仲間に謝った。


「あ、ああ……何とかな……大丈夫だ、ライ」


「俺たちも無事です、シヴァさん」


 ライとシヴァに返すのはエマとズハル。互いのメンバーで比較的耐久力が高い二人だ。


「「そうか、無事か、良かった」」


 ライとシヴァは仲間の無事を確認して言い、


「ほらっ!!」

「そらっ!!」


 再び激突した。

 ライとシヴァは再び衝撃を放ち、その衝撃は千里を駆けて星を揺らす。

 ライは光の速度で仕掛け、シヴァは速度ではなく破壊神たる力を使っていた。

 "ラマーディ・アルド"の街は他の街に比べたら広いのだが、既に半径数十キロが原型を留めておらず瓦礫の山と化していた。


「なあ、少し思ったんだが……互いに力を温存した状態だと永遠に決着がつかないような気がするんだよなァ……」


「……?」


 そして、ふとシヴァはライに向けてそう言った。

 シヴァから発せられた突然の言葉にライは首を傾げて"?"を浮かべる。

 そんなライを見、シヴァは言葉を続けて説明する。


「つまり、だ。もう力を隠すのは止めようって思うって事だな。テメェの今出せる全力を見てみたい」


「……へえ?」


 シヴァは建物の瓦礫の上で両手を広げ、ライに向けて不敵な笑みを浮かべながら告げた。

 つまり、ようやくシヴァの本気が見れるかもしれないという事である。


「ああいや、だがテメェには一つルールを与えよう……こうでもしなきゃ『俺が圧勝してしまう』からな?」


 しかし、シヴァは少し本気を出すに当たって一つのルールを設けるらしい。

 それを聞いたライは片眉をピクリと動かして反応する。


「……ルール?」


 シヴァが言った──"ルール"。ルールとは戦闘を行う際にやり過ぎ無いよう注意をする事。

 シヴァは軽薄な笑みと態度で言葉を続ける。


「ああ、ルールだ。テメェは侵略者だが魔族らしいな? 魔神として、支配者として魔族の若者に指導教育を施すのも役目ってもんよ!」


「……ふぅん?」


 どういう訳かシヴァはライを指導したいらしい。

 しかし、支配者である自分と対等に成りうる可能性がある若者を見れば、退屈によって殺されそうになっていたシヴァからすれば嬉しく指導をしたくなるのだろう。

 そして、シヴァは自分が考えたルールをライに言った。


「ルールは単純、"テメェが本気の俺に一撃でも攻撃を当てる事が出来たら勝ち"だ。分かりやすいだろ?」


「成る程な……」


 シヴァが提案したルール、それはシヴァに一撃入れれば良いとの事。完全にライを下に見ている故のルールだった。

 そのルールを聞き、ライはフッと笑って返す。


「……じゃあ……『俺が一撃でアンタを仕留めれば良い』んだな?」


「……ほう?」


 支配者であるシヴァに対し、挑戦するような言い分。

 ライの言葉を聞いたシヴァは喉を鳴らしてクッと笑い、体勢を整える。


「……じゃあ、やってみようじゃねェか……侵略者!」


「良いぜ……俺の力を見せてやるよ……!」


 シヴァは構え、ライは魔王の力を七割纏った。

 全力と言ったが、今現在ライが出せる全力は七割である。

 しかし、そんな七割の力でもどんな武器も通さないレヴィアタンの身体をバラバラにする事が出来る。



 魔神の持つ、少しの本気と魔王の七割。今、その力が激突しようとしていた。



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