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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第九章 支配者の街“ラマーディ・アルド”
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百七十三話 互いの行動

 ──"ラマーディ・アルド"・巨大な建物。


 この建物は高い位置にあり、街全体を見渡せる。そんな建物に支配者を含めず、五人の影があった。


「……で、どうでした? まんまと負けたみたいですが……「俺的には楽しみが増えて良いんだけどな?」───様、少しお静かに」


「俺ってこんな扱い? 一応全魔族の支配者だぞ……」


 支配者の側近一人が一人の側近──ウラヌスに問いただす。

 支配者的にはその方が嬉しいらしいが、側近の手によって阻まれてしまった。


「まあまあ……いや、かなりの実力者だったな。ダークにシャドウ、ブラックという幹部の最高峰の奴らを倒した実力は確かみたいだ。取り敢えずまだまだ力を隠していたみたいだったし、俺たちが全力の本気で束になって掛かっても精々五体満足じゃ済まない程度のダメージしか与えられないだろうさ」


 そんな支配者を無視し、尋ねた側近に向けて話すウラヌス。

 ウラヌスはライを評価しており、側近だけでは束になっても勝てないと言う。


「そうですか。私は勝てると思っていましたが……ウラヌスさん。貴方はどれ程の力を使いましたか?」


 ウラヌスの言葉に対し、一番支配者の側に居る側近が話す。

 ウラヌスは全力を出していない。その事を理解しているので問うたのだ。


「そうだな……三、四割くらいだ。……で、侵略者は恐らく一割程度……。ハハ、力の差は歴然って奴だな……」


 そして、ウラヌスは半分以下の力を使ったと自嘲するように笑いながら告げる。

 実際その通りで、つまりは魔王ライの一割とウラヌスの三、四割はほとんど同じであるという事が分かる。

 つまりウラヌスが全力を出した場合、魔族の国で幹部を勤めるダークレベルの強さがあるという事だ。


「成る程。それはキツいな……他の者達はまだしも、相手のリーダー一人で壊滅し兼ねない……」


 それを聞いた別の側近は腕を組んで呟く。

 魔族の国の幹部というものは、支配者には劣るが魔族の中でも最優秀の部類に入る。

 支配者の側近達も最優秀の部類に入っているだろうが、それを越える逸材が侵略に来ているのだ。楽は出来ないだろう。


「ハッハッハ! まあ、そん時はそん時だ! 安心しろ! この国には俺が居る。魔神と呼ばれて現在支配者を勤めている俺がな! ちょっとやそっとじゃこの国が落 ちる事は無ェさ!」


「……───様……」

「───さん……」

「流石、頼りになるわね……」

「まあ、俺たちもそうそう落ちる訳にはいか無いけどな……」


 不安そうな会話をする側近達に向け、笑みを浮かべながら一蹴いっしゅうするように話す支配者。

 支配者は己の力に自信を持っているのでこのような事を言うのだが、部下達の不安は絶対的な安心によって払われる事だろう。


「……そして俺に考えがある。テメェら、心して聞くがいい!」


「「…………?」」

「「…………?」」


 冷え込む中、支配者とその側近達は会話を続けていた。



*****



 ──"ラマーディ・アルド"・カフェ。


 支配者の側近というウラヌスを撃退したライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの六人は、取り敢えずカフェのような店に居た。理由は単純明快、シンプルに姿を隠す為。

 幸い、あの場に居た住人はライの事をよく見ておらず、カフェの店員もライを見る事が出来なかっただろうからだ。


「いやぁ……まさか側近がわざわざやって来てくれるとはなぁ……。まあ、お陰で情報も少し集まったけど……本当に少しだけどな……」


 そんな場所で、まず始めにライが話す。

 少しだけ集まった情報というのは所謂いわゆる相手の強さだ。

 つまり少し本気を出した側近の力が魔王を一割纏ったライと同等という事は、全力なら魔王の力が三、四割くらい必要になるという事である。


「ふふ、どのような情報でも0よりはマシだろう。むしろ支配者が此方の存在に気付いている事実で、私たちが躊躇ちゅうちょする必要は無くなったという事だ」


 そんなライに向け、軽く笑いながら話すエマ。

 エマの考えている事は、彼方あちらが仕掛けてきた事によって迷い無く攻め込む事が出来るという事。


「ああ、その通りだな。これで俺たちも行動を起こしやすくなった」


 そんなエマの言葉に賛同するライ。

 闇雲に暴れ回るという事では無いが、取り敢えずライたちが攻める時には心置き無くやれるだろう。

 何故なら、向こうは既にライたちへ攻撃を仕掛けたのだから。

 要するに相手側から放たれた一種の宣戦布告である。


「しかし、行動するにしてもどうするんだ? 支配者側は私たちの顔は知らないにしても、恐らくライの顔はウラヌスとやらが報告しているだろうし……」


 ライの言葉を聞きつつ、眉をひそめて話すフォンセ。

 ウラヌスは負けを認めて帰った。つまり、(イコール)支配者達へ報告しに向かったと言う事。

 レイたちの顔は一瞬で気付かれていないだろうが、直接拳を交えたライはそういう訳にもいかないだろう。


「それに、キュリテが居るから私たちが侵略者ってバレちゃうんじゃないの?」


 フォンセに続くような形で話すのはレイ。

 幹部の側近であるキュリテは、良くも悪くも顔バレしている事だろう。


「うん、私も同感ー。だって割りとコミュニティは広いから……ねー♪」


 そんな言葉に対して笑いながら自分には知り合いが多いと告げるキュリテ。

 己のコミュニティを広げるのは悪い事では無いが、やはり行動するに当たって中々不利な条件に成りうるだろう。


「ハハ、まあ、魔族の国に勤める幹部の側近でコミュニティが狭い方が問題になりそうだからな。別におかしくないさ」


 キュリテに対し、笑って返すライ。

 しかし実際、幹部の側近を勤めている以上コミュニティが狭くては行動範囲が限られてしまう。

 それによって何かしらの事件が起こった場合、幹部やその側近が責任を問われる。

 なので幹部やその側近は己のコミュニティを広げ、あらゆる情報を集める必要があるのだ。


「まあ、それを差し置いても攻めにくいってのはあるな……。こんな風に話しているうちに相手も刺客を送り込んで来るかもしれないし……」


 ライは腕を組んでカフェの天井を見上げ、ため息を吐くように呟いて考える。

 木目の天井にはカフェを照らす灯りとなる照明があり、暖かな光がライたちを包み込んでいた。


「だが、逆に相手が攻めて来てくれる方がありがたいかもしれないな。さっきも言ったように、それなら容赦なく打ち倒す事が出来る」


 考えるライに向け、足を組みながら話すエマ。

 相手が攻めて来る事によって容赦する必要が無くなる。

 元々容赦する気は無いが、エマが先程述べたように躊躇する必要も無くなり容赦する必要も無くなるのはライたちにとって思う存分戦えるという事だ。


「ああ、そうだな。けど、支配者の強さはまだよく分からないからなぁ……」


 と、なると後の問題は支配者だけという事になるだろう。

 支配者の強さは誰にも語られておらず、底無しという事しか分かっていない。

 魔族の国の幹部レベルで星を砕けるというのなら、支配者は銀河系を破壊する事は容易いだろう。

 かつての魔王レベルで宇宙を消し去る力があるというが、支配者がかつての魔王と同程度の力を秘めていようと宇宙を破壊出来るのかは分からない。しかし、その程度の力はある筈である。


「支配者さんねぇ……私もよく分からないなぁ……。支配者さんが本気で戦っているのは見た事無いし……ていうか、支配者さんが戦っている姿すら……ねぇ……」


 ライの思考を横に、支配者が戦闘を行っている姿を見た事が無いと告げるキュリテ。

 支配者制度が始まったのは勇者が魔王と神を倒し、それから数百年経った時である。

 まだ割りと新しい支配者制度。にもかかわらず、強者つわものがこんなに集まっている現状は全宇宙でも上位の惑星に入るだろう。


「本気を出した事の無い最強の存在ねぇ……やっぱ魔王と共通点があるな……」


 キュリテの言葉を聞き、ふと魔王(元)の事を呟きながら考えるライ。

 同じ魔族で同じように力が強い。そして国や街など、何かを治めている。


【ククク……だからこそ、ますます戦いの時が楽しみだ。久々に俺と同レベルの相手かもしれないからなァ……!】


(ハハ、魔王も楽しそうで何よりだ。……いや、それで良いのか?)


 ライの考えを聞き、話す魔王(元)。に返すライ。

 ライは思考で笑い、魔王(元)のやる気を買っていた。


「何はともあれ、私たちの目標はそのままだ。取り敢えず街の様子を見てみたらどうだろうか? 側近が出向いたという事は街の様子も変わっているかもしれないからな。……主に私たちの捜索で……」


 これ以上話す事もほぼ無くなった現状、エマはライに向けて提案する。

 このままのんびりしていたのでは、この後に控えている予定の幻獣の国……そこが落とされ、ヴァイス達との戦闘がキツくなるかもしれないからだ。


「ああ、そうだな。取り敢えず話し合いをする事も殆ど無くなったし……一旦店の外に出てみるか……」


 そして、取り敢えず外に出る事にしたライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの六人だった。



*****



 ──"ラマーディ・アルド"・街中。


 それからカフェ的な店の外に出たライたち六人は、辺りを適当にブラ付いていた。

 相変わらずの賑わいと寒さは健在で、所々からは側近と外から来た者が戦ったという話も聞こえてくる。

 しかし、変装も何もしていないライたちに気付かないという事は、まだ顔バレしたという訳では無いらしい。


「さて、何処に行く? 今現在、調べモノは無いし……話す内容も無くて街を歩いているだけだけど……」


 そして、そんな街中を歩くライはレイたちに尋ねる。

 街の様子を見る限り変わったところは無さそうだが、争ったという事実があるので油断はならなかった。


「そうだな。もういっその事、一度支配者の元へ向かうのはどうだ? 向こうが仕掛けてきたのだから次は私たちから仕掛ける……という事だな」


 ザクザクと音を鳴らしながら雪を踏みつつ、冷え込む道を進むライが考えて傘を持つエマが提案する。

 実際、さっさと行動する為にカフェから出たのだから支配者の元へ向かうのが良いだろう。


「ああ、それが良いかもな。特に準備をする事も無いし、一度支配者の元に行って色々と話を進めた方が吉だ」


 そんなエマの提案に頷いて返すライ。

 やるだけやってみるという事は、悪い事ではない。

 仮にライたちの力が通じずとも、魔王の力があれば十分応戦は出来るだろう。


「となると、行くべき場所はあの高い建物……かな。後は全員で乗り込むか数人が行ってから行くか……」


 一番目立つ場所にあり、一番街を見渡せて存在感もある小山の建物。そこが支配者の居る建物だろうと考える。

 そしてその建物を見つつ、顎に手を当てて思考を続けるライ。

 相手の陣地に攻め込む際、いつもは全員行動を行っていたが今回は相手が相手。

 支配者レベルとなればライくらいしか通じないだろう。

 なのでライは数人に別れて行った方が良いのではと考えているのだ。


「どうする? 俺は別に一人で乗り込んでも良いけど、レイたちの考えが聞きたい」


 支配者に唯一力が通じるのはライ。それは確定である。

 しかし、レイたちは全員がライ一人で攻め込むという"それ"を許さないだろう。

 なのでライはレイたちに向けてどうするかを聞いた。


「なら、私も最初に向かおう。私は不死身で不老不死、そうそう死ぬ身体じゃ無いからな」


「わ、私も……。エマの不死性を少しは使えるから……」


 そして、その問いに名乗り出たのはエマとリヤン。

 その理由はエマとリヤン、そのどちらもちょっとやそっとじゃ致命的な傷を負わないからである。

 仮に目で追えぬ攻撃を仕掛けられた場合、不意討ち程度じゃ死なない二人が良いと、この二人がそう考えたのだ。


「……うん。私的にも……それが一番かな……だけど……一番最初って一番危険が高そうだから皆が心配……」


「ああ……ライ、エマ、リヤンが心配だ……けど、それ以外に良い案は無い……」


「うん……私も同感かな……。三人は心配だし、リヤンちゃんは完全にエマお姉さまの力が使える訳じゃないから……とても心配だけどね……」


 危険性を配慮した上でのメンバーに確実性は高いのだが、レイ、フォンセ、キュリテの三人はライ、エマ、リヤンの三人を心配していた。

 ライやエマも心配しているが、三人が特に心配しているのはリヤンだ。

 そう、リヤンは神の子孫だが、それと同時にかよわい普通の少女である。

 エマの不死身性を少しは持っているとはいえ、魔法・魔術・呪術系の即死技を使われればリヤンもただでは済まない。

 そして今は昼前。エマはただでさえ本領発揮出来ないと言うのに、傘を取られてしまった場合部下相手にも苦戦を強いられ兼ねない。

 ライは即死技や場所による不遇は無くて相手の部下にも引けを取らないが、恐らく支配者と直接対決になるのでそういう意味では一番危険かもしれないのだ。


「ハハ、そんなに心配しなくても大丈夫さ。俺は皆を護る。よわい十四、五の子供に護られるのは嫌かもしれないけど……女性を護るのは男の仕事だからな!」


 心配しているレイ、フォンセ、キュリテの三人に対し、自信に満ちた軽薄な笑みを浮かべて告げるライ。

 ライは他の者たちを不安にさせないように振る舞っていた。

 ライたちは知らないが、支配者も部下をいたわる為に引っ張っている。

 その行動は、一つの組織を纏めるリーダーに必要不可欠な能力なのだ。

 似た者同士の魔王ライと支配者。

 片方は世界征服、片方は暇潰し。理由は違えど、戦う理由がそこにある。

 そしていよいよ、ライ、エマ、リヤンの三人は支配者の居る建物へ乗り込む事となった。

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