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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第八章 王の街“マレカ・アースィマ”
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百五十話 敵襲

 ──"???"


 シーンと、耳が痛くなる程の静寂が包む光が差し込まない程奥深く、暗い海底。

 そこには、ゴボゴボと何かが動く事によって回りの水が揺らぐ。



 ──そして、『何かが動いたと同時に海が大きく荒れた』。



 海の水は大きく荒れ、光も届かない深海にもかかわらず渦巻きが発生するのが分かる程白く渦まっていた。

 その衝撃で周りの魚は朽ち果て、鮮血を撒き散らして刺身のようにバラバラになる。



『キュルオオオォォォォ────!!!』



 その生物が大きく咆哮を上げ、海全体に大きな振動を奔らせる。

 とある少年との戦闘によって傷付いた鱗や肉体は完全に再生しており、海底の奥底に沈められた怒りをあらわにして口や鼻から炎と煙を噴出する。

 あらゆる武器を通さない不死身の肉体を持ち、最強の生物とうたわれた魔物が海を荒らしながら海面へ進んで行く。



 怪物は少年の強さへ"嫉妬"する。

 力が半分以下だったとはいえ、全世界を破壊する力を持ってしても尚、敗北したに対し自分自身に怒りを感じ、嫉妬していく。



『キュルオオオォォォォォッッ!!!』



 ──最強生物レヴィアタン。



 一説では嫉妬を司る魔王と謂われる事もある。

 復讐の為にレヴィアタンが身体をくねらせ、嵐のように海を荒らしながら進んで行く。



*****



 ワイワイザワザワと、兵士達や使用人が忙しなく城の広い廊下を往き来する。

 兵士は槍や剣、魔法道具に弓矢、銃を装備しており、そのまま城の外へ出て街の方へ向かっていく。

 城に住む使用人とその家族は安全な場所に誘導され、ライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの六人と王のマルス、幹部のブラック、その側近のラビア、サイフ、ハリーフ、シターが貴賓室きひんしつへと辿り着いた。


「い、一体何があったのですか!?」


 貴賓室きひんしつへ辿り着くや否や、マルスは声を荒げて自分の側近であるカディルに問い詰めた。


「た、大変な事になりました!! "ハルブ・アドゥ・マウラカ"の者達が"マレカ・アースィマ"へ攻めてきたのです!!」


 そんなマルスに対し、慌てた様子のカディルは半ば早口で説明する。

 その言葉からするに、何者かの軍隊がこの街"マレカ・アースィマ"へとやって来たとの事。


「"ハルブ・アドゥ・マウラカ"?」


 そして、聞いた事の無い地名を耳にしたライは"ハルブ・アドゥ・マウラカ"という街? の名を復唱する。

 まあ、ライは"ハルブ・アドゥ・マウラカ"が何なのかは大体理解しているが。


「"ハルブ・アドゥ・マウラカ"というのは僕たちの街……"マレカ・アースィマ"と戦争を行っている途中の街です……!!」


「……成る程な」


 やはりか、と小さく呟いて気を取り直すライ。

 そんなライを横目に、ライに返したマルスと普通にしていたカディル、ブラック、ラビア、サイフ、ハリーフ、シターが会話を続ける。


「しかし、何故今になって……って思うところだが……まあむしろ……俺たちににとっては侵略者さん御一行が味方になるらしいから動かしやすいけどな……」


 ライの方を見、フッと笑って話すブラック。

 そんなブラックを見たライも、軽薄な笑みを浮かべて返す。


「ハハ、確かに今は味方だけど……これが終わったら敵になるんだぜ? アンタらも油断はしないようにするこった……」


 ククク……ハハハ……と、不敵な笑みを浮かべて話すライとブラック。

 他の者たちはそれを見やり、苦笑を浮かべながら適当に流したあと会話を続ける。


「……で、その侵略者一行の私たちだが……私たちは何をすれば良いんだ? ただ追い払えば良いのか、敵の街に攻め込めば良いのか……この城を護衛するだけで良いのか……」


 先ずフォンセがマルスたち七人に話す。

 敵が来たといっても、今はこの街の兵士達が向かっている。

 なので、その兵士達がやられたあとに行動するべきか、それとももう行った方が良いのか気になったのだ。


「……まあ、言ってしまえば相手の兵士など高が知れているだろうさ。幹部の部下に居る兵士と街を護衛している兵士は全くの別物だ……側近を除くとして……107人の部下のうち、何人が街の方へ向かった?」


 フォンセに続き、エマがブラックへ尋ねるように話す。

 "マレカ・アースィマ"に元々仕えていた兵士とブラック達がこの街に派遣された際に着いて来た兵士は、普通に考えて幹部の部下である兵士達の方が強い。

 つまり、107人中数十人でも行けば"ハルブ・アドゥ・マウラカ"の兵士達など軽く追い払う事も可能。という事である。


「あー……まあ、数十人は行っただろうな。この街"マレカ・アースィマ"の兵士数十人と俺の部下数十人……それが迎え撃つ為に行った奴らだ」


 そんなエマの質問に答えるブラック。

 数十人向かったという事は、余程の事が無ければライたちとブラック達の出る幕は無いだろう。


「……って事だな。じゃあ、俺たちは向かわなくても良いのか? ──……マルス君?」


「……!!」


 ブラックの言葉を聞いたライはマルスに尋ねる。

 マルスは大きな反応を示すが、ライたちに命令を下すのは王であるマルスだと。ライの目がそう語っていた。

 ライたちは部下という事では無いが、ライは敢えて王に尋ねたのだ。マルスへ王としての、指揮官としての経験を積ませる為に。である。


「……」


 このような時、どうすれば良いのか分からないマルス。

 マルスは唇を噛み締め、ただ無言で迷っていた。どうすれば良いのか、王として、住人を護る為に──


「……!!」



 ──その刹那、ライは床を踏み砕いて跳躍し、



「そらよっ!」


 飛んで来た弓を拳の風圧で消し去った。


「……!?」


 この一瞬で起こった事を理解できなかったマルスは、目を見開いてライが移動した際に生じた風圧を肌に感じていた。


「……ほら、さっさと決めなきゃ遠方からの攻撃で大変な事になっちまうぞ? 俺は別に問題ないが……避難した住人や使用人、それに妹はどうなるか……想像付くだろ?」


「……!! ヴィネラ……!!」


 ライはマルスの後ろから早足で近寄り、マルスに向けて話す。

 それを聞いたマルスは住人や使用人と共に避難している妹の存在を思い出した。


「……ッ! ……ライさんとブラックさん、そしてエマさんとサイフさんは敵陣へ! キュリテさんとフォンセさんは逃げ遅れた人々の避難を、そして残りの者たちは城の直ぐ外を護衛して下さい!!」


 それと同時に、先程までとは比にならない程ハキハキと話して指示を出すマルス。

 この中で圧倒的に強いであろうライ、ブラックと不死の能力を持ちつつ夜に本領を発揮できるエマ、そして戦闘メインだろうサイフを先陣に向かわせる。

 エマがヴァンパイアという事を知っているのか定かでは無いがそれはさておき、先陣に向かわせたのは適応者だった。

 そして"テレポート"の使えるキュリテと"空間移動"の魔術を扱えるフォンセを逃げ遅れた住人の避難に向かわせる。

 幹部の側近であるキュリテはまだしも、フォンセが魔術師という事も知っているようなマルス。恐らく侵略者についてマルスなりに調べたのだろう。

 彼らと彼女らを向かわせ、残りの側近とライの仲間は護衛に残した。

 おどおどしていたとは思えない程張り切るマルスは、的確な指示を出したのだ。


「良し、分かった!」

「ハッ、任せな……!」

「良かろう……」

「よっしゃ、任せとけ!」


 ライ、ブラック、エマ、サイフはフッと笑いながらそれぞれ応え、直ぐに前線へ向かう。


「じゃあ私たちも……」

「行こっか♪」


 それだけ言い、フォンセとキュリテもその場からシュンと物理的に消える。


「じゃあ……私たちも……!」

「う、うん……!」

「可愛いから貴女たちは私が護って上げる♪」

「……やれやれ……不安だな……成功するかどうか……」

「ふふ、そう言わなくても良いじゃない」


 そしてレイ、リヤン、ラビア、ハリーフ、シターの五人も行動に移った。


「では、我々も……」

「うん。分かったよ……」


 カディルに言われ、マルスも行動に移る。

 こうしてライたちの戦闘組みとフォンセたちの救出組み、レイたちの護衛組みに別れた。



*****



 ──"マレカ・アースィマ"・街の出入口。


「矢を放てェ!!」

「銃を撃てェ!!」

「詠唱を唱えろ!!」


「……」

「……」

「"ショーラ"……」


 "マレカ・アースィマ"へ攻めて来た"ハルブ・アドゥ・マウラカ"の指揮官が兵士に合図を出し、兵士達は静かにそれらを実行する。

 ヒュンと矢が空気を切り、ダンッと銃が火花を散らす。それと同時に街全体へ炎が放たれた。


「こちらもだァ!!」

「矢を放て!」

「銃を撃て!」

「炎を消せ!」


「……!」

「……!」

「"マイヤ"!」


 対する"マレカ・アースィマ"側も矢や銃、水魔術を放って抵抗する。武器や水魔術によって辺りには様々な音が聞こえる。

 それらの攻撃はぶつかり合い、大きく弾けて水蒸気を巻き起こす。それによってお互いの視界が悪くなっていた。


「隙を見せるなァ!!」

「此方もだァ!!」


「「「…………!!」」」

「「「…………!!」」」


 お互いの指揮官が声を荒げ、それに反応するように兵士達が攻撃を仕掛ける。

 同時に矢が放たれ、後ろからは銃弾が迫り来る。加えて追い討ちを掛けるよう、それぞれのエレメントを扱えるお互いの兵士達が互いに向けて"炎"・"水"・"風"・"土"魔術を放出していく。

 あらゆる音が鳴り響き、"マレカ・アースィマ"の街を大きく揺らした。


「「"ショーラ"!!」」

「「"マイヤ"!!」」

「「"リヤーフ"!!」」

「「"トゥルバ"!!」」


 詠唱が唱えられ、同じタイプのエレメントがぶつかり合う。

 この街の兵士が駆け付けて数分、その数分で辺りは完全な戦場と化していた。


「成る程……。幹部の部下である兵士が居るからか、戦闘にリズムが生まれている……これは手強そうだ……」


 その戦場を眺めていた相手側の指揮官は腕を組み、まだまだ余裕あり気に観察していた。その指揮官へ向け、一人の兵士が駆けて来る。


「……なら……『使いますか』?」


「……ああ、そうしよう。我々の目的はこの街じゃない……『この街に潜伏しているという侵略者だ』……!」


 何故か侵略者の存在を知っていた指揮官。指揮官は兵士の問いに応え、何かの秘策を使うと言った。


「……」


 指揮官の言葉に兵士は頷き、後方へ走って行く。

 腕を組みながら余裕を出している指揮官は不敵な笑みを浮かべていた。


「"ショーラ"!!」

「"ショーラ"!!」


 次の瞬間に炎魔術と炎魔術が激突し、炎が炎に焼かれて蒸発する。

 その炎によって石畳の道は溶け、その道はいびつな形の石と化した。


「死ねェ!!」

「断ァる!!」


 続くように剣と剣がぶつかり合い、火花を散らして互いを弾く。


「せあっ!」

「そらっ!」


 そして槍と槍の柄がぶつかり、鞭のような音が広がる。

 槍というのは刺すのが本来の使い方では無く、鞭のように使って相手を叩く武器なのだ。


「……!」

「……!」


 他にも先程の銃よりも軽い音の音が響く。

 剣に槍、そして銃。その他にも矢や魔法・魔術と、様々な武器が激突していた。


「下がれェ!! 下がれ下がれェ!!!」


 そして少しの間に攻防が起こっていた時、指揮官が自らの兵士を下げ、それに従って兵士達が下がって行く。


「……何だ? ……撤退か?」

「……いや、そんな筈……」

「……しかし……」


「まだだ、まだ油断するな……!」


「「「……は、はい!!」」」


 ザワザワと、"マレカ・アースィマ"の兵士達がザワ付き出す。相手は意図を読めぬ行動を取ったのだから当然だ。

 ブラックの部下である兵士はそんな兵士達へ向けて渇を入れる。こういう時、熟練の兵士達は状況判断に長けているので味方からすれば頼もしい限りだろう。


「……?」


「「「…………!!」」」


 そして、ズーンズーン。と重く、質量のある足音が聞こえてきた。


「ま、まさか……!! は、離れろォ!! この音は────!!」


「「「…………!!」」」


 ──その瞬間、"マレカ・アースィマ"の兵士達に指示を出そうとしたブラックの部下である兵士が……『踏み潰された』。

 グチャ、という音と共に潰れた果実を彷彿とさせる真っ赤な鮮血が流れてゆく。


「き……巨人だァ!!」


 一人の兵士を筆頭に、一斉にその場を離れる兵士達。

 "ハルブ・アドゥ・マウラカ"の者達は数十メートルの巨躯を誇る巨人を使ったのだ。


『ウオオオォォォォォ!!!』


 巨人は吼え、それと同時に巨大な腕を振るう。

 そして──


「「「………………ッッ!!」」」


 ──巨人が腕を振り抜くと同時に、半径数百メートルが平らになった。辺りには砕けた建物の瓦礫が降り注ぎ、石畳の道を砕く。


『ウオオオォォォォォ!!!』


 ただ腕を振るっただけで街が半壊する。

 辺りには兵士達の血が広がり、形勢は一瞬で逆転した。


「巨人の目に矢を放てェェェ!!!」

「銃じゃ駄目だ! 大砲を使え!!!」

「魔法・魔術で足を止めるんだ!!!」


「…………!!」

「…………!!」

「し、"ショーラ"!!」

「"マイヤ"!!」

「"竜巻イサール"!!」

「"土の槍(トゥルバ・ハルバ)"!!」


 指揮官の指示に従い、巨人の瞳に目掛けて矢を放ち、巨人の身体全体に大砲を撃ち、他の兵士は自分が専門としている四大エレメントで攻撃を仕掛ける。


『ウオオオォォォォォ!!!』


「……!? ……な!!」


 ──そして巨人は、『その全てを片手片足で防いだ』。

 あっさりと防がれた事へ驚愕の表情を浮かべる指揮官。


れェ!!」

『ウオオォォォ……!』


 それを見た"ハルブ・アドゥ・マウラカ"の指揮官は、巨人にトドメを刺す指示を出した。

 巨人は腕を大きく動かし、先程の一薙ぎで街を半壊させた攻撃を仕掛ける体勢に入り込む。


「このままでは……!!」


『ウオオオォォォォォッッッ!!!』


 "マレカ・アースィマ"指揮官の祈り虚しく、巨人は腕を振るい──!!


『……! ……!!』



 ──その刹那、巨人は何者かによって吹き飛ばされた。


「……!」

「……!?」


 巨人が吹き飛ぶと同時に、二人の指揮官が目を見開いて巨人が吹き飛んだ方向を見やる。巨人は遠方の山に激突し、森を抉って動きが止まった。


「ふう、まさか……巨人を従えさせていたとはな……そりゃ苦戦も強いられるか……」


「「…………!!?」」


 そして指揮官二人は、一つの声が聞こえた方へ目をやった。

 そこには月に照らされ、不敵に笑うよわい十四、五の少年が立っていた。


「……ま、まさか……あの巨人を……」

「……い、一撃で……!?」


 その少年の拳に付いた血液を確認し、「まさか」と同時に声を上げながら驚愕する"マレカ・アースィマ"と"ハルブ・アドゥ・マウラカ"の指揮官。


「まあ、これ以上の犠牲者は出さないつもりだけどな……!」


 そんな二人を見た少年──ライは自分が立っている場所から飛び降り、指揮官達の前に出る。


「その強さ……いや、偶然か? しかし中々の実力者と見た……ククク……そうか、貴様が"マレカ・アースィマ"に味方する侵略者とやらか……」


「……!」


 そして、"ハルブ・アドゥ・マウラカ"の指揮官は笑みを浮かべながらライに向けて話した。

 自分の事を少し知っていそうな指揮官に対し、ピクリと揺れて反応を示すライ。


「貴様を待っていた……さあ、戦争はまだこれからだ……!!」


 バッと手を広げる指揮官。それと同時に、ズーン、ズズーンと重い足音が『複数聞こえて来る』。


「そんな……まさか……」


『『『………………』』』


 ズーン、ズズーン。ズシーン。連続して響いた足音は止まり、そこには軽く数十を越える巨人が立っていた。

 "マレカ・アースィマ"の指揮官は驚愕し、腰を抜かして後退る。


「成る程……これからが本番だな?」

「ああ、楽しもうじゃねェか……!!」


 その巨人の群れを見てライが話、"ハルブ・アドゥ・マウラカ"の指揮官が軽薄な笑みを浮かべて返す。

 "マレカ・アースィマ"vs"ハルブ・アドゥ・マウラカ"の争いが始まり、巨人達が押し寄せる。

 そんな巨人達を前に、ライは構えを取って行動に出る。

 ライvs巨人の群れの、戦いが始まろうとしていた。

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