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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第七章 暗い街“ウェフダー・マカーン”
143/982

百四十話 ライvsシャドウ

「……」

「……」


 ヒュウ、と、砕かれた天井から照らさせる光と共に涼やかな冬の風が吹き抜ける。

 ライとシャドウは構え、互いの出方をじっとうかがう──その刹那、


「……!!」


 ライの姿が消え、それから少しあとに床が砕けてクレーターを造り出した。

 ライの姿を見失ったシャドウは、


「"影の壁(ディッル・マウジ)"!」

「……へえ?」


 ライの姿を見つけて影の壁を造り出し、ライの拳を受け止めた。

 ライは影の壁を砕き、そのまま弾かれる。弾かれたライは床に着地し、シャドウの方に視線をやる。


「影使いか……中々手強そうだな……」


 ライはまだ魔王の力を纏っていないが、純粋にシャドウも強者と理解していた。

 魔王を纏わない理由としては、先ず自身の力で試すようである。


「影が……砕けた……!?」


 そして、シャドウは影の壁を砕かれた事に対して驚愕の表情を浮かべていた。

 魔王ライの能力を知らないシャドウからすれば偶然かそれに近い現象と刻まれるだろう。


「試してみるか……! "影の剣(ディッル・セイフ)"!!」


 次の瞬間、それを確認する為にシャドウは切断力の高い影をライに向けて放った。影は床を切り裂き、亀裂をいれてライへと進んで行く。


「そらよ!」


 そしてライは、その影に向けて蹴りを放ち砕いた。

 砕かれた影は床に落ち、何でもないただの影へと変化する。

 そしてその影の持ち主が居る筈も無く、少し経ったあと影は消失した。


「やっぱり影を砕いたか……ハッ! あり得るのかそんな事……!? 実態の無い影を砕くとはなぁ! ハッハッハ! コイツは面白え!!」


 自身の影技を軽く防がれたシャドウは笑い、新たな影をライに向けて放出した。

 その影は速度を上げ、


「ほらっ!」


 再びライに砕かれる。

 その影の欠片は先程のようにただの影に戻り、やがて消えていった。


「"影の槍(ディッル・ハルバ)"!!」


「……」


 そして、間髪入れずに槍状の影を放つシャドウ。

 ライはその影を砕かずに身体を軽く反らして避け、片足を踏み込んで加速する。


「オラァ!」

「……ッ!」


 そしてそのまま拳を放ち、シャドウを殴り飛ばす。

 再び吹き飛ばされたシャドウだが、次は遠方まで吹き飛ばずに数百メートルで停止する。


「"影の弾丸(ディッル・ラサーサ)"!!」


 停止すると同時に影を放つシャドウ。

 放たれた影は空気を切り、一直線にライの方へ向かって来る。


「面倒だ……。避けよう……」


 ヒュンという音を響かせながらその影弾丸は空気を切り、ライの両頬をすり抜けて行く。

 ライは左右に小さく揺れて避けたのだ。そしてライほシャドウに近寄り、蹴りを放つ体勢に入る。


「そら!」

「……ッと……!」


 その蹴りをシャドウは、バク転の要領でかわした。

 縦に三回ほど回転し、ライから距離を取る。


「逃がさねえぞ!」

「……ッ!」


 そして避けたシャドウに向けて再び拳を放つライ。

 その拳はシャドウの顔面を捉え、そのままシャドウを吹き飛ばした。


「まだまだ!」


 殴り抜くと同時に床を蹴り砕き、更に加速してシャドウを追うように突き進むライ。

 ライは一瞬にしてシャドウへ追い付き、


「そーら……よっと!」

「……ガッ!?」


 シャドウを叩き落とした。

 シャドウは低空で吹き飛んでいたにもかかわらず、大きなクレーターを造り出して床に激突する。

 そのシャドウを見たライは、シャドウに向けて一言。


「……で……『早く本物を出してくれないか』?」

「………!」


 クレーターの底に居るシャドウはそれを聞き、ピクリと反応を示す。

 それからシャドウは起き上がり、


「ハッハッハ……気付いていたか……」


 ライの言葉を認めるようにライへ返した。

 ライは身体の砂埃を落としているシャドウ(影)へ向けて跳躍し、言葉を続ける。


「当たり前だ。……さしずめ、俺が最初に殴り飛ばした時に俺の実力を確かめようと影に向かわせたんだろ?」


「ハッハッハ! 正解だ!」


 そのままシャドウ(影)を踏み砕いて消し去るライ。

 ライはクレーターから飛び出し、


「……で、アンタ"ら"はどっちが本物だ?」 


「「「ハッハッハ!!! 誰が本物か分かるか??? これぞ本当の影分身、影武者って奴だあぁぁあハハハハ!!!」」」


 数人に増えたシャドウへ向けて質問するように尋ねた。

 これを見たところ、シャドウは自分の力の半分程の力を備えたやからを何人かは兎も角、幾つかは創れるらしい。

 シャドウは笑ってライの言葉に返したが、本物を明かすつもりは無いらしい。


「じゃあ、一人ずつ潰していくか……」


 取り敢えず本物を見つけ出すのも面倒なので、ライはシャドウの分身とシャドウその者を叩き潰す事にした。


「「「ハッハッハ!!! やってみろ!!!」」」


 刹那、ライとシャドウ達が同時に動き出した。

 その衝撃で宮殿は揺らぎ、振動して床が砕ける。


「やってやるさ!」

「「…………!?!?」」


 そして、先ずライは二人のシャドウを消滅させた。

 それによって二人のシャドウは影に戻り、その影も消える。


「先ず二人……」


「"影の刃(ディッル・セイフ)"!!」

「"影の爪(ディッル・ミスマール)"!!」


 ライが着地した直ぐあと、切れ味の高い影を仕掛けるシャドウ(影)。


「「…………!!」」


「訂正しよう。先ず四人」


 そんなシャドウを消滅させるライは、一瞬にして四人のシャドウ(影)を葬った。

 全て影に戻った事から、今の四人は全て影だったという事が分かる。


「あとは……」


 ライは辺りを一瞥し、


「「「「「ハッハッハ!!! ハッハッハ!!! ハッハッハッハッハ!!!」」」」」


「沢山……」


 シャドウの数を見て呆れたような苦笑を浮かべる。

 実際のところ、シャドウの影一つ一つは容易く消し去る事が出来るのだが、数が多いと面倒この上無いだろう。


「……いや、ガチで面倒だ……(魔王! つー事で力を借りる……!)」


【おう! 任せとけ!】


「「「………………!?!?!?」」」


 その瞬間、ライの身体に漆黒の渦が纏わり付く。それによって身体が熱くなり、身体の奥底から力が溢れる。禍々しい渦と共に、魔王ライは漆黒の渦から現れた。


「さあ、やるか……!」


 そして、ライがシャドウへ向けてその一歩を踏み出した。刹那──


「「「────ッッッ!?!?!?」」」


 シャドウ(影)の群れ? が……『全て消滅した』。

 その一歩によって残ったシャドウはただ一人。それが本物のシャドウだと理解できる。


「ハッハッハ! スゲェスゲェ! 俺の影が全部消えちまったよ! 何だその黒い渦は!?」


「随分と余裕があるな……」


 それを見た本物のシャドウは笑っており、感心するような口調で話す。

 シャドウレベルの強さは無いにしろ、それでもシャドウのような技を使って戦闘を行うシャドウの影だが、それを破壊されてもまだ余裕のあるシャドウ。

 それを見たライは、シャドウに何か奥の手があるようにしか見えない。


「まあ、さっさと倒すのが吉なのは変わり無いか……!」


 ライは床を蹴って加速した。



 そして──『宮殿が砕け散った』。



 ライが動くだけで宮殿は揺れ、大きく崩す。

 もうこの状態でゴールを目指せるのか分からないが、今のライが優先するのはシャドウを倒す事である。

 エマ、リヤン、キュリテの居る場所から大分離れた為、その三人に被害が掛かる事は無いだろう。


「……」

「……!!」


 そして次の瞬間にライはシャドウの背後に回り込んでおり、シャドウは目を見開いてその気配を感じる。


「"影の針(ディッル・ダッブース)"!!」


 その瞬間、シャドウは自分の周りにある影を針状にして天へ放つ。

 そこにライが刺さった感覚は無く、


「俺は此処だ……!」

「ハッハ……ッ!」


 シャドウの正面から重い拳が飛んでくる。

 シャドウは笑おうとしたが笑う暇も無く、ライの拳によって殴り飛ばされた。

 シャドウは周りに影を放出したのだが、ライはそれをも全て避けたらしい。

 殴られたシャドウは残った壁を砕き、加速して吹き飛ぶ。


「……ッ!」


 吹き飛ばされたシャドウは床に足を着き、ザザッと床を抉りながらその勢いを殺して停止する。


「オ──」


「"影の守護ディッル・タフゼィール"……!!」


 停止した瞬間に攻めてきたライに対し、シャドウは影でより強力な守りの壁を創り出した。


「──ラァ!!」

「……ッ!?」


 そして、その壁を容易く砕く魔王ライ

 ライはそのまま拳を振り抜き、シャドウを更に吹き飛ばした。


「…………ッ……! これじゃあ外に出ちまう……! "影の縄(ディッル・ハブル)"!!」


 吹き飛ばされたシャドウは影を紐状に変換し、柱の一つにその影を縛り付けて外に出る事を防ぐ。


「そら──」


 そして、ライは大地を踏み砕き、跳躍して勢いを上げる。

 間一髪助かったシャドウに向け、畳み掛けるように攻撃するつもりだ。


「させるか! "影の槍(ディッル・ハルバ)"!!」


 シャドウはそんなライに向けて槍のような影を仕掛ける。

 その槍は周りの壁を破壊しながらライの方へ向かう。


「オラァ!」


 そしてその影を砕くライ。影が砕けたのを確認したライはそのままシャドウへ直進し、


「よっと!」

「……ッ!!」


 シャドウの脇腹に蹴りを放った。

 ライが蹴った箇所はメキメキと小さな音を出し、次の瞬間にはシャドウがその場から姿を消す。

 それと同時に遠方で轟音が響き、直後に埃が舞い上がった。


「"多影の槍アダド・ラー・ニハイィ・ディッル・ハルバ"!!」


 刹那、無数の影がライに向けて高速で放たれる。

 影は埃を突き抜け、埃を消し去りながらライの方へ──


「だからどうした!」


 ──向かう前に粉々に砕かれる。

 砕くと同時に踏み出したライは加速してシャドウへ近付く。

 現在魔王の力は二割ほどで、今の状態で全力なら第一宇宙速度から第二宇宙速度くらいまで加速できる。

 なので、


「"影の爪(ディッル・ミスマール)"!」

「オラァ!!」


 瞬く間にシャドウへ近寄る事が出来た。

 ライの姿を確認したシャドウは複数の鋭利な影を放ち、ライはそれを砕く。

 それによって二人は吹き飛び、二人の場所は数メートル程の距離となった。


「オイオイ……スゲェパワーアップしてるじゃねえか……何だ? 成長期か?」


「……まあ、似たようなもんだ。魔族にとっての俺はまだまだ子供だからな? ……いや、人間にとっても子供の年齢だ……」


 ザッと、苦笑を浮かべて話すシャドウとそれに返すライ。

 シャドウは飄々としているが、ライの力に気付いている。そしてライはどうでも良い事を告げた。

 僅か数メートルは、二人にとってあって無いような距離である。


「……!」

「……!」


 一瞬待って直ぐに駆け出す二人。その衝撃で床は砕けるが、既に何度も砕けているので今更だろう。


「オラァ!」

「"影の拳(ディッル・カブダ)"!!」


 次いでライの拳とシャドウの影から創られた拳がぶつかり合い、轟音を立てて衝撃波を辺りに響かせる。


「そらよ!」

「"影の手(ディッル・ヤッド)"」


 そしてライの足と、シャドウの影から創られた手がぶつかって先程の衝撃波を更に凌駕する勢いで進む。


「ほら!」

「"影の牙(ディッル・ナーブ)"」


 ライは勢いを付けて拳を放ち、シャドウは影を獣の頭のような形に変化させてライへと放つ。

 そしてその二つがぶつかり合い、辺りは影で黒く染まる。


「あーあ、やる気無くすなあ……俺の攻撃全て効かねえじゃねえかよ……」


 そして、何度か攻撃したシャドウはライに向けて苦笑を浮かべながら言葉を発する。

 曰く、全ての影を無効にする為やる気か無くなるとの事。

 そんなシャドウの言葉を聞いたライは、フッと笑ってシャドウへ言う。


「ハッ、何が"やる気を無くす"……だ。アンタ……まだ何か隠してんだろ? その様子を見りゃ分かる。まあさしずめ……その技を使うとこの街全体……いや、この世界が危険かもしれないから……とかだろ? つまり、星を砕くレベルの技って事だ……」


 ライが話したのはシャドウのかくし球。

 いつかのゼッルのように、かつての魔王が使っていたような惑星破壊レベルの技をシャドウも持っているとライは推測したのだ。


「……!」


 それを聞いたシャドウは一瞬キョトンとしたが、その後直ぐに口角をつり上げて笑い声を上げる。


「ハッハッハ! まあそんなところだ! ジャバルの奴が頭の回るガキって言っていたが、まさしくそのようだな! まあ、カフェの時にもう分かっていた事だ! それはどうでも良いとして……正解だ! 俺はまだ奥の手がある! それを使うかどうか考えていたが……テメェには使っても良さそうだな! いや、使わなきゃ俺がやられるか!!」


 そう言い、もやのような禍々しい影を自分の周りに放出した。

 その影は今までの影と違ってより黒く、より暗く、より深い。そう、ライの身体に纏っている漆黒の渦のように。


「…………それは……」


 それを見たライは小さく呟く。ライが呟いている間にも影は質量を持ち、大きく広がる。

 シャドウはクッと笑い、その名を示した。



 ────"魔王の影シャイターン・ディッル"……!!!



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