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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第七章 暗い街“ウェフダー・マカーン”
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百三十八話 フォンセvsルミエ・決着

「……"ヴェリテ・エラトマ"……」


「…………!?」


 何度か魔術同士をぶつけ合ったあと、唐突にルミエはフォンセに向けて魔王(元)の──本当の名を口走った。

 フォンセはそれを聞いてピクリと反応を示し、その様子から何かを理解したルミエは言葉を続ける。


「ふふ……知っている様子だな? "ヴェリテ・エラトマ"が何者なのかを……。そして"それ"を知っているという事は、"それ"に関わりがあるという事……。要するに……『お前もそうなんだろ』?」


「…………」


 ルミエがつづった言葉は、遠回しにルミエもフォンセと似た境遇にあるという事を暗示していた。

 ルミエが示す"それ"とは魔王の事。

 そして"お前もそうなんだろ"……という事は、ルミエも魔王と関係した何かがあるという事だ。


「同じ姓を持つよしみだ。お前がそうならば隠す必要も無いし、私も関係していると伝えたかっただけさ……」


 それだけ言い、再び構えるルミエ。

 魔王(元)と関係しているらしいが、魔王(元)の何なのかは教えないようだ。

 しかし、これは一応ゲームなのでフォンセにも話している余裕が無いのは確かな事である。


「……フッ、そうか。それはありがたいが、今は心底どうでも良い事だ……この戦い……このゲームが終わったらゆっくり聞くとしようじゃないか……!」


 刹那、フォンセとルミエは互いにその姿を消した。

 "空間移動"の魔術を使用して敵の死角へ回り込もうという作戦だろうが、二人は同時に消えた為に先程まで二人の居た場所が入れ替わっただけである。


「しょうがない……ここでやるとするか……"ウォーター"!!」


「そうだな……! "マイヤ"!」


 そして二人は互いに四大エレメントの水魔術を放ち、その水はぶつかって宮殿内を濡らす。

 互いに勢いよく放った水だが、その水は一瞬にして散った。


「"サンダー"!!」


「"ショーラ"!!」


 そしてフォンセが魔術を組み合わせた雷を放ち、それに対抗するルミエは炎を放出した。

 フォンセが雷魔術を放った理由は先程水が宮殿内に染み込んだ為、電気の通りが良くなるから。

 そしてそれを読んだルミエはその水を蒸発させて消し去るべく炎を放ったのだ。

 二つのエレメントはぶつかり、パッと一瞬光って直ぐに消える。


「ふう……先程から同じ事の繰り返しだ……埒が明かない……」


 それを見たフォンセはため息を吐いて呟く。

 事実、フォンセとルミエはもう一〇〇回は互いの魔術をぶつけていた。

 二人が扱う技が魔術という事と、フォンセとルミエの実力が五分五分という事からどうしてもそうなってしまうのだ。

 その事はルミエも分かっている事だが、魔術の精度が急激に成長する筈も無くジリ貧状態。

 魔力は無尽蔵では無く、その魔力も徐々に無くなりつつあったのだ。


「……だとすると……」


 そして、フォンセにはその状況を打破する秘策があった。


「……アレを使えば……」


 それは、"ウェフダー・マカーン"の宿に置いてある……禁断の魔術が書かれた本の事についてだ。

 その本は優秀な魔術師であるフォンセなら上手く扱う事が出来、本に書かれた魔術を使う事が出来る。

 適応する者でなければその命が奪われると言うが、フォンセは何とも無かったので問題無い。

 しかしフォンセがその魔術を使ったとして、この宮殿が消え去ったりしないのかが心配なのだ。

 禁断の魔術と言われているくらいなので、その威力は想像を絶するモノになるであろう。


「何をブツブツ言っている? 何の事か分からないが、アレというのは今関係の無い事だろう? 私によって倒されるのだからな……! "炎の槍(ショーラ・ハルバ)"……!!」


 次の瞬間、本の魔術を使うか悩んでいてフォンセに向けて炎の槍が放たれた。

 炎の槍は瓦礫を貫通して燃やし、凄まじい速度でフォンセへ向かう。


「……悪いな、考え事をしていた。……そして、今お前が言ったその言葉は私のモノになるだろうさ……"水の壁(ウォーター・ウォール)"」


 次の瞬間、炎の槍はフォンセが生成した水の壁によって消え去る。

 一瞬だけ炎が発した熱を感じたフォンセだが、特に問題は無い。


「"アイス"!!」


 次の瞬間、フォンセは水魔術を応用して創り出した氷魔術を放出する。

 氷魔術は一瞬にして宮殿内を急速冷凍し、フォンセとルミエの居る場所の気温が一気に低下した。


「"浮遊風(ヤティール・リヤーフ)"!」


 氷がルミエ付近に来る前に、ルミエは風魔術を放出して空を飛ぶ。

 先程までルミエが居た場所は凍ったが、ルミエには当たらなかった。


「……"土の機関銃(ランド・マシンガン)"!!」


 なのでフォンセは、空中に居るルミエ目掛けて大量の土塊つちくれを放つ。土魔術と風魔術を組み合わせて銃弾のようにしたのだ。

 無数の土塊つちくれは真っ直ぐルミエへ向かい、凍った宮殿内を砕きながら突き進む。


"水の大砲(マイヤ・ミドファウ)"!!」


 ドンッ! 連続して放たれる土塊つちくれに対し、ルミエは水の砲弾を発射した。

 水の砲弾は土塊を溶かし、勢いを増してフォンセへ向かう。


「いちいち相手にするのも面倒だ……!」


 その水弾を相手にしないフォンセは、風を放出して浮遊する。

 ルミエと同じステージに立てばその分狙いやすくなるだろう。


「"サンダー"!」


「また雷か……! "土の壁(トゥルバ・ジダール)"!!」


 フォンセはダメージの大きいいかづちを放ち、ルミエは空中に土から創られた壁を出現させてその雷撃を防ぐ。


「ああ、確実性があるからな」


「…………!」


 ルミエがフォンセのいかづちを防いだ直後、フォンセはルミエの後ろに回り込んでいた。

 ルミエは直ぐに振り向き、フォンセから距離を取る。


「ふふ、どうした? 魔術師が近付くのはおかしいか?」


「…………」


 ルミエがフォンセから距離を取ったのはフォンセが目に追えぬ速度で近付いたからであり、フォンセはその事に気付いていなかった。


「……成る程。かなりの才能を持っていると見た……いや、始めから知っていた事だったな……"ショーラ"!!」


「いきなりだな……"ウォーター"!」


 呟くように言い放ったルミエは炎魔術を放出し、フォンセはそれを水魔術で防ぐ。

 二つがぶつかった事で発生した水蒸気によって視界が悪くなり、宮殿内の氷が溶けて水蒸気が発生するがもうそんな事は小さなものだった。


「「…………!!」」


 それだけ放った二人は互いの姿が見えにくい中、加速して構える。


「"ファイア"!!」

「"ショーラ"!!」


 刹那、水の空気に二人の放った灼熱の炎が触れた事により、周りの水分が気化して大爆発を起こす。


「"爆発エクスプロージョン"!!」

「"爆発インフィジャール"!!」


 続け様に魔術を放ち、フォンセとルミエは更に畳み掛けるような爆発を起こして爆風で爆風を掻き消す。

 その衝撃は宮殿を大きく揺らし、黒煙が立ち上ぼり視界を消し去った。


「……さて、もう迷路なんか無くなってしまったな……」


 そして、大分前から広い空間へと変わり果てた宮殿内を見渡すルミエは残念そうに肩を落として話す。

 これはゲームなのでフォンセたちがゴールする過程を見たかったのだろう。

 無論、ルミエは手加減などしておらず目の前の相手は仕留めるつもりだろうが。


「……ふふ、悪かったな。……だが、お前を倒してから先に進むという意味ならこの方が楽で良い……」


 そんなルミエに対して軽い笑みを浮かべながら話すフォンセ。

 実際、幹部とその側近を相手取る事は時間が掛かるのでフォンセ的にはこの方が便利? という事である。


「……そうか。なら、倒されないように気を付けなければならないな……」


 刹那、ルミエの姿が消えた。

 "透過"の魔術があるかは分からないが、何らかのエレメントを応用してみずからの姿を消したのだろう。


「……ふむ。さしずめ水魔術を使って自分に当たる光を屈折させたか……それとも……」


 フォンセは、ルミエが姿を消した理由を考える。

 逃げたというのは有り得ない事だろうが、姿を隠されては戦いにくいからだ。


「"炎の光線(ショーラ・アシェア)"……!」


「周りの煙に紛れて移動しただけ……とかな?」


 刹那、ルミエはフォンセの死角から炎を極限まで細めて威力を上げた光線を放つ。

 フォンセはルミエが消えた時から推測しており、光線が放たれる前に避けていた。


「近距離なら……"爆発エクスプロージョン"!!」


「…………!!」


 次の瞬間、フォンセはルミエの正面から爆発を起こしてルミエを吹き飛ばす。


「……それなりに効いただろう?」


「…………ッ!」


 その爆発を咄嗟に自身の魔術で直撃を避けたルミエだが、その身体からは出血していた。

 頭からは血が流れ、身体にも幾つかの焦げ痕がある。


「……ああ、それなりに……」


「…………!」


 そして爆風によって飛ばされたルミエは、直ぐ様風魔術を放出してフォンセに近付いた。


「……な? "爆発インフィジャール"!!」


 先程放ったフォンセの"爆破"の魔術に対抗するよう、ルミエも"爆破魔術"で仕掛ける。

 今度はそれを受けたフォンセが吹き飛び、瓦礫の山に突っ込んで瓦礫の山を崩壊させて吹き飛ばした。


「……どうだ? 『それなりに効いただろう』?」


 そして、フォンセの言葉を復唱するように笑みを浮かべながら挑発するルミエ。

 フォンセも頭から出血しており、所々に火傷のような痕が出来ていた。


「……お前は焦げたが私はちょっとした火傷……大差無いが、私の魔術の方が強かったみたいだな?」


「…………」


 そんなルミエに、フォンセも笑みを浮かべながら挑発して返す。


「"竜巻トルネード"!!」

「"竜巻イサール"!!」


 二人は二人の挑発に応えるよう、フォンセとルミエは強風の渦を創り出して応戦する。

 二つの竜巻はぶつかり合い、瓦礫を巻き上げて視界を悪くしていた煙が消えた。


「…………」

「…………」


 そして、その風に紛れてフォンセとルミエも姿を隠していた。

 二人は互いの位置を理解していないが、ある程度は推測が出来るだろう。


「"炎の雨(ファイア・レイン)"……!」

「"炎の雨(ショーラ・マタル)"……!」


 ボソリ……フォンセとルミエは呟き、偶然にも同じ意味を持つ詠唱を唱えた。


 その刹那、


「「………………!!」」


 一筋の軌跡が描かれた瞬間、刹那の間に大量の炎が上から降り注ぐ。

 その炎は空気を焦がし、宮殿内部を炎上させた。


「成る程……」

「……考える事は同じか」


 再び呟くように言うフォンセとルミエ。

 話し方だけでは無く考える事も似ているようで、やはり魔王と何か関係があるのは確かだ。


「「…………。しょうがない。全て避けるのは無理だが取り敢えずこの雨は消すか」」


 二人は姿を見られるのを承知の上で片手を自分に向かって降り注ぐ炎の雨に向けてかざした。


「"ウォーター"!!」

「"マイヤ"!!」


 二人は同時に水魔術を放ち、自分へ向かう灼熱の雨を消火する。

 その消火によって再び水蒸気が作られ、フォンセとルミエはの視界は白く染まった。


「「そこか!」」


 そして、魔力の反応を感じた二人はそこへ向け、


「"土波(ランド・ウェイブ)"!!」

「"土波(トゥルバ・マウジ)"!!」


 床に手を当て、土を波のように変化させて放った。

 床は詠唱の文字通り波のように進み、床を砕いて変形させて突き進む。

 そして二つの波はぶつかり合い、轟音と共に瓦礫を舞い上げて互いが造り出した床を粉砕する。


「"ファイア"!!」

「"ショーラ"!!」


 二人は床が砕け散ったのを見、炎魔術を放つ。

 炎と炎がぶつかり、その炎が広がって宮殿内の気温を数十度上げた。

 まだ砕けていなかった床や天井、壁はその轟炎によって溶ける。


「"ウォーター"!!」

「"マイヤ"!!」


 次いで二人は水魔術を放出し、炎に熱せられた宮殿内を冷やすと同時に大きな水溜まりを形成した。

 急激に冷やされた宮殿は至るところにヒビが入り、最後には砕ける。


「"ウィンド"!!」

「"リヤーフ"!!」


 そして風魔術を使い、先程砕けた破片ごと互いを吹き飛ばそうと目論む二人。

 風と風がぶつかり、水溜まりの水が舞い上がってちょっとした嵐のようになる。


「…………!」

「…………!」


 先程まで互角、そして此処まで互角。何処までも互角の二人。

 二人はもう魔力が尽きるまで放とうと行動に出る。


「"ランド"!!」

「"トゥルバ"!!」


 土と土がぶつかって宮殿を更に砕き、


「"サンダー"!!」

「"ラアド"!!」


 いかづちいかづちがぶつかり合って宮殿内に電気を走らせる。


「"アイス"!!」

「"タルジュ"!!」


 続いてその全てが氷付けになって固まり──


「"爆発エクスプロージョン"!!!」

「"爆発インフィジャール"!!!」



  ──爆発が巻き起こって宮殿全てを吹き飛ばした。



 焼かれて濡れて、吹かれて砕かれ、痺れて凍った宮殿は、粉々になって粉砕する。

 しかし粉砕したとはいってもフォンセとルミエの居る空間のみで、ライたちの戦闘が不可能になる程では無い。


「ならば……!」

「次で……!」


「「決めてやるぞ!!」」


 そしてフォンセとルミエは互いに両手を突き出し、魔力を最大限に引き出す。


「……使うか……」


「……何をだ?」


 それだけ交わし、フォンセとルミエは込めた魔力を放出した。


「"四大元素(アルバァ・オンスル)"!!」


「"───の炎(───・ファイア)"!!」



 それらは耳をつんざくような轟音を響かせ、ルミエの"炎"・"水"・"風"・"土"の四大エレメントと、フォンセの禁断の本に書かれていた魔術が激突する。



 ──そして今度こそ……『宮殿全体が崩れ落ちた』。



 天井だった場所からはその材料である鉱物が落下しており、床に小さな穴を空ける。

 雨のような瓦礫はフォンセとルミエの周りの落ちていく。


「「……………………………………」」


 そして遠方には数人の姿が見えているが、フォンセとルミエはそれを見る気力が残っていなかった。

 二つの魔術の激突により、互いの身体がボロボロになったからだ。

 二人の服は破れており、そこから見える血液と生傷に痛々しさを覚える。


「…………」

「…………」


 バタン……。血を流した状態で倒れるフォンセとルミエ。

 しかし、フォンセはゆっくりと立ち上がる……。


「……僅差きんさで……私の勝ちだな……」


 そしてフォンセは、倒れているルミエに宣言するよう告げた。

 倒れたルミエは仰向けになり、息を切らしながらフォンセに話す。


「……そうだな……。その技……一体何処で覚え……『お前は今まで何処に居たのか』……」


「……なに?」


 気になる事を言ったルミエは、フォンセの言葉に返す事無くそのまま気を失う。

 フォンセには疑問が残ったが、結果としてはフォンセの勝利である。



 こうして、フォンセvsルミエの戦いはフォンセの勝利で幕を下ろした。

 残る相手は、幹部であるシャドウだけである。

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