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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第七章 暗い街“ウェフダー・マカーン”
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百二十六話 これから

 魔女? との一悶着を終えたライたちは、これからどうするか途方に暮れる。

 途方に暮れるといっても宿探しや他の場所を探索するという風にやる事もある為、ある程度は決まっていた。

 あとは何から行動するのかを考えるのみである。


「さて、これからの行動に付いてだけど……どうする? 宿を探すかまた適当な店に入るか……」


 そしてその事をレイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの五人に尋ねるライ。

 この街"ウェフダー・マカーン"は依然として怪しい雰囲気をかもし出しているので、今行っている全員行動に今のところ変更は無い。

 しかしそれでもこの街はそれなりの広さがある為、このまま全員行動を続けるのもどうかと思うところである。


「ふむ、そうだな……。まあ、やはり拠点となる宿を見つけるのが先決じゃないか? ここで立ち止まっていても来る者は少ない……というかいないからな」


 ライの言葉に答えたのはエマ。

 適当な店に入ったりするよりも先に宿を見つけた方が良いと言う。

 ライたちはそんなエマの話を静聴し、エマは言葉を続ける。


「それに、宿を見つければそこから行動する事が出来る。そしてフォンセチームとキュリテチームに別れれば別行動をしても何かあったら直ぐに宿へ帰れるからな」


 要するに、宿を見つける事が出来れば行動範囲が広がるという事。

 フォンセとキュリテが一度その場所へ寄れば、何かあった時直ぐに移動できる。

 つまり、何時ものように二チームで別れた場合、敵に襲われた時など一瞬で拠点となる宿へ戻る事が出来るのだ。

 キュリテは幹部とその側近に能力を明かせないが、監視の目が無さそうな宿ならバレる事無く超能力を使えるだろう。


「うん、確かにエマの言う通りだ。宿を見つける事が出来れば何時でも帰れるし窓から街の様子を一望する事も出来る。……何より俺たちの姿が隠せるから街の人々も出てくるかもしれない」


 それを聞き、ライはエマの提案に賛成する。宿一つでどれ程変わるか分からないが、行動範囲が広くなるのは事実である。


「うん、それが良いかも」

「ああ、となると宿探しが優先だな」

「……うん……賛成……」

「じゃ、行こっか♪ 私もこの街にはあまり来ないから案内できないけどね!」


 ライとエマの会話を聞いていたレイ、フォンセ、リヤン、キュリテも賛同する。

 キュリテの場合は少し違うかもしれないが、取り敢えず賛成意見だろう。

 そして、ライたちは宿を探す為に歩き出した。



*****



「此処は……宿だよな?」


「ああ、ちゃんと看板にも書いてあるみたいだ。……"ウェフダー・マカーン"・宿……とな」


 それから暗い雰囲気の街並みを眺めながら少し行き、宿っぽい建物の前に辿り着く。表に魔族はいないが、流石に宿などの経営はしている筈だ。


「じゃあ行こうか……」


 そしてライが進み、それに続いてレイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの五人も宿のような建物に入っていく。

 ライたちの予想は的中した。

 レイ、エマ、リヤン。そしてキュリテが珍しい物を見る目で見られたが、そういった経営はしっかりと行っているらしい。


「いやー……一時はどうなるかと思ったよ……寂れた街に私たち以外の生き物が居ないなんて結構怖いモノだねぇー」


 宿の部屋に着き、早速(くつろ)ぐキュリテはベッドの上で横になって同じ部屋のエマとレイに話す。


「そうだね……確かに何か違和感なのか分からない怖さがあったかも……」


 レイはキュリテの言葉に同意するように答える。

 "シャハル・カラズ"でのお化け屋敷も怖がっていた為、こういった雰囲気が苦手なのだろう。


「私的には心地の好いモノだったが……確かに普通の人間や魔族からしたら得体の知れない不気味さがあるかもな……。レイもキュリテも普通という立場から大きく掛け離れているかもしれないがな」


 対するエマだが、ヴァンパイアのエマは心地好いらしい。

 しかしレイとキュリテの気持ちも理解している為、同意するように頷いていた。


「もぉ……お姉さまったら~。本当にクールな御方だねぇ……」

「吸うぞ」

「冗談だよ~……本当に冗談が通じないなぁ~」


 そんなエマを見てからかうように話したキュリテは、エマの睨みに肩を震わせて返した。

 "シバくぞ"などの罵倒なら問題無いのだが、一度血と精気を吸われている為に"吸う"という言葉には恐怖心があるのだろう。

 

「ふぅ……。冗談ならその冗談の笑える箇所を教えて欲しいものだな……」


 キュリテの態度を見たエマは呆れたように返す。

 エマを除けば一番の最年長がキュリテなのだが、如何せんキュリテは子供っぽいところがある。


「アハハ……。……まあまあ、エマもキュリテも落ち着いて……は、いるけど……取り敢えずライたちの考えを待とうよ」


 そんなやり取りを見ていたレイは自然と暗い気持ちが抜け、エマとキュリテをなだめる。

 なだめるとはいっても、この二人が荒れている様子じゃないのはレイも理解していた。


「そうだな。先ずはライたちを待つか……それか私たちがライたちの部屋へ向かうか……まあ取り敢えず様子を見るか……」


「そうだねぇ♪」


 レイの言葉を聞いたエマは窓際へ近寄り、曇天の空を見上げてフッと笑う。

 キュリテはベッドで横になりながらレイとエマに返す。

 此方の三人はライたちの行動を待つ。



*****



 一方のライ、フォンセ、リヤンの部屋。

 然程さほど荷物は無いが、取り敢えず荷物をテーブルの上に置くライたち。

 ライ、フォンセ、リヤンとレイ、エマ、キュリテが泊まる予定の部屋は同じで、人数分のベッドがあり、窓際にはテーブルと椅子があった。

 無論の事ながらクローゼットもあって衣類を仕舞う事も出来る。つまり要するに、この世界で良く見掛ける宿という事だ。

 恐らくだが、客を快適にする為の構造だとほとんど同じ、似たり寄ったりな物となってしまうのだろう。


「さて……取り敢えずどうする? このままこの宿で少し休んでから行くか、もう行くか……」


 そして、椅子に座ってくつろいでいるライはフォンセとリヤンにこれからの事について尋ねる。

 この街に着いてからまだ数時間しか経っておらず体力もまだ残っているが、少し街の状況を整理して行動するのも悪くないと考えたのだ。


「ふむ……そうだな……。直ぐに行動するのも良いが……やはり少し話し合ってからの方がいい気もするな……」


「……えーと……ライたちに任せる……」


 フォンセはレイたちと話し合ってから行動する事と考え、リヤンはライたちに任せると言う。


「……そうか。なら……話し合ってからで良いか? この街について少しでも知っているキュリテに聞いた方が良さそうだしな」


 という事でフォンセの意見を参考にし、先ずライたちはある程度話し合ってから進める事にした。



*****



「──って事でレイたちの部屋にお邪魔するけど……どうする?」


「どうすると言われてもな……。キュリテに聞けば良いんじゃないか?」


 それから隣にあるレイ、エマ、キュリテの部屋に入ったライ。

 レイたちもくつろいでいたらしく、ベッドにキュリテ、二つの椅子にレイとエマが居た。

 エマはライに返し、苦笑を浮かべて返す。取り敢えずこの街の事はキュリテに尋ねれば良いと考えているのだろう。

 そしてキュリテだが、キュリテは少し考えてから話す。


「そうだねぇ……。まあ、魔族の国なら大体は分かるけど……それでも詳しく知らない事の方が多いからねー……」


 ライとエマに聞かれたキュリテは、困ったような顔をして頬を掻いていた。

 幹部の側近であるキュリテとて、"シャハル・カラズ"のように行った事の無い街も多い。

 この街"ウェフダー・マカーン"もキュリテがあまり行った事の無い街の一つで、あまり詳しく知らないと言う。


「そうか。……まあ、情報が無いよりはマシだからな。知っている事は教えてくれないか?」


 その事を聞いたライはキュリテに改めて尋ねる。

 0と1では大きく違う為、人に聞け無さそうなこの街だからこそ情報が重要なのだ。


「知っている事ねぇ……。特に無いけど……強いて言えば魔法・魔術と科学……そのどちらかがかなり発展している訳じゃ無い……かなぁ? 良くも悪くもバランス的……ってね? ……まあ、あとは何処にでもある普通の街で……だからシャドウさんは観光客を集めるのが大変なんだろうねー。この街は魔族の国にある平均的な街の集合体みたいな物だったし……だからこんな不気味な景観にしたのかなぁ。逆効果だったらしいけど……」


 キュリテがこの街に来たのは、まだこの街が不気味な景観じゃなかった時らしい。

 なので有名な物やこの街での戦い、その他諸々を詳しく知らないのだろう。


「成る程……今の前は特徴が無いのが特徴だったのか……。じゃあ、やっぱり自分の足で見て回らなきゃならなそうだな……」


 ハハ……と、力の無い薄い笑みを浮かべるライ。

 ライはレイたちと話し合ってから行動しようと考えていたのだが、話し合いの結果は特に無かった事へ思わず笑ってしまったのだ。


「……じゃあまあ、折角だし今の部屋メンバーでこの街を探索しようか? 幸いお互いのメンバーに移動用の技を使える者がいるし……」


 そして話し合いと言う話し合いじゃない話し合いを終えたライは、頃合いを見て話、ついでに行動するメンバーも決めた。


「うん、そうだね。百聞は一見にしかずって言うし、良いんじゃない?」

「まあ確かにそうだな。それが一番手っ取り早い方法かもしれぬ」

「ああ、意義なし」

「……同じく……」

「賛せーい!」


 レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテからも反対の意見は出ず全員がライの言葉に同意した。

 そして話し合いは僅か数分で終わり、ライたちは宿の外に出て行く。



*****



 レイたちと別れて行動するライ、フォンセ、リヤンの三人は、宿の外に出て道を歩いていた。

 ほんの数分とはいえ身を潜めていた効果があったのか、"ウェフダー・マカーン"の魔族達もちらほら外で行動している者も居た。

 しかし、それでもやはり外からの客が珍しいのか、ライたちを見る魔族達の目は物珍しさがあった。

 とはいえ、怪奇の目でという訳でも無いので影響は無さそうだ。


「成る程なあ……やっぱ客ってのは結構珍しいものなのか……。……というか……此処の住人は完全にこの街の雰囲気に飲まれているな……」


 道行く人々を眺めるライはその者達の表情を一瞥し、その顔色や動きから平均的な性格を推測していた。

 大体の者がうつむいており、全体的に明るい雰囲気の魔族らしからない行動に思える。


「うーん……この調子では話し掛けようにも話し掛けられないな……」


 その重苦しいような何とも言えない雰囲気はフォンセも犇々(ひしひし)と感じており、街の人々には話し掛け辛い雰囲気だった。


「…………。…………」


 リヤンに至っては、元々リヤン本人が人見知りなので話し掛ける掛けない以前の問題である。


「近くの店に入ろうにも……なぁ……。うん、一噌いっその事一回カフェ的な場所を見つけて俺たちで話し合ってから行動するか?」


 全体的に暗い雰囲気。それはそこに居るだけで気が滅入りそうな雰囲気だった。

 行動する為に宿から外へ出たのだが、やはり一旦体勢を立て直すという意味でも行動メンバー同士で話し合った方が良いのかもしれない。


「……って思うんだけど……フォンセとリヤンはどうする?」


 そしてその思い付いた事をフォンセとリヤンに尋ねるライ。

 何もせずに歩いているだけでは事が進まない。なのでいささか早過ぎるが、休憩も兼ねてカフェに寄ろうと提案したのだ。


「ああ、良いかもな。私は"タウィーザ・バラド"で貰ったこの本を改めて読んでみたい」


 先ず返したのはフォンセ。"シャハル・カラズ"の前の街"タウィーザ・バラド"で貰った禁断の本を改めて調べたいとの事。

 呪文しか書かれていないがその呪文を見るだけでも何か分かるかもしれないと考えたのだろうか。


「……私は……ライとフォンセに任せる……」


 そして次に返すのはリヤン。リヤンの場合は一人で行動どうこうでは無く、ただ何となく周りの者に任せていのだ。


「じゃあ、そんな風の店を見つけ……」


 二人の言葉に返し、言葉を続けようとしたライ。

 そんなライの言葉は途中で止まる。


「……成る程。ナイスタイミングだな」


 それはカフェのような店を探す前に、テーブルと椅子が並べられている光景が広がっていたからだ。

 つまり、探す手間がはぶけて目的の店を見つけたという事。


「良し。行くか……」


 そしてライ、フォンセ、リヤンの三人は店内へ入って行く。


「おー、やっと普通の店に辿り着いた。まあ、二つ目だけどな」


 その店は何処にでもあるような喫茶店で、小綺麗に整理された店内だった。

 三十個程のテーブルと椅子に店員が居るカウンター。そこに余計な飾りなどは無く、シンプルな景観だ。

 無論、客などらず繁盛していないのかそれともこれから集まるのか分からない状況である。

 何はともあれ、客が居ないというのはそれだけ集中できる事だ。

 取り敢えずライたちは適当な飲食物を頼み、椅子に座って楽な体勢になった。


「……さて、フォンセは本を調べるとして……俺たちはどうする?」


「……え?」


 楽な体勢になったところで、ライはリヤンにどうするかを尋ねる。突然質問されたリヤンはビクッと肩を震わせて反応を示した。質問されるとは思っていなかったのだろう。


「ほら、俺たちは特にする事も無いだろ? まあ、このまま此処でのんびりするのも良いけど……やっぱり何かしていないと落ち着かなくてさ……」


 そんなリヤンに向けて言葉を続けるライ。ライは何となく落ち着かないと言う。そんなライに対し、リヤンは少し考えながらも言葉を発した。


「……えーと……。あ、じゃあさっき貰った赤い石を調べたらどうかな……? ほら、珍しい石らしいし……」


「……あ、そうだ。それ良いな。……いや待てよ……それじゃリヤンは?」


 リヤンの提案は先程魔女? に貰った賢者の石の欠片を調べるという事。

 確かにそれは良い案だが、ライまでが賢者の石を調べるとリヤンは何もする事が無くなってしまう。

 つまり暇になるという事だ。


「……あ、私は別に……」


 リヤンが何かを言おうとした時──


「……なら、私と話さないか?」


「……?」

「「……!」」


 ──何者かがリヤンへ向けて話し掛けた。積極的に話し掛けるなど、この街の者にしては珍しい限りだ。

 ライ、フォンセ、リヤンはそちらを見てその者の姿を確認する。


「……アンタは……?」


 その者は艶やかな黒髪をしており、整った顔立ちに真っ直ぐな目。旗から見れば話しかけ辛い雰囲気が漂っているが、俗に言う美人という部類に入る女性だった。

 そしてその姿を確認したライはその者に名を尋ねる。


「私か? ……ハハ、まあ突然話し掛けたし疑問に思うのも無理は無い。良し、名乗ろう私の名は────」



 そしてその者は、衝撃的な名前を名乗る事となる。



「────『ルミエ・アステリ(・・・・)』。この街の幹部の側近をしている者だ」


「「な、何ぃっ!?」」


 その言葉に大きな反応を示すライとフォンセ。リヤンはキョトンとした表情をしている。

 何故ライとフォンセがこれ程までの衝撃を受けたのかと言うと──"アステリ"とは、『魔王の子孫であるフォンセの名字だったから』である。

 しかしただの同性という可能性もあるが、ライとフォンセは衝撃的な名字を聞いてそこまで思考が回らなかった。


「「……」」

「……! それって……」


「……?」


 アステリと名乗った者はキョトンとした表情で驚愕のあまり絶句しているライ、フォンセと何かに気付いたリヤンを見やる。

 ライ、フォンセ、リヤンの三人は、もしかしたらもしかするかもしれない者に出会った。

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