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元・魔王と行く異世界征服旅  作者: 天空海濶
第六章 侍の街“シャハル・カラズ”
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百十二話 戦闘方法

「良し、じゃあ行くか……!」


 朝食を摂り終えたライは、少し休憩したあとに立ち上がりモバーレズの元へ向かう事を提案する。

 時刻は昼過ぎ、戦闘を行うのならばちょうど良い時間帯なのかもしれない。


「うん、分かった。行こっか!」

「……うん……」

「そうだな」

「ああ」

「次の相手はザラーム(兄)さんかぁ……。結構大変な戦いになりそう……」


 ガタッガタッと、ライに続いて椅子から立ち上がるレイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの五人。


「そういや、俺は今まで幹部を二人倒したから幹部が強いのは分かるけど……幹部達ってその強さにバラつきがあったりするのか? "レイル・マディーナ"のダークと"イルム・アスリー"のゼッルは戦闘メインだったけど……"タウィーザ・バラド"のアスワドは戦闘を好む感じじゃなかったし……」


 そしていざ行こうとした時、ライはふと気になった事をキュリテに尋ねる。

 ライは今までで三つの国を征服しており、その国を収める幹部二人と戦っている。もう一人はレース形式だったので戦っておらず、今から向かうもう一人は本気で戦った訳ではない。

 何はともあれ、その者達が魔族の国全体でどれ程の位置に立っているのか気になったのだ。


「あー、そう言えば確かにライ君はこの国出身じゃないからよく分からない事かぁ……うん。今更でも教えた方が良いかな……えーっとねぇ……」


 ライに聞かれ、納得したように話すキュリテ。

 キュリテ自身は魔族の国側だが、今はライの仲間。なので、ライに詳しく伝える為にキュリテは言葉を続ける。


「先ず私の街を拠点にしているダークさん。ダークさんは魔族の国の幹部六人の中でも強さが結構上の位置に居て……三本の指に入るくらいはあるねぇ……」


 先ずキュリテが説明したのは自身が一番詳しく分かっているダーク。

 この国全体でもかなりの実力者らしい。確かに魔王の力を三割纏っていたライと互角なのは凄い事だろう。

 魔王の力三割と互角ならば支配者やレヴィアタン、ぬらりひょん、大天狗。などと言った実力者以外になら割りと余裕で勝てるほどだからだ。


「へえ? まあ確かに強かったし……上位に食い込む実力者でもおかしく無いな」


 キュリテの説明を聞いて納得したように頷くライ。素の身体能力があれだったので、合点が行く強さだったという事。

 しかし、話を聞いたライは一つ気になった事があった。


「そういや、"レイル・マディーナ"は俺たちが始めに寄った街だけど……俺たちが始めに寄ったって事は、他国との距離が近いって事だろ? 割りと危険そうな気がするけど……どうなんだ? いや、むしろ他の国に近い場所へ幹部の拠点を作る事に意味があるのか?」


 それは"レイル・マディーナ"の位置だ。

 ライたちは人間の国から魔族の国に入った。つまり、"レイル・マディーナ"の位置は人間の国に近いという事。

 今一番力を持っている種族は人間なので、近接に値するのはそれなりに危険を伴うかもしれないと考えたライ。


「アハハ、うん。ライ君の言う通りだね。……力のある国が近くにあるなら、敢えて力の強い幹部を置けば国に被害が起きにくいの♪」


  そんなライに向け、キュリテは笑って返す。

 曰くライの予想はあっていたらしく、力の強い国があるからこそ力の強い幹部をそこに配置させたという。


「へえ。……まあ、最近は無い事だけど、昔は頻繁に他種族同士の争いがあったらしいならなあ……無闇に争わない為にそういった実力者を配置する必要性もあるのか」


 ライはその話を参考にし、世界征服を成功させたあかつきには争い事を起こさない為、実力者を配置させる場所を考える。

 その場所によってたみが安心できるからだ。

 現在世界を収めている支配者は自分に関係の無い事を気にしていないが、ライは出来る限り目を配らせると考えているのだ。


「……っと、話が逸れたな。……取り敢えず、俺が今までで戦った幹部の中では、ダークが一番の実力者って事で良いんだな?」


 ダークの事を聞き終えたライは確認を取るようにキュリテへ言う。

 それに対し、キュリテは頷いて返した。


「うん、そうだよ。……次はゼッルさんにアスワドさん。そしてザラーム(兄)さんね。……他の二人は……やっぱりまだ明かせないかな」


 ダークの話を終えたキュリテ。次はゼッル、アスワド、ザラーム(兄)の事を話すと言う。

 全六人なので、他にも二人残っているが、ライたちにまだその姿を見せていない二人の事を話すのは失礼だと考え、敢えて黙認した。

 今はライたちの味方とはいえ、出身はこの国の街。地位が高い者の事はそう易々と教えられないのだ。ダークたちも地位が高いが、まあライたちと既に出会っているので良いだろう。


「えーと……純粋な力の強さで言えばダークさん、ザラーム(兄)さん、ゼッルさんにアスワドさん……の順番かな? 武器がありならダークさん、ザラーム(兄)さんが同じくらいそしてアスワドさんもゼッルさんと同じくらいになるね。……あと、魔力の高さはアスワドさんとゼッルさんが同じくらいで……残り二人も同じくらい……。速さはほうきがありならダークさん、アスワドさん、ザラーム(兄)さん、ゼッルさん……かなぁ」


 詳しく知らないのか、はたまた話すのが面倒になったのか、キュリテは淡々と強さの順だけを纏めてつづった。

 それを聞いていたライは腕を組ながら返す。


「成る程な。取り敢えずそのザラーム……つまりモバーレズはダークよりは力が少しだけ弱い、けど刀を使うからダークと同程度の強さになる(……ダークもアスワドも使わなかったけど……魔王の技を使ってくる可能性もあるか……)」


 キュリテの言葉に返しながらゼッルが使った魔王の技を思い出すライ。

 ダークの場合は突然攻めて来、ゾフルの反乱? もあったから使わなかった。そしてアスワドもレースの最中だった為に魔王を使わなかったと考える。

 しかし、そもそもその二人が使えなかった可能性もある。

 そんな事を考えながら、ライはキュリテの言葉に返すよう言葉を続ける。


「それにしても、結構分かれているな。やっぱ幹部達の強さには同じくらいの者を集めているのか」


「うん。まあ、そうだよねー。力量に大きな差があると幹部としての役割を果たせないからね♪」


 キュリテが話した通りだと幹部達に大きな差は無く、武器や工夫によって勝てるようになっている。

 つまり、幹部達というのはその戦力に差が無いのだろう。


「ありがとうキュリテ。お陰で幹部達の立ち位置が分かった。戦略を練るのには使えなさそうだけど……何か役に立つかもしれない」


 こうしてキュリテの説明を聞き終えたライ。

 そして、ライ、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの六人は、今度こそモバーレズの元へ向かうのだった。



*****



 モバーレズの元に向かっているライたち。その道中では、"シャハル・カラズ"の魔族達が百鬼夜行によって砕かれた建物の修繕や瓦礫の撤去などと、街の修復をしていた。


「たった半日足らずで此処まで回復するとはな……マンティコアの時と言い、ベヒモスの時と言い、修復能力が高いな……。まあその二つは俺たち……フォンセとキュリテが主に手伝ったからな……」


 街の様子を眺めて感想を言うライ。

 "レイル・マディーナ"のマンティコア騒動と"タウィーザ・バラド"のベヒモス騒動ではライたちが復興を手伝ったが、"シャハル・カラズ"ではライたちは眠っていた。

 魔法・魔術が万能なのは有名だが、それにしても復興が早いだろう。

 街の様子や街に咲き乱れた桜、田の近くを流れる川。それらを眺めながら進んだライたちは、モバーレズの城へと辿り着いた。


「……何か用か? 少年よ」

「……何処かで見た顔だな……」


 カシャンと纏った鎧を鳴らし、長刀坂なぎなたを持った兵士に止められるライたち。

 この者達はこの城の見張り役だろう。ライたちの事は知らないらしく、ライたちにとっては都合が良い。


「コイツら……三人以外は魔族じゃねェな……」

「あれ? 貴女……"レイル・マディーナ"幹部の側近……」


 そして、レイ、エマ、リヤンは魔族では無いと見破りる兵士。

 どうやらライたちの事は知らないようだが、キュリテの事は知っていたらしい。


「そう言えば……"イルム・アスリー"が征服されたと言う話を聞いた……それには側近が関わっていたとか……」


「だが、どういう訳かその街の幹部と側近はそれを認めているとか……」


 そして、"イルム・アスリー"の誰かが告げ口したであろう事も知っていたようだ。

 幹部とその側近が認めているという事から、ゼッルたちでは無いようであった。


「そうか。取り敢えず通してくれぬか?」


「誰が……。……!」

「……!」


 刹那、話し掛けたエマが兵士の目を睨み付け、兵士二人の動きが停止する。

 兵士達は断ろうとしたが、それを行うよりもエマの技が先に決まったようだ。


「良し。行こうか」


「「「うん」」」

「「ああ」」


 それを見たライはヴァンパイアのエマが持つ能力──"催眠"だと理解し、レイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテの五人に先を促す。

 そして門をくぐり、城の中に入っていくライたち。


「さて、城に入ったは良いけど……結構広いな……まあ当たり前か……」


「ああ、むしろ広くなかったら問題だろうな」


 城の中に入ったライは辺りを見渡し、内部の様子を眺めていた。そんなライの様子にクスリと笑って返すエマ。

 そしてその城は縦に大きい為、上を目指せば良いという事は分かる。だが、上へ行く為の階段などが見つけにくかった。


「破壊して進むのはちょっとアレだしな……まあ、のんびり行くとするかぁ……」


「そうだねえ」


 辺りを一瞥し終えたあと、特に何も無さそうな為、肩の力を抜いて呟くライとそれに返すレイ。

 そして取り敢えず入り口から離れ、兵士達を正気に戻しておいた。

 それから城の中を探索するライたち六人。

 城は全体的に畳仕立てで、ライたちが泊まった宿と似たような雰囲気だった。

 そもそも、この街全体がそんな雰囲気だが、まあそれは置いておく。

 今は消えているが行灯あんどんもあり、夜はこれで廊下を見えるようにするのだろう。


「あ、ほら……ライ。カーテンじゃなくて木の枠に紙を貼り付けた物で風避けとかの役割を果たしているみたい」


「……本当だ。……へえ、こんな造りがねえ……」


 レイが指差したのは部屋の出入口? にある、木から造った木枠に合わせたの紙を貼り、風や光を避ける為の戸? だ。

 水に濡れたら破れそうな感じだが、掃除の時はどうするのかと思うところである。

 変わった造りの戸や明かりをともす為の行灯あんどん、上を照らす蝋燭ろくそくを立てる為の台。と、夜に来ても雰囲気がありそうな物が多かった。


「で、この部屋か……?」


 それからしばらく歩いたライたちは階段を見つけて上がり、見つけて上がりを繰り返し、一際豪華な部屋の前に辿り着いた。

 その部屋の扉はさっき見た木の枠に紙を張り付けた物があり、その扉は両方から開く仕組みのようだ。


「だろうな……気配を感じる。というか、ライも気付いている筈だ」


 ライの言葉に返すエマ。中には人の気配を感じ、普通の魔族とは違う感じからモバーレズと側近、あとついでにザラームが居る事が分かる。


「ハハ、言えてる。彼方さんも気付いているだろうな」


 そう言って笑いながら扉に手を掛けるライ。

 扉は押戸では無く、引き戸らしい。そしてライはその扉を横に引いて開けた。



*****



「ん? テメェらは……。何か用か?」


 そこの部屋に居たモバーレズはライたち六人を一瞥し、訝しげな表情をしてライたちに尋ねる。

 モバーレズも睡眠を取っていたのか、モバーレズは刀を帯刀しておらず、モバーレズの後ろに愛刀が置いてあった。


「クク……成る程……」


 そんなモバーレズの横に座っているザラーム。

 ザラームは笑みを浮かべ、これから起こる事柄を予想して楽しげな表情をする。


「ああ、アンタにとっても……俺たちにとっても大事な話し合いだ」


 ライは不敵な笑みを浮かべ、殺気をかもし出しながら言葉を発した。


「成る程。確かにコイツァただ事じゃねェな……? 殺気全開って事は……穏やかな話じゃねェのがよく分かる……ククク……言ってみろよ……」


 モバーレズは背後に手を回して刀を手に取り、此方も殺気を解放して話す。


「アンタ程の地位に立っているなら聞いている筈だ……。門番も聞いていたからな……。魔族の国にある街々を征服して歩くやからが居るってな……?」


 そんなモバーレズに対し、軽薄な笑みを浮かべて言葉をつづるライ。

 モバーレズも笑みを浮かべて返す。


「ほう? つまりこういう事か……? その一行がテメェら……ってな?」


「話が早くて助かるよ。……つまり、言いたい事は分かるよな?」


 笑みを浮かべるモバーレズに笑みを浮かべて返すライ。

 二人は邪悪な笑顔で会話を続けている。


「ああ、テメェはこの街も征服するつもり……だからさしずめ、俺に勝負を挑みたいってところだろ?」


「……ご名答……」


 物騒な会話を広げるライとモバーレズだが、モバーレズの側近とザラーム、そしてレイ、エマ、フォンセ、リヤン、キュリテは動き出す気配がまだ無かった。


「オーケー……受けて立ってやるよ……」


 そして、ライの予想通りモバーレズはその戦いに乗ってきた。

 しかし、問題はこれからだ。日程が何時になるのか、についてである。まあ数ヵ月後でも問題は無さそうだが、最も重要な事はモバーレズ達がどのような戦闘方法なのかである。


「そうか。……じゃあ、日程や戦闘方法はアンタらに決めて貰おう。最も得意な戦い方で勝利するのが一番だからな」


 ニヤリと挑発的に笑ってモバーレズに笑い掛けるライ。ライは何時も通り、相手の得意とする戦法で受けると言う。


「そうだなァ……」


 ライの言葉を聞き、挑発に乗る事にしたモバーレズは戦法を考える。

 本人的には自分一人の近接戦が得意なのだろうが、今回はライたち六人と"シャハル・カラズ"その物の戦い。

 なのでモバーレズの勝手で決めるという事にはいかないのだ。


「良し。決めた……今回の戦いは……」


「………………」

「「「…………」」」

「「…………」」


 そして、どのような方法で戦闘を行うか決めたモバーレズはそう言い、不敵な笑みを浮かべてルールを話した。



「──"攻城戦"だ……!」



 ──その瞬間、"シャハル・カラズ"での戦いは"攻城戦"に決まった。



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