切り捨てた爪のそれはあなたなのでしょうか?それともただの爪なのでしょうか
「姉じゃなければ結婚できるのに」
目の中で渦を描きながら弟は嘆いたものだった
嗚呼、シスコンだった
「良い色だろ、姉さんの肌みたいだ」
自ら染めたハンカチを頬ずりしていた
嗚呼、シスコンだ
「もったいないから貰ったんだ」
黒い束を愛おしそうに整えていた
嗚呼、シスコンだ
「姉さんにとてもお似合いですね」
蕩けた目で紹介していた恋人を見ていた
アレ?シスコンでは無かった
翌日、恋人は何者かに襲われた。
鼻を削ぎ落とされたのだ
私は逮捕されて裁判にかけられた
弁護士の弟は私を無罪に導いた
「姉さん、いやマミが後少しで完成するんだよ」
私の前には目を閉じた私がいた
美容室で捨てた髪は肌色に染められた布の体に繋げられ
フランケンシュタインのような繋ぎ目も肌色の糸で隠している
私は弟の狂気を非難した
「僕は知っているよ。近親婚は駄目だってことは」
弟は厚い刃のナイフを取り出して
「だから作った姉さんを、いやマミを」
慈しむようにもう一人の私を見る
「でも鼻と目は再現できなかった」
素早い動きで私を押し倒す。逃げられないように
「鼻は義兄さんから貰った」
純粋な目で私を見ている
「だから」
いや、私の瞳を見ているのだ
「分けてちょうだい。お姉ちゃん」
それからのことです
私の世界はいつも暗闇です
でも、弟の笑顔だけは目に映るような気がします
愛情溢れたその微笑みだけは何故か視界に映るのです