プロローグ 17歳 始まりの夜
初投稿です、よろしくお願いいたします。
短編と迷ったのですが、続きの構想はあるので連載にしてみようと思います。
よろしければ目を通してみて下さい、続きが気になるかたがいれば幸いです。
私が生きるこの世界には、ぶっ壊したいものが多すぎる…
16歳最後の夜に、私はひとつの決断を迫られていた。
他の誰でもなく自分に。いや…「もう一人の自分」と言うべきかな。
「もう一人の私」と毎日頑張ってきた。鏡を覗けばいつだって応えてくれた。このどうしようもない世界、そんなことないはずなのに、二人だけで耐えてきた、そう思うようになってきてた。
そして彼女は私にささやいた。
「もう、終わりにしよう…?」
私が疲れているのなら、彼女もまたそうなんだ。二人はいつも一緒。
彼女がそうささやくのなら、その言葉は私の言葉でもある。
そっか、もういいんだね…私が小さく頷くと彼女も頷いた。
17歳を迎える夜に、全てを終わりにしよう、そう思った。
そしてその夜が来て。
私は鏡の前にいた。水をはった浴槽と、かたわらに最低限の道具と。
お母さんは夜勤で、お姉ちゃんは泊まり込みの論文制作で家にいない。皮肉なことに絶好の機会だった。
家族への言葉に出来ない気持ち、闇への恐怖、この世界へのわずかな執着…それらがこらえきれない思いとなって涙へと変わる。
目を閉じたままなのに、溢れて止まらなかった。
…もうすぐ、日付が変わる。私は17歳になる。そして終わる。
ティロリン
道具と一緒に並べてあった、スマホが鳴る。
それは日付が変わったことを意味するアラーム…のはずだったが、違っていた。
無二の親友、ひなからのライン。
「お誕生日おめでとう!憧れの17歳、これからもよろしくね!」
涙で文字がにじむ。ごめんね…とスマホに向かって呟いた。
明日ひなはどんな思いをするんだろう、そんなことも頭をよぎったが考えるのを無理矢理に拒絶した。
私はみんなを裏切る、その事実を考えたくなかった、考えてしまえばまたここにとどまってしまうから。
ピピピピッ…ピピピピッ…
運命のアラームがなる。
大きく息をついて、自分を整える。
憧れの17歳、おめでとう…と顔を上げた。
私がいない。
鏡の中にいるはずのもう一人の私が、どこにも。
パニックになる、いつも一緒のはずなのに!
刹那、頭のなかに声が響く。
『おめでとう、さくら!』
その一言と同時に、目の前にゆっくりと降りてきたのは、もう一人の私。
見覚えのあるその顔、ただ鏡の中にいたときと別人に見えるのは、彼女が満面の笑みを浮かべているからだろうとわかった。
つられて、私も笑った。こんな笑顔をみせたいと思ったのかもしれない。
そしてこの瞬間から、私と、新しいもう一人の私との、怒濤の一年が始まったんだ…