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第四話 サイクロプスとバッドエンド

 

 次は俺を狙って、【サイクロプス】が攻撃をしてきた。

 赤い大きな斬撃のエフェクトが、俺に向かって伸びてくる。

 俺は【サイクロプス】の攻撃をかわし、一旦距離を取った。

 視界の隅には、拓男のHPが0になっているのが見える。


「小田君! 小田君! 【ヒール】! 【ヒール】!」

「まどか! 危ないからこっちへ!」


 田中まどかが泣きながら、拓男に向けて必死に【ヒール】をしている。

 回復スキルを受けて光り輝く拓男だが、もちろんピクリとも動かない。

 拓男のHPも、0のままだ。

 小林楓が田中まどかの腕を引き、俺と【サイクロプス】から離れた。


「高橋! どうしよう!?」

「とっ、とにかく、二人は下がってて!」

「わっ、分かった!」


 小林楓の返答を聞き、俺は剣を構え直した。

 【サイクロプス】の攻撃は、正直栄倉たちの攻撃より遅い。

 なんとかなりそうだが、拓男を一撃で葬った攻撃力だ。

 一度でもミスをすれば、あの世行きだろう。


 ヒットアンドアウェイで、慎重に攻撃をしていこうと思った、その時であった。


「キャアアアアアアア!!」


 なんと【サイクロプス】が、田中まどかたちの方へ走り出したのだ。

 俺は必死で追いかけたが、赤い斬撃のエフェクトが、田中まどかにかかっているのが見える。


「間に合えええええええ!!」


 俺は田中まどかを押し、変わりにその赤いエフェクトの中に入った。

 もう、攻撃をかわせる余裕はない。

 【サイクロプス】の大きな斧が、俺を斬ろうとした瞬間、目の前が真っ暗になった。



 気がつくと、俺は妖精に出会った、緑道にあるベンチに座っていた。

 急にお酒を飲んだ後のような、気持ち悪い感覚に襲われる。


「お帰りなさい! 人間さん!」

「……あれっ? 妖精のリアだっけ? あれっ? サイクロプスは?」

「あらら……バッドエンドだったみたいですね」

「……えっ?」


 リアの話によると、俺は夢を見ていたようだ。


 なんとリアは、人間を過去に戻す仕事はしておらず、酔っ払った人間を相手に、ひと時の夢を見させる仕事をしているとのこと。

 大体は三十分くらい夢を見させてくれて、稀にバッドエンドで早く目が覚めてしまうらしい。

 そう、あのファンタジーな世界は、全部この緑道のベンチの上で見た夢だったのだ。


「……あの二日間が夢? リアと出会ってから、どれぐらい時間が経った?」

「まだ、二分ぐらいですかね? バッドエンドだったから、早かったほうですよ!」

「あんな細かい設定もあったのに!? あれが小説なら、四話ぐらいのボリュームはあったぞ!?」

「よく分かりませんが、私の構築力は凄いでしょう!」

「……はぁ」


 ため息をついた俺は、その後にあることを思いついた。


「楽しんでもらえましたか? 人間さん!」

「ああ、楽しかったよ」

「そうですか! よかった!」

「リアのおかげで、やりたいことができた」


 俺は立ち上がって、大きく背伸びをする。

 そんな俺を、リアは笑顔で見ていた。


「じゃあな、リア。今日はありがとう」

「どういたしまして! また出会った時はよろしくです!」

「……あのさ、リア。本当は人間を過去に戻す力、あったりする?」

「……ふふっ、企業秘密です!」


 そう言い残して、リアは草むらの中へと消えていった。

 もう、今からは夢ではないだろう。

 俺は微笑みながら、再び帰宅の徒についた。



 ――次の日。

 今日は休日だ。

 俺は少し二日酔いだったが、朝起きてすぐにパソコンを起動した。

 そして、あるサイトのページを開く。


 そのサイトの名前は、小説投稿サイトの【小説家になるぜ】、通称【なるぜ】だ。


「……アカウント登録完了っと」


 そう、俺は昨日見た夢を題材に、小説を書くことにしたのだ。


「……小説のタイトルは、こうだな」


 俺はメモ帳を開き、ある文字をメモして、それを読み上げた。




「過去に戻ったら、ファンタジーな世界になっていました」




 これでいいだろう。


 こうしてまた、一人のファンタジー小説家が誕生したみたいだ……ってところか。




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