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第一話 ステータスフォンとジョブチェンジ

 

 美樹が、自分のステホをタップしだした。

 何回かフリックをした後、美樹の手に何処からともなく杖が現れる。


「ほら、お兄ちゃんも剣!」

「……あっ、はい。分かりました」

「なんで敬語なのよ!?」


 動揺しながら、自分のステホを取り出し、起動をしてみる。

 画面には、三つの項目が書かれていた。


 ステータス

 インベントリ

 オプション


 ……まさに、ファンタジー。

 いや、この辺はゲームか。

 たぶん剣は、インベントリに入っているだろう。

 ゲームは大好きだから、大体は分かる。

 俺は、インベントリの項目をタップする。

 すると、筆記用具や、教科書などの文字がズラッと現れた。

 フリックして、見習い戦士の剣というのを見つける。

 ビンゴ、これだろう。

 これまた、その文字をタップしてみる。


「うおっ!」


 目の前に鞘に収まった剣が現れ、その剣を手に持つ。


「いってきまーす!」


 元気に挨拶をする美樹と共に、家の外へと出る。

 俺はまたステホを起動し、次はステータスの項目をタップした。


 名前 高橋 正樹


 クラス 剣系 見習い戦士


 性別 男


 レベル 1


 HP(ヒットポイント) 250/250

 SP(ソードポイント) 50/50


 STR(力) 5

 VIT(体力) 10

 INT(賢さ) 4

 MND(精神力) 3

 DEX(器用さ) 2

 AGI(素早さ) 3


 E(装備) 見習い戦士の剣 SPD(速さ) 1

 

 これが、俺のステータスか。

 見かたはなんとなく分かるが、ゲーム好きだからいろいろと気になるところがある。

 杖にまたがる美樹に、聞いてみることにした。


「……まったく、寝ぼけすぎ!」


 呆れる美樹に詳しく聞くと、まず剣系とは、右利き、左利き、みたいに、生まれる前から決まっている、その人の系統とのこと。

 俺は剣系で、美樹は魔法系。

 だから俺は剣を持ち、美樹は杖を持っているらしい。


 次はレベル。

 最大6まであり、RPGみたいに、簡単には上がらないとのこと。

 一般人はレベル2、3が限界で、レベル4以上になると、天才や超人な人たちらしい。


 次はHPやSTRなどの数値。

 HP、SPは最大999。

 HPが九割減ると気絶、全部減ると死亡。

 減っても、体を休めたりすれば回復するとのこと。

 まぁ、これは分かる。


 SPとは剣系専用パラメーターらしく、魔法系のパラメーターはRP(ロッドポイント)

 これは、スキルなどを使った時に消費されるらしい。

 STRなどの数値は、最大99。

 まぁ、これも分かる。


 SPDの数値は、最大5。

 その剣の、速さの数値とのこと。

 剣のCMの意味が、ようやく分かった。

 いい剣だと、SPDの数値が高いのだろう。


 まさに、ゲームの世界だ……。


 美樹がフワリと浮き、先に進みだした。

 美樹の話によると、イメージをするだけで運転ができ、剣も杖も足が着くくらいしか浮遊しないので、飛行はできないとのこと。

 俺も剣を地面に置き、フワリ浮いた剣の上に恐る恐る乗る。


 怖がる俺とは裏腹に、イメージ通りに剣は進みだした。

 某映画のような、浮遊したスケートボードに乗っている感覚だ。

 意外と簡単に乗れて、凄く気持ちがいい。

 車などは普通に走っていて、ファンタジーな世界といっても、街中は元の世界と変わらない。

 違うのは、俺達みたいに剣や杖で、浮遊している人がいるくらいだ。


「そういえば、お兄ちゃんは今日から、ちゃんとしたジョブにつけるね!」

「えっ?」

 

 またまた寝ぼけた振りをして、美樹にいろいろと聞く。

 この時代……この時代でいいか。

 この時代では高校に入学をすると、みんな見習い戦士のジョブになり、同時にステホを渡されるとのこと。

 高校二年生になると、見習い戦士からジョブチェンジをして、ちゃんとしたジョブにつけるらしい。


 剣系は、片手剣と盾を持ち、万能型の【ナイト】。

 両手剣を持ち、圧倒的な攻撃力を誇る【ウォリアー】。

 短剣を持ち、素早い動きが魅力の【シーフ】のどれか。


 魔法系は、火、氷、雷の攻撃魔法を扱える【ソーサラー】。

 回復魔法で、味方を癒す【プリースト】。

 補助魔法で、味方を援護する【クレリック】のどれか。


 どのジョブになるかは、その人の持つ才能から自動的に判断され、決まるとのこと。

 ちゃんとしたジョブにつくと、スキルも覚え、その時からレベルも上がり出すらしい。


 スキルも数多く存在し、ジョブと同じくその人の才能で覚えるスキルが決まるとのこと。

 例えば同じ【ナイト】の人でも、剣スキルを特化で覚える人もいれば、盾スキルを特化で覚える人。

 【ソーサラー】の人でも、火魔法が得意な人と、氷魔法が得意な人。

 こんな風に、分かれるらしい。


 最後に、ジョブにつくと、剣と杖に精霊が宿るみたいだ。

 剣精霊(ソードスピリッツ)と、杖精霊(ロッドスピリッツ)

 これは美樹も、まだ高校一年生だからか、あまりよく分かっていなかった。

 

 これまた、ゲームの世界だ……。


 そうこうしている内に、高校へと辿り着いた。

 十七年ぶりの、高校だ。

 美樹と別れ、下駄箱へと向かう。

 ちなみに剣は、タップをしただけで、簡単にインベントリの中へと直せた。


「よう! 正樹!」


 振り向くと、剣に乗った拓男がいた。

 若返った、懐かしい姿だ。

 この時の拓男は、まだ痩せていた……。


「拓男も剣系か」

「今更何言ってんだよ!」

「……茶髪だな」

「一年遅れの、高校デビューってやつですかね!」

 

 この時期から、拓男は茶髪にしていたことを思い出した。

 懐かしい校舎の中を歩き、拓男と共に教室へと向かう。

 始業式や、入学式は終わった後みたいで、美樹の言っていた通り、今日から普通に授業らしい。

 教室に入ると、当たり前だが、懐かしい顔ぶればかりだ。

 好きだった田中まどかも、そこにはいた。

 黒髪でセミロング、相変わらずかわいい。


 先生が来るまで、拓男といろいろ話した。

 この世界、見た目こそ変わっていないが、所々ファンタジー要素はあるみたいだ。

 面白かったのが、スズメバチに襲われるじゃなく、【キラービー】に襲われたとか、台風何号とかではなく、【ドラゴン】何号とかの話。

 この世界は、【ドラゴン】来襲が災害なのか……。


 しばらくすると、担任でもある数学の先生がやってきた。

 確か名前は、北村(きたむら)めぐみ。

 この当時、二十四歳。

 黒髪でロングヘア、スタイルもいい。

 昔は大人な女性だなーと思っていたくらいだが、一応三十三歳の俺から見ると、若くて綺麗な女性に見える。


「はい、みんなー。今日は数学の授業の前に、お待ちかねのジョブチェンジをするわよー」


 教室内がざわつく。

 やはりみんな、ジョブチェンジが待ち遠しいようだ。


「今年は、千年に一度の大災害、魔王復活が起こる確率が九十九パーセントです。みんなもジョブチェンジして、がんばってレベルを上げて、災害に備えましょうね」


 めぐみ先生の話を聞くと、ジョブチェンジをしても、一生そのジョブではないとのこと。

 例えば【ナイト】になっても、先生に就職すれば【ナイト】ではなく先生になり、ステホも国に返還。

 簡単に言うと、学生時代限定の職業みたいだ。

 もちろんフリーターやニートで、ずっと【ナイト】などを続けてる人もいるらしい。

 ちなみにめぐみ先生は、元【クレリック】で、レベル2だったと豪語していた。


 話が終わり、めぐみ先生は、占い師が持つような水晶玉を取り出した。


「では早速、ジョブチェンジの儀式をします。みんな、並んでね」


 めぐみ先生が言うには、水晶玉に手をかざすと、ジョブチェンジが自動的に行われ、自分のジョブ名が水晶玉に映るとのこと。

 その後聞いた話が、また面白かった。

 ジョブには普通のジョブとは別に、千年前に魔王を封印した戦士たちのジョブと言われる、六つのレアジョブもあるらしい。

 それは、千年前に魔王を封印した、一人の戦士と、五人のナイト。


 剣士なのに、遠距離技の【聖剣技】を得意とする、【ホーリーナイト】。

 相手のHPとSPとRPを吸収する、ほぼ無敵の剣技【暗黒剣】を使える、【ダークナイト】。

 大空を自由に飛び回り、華麗に戦う、【フェアリーナイト】。

 剣系と魔法系、二つのスキルを扱う、【マジックナイト】。

 不死の体を持ち、どんな局面にも耐えられる、【ゾンビナイト】。

 そして、全ジョブ中最強の戦士と言われる、【剣聖(ソードマスター)】。


「まっ、レアジョブにつくなんて、宝くじに当たるより難しいと言われているわ。ただ、魔王を再び封印するのは、このジョブについた人たちでしょうね」


 めぐみ先生は笑いながら、あっさりと言い放った。


 もう一つ面白かったのが、ボーナスポイントの話だ。

 なんとちゃんとしたジョブにつくと、そのジョブ専用のボーナスポイントの分、ステータスが上がるとのこと。

 レアジョブは分からないみたいだが、普通のジョブはこうらしい。


 【ナイト】、STR+3、VIT+5。

 【ウォリアー】、STR+5、VIT+3。

 【シーフ】、DEX+4、AGI+4。

 【ソーサラー】、INT+5、MND+3。

 【プリースト】、INT+3、MND+5。

 【クレリック】、INT+4 MND+4。


 最初はたった+3や5かと思ったが、1でも上がると相当変わるみたいだ。

 STR+5だと、一般人が格闘家並の力になるのだとか。


 話を聞きつつ、みんなが水晶玉の前に並び出していた。

 俺も拓男に連れられ、列に並ぶ。


「おおっ、俺【ナイト】だー!」

「げっ、俺【シーフ】かよー! 【ウォリアー】がよかったぜー!」

「あっ、私【クレリック】だって! 補助してあげるね!」


 目の前で、みんながどんどんジョブチェンジをしていく。

 

「あっ、私、【プリースト】……」

「まどかっぽいねー!」


 田中まどかは、【プリースト】になったみたいだ。

 田中まどかの友達の、黒髪でショートボブ、小林楓(こばやしかえで)がそう言ったのが聞こえた。


 そして、ついに俺の前に並んでいる、拓男の順番がきた。


「正樹、俺は【ウォリアー】になるぞー!」


 拓男は、どっちかといえば、俺より明るくて積極的なキャラだ。

 俺は万能な【ナイト】がいいが、拓男が【ウォリアー】を望むのも分かる。


「それっ!」


 拓男が水晶玉に手をかざし、ジョブチェンジをする。

 すると、水晶玉に現れた文字には、こう書かれていた。




 【ゾンビナイト】




「えええええええ!?」


 拓男の叫び声と同時に、クラス中がこれまたざわめく。

 なんと拓男は、レアジョブの【ゾンビナイト】にジョブチェンジしたのだ。


「小田君! あなた……!」

「先生、どうしましょう……?」


 拓男が、めぐみ先生に涙目で訴えかける。

 めぐみ先生も、気が動転しているようだ。


「とっ、とにかく、他のみんながジョブチェンジをしてからね!」


 ……次は、俺の番だ。

 なんかレアジョブになった拓男の後だと、凄くやりにくい感じがする……。

 俺は水晶玉に手をかざし、浮かび上がったその文字を見た。




 【剣聖】




 教室内が、静まり返った。




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