たまには真剣に考えることだってあるんだよ!
門前に集まって巡察に出かける。
日中の、明るいうちは京の町も賑わいを見せ、お店も繁盛している。
「そいやぁ最近、長州訛りのあるやつをよく見かけんなぁ」
永倉組長が、辺りを見回しながらそういった。
長州藩・・・・・・攘夷思想の強い、危険な連中。
佐幕派の人間はそんなことをいうけれど、彼らには彼らの思想があって、この日ノ本を本気で思って戦っている。
僕たちと同じ。
ただ守るものが違うっていうだけの、人たち。
どうして同じ国の人たちが、争わなければならないんだろう。
どうして藩が違って、考え方が違うだけで斬り合わなければならないのだろう。
手と手を取り合って平和な日ノ本を、なんて、甘い考え方なのだろうか。
「最近長州の連中が京に集まっていると聞きます」
「何企んでんだぁ?あいつら」
ズキンズキン
心が痛む。
同じ人間が、血を流すのはなんだか違う気がするんだ。
『なんだか物騒ですね』
思わず、他人事のようにいってしまった。
永倉組長は、筋肉馬鹿のようにみえて実は頭がいい。
政治について結構詳しいのだ。
「まぁーおれたち新選組は、近藤さんや土方さんについてくんだ。どれだけ時代が変わろうと、それは変わらねぇよ」
そう言って笑った。
そんなことを話していたら、向こうから同じ浅葱の隊服が並んで歩いてくるのが見えた。
「おっ、十番組だ」
『原田組長たちですね!』
組長たちは藤堂組長と合わせてとても仲がいい。
影じゃ三馬鹿なんて呼ばれているらしいけど。
「おー、なんかかわったことはあったか?」
「まあいつもどおりだけどよ、変わったっちゃー長州の連中をよく見かけるようになったことくらいか」
「なんでも池田屋に集まって何かを企ててるらしい」
「近いうちになんか動きがありそうだな、一応土方さんの耳にも入れとくか」
そういって帰路に着こうとした・・・・・・その時、
「新撰組!平間の敵!とらせてもらうぞ!」
そう言って、浪士三名が刀を向けてきた。
平間・・・・・・新選組が、斬りかかってきた浪士に応戦して切り捨てた男。
そして見せしめと言わんばかりに路地に遺体を放置したらしい。
平隊士の神崎くんが耳打ちしてくれた。
新撰組の掟は敵と一体一で切り合うことなかれ。
「おまえら馬鹿だねぇ、たった三人で俺らに挑んできたのか」
「だが、その心意気は認めてやる!おまえら手加減無用!戦力削ぎ落として捉えろ!無理っぽかったら斬り捨てろ!」
永倉組長は、時に残酷なことをいう。
そして、乱闘が始まって、でも結果は見えていた。
新撰組:負傷者なし 浪士:三人中二人死亡、一人捕縛
捕縛した一人も結局切腹させられたらしいが。
ということは、新選組にとって必要な情報を彼は持っていなかったということ。
『なんだかなぁ・・・・・・』
一部終始を聞いて、ほんとうにこんなやり方でいいのだろうかと思った。
まあ、新撰組の判断に口を挟める立場ではないんだけど。
「なんだ、苑流。思いつめた顔してるな」
『あ、土方さん』
「俺らのやり方、気に入らねえか」
土方さんは僕の心はお見通しだった。
「新撰組の敵になるやつは誰であろうと斬る。それが人間でも、魔物でも」
土方さんには土方さんの考えがあって、その志のために戦っている。
『気に入らなくなんて、ないです』
「お前も、俺らを裏切るようなら斬っちまうぞ」
『覚悟、できましたから。僕は新撰組を裏切らないし、この日ノ本の行く末を新撰組とともにみてみたい、だから強くなります。ぼく』
今まで、陰陽師としてしか、狭い視野でしか世間を見てなかったけれど。
もっと日ノ本について深く考えてみようとおもった。