池田屋事件勃発
土方副長は斎藤組長、原田組長と平隊士を連れて四国屋へ。
近藤局長は、沖田組長、永倉組長、藤堂組長、伐倒組を連れて少人数で池田屋へ向かった。
沖田さんのよみでは、普段から頻繁に使っていた、僕たちにもばれている池田屋をこんな大事な会合の時に使うわけがない、四国屋を使うだろうとよんでおり、みんなそれに同意していた。
「会津藩の応援はまだこねぇのか?!」
永倉組長が、痺れを切らして苛立っていた。
「まだだ、あたりを見てきたけどくる気配もねえ」
さすがに、この人数で何人いるかわからない攘夷志士に立ち向かうのは厳しいものがある。
もう、あたりは真っ暗でもしかしたら、応援はこないのかもしれない。
「苑流組長、攘夷志士たちに混じって、変な気配しねーか?」
『連くん・・・・・・やっぱり、感じるよね・・・・・・それも、ひとつふたつじゃない』
人間の気配と魔物の気配はわずかだが違う。
「なんだかさっきから、気持ち悪いとおもっていたんですがやはりそのせいですか・・・・・・」
紀炎くんも、他の仲間も気づいていた。
そんな中で紀炎くんが偵察にいくと言い出した。
「中にどの程度のものがいるのかひとっ走りしてきます」
「君には荷が重いんじゃないのかな?ここは御庭番衆である私、望月が」
うわ、ここも馬が合わないわけ!?
『こんな時まで揉めないでよ、望月くんは待機、紀炎くん気をつけて中の様子を見てきてね。ついでに魔物以外の普通の人間が、何人いるかも。頼んだよ』
そういうと紀炎は嬉しそうに走っていった。
「そろそろ討ち入りませんか、局長。私の妖刀、舞風が疼いております故」
舞風が、血を欲している。
以前望月くんがそんなことを言っていた。
さすが妖刀なだけあり、適正が合わなければその妖気に飲まれてしまう。
「うむ・・・・・・しかしなぁ・・・・・・」
『望月くん落ち着こうか』
最近気付いたことは、望月くんが意外と血の気が多く短気であるということ。
短気は連くんだけで十分だよ!
「苑流は随分組長が様になってきたよな!」
『えっ?!いやだっ』
「嫌なのかよ、たしかに平助よりは組長似合ってるかもなぁ」
組長が様になってるなんて、絶対に言われたくない。
というよりも僕そんな人の上に立つような出来た人間じゃないからね!!
「なんでそこで俺と比べるかなぁ、新ぱっつぁんは!!」
ギャーギャー
「君たち、討ち入り前なのにうるさいんだけど」
本来、集中して静かに気配を消して合図を待つはずなのだろうが、
僕たちは、というより僕は巻き込まれたんだけど・・・・・・静かに騒いでいた。
うん、静かに騒いでいるって意味がわからないけどね。
でもさすがに永倉組長も藤堂組長も場慣れしているため、余裕をか持ち出していた。それに比べて、僕たち伐倒組は軽口を叩きながらも、ガチガチに緊張している。
『それにしても、会津藩遅いですね・・・・・・』
「これでみすみす逃しちゃったら、格好つかないですよ、近藤さん」
新撰組が総出で辺りを固めているのに敵を逃がすなんて噂がひろがれば、舐めて掛かられるしね・・・・・・。
その時、紀炎くんが偵察から戻ってきた。
「組長!報告いたします。内情、偵察したところ、長州藩と思われる人間が10名程度、その他土佐藩、肥後藩、林田藩などの複数の藩士が入り乱れて普通の人間は総勢20名程度。人間の姿はしておりますが、変な気配をまとっている魔物らしきものが10名程度」
狭い池田屋に約30人ほどの人間が集まっている。
これは、討ち入りも相当気をつけねばならなそうだ。
「結構いるんだな・・・・・・」
「ついでに走って屯所へ行き山崎殿にもお伝えしましたので土方隊の応援もくるかと思われます」
まったく、組長の指示なくそこまでできる君は立派だよ。
「もう討ち入りましょうよ、局長」
「うむ、そうだな・・・・・・少々危険だが致し方あるまい。それでは、俺と総司、永倉くん、藤堂君と伐倒組は正面から突入する。武田くんと谷万、浅野、奥田、安藤、新田は裏と土手を固めて、逃げ出した藩士の捕縛を頼む」
ようやく、討ち入りが始まる。
震えはもうおさまった。
そして、近藤局長に続き、池田屋内に入り局長が大声でさけんだ。
「御用改めである!新選組だ!手向かいする者は容赦なく斬る!神妙にせよ!」
店内は暗く、見にくい。
攘夷志士はどうやら二階にいるらしい・・・・・・
「新撰組や!みな、はよう逃げぇっ早ようっ」
――ザバッ ビュッ
「ギャアアアアアアアアアッ」
店主が二階に向かって叫ぶが、後ろから沖田組長が斬り伏せた。
「神妙にしろっていったのが聞こえなかったのかなぁ」
容赦なんてものはまったくないらしい。
この人だけは敵に回したくない・・・・・・。
「こんときばかりは、総司が味方でよかったっておもうぜ」
僕の気持ちを代弁するように永倉組長が言った。
「うるさいよ、僕は二階に行くから君たちは奥に行ってきなよ」
降りてきた浪士たちを斬りながらも軽口をたたいていた。