あの子は赤頭巾
昔々あるところに、赤い頭巾を被った愛らしい女の子がおりました。引っ込み思案で泣き虫で、けれど心根の優しい女の子です。皆はその子を赤頭巾と呼び、いつもニコニコ笑って見守っていました。
ある朝早くに赤頭巾は、お母さんにお使いを頼まれました。
美味しいローストビーフに焼きたてのパン、甘いアップルパイ。それにぶどう酒を持って、森の奥にあるおばあさんの家に届けてほしい。
お母さんのお使いを快く引き受けた赤頭巾は、いつものように赤い頭巾を被って、今日は大きなバスケットも携えて森の奥へと進んでいきました。
赤頭巾が道なりに森を進んでいくと、いつしか道が消えてしまいました。赤頭巾はどうやら、道に迷ってしまったようです。困り果てた赤頭巾、グスグス泣いて困っていると、声を聞きつけ誰かがやってきたようです。
赤頭巾、どうして泣いているの?何か悲しいことでもあった?
赤頭巾が顔を上げると、そこには狼が。優しく慰めてくれる狼に、道に迷ったことを話してみると、狼はニッコリ笑います。
それならこっちの道を行くといい。きれいなお花が咲いてるよ。たくさんお花を摘み取って、おばあさんへのお土産にすればいい。おばあさんのお家へ行くには、花畑から続く道をまっすぐ進めばいいからね。
優しい優しい狼に、赤頭巾はニッコリ笑ってお礼を言います。嬉しそうな赤頭巾に狼は、気をつけるんだよと手を振りました。
狼の言う通り、キレイな花畑を見つけた赤頭巾は、時間を忘れてお花を摘みます。赤いお花や黄色いお花、摘んだお花はリボンで結んで花束に。きっとおばあさんも喜んでくれるでしょう。
お昼もすぎて赤頭巾、慌てて花畑を飛び出します。すっかり冷えたローストビーフ、匂いも薄れた美味しいパン。おばあさんもおなかをすかせて待ってるでしょう。慌てて駆け出す赤頭巾。
狼の言う通り、道を見つけた赤頭巾。まっすぐまっすぐ進んでいけば、森の奥に小さなお家を見つけました。煙突から煙がもくもく出ているし、きっとおばあさんのお家でしょう。ドアをこんこんノックして、赤頭巾は声をかけます。
おばあさん?私は赤頭巾、あなたにお届けものがあるんです。何度も何度も呼びかけるけど、全然返事がありません。不思議に思った赤頭巾、ドアに手をかけ開いてみると、家の中には誰もいません。
キッチンお風呂にダイニング。ベッドルームもすっからかん。さて、困ってしまった赤頭巾。
そこへ狼がやってくる。赤頭巾に話があると狼は、困ったように話しました。
赤頭巾の村だけど、村人皆がいないんだ。これには赤頭巾も驚いた。
村のどのお家にも人は居ない。大人も子供も動物さえも、みんなどこかに消えちゃった。
これを聞いた赤頭巾、わんわんわめいて泣きました。それを慰め狼は、僕と一緒に暮らそうよ。明るく笑って言いました。
こうして赤頭巾と狼は、森の奥の小さなお家で、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
本当の話は、裏の裏。