きっときこえない
血液の色を初めて知った。
べっとりと掌についたソレを見る。赤というよりも、黒。とても綺麗とは言い難い液。
「…死んで、よ」
リストカット。血管を無造作に切っていく、自殺行為。初めてそれをした。
死にたいと思った。心底そう望んだ。行う勇気は、持ち合わせていなかった。
カミソリを持つ手が震えてた。何度も何度も落とした。躊躇してしまった。死ぬのを。
だから、刃を手首に当てるとき、深く深く、致命傷を与えることができなかった。
「死ね、死ね…っ」
二回目のその行為には、及べなかった。
恐怖や安堵や吐き気、それらでぐちゃぐちゃになったわたしの頭は、動いてはくれなかった。
汚い血液。汚いわたし。生きていても、いらない存在なのに。
ぼたぼたと、涙がフローリングの床を濡らす。
今更、傷口がぎちぎちと痛み出す。
もう片方の手で押さえたら、滑りとした触感。
「……死ぬの、怖いよ」
だれか、たすけてよぉ。