婚約破棄されて良かった話
子供の頃から王家に嫁ぐために教育を受けていた。
学問、社交、それだけではない。
『アルテシア・・・
巫女は
泣いてはいけません。今を悲しんでいるからです。
笑ってはいけません。巫女になる前の生活を思い出しているからです。
ただ、王の子を産み王国の安寧を祈るのです」
『はい、王太后殿下・・・』
ひたすら女神像の前で祈った。
私は6歳の頃から祈っていた。
しかし。
・・・・・・・・
今正に婚約破棄をされた。
「アルテシア、婚約は破棄だ!代わってミミリーを巫女にする」
「・・・・左様でございますか・・・」
「ミミリーなら、立派な巫女になれるさ。って、また無表情か・・ミミリーは表情豊かな子だよ」
王宮で婚約破棄をされた。
この王国では代々巫女は王妃がなる。
しかし、現王妃殿下は巫女に不適格だった。
それでも陛下は反対を押し切り結婚をした。
長い事、王太后陛下が巫女をされていた。
もう、御年70を超える。
私は王宮の奥にある王太后殿下の部屋に挨拶に向かった。
「王太后殿下にご挨拶を申し上げます」
「アルテシア、話は聞いております。ご苦労様でした」
「ご存じでしたか・・」
「孫のゲオルトが大きな独り言で言っていました」
「左様ですか。今までお世話になりました」
「・・・今までのお勤めです。金貨300枚の手形を渡します。早めに換金すること・・・これでどこかに遊学するもよし。持参金にして嫁ぐもよし。ゴホ、ゴホ!」
「王太后殿下・・・」
「まだ、持ちますわ。ミミリーとやらを教育するまでは死ねません」
「はい」
「ところで・・・この修行は秘密ですよ」
「もちろんでございます」
表情を絶対に出さない。
改めて鏡を見る。
ニィと口角をあげるが、笑えない。
そう、殿下達はこの修行方法を知らない。
私は形だけの養子先に行くこともせずに王国を出た。
元々は孤児だった。
あの修行は何だったのか分からない。
それから他国で冒険者ギルドの受付をしている。
「ハンスさん。このクエストは如何でしょうか?」
「おう、ところで、雨が降ってきたな。アメはあるかい?」
「アメ?」
「そうさ。言うだろう?雨が降ったら雨だけにアメをなめろってさ」
「・・・・・・」
「す、すまない。見つめるなよ!」
まだ、笑えない。
だが、冒険者ギルドで報告が来た。
「スメラギ王国、巫女を処刑・・・したそうだ。国が荒れている。傭兵クエストが多量に来るから覚悟しておけ。忙しくなるぞ」
「処刑?ギルマス、祖国です。詳細を・・・」
「ああ、数十年に一度の干ばつでな。あの国は飢饉が起きると巫女を処刑するのだ。
そのための巫女だ」
「どちらの巫女ですか?」
「ああ、王太后がなくなって若い方だ」
・・・ミミリーかしら。
「・・・生贄・・」
「そうだ。生贄自体に意味はない。それで干ばつがおさまっても偶然かも知れない。しかし、生贄することで民の鬱憤を晴らすことが出来る」
「でも、また、干ばつが続いたら・・」
「そしたら、巫女を処刑したから国が滅びた仕方ない。ってな理由付けになる。あの国はブスがなるものと決まっている」
「ブス・・・」
「ああ、ブスって毒薬を飲むと表情がなくなる。だから殺しやすくなるのかもな」
・・・私は生贄だったということ?・・・
「おい・・・」
その時、ギルマスが私を指さした。
「アルテシア、笑っている。笑えたのか?」
やっと笑えたらしい。この感覚は分からない。
少しも楽しくないのに笑えた。
殿下達のことどうでも良いと思っていたけども、そうではないらしい。
最後までお読み頂き有難うございました。




