表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第3話:揺れる未来と禁断の干渉

翌朝、学園のチャイムが鳴る。昨日消したはずの赤い印――佐藤くんの名前――は、まだ暦に微かに残っていた。どうやら完全に消せていない。心臓がざわつく。


「……やっぱり、誰かが触っている」

独り言をつぶやきながら、私は教室の窓から外を見る。氷室はいつものように校庭の木陰に立ち、こちらをじっと見つめていた。まるで“私を試している”ような視線だ。


昼休み。親友のミユが駆け寄ってくる。

「カノン、昨日の件……また赤い印の噂が広まってるよ」

「知ってる。……でも、まだ誰も本当のことは知らない」

「もしかして、あなたの力のせい?」

「……そうかもしれない。でも、誰にも言えないの」


その時、学園のエリート、天城レンが席に近づく。

「……暦を操作できるんだろ? 少なくとも、昨日の印はお前が消したはずだ」

私は一瞬、息をのむ。警戒心を隠しつつ、軽く微笑む。

「その通り。でも、それだけじゃ説明できないことが起きてるの」

レンはじっと暦を見つめる。その目は、疑念だけでなく、興味も含んでいた。


放課後、私は赤い印の発生源を探るため、学園の図書室へ向かった。古い暦や校史の資料を調べると、奇妙な記録が見つかる――

“暦編集干渉者――存在確認せずとも、未来を揺らす力あり”


「……誰だ、こんなことを」

ページをめくる手が震える。消したはずの赤い印が再び微かに光った瞬間、背後から氷室の声がした。

「……その通り、干渉されている」


振り返ると、氷室が静かに立っていた。いつも通り無表情だが、その瞳には危険の予兆が宿っている。

「誰が……?」

「まだ分からない。しかし、放置すれば学園全体に波及する可能性がある」


その言葉に、私の胸がぎゅっと締め付けられる。暦術の力は小さな奇跡を起こすだけではなく、同時に大きな代償を伴うのだ。記憶や時間の一部が削られ、身体に負荷がかかる――それでも、誰かを救うためには止められない。


夜、自室で暦を見つめる。赤い印は薄く光を帯びながら揺れ続けていた。

「……明日、誰が犠牲になるか分からない。でも、消すしかない」


窓の外に目をやると、月明かりに照らされる学園の時計塔が揺れる影を映していた。誰かが私の力を監視し、試している。

私は静かに決意する。

“死”を消すだけではなく、干渉者の存在を突き止める――そのためには、暦術の限界まで力を使うしかない。


赤い印は光を強める。私は掌をかざし、心の中で呟く。

「……消えろ。明日の死を、私の手で編集する――」


そして、暦が光に包まれた瞬間、頭の中に一瞬だけ、誰かの声が響いた――

「……暦師カノン、君の力を試す」


学園に忍び寄る影の存在。未来を揺らす力。その中心にいる私――桐島カノン。

物語は、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ