96 お披露目
アキとソラとナデシコは満足するまでサラに構ってもらった後お菓子を探しに行ってしまったので、サラ達も美味しそうな料理が並ぶテーブルを見て回ることにした。
どこか日本食を彷彿とさせる料理は悪魔の誰かが腕を奮ってくれたのかもしれない。この世界で初めて食べる和食の煮物にテンションが爆上がりしたが、もちろん城のシェフ(と言っても騎士の交代制)が腕によりをかけて作ってくれた、いつもより豪華な食事もとても美味しい。
サラは嬉しくなって「次はあのテーブルの料理を食べましょう!」とアーサーを引っ張る。
その時、人混みを掻き分けてジャックがこちらへやって来るのが見えた。
「いたいた!こんなところで料理食べてたんですね、探しましたよ〜」
「ジャック様!」
騎士の正装を身に纏う者が多い中、ジャックはゆったりした白シャツとズボンと腰に長い綿布を巻いた、インドの民族衣装のようなラフな装いをしている。
これがまた気だるそうな色気を放つジャックによく似合っていた。
「本日はおめでとうございます!サラ様はそういうドレスもよくお似合いですね」
「ありがとうございます!ジャック様のお洋服もとても素敵です。故郷の衣装ですか?」
「はい。これは俺の故郷の正装で、一応持って来てはいましたがグラハドールに来てからは一度も着たことがなくて…。でもサラ様のおかげでまた着てみようかなと思えるようになりました!」
「?? 何かお役に立てたなら良かったです」
サラのおかげで前向きな気持ちになれたのだが本人は全く分かっていない顔でニコニコと笑っており、ジャックは一人苦笑する。
「それで、ジャック様は私達のことを探していたのですか?」
「はい、お二人、というかサラ様を。……プレゼントは個別に渡すと大変なことになるから後でまとめて渡そうって決まったんですけど、どうしてもこれだけは先に渡しておきたくて」
「?」
ジャックが握りしめた拳を差し出してきたのでサラは両手で受け取る。手のひらにころんと落ちてきたのは宝石のように美しいエメラルドグリーンの石だ。
「これは…?」
「俺の故郷の風習では、家族や大事な人の誕生日に願いや想いを込めた石を渡すことになっているんです。
石の色にはそれぞれ意味があって赤色なら『あなたを愛しています』、黄色は『永遠の友情』、紫色は『一族の繁栄』だったかな。ちなみにエメラルドグリーンは『無病息災』です。
これだけちっさいと他のプレゼントに紛れちゃうなぁと思ってフライングしました!他の奴らに抜け駆けするな!って怒られるので内緒にして下さいね?」
いつものおどけた口調で唇に人差し指を当てる仕草が様になり過ぎてて、それが面白かったサラはクスクスと笑ってしまう。
「ふふっ。分かりました、他の人には内緒ですね?ありがとうございますジャック様、大事にします!」
「…っ、はい!」
サラの笑顔はシャンデリアの光よりも眩しくて、ジャックは込み上げる気持ちをぐっと呑み込んだ。サラの幸せを一番に願っているので自分の想いを悟らせて困った顔をさせるようなヘマなどしない。
ジャックは一瞬で気持ちを切り替えていつものヘラリとした笑顔を浮かべたのだが、しかしアーサーはうまく隠したはずの切ない表情を見逃してくれなかったようだ。
「ジャック…?俺の前でよくそんな意味深なプレゼントをサラに渡せるな?」
アーサーから痛いほどの魔力が飛んできてジャックは慌てて弁解する。
「いえいえ!これは本当にそんなんじゃなくて、サラ様の健康を願う俺の純粋な気持ちっすよ!?」
「……エメラルドに込められた想いは本当に『無病息災』か?」
「もちろんです!!」
「………」
アーサーからの無言の圧力、もとい過剰な魔力がビシビシと突き刺さって地味に痛いがジャックは引きつった笑顔で耐え切る。
「………いいだろう」
「っ、ありがとうございまーす!!」
サラに石をプレゼントする許可をなんとか貰えたジャックはホッとする。
そしてこの間、サラはレイメイに「辺境伯様から魔素が大量に放出されてます」と耳打ちされたので魔素を吸収することに忙しく、二人のやり取りをまったく聞いていなかった。
「あれ?何かありましたか?」
「いや、なんでもない。それよりそろそろサラに見せたいものがあるんだ」
「??」
珍しく悪戯っ子のような顔をしたアーサーにエスコートされ(サラは心の中で「え!?何その可愛い表情!?」と悶絶していた)、辿り着いたのはいつの間にかテーブルが端に寄せられ、広いスペースが確保されたホールの真ん中。
なんだろうと思っていると、サラの目の前に騎士四人がかりでやっとというくらいの大きな箱が運ばれてきた。
箱のサイズは大家族用冷蔵庫くらいあって、真ん中には金庫のような扉がついている。重厚感があってとにかく重そうだ。
「これは?」
「これはサラの発想を元に作ったタイムループ装置の試作品だ」
「えぇっ!!?もう出来てたんですか!!?」
「サラを驚かせたくてな、急ピッチで作業を進めたんだ」
「びっくりしすぎてちょっと引きましたよ…」
開発に携わった者達が誇らしげな顔を見せる中、サラは見た目が冷蔵庫の装置に近づいてまじまじと眺める。タイムループなんて非現実的な現象をこの装置で起こせるなんてまだ信じ難い。
「ではさっそくやってみせよう」
そう言ってアーサーが取り出したのはサラが実験用にと提供した、魔を吸収する力を込めた魔核だ。
これをレイメイが受け取り、魔核に少量の力を流して体内の魔素を吸収させる。これで魔核に込められたサラの力は使用した分だけ減少したことになる。
その後すぐハンドルを回して装置についている扉を開けるとその中に素早く魔核をしまう。
その後装置の側面にあるボタンをカチッと押し、あまり間を置かずして再び扉を開けた。
「―――これで完成です。この魔核は使用前の状態にタイムループしました」
レイメイが恭しく取り出した魔核を頭上に掲げると周囲から大きな歓声が湧き上がった。
「やったぞ、成功だ!!」
「まさか本当にタイムループが実現するなんて思わなかったな!」
「俺達の数々の苦労が報われた…!」
「皆さん、本当にありがとうございます!この装置のおかげで我々の自由にまた一歩近づきました!」
「―――いやいやいや、これって本当にタイムループ出来てます!?」
あまりにも呆気なさ過ぎて、サラは喜びムードに水を差すと承知の上でツッコまずにはいられなかった。
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