92 まともな会議?
「―――以上が昨日判明した魔核の性質だ。
これを世に広めるとなると様々な問題の発生が予想される。しかし先ほども述べたように、今後も安定して悪魔の魔素中毒を抑えるための手段として最も有効であり、人間と悪魔の共存における大きな第一歩となることに間違いはないだろう。
これらを踏まえてこれから起こるであろう問題予測、その対策、法令に組み込むべき事案など、思いついたことがあれば忌憚ない意見を聞かせてほしい」
「はいはい!そうっすね……まず、厄介物でしかなかった魔核にそんなハイスペックな機能が備わっていたことにめちゃくちゃ驚いてます!
腐るほどある魔核を有効に活用出来るならとりあえずグラハドール領内だけでも先行してどんどん使用していくべきかと。
悪いことを考える奴らのイカれた頭の中なんて、まともな俺らがここであれこれ話し合ったところで所詮分かりませんよ〜」
「待て、それはさすがに楽観的過ぎないか?想定した以外の使い方をした者にはそれなりの罰則を設ける、というところまで話を煮詰めなければ無法状態になってしまう」
「でも領内に閣下肝いりの事業に泥を塗るような真似をする領民はいないだろ…」
「確かに…!恐ろし過ぎるもんなぁ…。
だがこれほどの力を秘めた魔核は領内に留まらずいずれ国中に普及するだろう。その時のことを想定した意見を出せということだ」
「まずサラ様が仰っている『悪魔のために魔核を使用する』という議題から話を詰めていこうぜ」
サラの真実の眼で判明した魔核の性質をアーサーに話した翌日、早速会議が開かれて魔核をどのように活用させるか話し合うことになった。
メンバーはお馴染みの隊長クラスの騎士達と、悪魔の代表としてレイメイとヤマトが参加している。
もちろんサラもアーサーの膝の上に鎮座しての参加だ。毎度のことでもいつも恥ずかしさに襲われて俯きがちになってしまうサラだが、今回はあることが気になって繰り広げられる会話に釘付けになっている。
「皆さんがまとな会議をしている……?」
「いつもまともだろう?」
「いえ、最近は私の誕生日パーティーの話で盛り上がってばかりだったので、こういう真面目な会議は久しぶりでなんだかとても新鮮です…!」
「この話が終わればまたパーティーについて話し合うつもりだ。あいつらが『妥協したくない』と言い張るものだから中々日にちが決まらない。今日こそは開催日も含めて具体的な諸々を決定させなければ」
「えー…。こんな大事な内容の会議の後に止めましょうよ…」
アーサーとサラがコショコショと話している間にも真面目な会議は続いていく。
「この魔核にはサラ様の『魔を吸い取る力』が込められていて魔素を吸収してくれるそうじゃな?レイメイ、この石の効果はどうなんじゃ?」
「サラ様に直接魔素を吸収して頂いた時と変わらない効果が得られます。この魔核を常に身に着けていれば急な魔素中毒にもすぐに対応出来ますから、本当にこの発見は素晴らしいと思います。
ただ…魔核に込められたサラ様の力の残量がどれほどあるのかが分からない、という点が気になりますね」
「そうじゃのぅ…。例えば火の魔法を込めれば魔核は色を赤く変化させ、内部の魔法を使いきれば元の透明に戻るから見た目で残量が分かり易いが、どうやらサラ様の御力は魔核の色に変化を齎さない。これではいつ内包された力が尽きるのかが分からん」
「魔核の大きさによって込めらる力の量は変わると考えるべきでしょうしね。
それと、魔核の中の魔を吸い取る力が尽きるたびにサラ様に補充して頂くのはいささか現実性に欠ける、という点も大きな問題かと」
「結局サラ様の側でしか悪魔は生きられないということか…。でも悪魔と人間では寿命が大きく異なるから、今は良くてもいずれ立ち行かなくなる時がやってくるんだろうな…」
悪魔が恒久的に暮らして行ける仕組みを作らなくてては何の意味もない。サラにも寿命があるのでいつまでもこの力で悪魔達を守ることは出来ないのだから。
「―――球体の神様もそのことは分かっていたはず…」
「サラ?」
「いえ…。球体の神様は千年前に華さんと私を召喚して一体どうするつもりだったのかなと思いまして。
人間の寿命は悪魔と比べてとても短いですよね。そんなわずかな時間で悪魔が安心して生きられる世の中を作れるとはとても思えないんですよね…」
「聖女ハナとサラの二人が揃えば可能だったのだろうか」
「うーん…どうでしょう?たとえそうだったとしてもここに華さんはいませんし…。ここは悪魔と人間で手を取り合いなんとか……」
「悪魔と人間、か……」
サラの言葉を聞いたアーサーは考え込む。
悪魔の使う魔術については、王宮でヤマトと対峙した時から侮れないと感じていた。
敵として対峙するのは厄介だが仲間として魔術に触れることが出来るならばこれほど心強いことはない。
そもそも魔術についての知識がまだ少ないため、魔法との違いすらよく分かっていなかった。どちらも「不思議な力を操る」という共通点はあれどその中身はまったくの別物だ、くらいの認識しかない。
アーサーの感覚として、魔法で魔術は再現出来ないが、魔術で魔法は再現出来るという、魔法と魔術は上位互換の関係にあると考えている。
もっと細かく分析すれば魔法とは自然界にあるもの、火や水や風に直接働きかけ魔力で増幅させて利用するイメージだが、魔術ではそれらを体内に一度取り込み類似した別の力に変換して使用しているのではと推測している。
「―――俺からもいいだろうか」
「はい!閣下、どうぞ」
「悪魔の魔素中毒問題から先に手をつけるとして、この問題の課題は魔核に込められた力の残量が分からないため実用化が難しい点と、恒久的に使用出来るようにしなければならない点、大まかに言えばこの二点に絞られる」
「そうですね…魔核の耐久年数やサイズによる違いなんかも調べる必要がありますが、まずクリアしなければ話が進まないという問題点は今閣下が仰られたその二点ですね」
「ではこの問題解決に向け、魔法と魔術の融合に焦点を当ててアプローチしてみよう。似ているようで異なる二つの力を合わせることで思いがけない効果を得ることが出来るかもしれない」
「今まで魔法と魔術を組み合わせることなんて考えてなかったですもんね」
「我々は魔素を用いて魔術を使いますが魔素の元は魔力なので、魔素と魔力の違いについてもっと深く追求するのもアリかもしれません」
「そうだな!もし魔法と魔術を融合させることが出来たら―――」
「「「「「サラ様の誕生日パーティーがもっと盛り上がる!!」」」」」
「……え」
サラは途中までうんうんと頷きながら素晴らしいと思って話を聞いていたのだが、何やら雲行きが怪しくなってきたことで表情がスンッとなる。
「これは世界初の試みだがサラの誕生日パーティーを彩る演出として申し分ない。全員心して取り掛かるように!」
「「「「「はっ!」」」」」
「本当になんでこうなるんだろう…」
サラの心からの疑問は白熱した会議室において誰の耳にも聞き届けられなかった。
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