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私は何もおかしくないですよ!?〜虐げられた令嬢は世界で一番醜い辺境伯に恋をする〜  作者: ひなゆき


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90/100

90 ハンパない適応能力


 グラハドール城の小さな世界の中とはいえ、悪魔との共存を模索して共に生活するようになり一週間が経とうとしていた。


 これまで認定と悪魔は狩る者と狩られる者として敵対する立場だったのだから、すぐに打ち解け合うのは難しい話だろう。

 城内には常にギスギスとした空気が流れ、一つのきっかけで不満や疑心が爆発してもおかしくない緊迫した状態が続き―――



「おーい!!レイメイ、例のやつ出来たかー!?」


「ああ。昨日完成させたよ。まったく、ジャックは本当に悪魔使いが荒いなぁ〜」


「だってお前らは適度に魔術を使って魔素を放出しないといけないんだろ?だったらちょうどいいじゃん」


「ははは!なんだか良いようにこき使われているような気がして素直に納得出来ないんだけど?」


「気の所為だって!なぁ、昼ごはんまだだろ?一緒に食堂行こうぜ」


 ジャックはレイメイの肩に腕をまわすとそのまま食堂の方へと引っ張って行き。




「あっケリー君!はい、これ。この前読みたいって言ってた魔法書!」


「アゲハさん、こんにちは…って、えぇっ!?これって隣国にしか売ってなくて数も少ないから取り寄せ出来なかったやつ…!これどうしたんですか!?」


「ヤマトと一緒に鳥に変化して隣国まで探しに行ったのよ。

 ここに潜入した時、ケリー君を仮死状態にしちゃったお詫びをしたいってずっと思ってたんだよね。……もし良かったら受け取ってくれない?」


「そのことは散々謝ってくれたじゃないですか。それにあの時はヤマトさんの命がかかってたんですから怒れないですよ。でも……この本は有り難く頂戴してもいいですか!?」


「あはは!素直でいいねー!もちろん、ケリー君のために買ってきた本だから貰ってよ」


「わぁ〜!ありがとうございます!!これで準備が捗りますよ!あっ、ヤマトさんにもお礼言わなきゃ」


「ヤマトなら解体場にいるよー」


 また別の場所ではアゲハとケリーによる、まるで姉弟のような親しげな会話が繰り広げられ。




「トム、少し休憩にして一緒にお茶でも飲みましょう」


「おお、それは確かリョクチャだったかのぅ。すっきりとした苦味の中にも深いコクがあって美味しかった。このお茶の葉がラナテスにあったとは驚きじゃわい」


「若い人の口には合わないかと思っていたけど気に入ってもらえたみたいで良かった」


「ふぉっふぉっふぉっ!この歳になって若者扱いを受けるとは思わんかったのぅ!」


「あ、そういえばトムは人間の中ではそれなりの年齢だったね」


「構わんよ、百五十歳のヤマト殿にすればわしらなど赤子のようなものじゃろうしなぁ」


「でもトムとはすごく波長が合うというか、ずっと前からの友人だったかのように一緒にいて居心地がいいんだ」


「それはわしも思いましたぞ」


 トムとヤマトの間には種族や年齢を超えた友情が育まれていたり。




「「「お兄ちゃん達遊んで〜〜!!」」」


「げっ…、クソガキども…」


「俺知ってるんだぞ!こいつら十歳くらいの見た目してるけど俺達より年上だぜ!?」


「えーなんのことぉ?」


「いいから遊びましょうよ!ね、私また昨日のカードゲームがしたーい」


「僕達が勝ったらまた街でお菓子買って来てね!」


「こいつら本当にえげつないぞ…。俺なんて全負けして財布の中身根こそぎ持ってかれた…」


 そして十歳くらいの見た目をした悪魔のアキ・ソラ・ナデシコの三人は自分達の可愛さを武器に、騎士達相手に今日も無双している。 






「―――なんだか……私達の心配をよそに、悪魔の皆さんめちゃくちゃお城に馴染んでますね??」


 サラはアーサーの執務室がある五階の窓から階下で繰り広げられている人間と悪魔の交流を眺めながら、嬉しい誤算ではあったがちょっと困惑していた。


「そうだな、今のところ想定した以上に悪魔との生活は上手くいっている。まぁ、共通の目的があるからというのも大きいだろうが」


「共通の目的、ですか?」


 アーサーが書類を書く手を止めて答えてくれた言葉にサラは振り返る。


「あいつらはサラの誕生日をいかに盛り上げるかで意気投合して、今は魔法と魔術を融合させて何か出来ないかと試行錯誤しているところらしい」


「えー…城の改修が落ち着いたと思ったらそんなことをしてたんですか?」


 サラの声には若干の呆れが滲んでいる。

 なんだかどんどんサラの思い描くアットホームな誕生日会から離れていってる気がしてならない。身内でやる誕生日会なんて普通はバースデーソングをBGMにケーキのロウソクを吹き消すくらいなものじゃないだろうか。


「でも魔法に魔術が加わることで新たな変化が生まれることもあったりして、彼らとの交流はとても良い刺激になっています」


 引き続きサラの護衛として側に控えているヴァンも悪魔と一緒に暮らす中で気付いたことを口にする。


「へ〜、そうなのですね!そうやってお互いに足りないものを補い合って、いつかグラハドールだけじゃなくて国中で人間と悪魔が共存していけるようになればいいですね」


「それが理想だがやはり難しいだろうな。悪魔達は今も体内の魔素が少しでも増えたと感じたらサラの力で魔素を吸収するようにしている。

 城内だから出来るがこれが国中でとなると、急な魔素中毒に対応出来なくなってしまう」


「うーん……華さんの力で出した奇跡の木の果実のように、私が近くにいなくても魔素を吸収出来る何かがあればいいんですけど……。………うーん、私、何かを忘れてるような気がします……」


 いい方法はないかと考えていたサラの脳内に何かが過った気がしたのだが、それは掴む間もなく煙のように消えてしまった。


「あ〜なんかモヤモヤする〜」


「こういう時は考えていたことと関係のない行動を取れば不思議と思い出したりするものだ。散歩にでも行くか?」


「アーサー様!…そうですね、お外はいいお天気ですし、塩麹の生産の様子の確認もかねて解体場にでも行こうかなぁ」


「行ってらっしゃいませ」


 ヴァンはアーサーが立ち上がったのを見て邪魔をしないようにと、部屋を出て行くアーサーとサラを頭を下げて見送った。








***


「うーん、本当に何だったかなぁ…。ここまで出て来てるんですけど……」


 サラは喉の辺りに手を当てながら、思い出せそうで思い出せない何かについていまだ考えていた。

 最初はいつものようにアーサーに抱っこされていたのだが、「これは散歩とは言いません!」と主張してなんとか自分で歩く権利を勝ち取ったのだがどうしても一瞬過った何かが気になって散歩に集中出来ない。


「俺にはサラが何について頭を悩ませているのかは分からないが、あまり根を詰めないほうがいい。ほら、もうすぐ解体場に着くぞ」


「はぁい…。そういえば塩麹作りをお任せしてから解体場に来るのは久しぶりです。問題などは起きていませんか?」


「しおこうじ関連で問題は起きていない。だが―――」


 アーサーが何か言いかけた時、前方から騎士が二人やって来て「閣下!」と声を掛けてきた。


「閣下、すみません。今少しお時間よろしいですか?」


「ああ、どうした?」


「魔核処理場がついに満杯になってしまいまして。新たな処理場の候補地をいくつか見繕ったので閣下にご確認頂きたく」


「もう満杯になったのか…。分かった確認しておこう。……サラ?どうした?」


 アーサーが騎士から差し出された資料を受け取ろうとした手をサラが無言でガシッと握る。


「あ、あ、アーサー様!!これ!これですよ!!」

お読み頂きありがとうございます! どのような評価でも構いませんので☆☆☆☆☆からポイントを入れて下さると作者が喜びます!! よろしくお願い致します(人•͈ᴗ•͈)

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