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私は何もおかしくないですよ!?〜虐げられた令嬢は世界で一番醜い辺境伯に恋をする〜  作者: ひなゆき


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78/100

78 魔素


「“魔を吸い取る力”……?なんだそれは?」


 魔を吸い取ると言われてもアーサーにはその意味や効果がすぐにはイメージ出来ずに疑問を口にする。


「私も今これを読んで初めて自分にそんな力があることを知ったのでまだ詳しくは分かりませんが…球体の神様に課せられた使命における自分の役割については理解しました」


 華からの手紙を最後まで読んだサラは、自分がこれからしなければならないことを正確に把握することが出来た。


 いきなり転移してきた華とは違ってサラはこの世界に転生した身だ。ずっと生きてきたこの世界にもそれなりの愛着はあるので滅亡を防ぐことはやぶさかではない。

 というかアーサーと両想いだったことが判明した今、これからどんどん盛り上がるであろう大事な時期に世界を滅亡なんかさせてたまるかと言った方が正しい。



「それで、この世界の神に与えられたサラの使命とは一体何なんだ?」


「私の役目は空気中に漂う魔素を吸収することかと。

 まさか私一人で世界中の魔素を吸収するわけにもいかないと思うので、効率的な方法を考える必要はありますが」


「魔素を……?」


「アーサー様は魔素がどういうものなのか正確にご存知ですか?」


「空気中に存在する悪魔の力の源になる粒子、という認識だ。当たり前にそこにあるものだったから今まで魔素にだけ注目したことはなかったな。

 なぜ魔素を吸収することが世界滅亡を防ぐことに繋がるんだ?」



 アーサーと話している間にもロイヤルズのガリガリガリガリとペンをノートに走らせる音が絶えず聞こえてきて地味に煩い。

 まさか本当に「うるさい!」と注意するわけにもいかないので、とりあえず無視することにして魔素について説明していく。


「魔素とは人間が魔法を使用した時に放出される魔力の欠片なのだそうです。つまり人間が魔法を使えば使うほど空気中の魔素の濃度は高まる。

 そして厄介なことにほとんど魔法を使えない人間でも呼吸のたびに少量の魔素を放出しているのです」


 人間の吐く息には窒素や酸素や二酸化炭素が含まれているが、魔力を持つ人間は『魔素』も吐き出しているということだ。


「量の違いはあれど、人間全員が魔素を生成しているということだな。では魔素と世界滅亡の関係性は?」


「魔素の空気中濃度が上がると自然災害や魔物の増加を引き起こしたり、この世界の地核に影響を与えて地震を誘発したりするそうです。そして魔素は人間の生態系にも深刻な影響を及ぼします」


「なんと……。確かに地震は近年世界中でよく起きているが、まさかその原因が魔素にあったとは…」


「それに魔素が魔物の増加を引き起こすとはどういうことなのでしょうか?」


 魔素が世界に与える影響に興味があるのか、ルドルフとセインがペンを動かす手を止めて会話に混ざって来る。ノエルとネメルは相変わらずガリガリガリガリしているが。


「魔物は魔素を体内に取り込んで生きる生物です。

 空気中に魔素が豊富にある状態が続くとそれを消費するために個体数を増やすのかもしれません。

 しかし体内に魔素を取り込み過ぎると毒になると、華さんの手紙には書かれています。個体の凶暴性を増したり、自我を失ったりする症状が出るそうです。

 もしかしたら魔物が人を襲う原因は過剰に摂取した魔素にあると考えられるのではないでしょうか。


 そして―――魔素を身体に取り込む種族は他にもいますよね」


「っ、まさか……」



 アーサーはサラの話を聞くうちにある一つの可能性に辿り着き、知らないうちに額から汗が滲み出す。


 もしこの予想が正しければ、人間はとんでもない過ちを犯したことになる。



「そう。魔素を体内に取り込み魔術として体外に放出する種族、悪魔です」


「悪魔…!?」


「なぜここで悪魔の名前が…?」


 悪魔という単語に素早く反応したのはノエルとネメルだ。

 ノエルは半年間もすり替わられていた挙げ句、本人は仮死状態で放置されているのだ。その間の記憶はなくとももちろん悪魔に対して良い感情は抱いておらず、その美麗な顔には嫌悪感を滲ませている。


「悪魔は魔術を扱えますので魔素の消費量は魔物のそれとは次元が違います。つまり悪魔が世界における『魔素濾過装置』の役割を担っていた。……皆様ならばこの意味が分かりますよね?」


「…っ!?」


「……まさか…。我々は太古から思い違いをしており、そのことが取り返しのつかない事態を引き起こしてしまっていたというのか……!?」


 ルドルフやセインもようやく人間が過去に犯した過ちに気がついたようで、まだ完全には信じられないという様子ながらもその顔色は非常に悪い。


「人間が放出した魔力の欠片である魔素は世界にとって有害であり、その有害である魔素を悪魔が体内に取り込み魔術に変換することで無害化させていたのです。

 華さんの手紙にはこう書かれていました。


 『やがて爆発的に増加した人間の数が、長寿のため個体数があまり増えない悪魔の総人口を大きく上回ってしまった。

 魔素には生き物を凶暴化させる作用があり、増え過ぎた人間が放出し続ける魔素を悪魔が大量に摂取し続けた結果―――世界滅亡のカウントダウンが始まるきっかけとなる悲劇が起きてしまった。』


 この悲劇とは人間と悪魔の間に起こったかつての大戦争のことですよね?極悪非道な悪魔に人間は辛くも勝利を収め、悪魔を絶滅寸前にまで追い詰めることに成功した、と」


「し、しかしっ……、悪魔は本当に残虐な生き物で戦わなければ人間の方が絶滅に追いやられていたはずです!」


 ルドルフの言うことも理解出来る。やるかやられるかの瀬戸際だったからこそ起こった戦争で、どちらが悪でどちらが正義かなど当事者ですらない者が判断してはいけないだろう。しかし―――


「非道で残虐。悪魔がそうなってしまった原因は、増え過ぎた人間が放出する魔素を取り込むしかなかったから。この症状を魔素中毒というそうです」


「魔素、中毒……」


 セインは呆然とサラの言葉を繰り返す。

 実は千年以上前に起こった戦争で悪魔を滅ぼすと決めたのはアルセリア初代国王の一族だった。そのためあの大戦争の責任は、脈々と現在の王家まで引き継がれていると言えるだろう。




 ―――俺の目的は卑劣な王家に囚われた魔王様の手掛かりを探すことだったんだからな!!


 ―――ハハハ!!やっぱりこの国の王族は最高だ!


 ―――辺境伯!魔王様は必ず我らの元に返してもらうからな!




「……っ、まさかあの悪魔が言っていたことは………」


 どうやらセインがもう一つの真実に気付いたようだった。

 このことがサラが最初に言っていた『とても信じることの出来ない真実』だ。



「王族に化けるという危険を冒してまで王宮に潜入したあの悪魔には目的がありました。

 正確な理由までは分かりませんが、おそらく華さんが残した植物が枯れるなりして()()を失ったのでしょう。

 そのため悪魔は王宮になら華さんの手掛かりが、自分達が生き残るための手段が見つかるのではないかと考えた」


「ま、待って下さい…!その言い方ではまるで……、まるで…」 


 ノエルはどうしても信じられないようだったが、この世界の神が()を救うために聖女を召喚したのかはここまでの話で一目瞭然だ。



「華さんは最初、悪魔を救うため彼らのもとへと降り立ちました。そして数を減らしてしまった悪魔達のために生きる術を与えたのです。

 悪魔が『魔王様』と呼ぶ人物は華さんのこと。―――つまり聖女と魔王は同一人物だったのです」

お読み頂きありがとうございます! どのような評価でも構いませんので☆☆☆☆☆からポイントを入れて下さると作者が喜びます!! よろしくお願い致します(人•͈ᴗ•͈)

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― 新着の感想 ―
おぉ、聖魔女王様!(混ぜるな危険w 別の意味で、王族たちが顔面蒼白になりましたなwww
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