表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は何もおかしくないですよ!?〜虐げられた令嬢は世界で一番醜い辺境伯に恋をする〜  作者: ひなゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/100

70 決壊


 こうしてサラはアーサーの腕の中で前世の話をすべて語り終えた。


 最愛の祖父が死んだ時のことを話すのはとてもつらく、サラはアーサーの服をびちゃびちゃにするほど泣き、そんなサラを見たアーサーは「祖父君の魂が安らかに眠れますように」と、本来であれば鎮魂の儀式でしか使われない魔法で祈りを捧げた。

 この祈りの魔法の効果で、まるで夏の夜空に無数のランタンを浮かせたかのように、温もりのあるオレンジ色の灯りが寝室中に溢れている。

「きれいですね」「きれいだな」とポツリポツリと感想を述べ合いながら、二人で大きなベッドに仰向けで寝転がって幻想的な光景を眺めているうちに、サラはやっとウィリアムの死を受け入れられたような気がした。


 アーサーは美琴の最後の後悔についても「自ら死を選んだわけではなく、無意識のうちに母親を守ろうとして身体が動いたのだろう」と言って優しく否定してくれた。


「……なぜ、そう言い切れるのですか?」


「サラは人のために動ける子だからだ。その証拠に何もせず贅を尽くした暮らしをすることだって出来たのに、サラはグラハドールや城に住む者達のために尽くして日々奔走してくれている」


「でも、それは…お世話になっているのですから当然のことです。騎士様達は命懸けの任務について下さっているというのに一人だけ怠惰に過ごすことなど出来ません」


「お世話になっているからという理由だけならば、魔物肉を食べれるように尽力することも、力を明かしてジャックの足を治す必要もなかったはずだ。サラはいつも誰かのために頑張っている」


「…っ、」


 ウィリアムの死を思い出しあれだけ泣いたというのに、サラの目にはみるみるうちに涙が溢れ出す。


「わ、私……、あんなにひどいことをされたのに…、母があの時無事だったらいいなと、思ってしまうことが……『自分の弱さ』だと感じて、どうしても認めたくなかった……」


「サラは優しい子だからな。それに母親のしたことを許せる『強さ』も持っている」


「…………許すことは……『強さ』なの…?」


「俺はそう思っている」


 アーサーはきっぱりと美琴の最後は自殺ではなかったのだと、母親を守ろうとしただけだと言い切る。

 誰かにそう言ってもらえたことで、サラは祖父の教えを裏切っていなかったのだとようやく自分を許すことが出来た。


「ありがとうございます…辺境伯様。私…本当はずっと前世に囚われていましたが、辺境伯様のおかげでなんだかやっと解放されたような気がします……」 


「サラは正しく生きている。前世も、今世も」


 アーサーのその言葉に、押し留めることの出来ない想いがぶわぁっと溢れ出した。いや、溢れたなんて控えめなものではなく、決壊したと表情した方が正しいかもしれない。

 前世なんて荒唐無稽な話を信じてくれたばかりか、ずっと一人で抱いていた後悔や悲しみにまで寄り添い癒してくれた。

 アーサーはサラにとって唯一無二の存在であり、またアーサーにとってもそんな存在になりたいと強く思う。今までのような子ども扱いではもう満足出来なくなってしまった。


「辺境伯様!!」


「!?っ、ど、どうした?」


 サラはアーサーの身体に乗り上げる勢いで抱き着いたので、落ちないようにしっかり抱きとめつつもアーサーは驚いた様子で噛んでしまっている。


「私、辺境伯様のことが大好きです!!愛しています!!

 すでに夫婦とはいえ貴方にその気がないことは十分理解しています。それでも大事にしてもらえてお側に置いてもらえるのだから満足するべきだと、納得させて来ました。

 ですが、もう自分を偽ることは出来ません!……辺境伯様にも同じ気持ちを返してほしい、と……願ってしまったのです…!!

 どうすれば……どうすれば私のことを好きになってもらえますか…!?」


 涙の滲んだサラの瞳と、大きく見開かれたアーサーのルビーのような瞳が無言で絡み合う。


 返事を催促するのもどうかと思い待ちに待って、「え?もしかして辺境伯様目を開けたまま寝てない?」とサラが心配になるような時間が流れたあと、ようやくアーサーが口を開く。



「………俺もサラのことが好きだ。もうどうしようもないほどに愛している」


「ですからそういう子どもを慈しむような感情ではなくてですね……ん?愛している??」


 アーサーからの好意はわりと前から感じていたがそれは幼子を見守る大人の温かな眼差しというか、もしくは高魔力者である自分の顔を正しく認識してくれるからこその執着というか、とにかく男女の恋情ではない好意だとずっと思っていた。

 だからアーサーからの「好き」を「家族としての好き」だと捉えたのだが、よくよく思い返してみれば今はっきり「愛している」と言ってくれた。


 混乱の最中ここまで考えたところでサラは体勢をクルッと変えられ、気がついた時にはアーサーに見下されていた。体重をかけないようにしてくれているので重さはないが、アーサーの巨体に覆いかぶされると視覚的な圧迫感はすごい。


「えっ、あの、」


「サラ、先ほどの言葉は真実だろうか?本当にこんな俺のことを…?」


「『こんな』ではありませんよ。辺境伯様はとても格好良くて素敵な人です。でも今は容姿なんか関係なく、貴方の優しさや内面の美しさにとても惹かれています」


「サラ……」



 アーサーはこんな奇跡が自身に起こるなど夢にすら見たことがなかった。グラハドールの領主として血を繋ぐ責務を果たさなければならなかったがこんな醜い男に嫁いでくれる女などいるはずもなく、また、アーサーも誰かに好意を寄せる自分を想像出来ずにいた。


 だがサラと出会い、一瞬で惹かれ、そしていつしか己の命よりも大切な存在となっていた。


 優しいサラに気持ちを押し付けるような真似をしてしまえば、本心ではなくとも受け入れてくれるかもしれない。しかし偽りの心を手に入れたところで虚しいだけだ。

 アーサーは本気でサラを愛しているからこそ、サラにも同じ気持ちを求め、好きになってもらえるまで努力を重ね、たとえ成就する可能性が低くともいつまでもいつまでも待つつもりだった。

 だが―――今、アーサーが見下ろすサラは頬を染めて潤んだ瞳でこちらを一心に見つめている。



 ―――本当にこんな化け物が神聖な存在に手を伸ばしてもいいのだろうか。



 アーサーは迷いながらもゆっくりと顔を近づけると、サラの小さな唇にそっと口づけた。

 小鳥が餌を啄むような触れるだけのささやかな口づけだったが、アーサーにしてみれば死ぬほど勇気のいる初めての行為だった。

 数秒で唇を離すとアーサーはサラの気分が悪くなっていないかどうか慎重に確認する。


「サラ…顔は認識出来たとしてもたとえば俺の魔力で気持ち悪くなったりはしていないだろうか?」


「……」


「サラ?…異常に顔が赤いな、熱か?脈は―――」


「熱じゃないですよ!!あああ、あの、いいい今のは……!!」



 サラは何度も何度も狙った(?)アーサーの唇が触れるか触れないかくらいまで目前に迫ったあたりでパニックに陥り、想像していた以上に柔らかい唇がふにっと自分の唇に触れたところで意識が一瞬飛んでしまった。

 だが、今のは間違いなく正真正銘アーサーからの口づけであり、しかもまさかの両思いというオプションまでついている。


「……嫌だったか?すまない、不快にさせてしまっただろうか?」


「まさか!!その、嬉し過ぎて呆けてしまったといいますか……っ!ずっと……ずっと辺境伯様とキスしたい、と思っていましたから……。夢みたいです…」


 前世今世を含めての初めてのキスに、サラはポーッとしながら思ったことを思ったまま口にする。

 頬を染めて嬉しそうにはにかむその姿は、普段のサラとはかけ離れた色気を放っているがどこか無防備で、アーサーがごくりと唾を呑み込み瞳に欲を浮かべていることにもまったく気づいていない。



「―――では、もっと深く口づけても?」


「え…」


 アーサーはサラの返事を待たずして先ほどよりも深く激しく、食いつくように荒々しく口づける。


「んっ……ふ…」


「はぁ、…サラ……」



 口づけの合間に漏れるとても自分の声とは思えない甘い吐息や、アーサーの余裕なく自分の名前を呼ぶ声に身体が震え、今度こそ限界を向かえたサラは意識を失った。

お読み頂きありがとうございます! どのような評価でも構いませんので☆☆☆☆☆からポイントを入れて下さると作者が喜びます!! よろしくお願い致します(人•͈ᴗ•͈)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ