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私は何もおかしくないですよ!?〜虐げられた令嬢は世界で一番醜い辺境伯に恋をする〜  作者: ひなゆき


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49 天国から一気に地獄


 サラはアーサーにエスコートされていなければスキップしながら歩きたいほど浮かれきっていた。


 なんとこれからセインの計らいで三ヶ月先まで予約で埋まっている王都の超人気洋菓子店で優雅なティータイムを満喫出来ることになったのだ。

 わざわざセイン自ら店に連絡を入れて個室を確保してくれるあたり、アーサーが気兼ねなく過ごせるよう配慮してくれたのだろう。

 王族なのに偉ぶったところのない話しやすくさりげない気遣いの光る良い人だと、サラは前を歩くセインの背中に向かって心の中で手を合わせる。


 セインもこの後出掛ける用事があるらしく、話し合いが終わった後、馬車止めまで護衛よろしくアーサーとサラも同行していた。

 といっても高魔力者であるアーサーが来ると分かっているので最初から人払いされていたのか、もしくは自主的に避けられているのかは定かではないが王宮の廊下に人けは皆無だったが。

 以前のサラならば「なんで人がいないんだろう?」と疑問に思っていた場面だが、高魔力者の真実を知った今ならばこうして答えが分かる。成長した。


 たいていの高魔力者は人が多く集まる場所では仮面をつけて少しでも忌避感が軽減されるように振る舞うらしいのだが、辺境伯であるアーサーは自分を曲げてまで人々に必要以上に阿るような真似をしては威厳が下がるとして、顔を隠すことはしないと決めているようだ。

 確かに「醜いのだから顔を隠せ」と周りが言うことに従うのは違うとサラも思う。

 しかしアーサーのように強い人ばかりではないはずだ。ヴァンのように非難の眼差しに配慮して仮面を着けざるを得ない高魔力者達にとって、王都はさぞ暮らしにくいだろう。その結果、グラハドールに高魔力者が集うのは当然なのかもしれない。


 そんなことを考えながら、入り組んだ王宮の廊下をしばらく歩いていると前方からサラ同じくらいの年頃の男性が二人歩いて来るのが見えた。


「―――やあ、兄さん。辺境伯との話はもう終わったんですか?」


「兄さん、お疲れ様です!」


「お前達、学園はどうしたんだ?」


「「今日は昼までだよ」」


 セインを兄と呼ぶのだからこの二人ももれなく王族だ。立ち止まって少し頭を下げたアーサーを見習い、サラもなんとか様になってきたカーテシーで挨拶をする。


「その黒い軍服にすごい身体は…グラハドール辺境伯だね。久しぶり」


「結婚したって聞いたけど、そちらの女性が奥さんかな?」


「ノエル殿下、ネメル殿下、ご無沙汰しております。

 彼女は私の妻のサラです」


「サラ・グラハドールと申します。お会い出来て光栄にございます」


 アーサーに紹介してもらったサラは挨拶の言葉を述べて軽く微笑む。

 長らく森小屋生活をしていたのでこの国に第二王子と第三王子がいることすら知らなかったがそんなことはおくびにも出さず、挨拶した後はしれっとした顔でアーサーの後ろに控える。

 ボロが出ると困るので知らない人の前では最初の挨拶以外喋らないようにしているのだ。


「「へぇ〜〜可愛いね!」」


 ノエルとネメルはサラの顔を覗き込もうとするように一歩前に出たが、大きな岩のようなアーサーが立ちはだかったことで空気を呼んでスゴスゴと引き下がる。

 兄であるセインに影響された二人は高魔力者に対して偏見は持っておらず、幼い頃からアーサーにも普通に接する数少ない人間だった。


「ノエル殿下とネメル殿下の御活躍はよく耳にしていますよ。最近も聖女様が残された書物の一部を解読されたとか」


「「そうなんだよ!!」」


 この王子達よくハモるなと思いながら急に出てきた「聖女」という単語に「この世界にも聖女がいるんだ」とサラは軽く驚く。


 魔法のある世界で魔物だって悪魔だっているのだから聖女がいてもおかしくはないが今まで一度もその存在を耳にしたことがなかったので、「もしかしたら滅多に現れない系の聖女なのかも」と推理してみる。

 ただ単に森にこもっていたサラが知らないだけかもしれないが。

 聖女に纏わることもおそらく常識だろうと思われるので、後でこっそりアーサーに教えてもらおうと心のメモ帳に「聖女」と記しておいた。



「聖女様が残した文字、というか暗号はこの世界のどこにも存在しない記号が使われているのが特徴なんだけど」


「最近ノエルがおそらくこうだろうという法則に気がついてね!まだ少しだけど聖女様の日記の一部の解読に成功したんだ!」


「いや、僕だけの力じゃないよ。ネメルの柔軟な発想や解釈の仕方にヒントを得たのだから」


 ノエルとネメルが興奮したように話す内容を考慮するに、どうやらこの国の聖女は過去の人物であり、ノエルがその聖女が残した意味不明な暗号を読み解き日記の解読に成功したと。

 二人とも若く見えるが優秀な歴史学者として、アルセリア王国の未来に貢献すべく日々励んでいるのだろうと思うと尊敬しかない。


「本当にノエルやネメルの発想には目を見張るものがある。私も負けていられないなぁ」


「止めて下さいよ、僕達なんか『知の賢者』である兄さんの足元にも及びませんから!もっと精進しますよ」


 セインからの賞賛の言葉にノエルとネメルは照れたようにはにかんだ笑顔を浮かべる。


「―――おっと、兄さんは確かこれから新しく出来た騎士団駐屯地の視察でしたよね?僕達はこれで失礼致します」


「グラハドール辺境伯、夫人も。また今度ゆっくりお話しましょう」


 にこやかに微笑みながら立ち去る王子二人をサラは頭を下げて見送った。

 なんとか無事、ボロを出すことなくロイヤルな方たちとのやり取りを乗り切ったと、サラは込み上げる達成感にこっそり笑みを零す。


「…ププッ。サラ夫人、『こいつら誰だ?』て顔してノエルとネメルを見てたよね?」


「あっ………す、すみません…、勉強不足で」


 セインにからかうように突っ込まれたサラは顔を赤くして謝罪する。自国の王子の顔を知らない貴族女性なんてサラ以外に存在しないだろし、そもそも勉強不足どころの話ではない。


「世間から隔離された生活をずっと送ってきたのだから知らないのも無理はない。これから少しずつ学んでいこう」


「っ!はい、ありがとうございます、辺境伯様」


 アーサーからの優しいフォローに泣きそうだ。加えて二人の王子の詳しい解説も丁寧に教えてくれる。


「あの御二人は第二王子のノエル殿下と第三王子のネメル殿下で見ての通り双子だ。セイン殿下の影響を受けこの国の歴史に興味を持たれたようで、初代アルセリア国王の妻である聖女が残した書物の解読について研究している」


「え……?まったく似てませんね?」


「私とってこと?確かに母親が違うからそこまで似ているわけではないかな」


 サラの「似てない」発言に反応したセインが補足をつけ加える。セインは亡き前王妃の子で、ノエルとネメルは現王妃の子だ。

 今の王妃とセインの間に()()の軋轢はあるが兄弟仲は非常に良好で、二人の弟達は兄を心から慕っている。

 だが、サラが言いたいのはそうではない。


「いえ、セイン殿下とではなくノエル殿下のネメル殿下のお顔が全然似ていないな、と…」


「? 御二人は一卵性だからそっくりだと思うが」


「え……?ネメル殿下は金色の髪に青い瞳の優しそうなお顔立ちをされていますが、ノエル殿下は黒髪に赤い瞳、の……!」


「「!?」」


 サラは途中で言葉を切って自分が口走ってしまったノエルの特徴に愕然とする。黒髪に馴染みがあるので違和感に気づくのが遅れてしまったが、この世界における黒髪と赤い瞳を持つ者の意味は―――



「サラ!?一体なにを―――っ!?」


 王族であるノエルに()()()()()言い掛かりをつけて侮辱するなどこの場で処罰されても文句は言えない所業だ。

 アーサーはすぐサラに発言を取り消させようとするも、背中から強大な“力”の塊が飛んできたことに気付くとサラとセインを守るように強固な結界を瞬時に張り巡らせる。


 もしアーサーの結界が後一秒遅れていたら、サラとセインの身体は呆気なく蒸発して骨すら残っていなかっただろう。


 そんなことを全然そんな場合ではないのに現実逃避で考えてしまうほど、圧倒的な“力”がサラの目の前で結界にぶつかり弾けて爆発した。



 ドゴォォ―――ン!!!!!



「きゃあぁ!!?」


 すぐ目の前で起きた大爆発のせいで周囲の壁の一部には穴が空き、天井からもガラガラと削られた素材がいくつも落ちてくる。爆音に飛び上がるほど驚いたサラは慌てて頭を抱えて蹲った。


「―――……?」


 何も落ちてこないな?とチラリと頭上を見上げれば半透明の球体である結界が瓦礫から守ってくれていたようで、サラはドキドキする胸を押さえながらホッ…と安堵の息を吐いて震える足でなんとか立ち上がる。

 セインを見るとさすが王族というか、不測の事態にも一切狼狽えることなく冷静に周囲を見渡しては状況把握に努めているようだった。

 アーサーはサラとセインを庇うようにして前に立っているため大きな背中しか見えなかったが、砂埃が舞い上がり視界がすこぶる悪くなってしまった廊下の奥をひどく警戒しているようだった。



「―――あっれー?おかしいなぁ…」



 少しずつクリアになってきた視界の中、コツコツと靴音を響かせながらこちらへやって来る人物の影がぼんやりと見える。



「何百年と誰にも変化を見破られたことなんてなかったのに。―――ねぇ、なんで君は分かったの?」



 はっきりとその姿が視認出来る距離までゆっくりと近づいて来たのは―――先ほど別れたばかりのノエルだった。

 後方には尻もちをついたまま真っ青な顔でガタガタと震えているエメルの姿も見える。



「ねぇ、教えてよ。―――なんで君は僕が悪魔だって分かったの?」


「「!!」」


 アーサーとセインの鋭くハッと息を呑む音がやけに大きく聞こえる中、ニィ…と口角を上げてこちらに笑い掛けてくるノエルの口がやけに赤く見えて不気味だった。


 サラは自身を両手で強く抱き締め湧き上がる身震いをなんとか抑えようとした。

お読み頂きありがとうございます! どのような評価でも構いませんので☆☆☆☆☆からポイントを入れて下さると作者が喜びます!! よろしくお願い致します(人•͈ᴗ•͈)

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魔女王サマ、悪魔も使役しちゃえ!w
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