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私は何もおかしくないですよ!?〜虐げられた令嬢は世界で一番醜い辺境伯に恋をする〜  作者: ひなゆき


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42 “娘”との出会い②

昨日のお話で次女を長女と間違って記載してしまい混乱してしまった方もおられるかもしれませんが、長女はイザベラです。すみません…!!m(_ _)m


 ハルベリー子爵が治める領地はイザベラが住んでいた領地のなんとお隣である。お世継ぎを産むという役目があるため両親には「数年は会えない」と伝えたが、意外と近い距離に少し心細くなっていたイザベラの気持ちは「なんとかなるかも」と上向き出す。



 そんなこんなでハルベリーまで三時間ほど馬車で揺られてやって来たイザベラは、今は豪華な屋敷の応接間で子爵がやって来るのを緊張した面持ちで待っていた。言うまでもなく、極度の緊張のせいでギンッという効果音がつきそうなほどイザベラの目は釣り上がっている。


 子爵とは初対面というわけではなく、契約を交わす際一度会ったことがあり、今日はあれから三ヶ月ぶりの再会だった。

 その時のハルベリー子爵はとても痩せており不健康そうな印象を受けたせいで、とんでもない話を持ち掛けられているというのにそれどころではないほど子爵の健康状態が心配になったものだ。

 あれから少しは顔色が良くなっているだろうかと考えながらソファに腰かけ香り高い紅茶を頂いていると、後ろの扉が開き誰かが部屋へと入って来る気配がした。

 イザベラはカップを置きサッと立ち上がるとカーテシーをしようとしたのだが、視界の端に入った男性の姿が予想外過ぎて固まり礼を忘れる。


「―――よく来てくれた。座ってくれ」


 子爵はイザベラの向かい側のソファにドシンと腰掛けるが、その際、高級そうなソファがミシミシと悲鳴を上げるものだから壊れるのではないかとハラハラした。

 ここでハッと我に返ったイザベラは「…失礼致しました」と頭を下げてからソファに座り直す。

 子爵の姿が三ヶ月前に会った時とは別人級に太り過ぎており一瞬誰だか分からなかったとはいえ、失礼な態度を取ってしまったと心の中で後悔した。


「―――あらかじめ送ってもらった書類はすでに提出しているため、君は名目上ハルベリー子爵夫人となっている」


「はい」


「契約にも記している通り、君の仕事は後継ぎを産むことだけであり、それを果たしてくれさえすれば後は好きにしてくれて構わない」


「承知しました」


「君は対外的には子爵夫人を名乗ることになるが、私の妻はアリサただ一人であり、君とは契約関係に過ぎないことを理解しておいてほしい」


「はい。その旨は契約書にもしっかりと記されておりましたので心得ております」


「では話は以上だ。分からないことがあれば彼に聞いてくれ」


 子爵は簡潔に言いたいことだけ言うと重そうな身体で苦労しながらソファから立ち上がり、すぐに応接間から出て行ってしまった。

 残されたイザベラが壁際に立つ男に目を向けると曲がった腰をさらに折り曲げ頭を下げる、杖をついたおじいちゃんが一人。


「奥様……。ひつじのマイケルと申します……。お部屋までご案内させて頂きます……。さ、荷物をお持ちしましょう……」


「いえ、結構ですわ。自分で持ちます」


 執事と言いたいのだろうが絶対に「ひつじ」と発音しているこのおじいちゃんは本当にこの裕福な子爵家の執事なのだろうかと疑問を抱く。貧乏だったイザベラの家に執事などいなかったのでこれが普通だと言われれば反論出来ないのだが。

 そしてイザベラの重たい鞄なんか持たせたら曲がった腰はさらに折れ曲がって元に戻らなくなりそうだったので絶対に渡せない。


 イザベラは二階にあるらしい自分の部屋に案内してもらうため、執事の手を取り背中を支えつつ階段をゆっくりと上った。








***



 時は流れてイザベラがハルベリーにやってきて一年が経過したが、子爵との子をいまだ懐妊出来ずイザベラは少しずつそのことを悩み始めていた。



「はぁ……。子どもって中々授からないものなのね」 


 イザベラは自室で紅茶を飲みながら本を読んでいたのだが、さっぱり頭に入って来ないので諦めてパタンと閉じる。

 

「奥様が嫁いで来られてまだ一年じゃないですか。気に病む必要はないですよ!」


 侍女のメアリーが気遣わしげな視線を送りつつも笑顔で励ましてくれたので、イザベラはキッと目を吊り上げハスキーなボイスで礼を伝える。


「ありがとう。貴女がいてくれて本当に助かっているわ」


「そんな…っ、私の方こそいつまで経っても田舎もん丸出しで奥様にはご迷惑ばかりお掛けしているというのに…、こんな私にもいっつも優しくして貰えて感謝してます!」


 メアリーは近くの村に住んでいる十六歳の女の子でイザベラが一年前ハルベリーの領地にやって来た時から侍女として側に仕えてくれている。

 妹と変わらぬ歳のメアリーはおっちょこちょいで何をするにも失敗ばかり。美味しいお茶の入れ方から効率の良いシーツの替え方、果ては貴族に対するマナーまですべてイザベラが教えてあげたのだが、手の掛かる妹が一人増えたという感覚だったのでメアリーが失敗しても一度も怒ったりはしなかった。

 メアリーも最初は身体が大きくあまりにも鋭い目つきの主に恐怖で萎縮しまくっていたが、イザベラの優しい人柄に触れるうちに吊り上がった目つきは決して怒っているわけではないと気付いてからはとても慕っている。


 ハルベリー家に仕える人達はメアリーのように領地に住む平民ばかりだ。おじいちゃん執事マイケルも三年前に雇われたようだとメアリーに聞いた。

 なんでもそれまで務めていた使用人達を子爵は一斉に解雇してしまったらしい。以降は貴族家に仕えたことのない平民ばかりを採用し働かせているようだ。


 三年前―――それはちょうどハルベリー子爵最愛の妻が亡くなった頃。


 イザベラは初めて子爵と会って契約を交わした時のことを思い返す。



『私は二年前妻を亡くした。彼女だけを想って残りの余生を過ごしたいが後継ぎがいないためそうも言っていられない。

 遠い親戚に家督を譲ることも考えたが、そうなれば愛する妻と過ごした思い出の屋敷や土地を手放すことになってしまう。そのため私の子を産んでもらうためだけの女性を探していてね。

 君のことを少し調べさせてもらったのだが、聡明な女性であるにも拘らず家に金がなかったせいで嫁ぐ機会を失ったようだな。

 君の弱みに付け込んでいることは百も承知だが多額の支援と引き換えに私と契約を結んでもらえないだろうか』



 イザベラの美しいとは言い難い容姿に全く頓着していないあたり、子爵はハルベリー存続のため本当に跡継ぎが欲しいだけなのだろう。


 子爵は今も亡くなった妻を愛している。


 イザベラもそれは承知の上で契約を結んだのでそこはまったく構わないのだが、ふとした時に感じる違和感がずっと拭えずにいた。

 果たして妻が亡くなったからと言ってすべての使用人を解雇する必要があったのだろうか。それに上手く言えないが、この家には何かが足りない気がしてならない。



「ふぅ…。考えていても仕方ないわね。気分転換に少し散歩してくるわ」


「はぁい、いってらっしゃいませ〜!」



 元気過ぎるメアリーに見送られたイザベラは苦笑しつつ、広さはあるが殺風景で寂れた庭にやって来た。

 元は様々な花が咲き乱れていたであろうこの庭も三年前から手入れされていないらしく、今は生命力溢れる雑草に侵食され尽くしている。


 イザベラはベンチの汚れをハンカチで軽く払ってから座り持って来ていた本を読み始めたのだが、マイケルが何度も庭を往復していることに気が付き思わず声を掛けてしまう。


「マイケル?さっきから何をしているの?」


「おや、奥様……。読書の邪魔をしてしまいましたかな……?いえね、気温も暖かくなって参りましたので、少し庭の手入れでもしようかと思いまして……道具を探していたのですがこの物置小屋の鍵が見当たりませんでしてな……」


「そう…。ちょっと見せて」


 イザベラは本を置いて立ちあがると、庭の隅にある朽ちかけた物置小屋の前までやって来る。

 古いからなのか珍しく魔力認証のない扉で、錆びついた南京錠がついているだけ。イザベラは何気なく南京錠を手に取り軽く引っ張ってみる。するとパキンッと乾いた音を立てて上の金具が割れてしまった。


「………年季が入っていたからであって私の力が強いというわけではないのよ」


 イザベラはマイケルに対し無駄に言い訳を始めた。子どもの頃から近所の男の子達に「怪力女」と恐れられていたが、さすがに金属は壊せないと信じたいので経年劣化であることを殊更アピールする。


「おやおや……ありがとうございます奥様……。これで庭の手入れが出来ますぞ……」


「ちょっと貴方大丈夫?少しフラフラしているわよ。少し休んでお庭の手入れは明日にしたら?道具は私が出しておいてあげる」


「よろしいのですか……?では有り難くお言葉に甘えさせて頂きます……」


 杖をついてゆっくりと立ち去るマイケルを見送りながら「庭の手入れも私がした方がいいような気がするわね」と思いつつ、イザベラはギギギと嫌な音をたてる物置小屋の扉をゆっくりと開けた。


「え…」


 小屋の中にある灯り魔道具は生きていたようでイザベラがスイッチに手を翳すと室内は明るくなったのだが、庭仕事に関係のある道具が入っていると思い込んでいたイザベラは一瞬固まる。

 なぜなら埃が積もった小屋の中にはベビーベッドやおもちゃ、数年前に発売された当時大人気だったぬいぐるみ型魔道具、そして大量の絵本にこれまた大量の幼児用ドレスが床に乱雑に積まれていたからだ。


「なに、これ……」


 どれも新品というわけではなさそうだが一・二回使用した程度の綺麗さで、子どもに纏わる品がこんな場所に捨てるように放置されている理由にまったく見当がつかない。


「そうか…あの家に足りない何かは『子ども』だったのよ」


 イザベラは違和感の正体に気付き細い目を精一杯見開く。


 子爵家にあるほとんどの家具は角を削られぶつけたとしても痛くないように配慮されている理由も、一階にある一番日当たりの良い部屋が使用されていない理由も、以前食堂で木のスプーンを見掛けて裕福な屋敷に似つかわしくないなと感じた違和感も、どれもこれも幼い子どもが少し前までここに居たからだと考えればすべての辻褄が合う。



「でも……肝心の子どもは一体どこにいるの?」

 

 

お読み頂きありがとうございます! どのような評価でも構いませんので☆☆☆☆☆からポイントを入れて下さると作者が喜びます!! よろしくお願い致します(人•͈ᴗ•͈)

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