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私は何もおかしくないですよ!?〜虐げられた令嬢は世界で一番醜い辺境伯に恋をする〜  作者: ひなゆき


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37 高魔力者の真実


 ヴァンは自分の耳が聞いて脳で処理して理解したはずの内容が信じられず、驚愕の声をあげた後固まったままピクリとも動けないでいた。


「ヴァン様?もしもーし。私、失礼なこと言ってしまいましたよね……。すみません。

 祖父には『キレた時のお前の気性の荒さはアフリカスイギュウみたいだな』ってよく言われてたんですけど性格って死んでも直らないみたいです…」


「………」


「あ、好みじゃないって言ったことを不快に思われてますか!?

私には刺さらなかったというだけでヴァン様のお顔はめちゃくちゃモテる要素がありますから誤解しないで下さいね?

 歳上のキレイなお姉様とかクール系美女とか『可愛い〜!!』とか言ってこぞって貢ぎそうだし、もしかしたらノーマルな男の人だって堕とせそうなくらいヴァン様は愛くるしいお顔立ちをされていますよ!」


「え、ちょ、待っ………」


「長いまつ毛にクリクリの大きな瞳、そして雪のように白いお肌!黙って微笑んで椅子に座ればビスクドールかと見間違うほどです。

 それにしても毎日鍛錬されているはずなのにヴァン様はなんでそんなに肌が綺麗なんですか?北の地方に住んでいるからですか??私はすぐ日焼けしてしまう体質なので本当に羨ましい限りです…」


「は、肌!?え、えっと」


「あと、口元にあるほくろがズルいんですよねぇ。口元にほくろがあるだけでほどよい色気が追加されちゃってただ可愛いだけじゃない魅力が生まれています!垂れ目とほくろって最強の組み合わせじゃないですか?私にもヴァン様の十分の一でもいいから色気があれば辺境伯様との健全過ぎる清い夜から脱却出来るかもしれないのに…!!」


 最後に口走ったセリフはわりと深刻な問題で、アーサーとはこの三ヶ月ほぼ毎日同じベッドで寝起きしているというのに、夫婦ならいそしんで然るべきあれやこれやが一切ないのだ。

 サラも最初は「まだ心の準備が…」などとモジモジしていた初々しい時期もあったが、今となっては「一体いつその気になってくれるんですか!?」と、いっそのこと直球で聞いてやろうかと思うくらい準備万端の待ち状態である。


「ほ、本当にちょっと待って!!」


「え?」


 サラが「どうすればアーサーと一線を越えられるか」という議題について真剣に考え始めていると、顔をりんごのように真っ赤にさせたヴァンが口元を腕で隠しながら必死に叫んでいる。


「どうしました?」


「どうしました?じゃなくて………!!なんであんたが俺の顔を知ってるんだ…!?それにほくろの位置まで…」


 ヴァンは自分の醜い顔を見せて気絶させてやろうとした相手から怒涛の勢いで容姿を褒め称える言葉を浴びせられ、もう意味が分からなくなっていた。

 本来であれば高魔力者の顔を正しく認識出来るのは自分自身か、測定不能な魔力量を誇るアーサーだけであり、サラにはヴァンの顔が醜くく見えているはずだ。それなのに―――



「………閣下に俺の顔の特徴を聞いたのか?」


「え?なぜ辺境伯様に聞くのですか?ヴァン様は目の前にいるのですから見れば分かりますよね?」


「………っ!?まさか、あんたは……俺の顔が分かる、のか?」


「えぇ。一体さっきから何を………、…!」


 ここでサラはやっと何かがおかしいことに気付く。どうやらヴァンは、サラがヴァンの顔を見て感想を述べたことに驚いているようだ。


 では、なぜここまで驚かれてしまうのか。


 サラはこれまでのアーサーの度重なる病んだ発言や、相手の目を見て話してはいけないと念押しされた理由について、本来であれば許されるはずのない王宮の侍女達のアーサーへの態度、王都に着いてから顔を隠すように付けられたヴァンの仮面の意味を一つ一つ繋げてはある真実に辿り着く。



「まさか………高魔力者の人の顔は正しく認識出来ない、もしくは不細工に見えてしまうの………?」


 サラは思わず溢れた自分の言葉が腑に落ち過ぎて目を見開く。

 この世界における一番の謎だったサラがアーサーの花嫁に選ばれた理由は、ずばり「アーサーがこの世界の人達には超不細工に見えているから」。そう考えればすべての辻褄が合う。


 ヴァンは少し考え込んだ後ゆっくりと口を開いた。


「いや……、不細工とは少し違う。高魔力者の身体から漏れ出る魔力はそうでない者にとって、諸説あるが一種の毒のようなものだと言われていて、だから高魔力者には『近寄ってはいけない』と本能が拒否反応を示してしまう。そのせいで高魔力者の顔はひどく崩れ、醜く見えるんだ」


「え…」


「これは赤ん坊以外誰もが知る常識なのになぜ知らない?それに………なんであんただけ世界の理から外れているんだ」


 車内はヴァンの問い掛けを最後に、針の落ちる音が聞こえそうなほどシーンと静まり返ってしまった。


 サラが持つこの世界の知識は教えてくれた人の意向によりかなり偏っているため、高魔力者がそうでない者にとって醜く見えることなんて知らなかったし、なぜ自分が普通の人と見え方が違うのかなんてもっと分からず、つまりヴァンの質問に答えようがなかった。

 最悪なことに馬車の扉は魔力を流さないと開けられない仕様となっており、ヴァンのサラを見る目が段々と不審な人物を見るソレに変化していることには気付いていたがこの場から立ち去ることも出来ず、サラは視線を泳がせることで精一杯となってしまう。


 なぜ滅多に使いもしないカーテシーなんかより、高魔力者の存在について教えてくれなかったのかとサラは心の中であの人に八つ当たりした。いや、結果として王太子殿下にカーテシーを披露したのだから無駄ではなかったけれども。



「………あんたのように高魔力者の魔力に影響を受けない人間は今まで見たことも聞いたこともない」


「……っ」


「あんたは何者なんだ?…………本当に………人間なのか?」


「っ!〜〜〜、ヴァン様っ、ごめんなさい!!」


 サラはこれから大変な目に遭うであろうヴァンに一言謝ってからワンピースの裾を少し捲り、レッグホルスターに挿していたナイフをサッと抜き取った。


「っ、一体なにを……」


 ヴァンはナイフを取り出したサラを制圧するか否か迷いつつ、とりあえずナイフを奪おうと手を伸ばし掛けたところで―――



 バキッ!!ベコッ!!ボコッ!!



「っ!!?」


「ひゃぁ!?」


 馬車がミシミシと音を立てて軋んだかと思えば、天井や壁がいきなりボコボコとへこみだした。

 サラは突如訪れた異変に頭を抱えて蹲り、ヴァンは外から受けている魔力の攻撃に対し同程度の魔力をぶつけて相殺しようとするがなぜか上手くいかず舌打ちをする。


「ちっ!まさか魔法による遠隔攻撃じゃないのか!?閣下の所有地でまさかの物理攻撃とか頭おかしいんじゃね!?

 っ、とにかく俺は外に出て敵を倒す!あんたはここに―――」


 バキンッ!! ドゴォーーーン!!


 ヴァンが何者かの襲撃に対処すべく外に出ようと馬車の扉に手を掛けたその時、引きちぎる勢いで扉は外に飛ばされ、なんとそのまま屋敷の壁にぶっ刺さった。


「「!?」」


「サラ!!!無事か!?」


 扉がなくなり風通しが良くなった馬車の前に颯爽と現れたのはアーサーで、サラの姿を確認するなり車内に乗り上げきつくその身体を抱き締める。

 何が起きてもここが一番安全だと思える場所、アーサーの腕の中に収まったサラはホッとしてナイフをカランと落とした。


「辺境伯様……、来て下さってありがとうございますっ!……ただ、私の予想を超えた大変な事態になってしまってちょっと慄いているのですが…」


「なぜだ?サラがナイフを抜かざるを得ない状況に陥ったならば何をおいても駆けつけるのは当然のこと」


「い、いえ、ヴァン様に色々と疑われてテンパっただけと言いますか…」


「ヴァンに何かされたのか? ……………」


「っ、閣下!?沈黙が怖すぎます!!俺のこと始末しようとか考えてませんか!?」


 やっと状況が飲み込めて来たヴァンは、命の危険を感じ慌てて身構える。まあ、アーサーの前ではどれだけ警戒しようが結界を張ろうが無意味に等しいのだが。


 アーサーに抱かれたまま馬車の外に出たサラは、ここでようやく襲撃犯の正体を知る。


「あ…、この子達は」


『奥様、キケン』


『奥様以外、コロセ』


『奥様ノ生命反応確認。戦闘モード、解除シマス』


「ご苦労」


「閣下…『ご苦労』、ではありませんよ…。こいつら俺のこと殺す気満々だったじゃないですか…」


 外から攻撃して馬車をベコベコにした犯人は、アーサーのタウンハウスを守る人型魔道具三体だった。どうやら五十キロの荷物を運べる自慢の剛腕で外から馬車を殴りつけていたようだ。


「サラがナイフを抜いた位置情報を分析した結果、俺が王宮から向かうよりこいつらを先に対応に向かわせた方が早いと判断したまでだ」


 そういうがアーサーも王宮から駆けつけたとは思えないほど早くサラの元へと現れている。というか馬車の扉を引き千切り放り投げた勢いで壁にぶっ刺した犯人はアーサーだったという事実にサラは戦慄した。


「―――それで?ヴァン、お前はサラに何をした?」


「ぐっ、ぅ…!」


 ヴァンはアーサーから軽く放たれただけの魔力に耐えきれず、地面に片膝をついた。

 

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