毒虫集結。『弐』
う……。
「ーーは?」
待て、どうしてこうなった……。
俺の視界を埋め尽くすのは、大きな教室。そして…俺の周りには椅子に座り眠りこけている人物達が沢山。明らかに異常な状況であると脳みそが警鐘を鳴らしている。
「監禁されたのは流石に初めてだな……」
等と苦笑いしつつ、辺りを見回すくらいしか俺は出来ない。座らされているが、錠のようなものは無く、普通に移動出来る。
(監禁では無い?…一体何が目的なんだ?)
深呼吸で自分の息を整えてから、少しドクドクと脈打っている俺の胸部を叩く。柔らかい感触と共に、感覚が伝わってきて、嘆息と共に周りを見渡すのを辞めた。
「ーーーー…結衣。起きているんだろ」
同じタイミングで起きた筈である結衣にそう問いかけてみる。すると一拍遅れで
「はぃ、起きてますよ天音パイセン……」
と瞼をこすっている。……悠長すぎないか。
「ん……机……」
かさ、と乾いた音がして、白い紙を引き抜く。
そして、結衣はそれを黙読した後に、白い紙がひとりでに消失した。
「…………天音先輩」
滅多に真面目な顔をしない彼女だが……その時には珍しく真剣な顔をして。こう言い放った
「前、見てください」
言われるがままに俺は前を見る。そこにはーー。
まるで血文字のような赤赤しいペンキだろうか、粘着質なものがどろどろと滴っている。そして、それが表す文字は。
“毒虫共よ……喰らい合え”と黒板上に大きく描かれている。
「ーーこれ、殺し合いっすよ…天音先輩」
真剣な表情が、怯えに変わり、“私”に訴え掛けてくる。
「っ……あ。あぁ…分かってる…よ」
私は、男性口調で格好をつけているだけ。流石にここまで異質な状況が重なれば、恐怖と脅えでハリボテは崩れてしまう。だが、それでも後輩を安心させなくてはならない。から……私は震えながらもそう呟いた