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『神 待ち掲示板のうわさ』


VRゴーグル内のゲームのオープニング画面が閉じて、西洋風の色鮮やかなキャラクター達や町の装飾が目に映る。




ゲーム開始時のすぐ近くにある広場では、


馴染みの顔が集まりチャット欄でアニメの話、ゲームの話等が飛び交いあっている。


学校や家族の話はここでは別に話題に出さない、出してはいけない。


それが基本的に日常生活では、つまはじきにされている俺にとっては居心地が良いのだ。




「今日はなんか成果あったか?」




馴染みのメンバーの中でも一番古く関係を持っている人に個人用のボイスチャットで話かけた。




「我は今日も狙ってるもののドロップは無しだ。


余りものはすべて汝の糧にするが良い」




このゲームプレイヤの名前は、フランジェシカ・コルヴラド。


通称はフラン。もしくは吸血鬼、、、


またはクソガキ。




要するに『なりきりプレイヤー』。


自分を吸血鬼の貴族だと思いこんで日常生活の話をする。


口調も威厳ある古風な感じにしている。


キャラクターは小さな女の子が赤と黒のドレスを着て、


蝙蝠のような翼を生やしているのでいかにも吸血鬼という風貌だ。


何度か話している感じでは中学生が背伸びして、

厨二病的な存在になりきる遊びをしている様な、そんな幼稚さも節々にとれる。


そういう風に見ると大変微笑ましい現状であるが。


一般的にはこういう輩にはプレイヤーはあまり好んで関わろうとはしない。


一向、俺はまあゲームの中だしそれも良いだろ。


くらいにしか捉えてなかったので交流を図ってしまった。




そんな感じで適当にこいつと絡んでいたらなし崩し的に


保護者兼、相棒みたいな関係になったという訳だった。




「今宵も闇の者共から骨も残らぬ程略奪してやったわ、汝にも分け与えよう」




要約。

「今日のゲームで報酬を頂きました。いくらか欲しい物があれば分けますよ?」




厨二病検定一級の俺にかかればこいつの言っている事はある程度理解できる。


たまに本気で分け判らない事もあるがそれはスルーすることに決めてる。




「おお、これすげえレアじゃん。もらっていいのかよ」




「ふふふ、汝の旅の導きになれば我が至福よ。ただしその見返りに汝の血と汗を寄越すがいい」



要約。

「どうぞ受け取って下さい、その代わりに一緒に手伝ってほしい事があります」


とりあえずもらえる物はもらっておいて、要望通り彼女の受け持っている依頼を手伝う事になった。




**  ********  *********  **










「黒よ、少し良いだろうか?恥を忍んで頼みたい事がある」




黒というのは俺のゲーム上でのニックネームだ。




「なんだ今更、かしこまって」




モンスターをある程度倒して依頼もだいぶ終わった頃。


フランが不意に話を振ってきた。




察するに今回の本題はどうやらこの「頼み事」の様である様だった。




「”神待ち掲示板”というものをしっているか?黒」




「神待ち?」




確か家出した奴(主に女子高生)を一晩泊めてくれる場所と食べ物を提供してくれる人を探す掲示板だったはず。


ちなみにこれで言う「神」とは本物の神様では当然違う、家出した人にいろんなものを恵んでくれる人を神様という。


随分と神様も安くなったもんである。




「家出した奴とかの援助交際とかに使われる掲示板だろ?」




ちなみにその中には神様ではなく悪魔も潜んでいて、それが原因で殺人事件等も起こった事もあるという。




「そう、だな。まあ、そういう認識であっている」




妙に歯切れが悪くフランが相槌を打つ。




「それ以外何があるんだ、

言っとくが援交で問題が起きたとかそういうのは俺じゃなくて警察に連絡してくれ。

一介の学生である俺の領分じゃない」



「その程度の事なら確かに、警察は動くだろう。だがしかし今回はそういう問題では無いのだ」



「じゃあ、その問題って奴を教えてくれよ。フラン大先生」



「よかろう」




まるでその今から話す何かに恐怖を植え付けられたかのような、

そんな声色でフランは特別な掲示板について話出した。






**  ********  *********  **








事の発端は、フランの趣味だというオカルト関係で繋がった友人から聞いた噂だという。




「神様に会える掲示板がある」




その友人はそういっていたらしい。


なんでもその掲示板は普段はただの神待ち掲示板で、


不良少年や不良少女の援交目的のものが投稿されているのだが。


その中には比喩ではなく”本物の神様”がいて、気に入られた人間は神隠しに会うという。


それだけならただの行方不明、あるいは自殺で済む事件なのだろうが。


その神隠しは神隠しの標的と、その家族達一世帯が忽然と消える。



集団神隠し。



警察が知れば蒼顔、マスコミが知れば喜々とした表情になりそうな話だが。


何故か今はただの一家心中で済ませられているらしい。


それは、神待ち掲示板なんて使用している家庭が問題ない方がおかしいし警察もそこまで暇では無いのでそこまでまだ調査していないというのもあるだろう。


あるいは調査しても何も掴めていないか。


兎にも角にも、ただのうわさや迷信だと思い込むにはあまりに不気味過ぎる内容だった。




**  ********  *********  **








「すなわち、”神待ち掲示板”とは神隠しの犠牲者が来るのを神様が待っている掲示板ということになるな」




フランが一通り話終わり、締めの一言を言った所で疑問が生じた。




「で?結局、その危ない掲示板の話が頼み事とどう関係してるんだ」



「ここで衝撃の事実だ」



「なんだよ」




嫌な予感しかしない。




「実は我は、その神様と会う約束をしてしまったのだ」



「はあ?何してくれてんだてめえ」



「だ、だが神との蜜月という貴重な経験を我一人で味わうには非常に惜しい!」



「おいこら」




早口で、舞台歌劇団の様に大仰にフランがまくし立てる。




「そこで!」



「まて」



「・・・」



「俺は一緒に行かんぞ」



「・・・共にこの価値のある経験を謳歌しようではないか!?」



「行かんぞ」



「・・・」



「・・・」




そんな厄介事、頑固拒否である。


数秒の沈黙。




「お前が撒いた種だろ、そんな得体の知らないやばい事件に突っ込む程馬鹿じゃあねえよ」



「我だとて約束を交わすその時まで、件の神とやらとは思っていなかったのだ」



「嘘だな、その話に興味を持たなければそんな危ない掲示板にたどり着くことすらない筈だ」



「・・・実はほんの少しそうじゃないかとは思ってました」




とてつもなく深いため息が出る。

俺はこいつの保護者では無いし、そこまでしてやる義理は流石に無いだろう。

ゲームとかでのアイテムのやり取りとかならいざ知らず、

顔も見たことない奴の為に命を張ることまで無い。



とはいっても、このままだと目覚めが悪いし寝つけも悪くなりそうだ。


もしこれでこいつが何かの事件になり連絡が途絶えたら、

もしテレビのニュースで行方不明の報道が流れたら、

そう思うと俺の悩みの種が増えそうで後悔しそうだ。




「警察にも先ほどの件を述べた、

だが「そんなことでは動けない」と「いたずらに通報するのは止めてくれ」と門前払いを受けてしまった」




目の前のフランが自信なさそうに此方に語り掛けてくる。

いつも元気で生意気で、憎たらしいくらいの俺の相棒が。



「我だけでは、策が思い浮かばん。頼む、貴殿だけが頼りなのだ」



そうこれは仕方なくする事だ。

助けたいからする訳ではなく、俺の為に俺に損が回ってこないようにする行為だ。




だから。



「わかったよ、わかりました。やらぁいいんだろやれば」



俺は溜息を吐きながら、嫌々という雰囲気で返事を返した。



「ほ、本当か?」



「ああ、やってやるよ。打倒神様!・・・上等じゃねえか」




不安そうに確認してくるフランに、明るく言い放つ。




「ま、どうせ相手は犯罪者だからな。もし本当に会えたら警察に突き出して洗いざらい吐いてもらうとしよう」



「そ、そうだな。思ったより強気なのだな黒いの」




本当にそれが神だった場合は俺がどうこう出来る様な代物では無いが。


その時はとりあえず逃げれば良い。


そもそもそんな非現実な奴らが居たら俺の生活がもっと刺激的になっている。


相手は恐らく連続殺人鬼、もしくはカルト教団の教祖くらいだろう。


拳銃等を振りまわすヤバ気な暴力団の可能性もあるが。




、、、その時は泣いて許しでも乞おう。




「とりあえず、どうやって神様を捕まえるか」




俺が色々と思考を巡らせ作戦を考えていると、不意に右肩をちょんちょんと小突かれた。




「面白そうですね、私も混ぜて頂けますか?」




いつの間にかクララが後ろに居た様だ。


中腰の姿勢で右耳元に顔を近づける様にしてこちらに話しかけていた。


おかげで振り向こうとした時にキス寸前になったので心底ビビった。




「お、おおお、お前何時から居たんだよ」




飛び退いてゴーグルを外し、机に背中を預けながら訪ねた。




「つい5秒前でしょうか?ああ、もう6秒前ですね」




にこにことしながら、俺の顔を覗き込みそう言うクララ。


何が可笑しいんだ、俺のビビり方がオーバーリアクションだったからか?




「今7秒になりました」



「それはもういいよ」




生真面目に秒間隔で回答を変えてくるクララに呆れた顔で言った。


なんだろう、会った時から若干感じてたけど不思議ちゃんなのかな。


容姿は美人だが、どうやらしゃべると残念な感じになるタイプの美人だった。




「それで先程何やら神様を逮捕するとか聞こえましたが。


罪状は何です?詐欺罪ですか?」




興味津々という感じで俺を問い詰めてくる。


近いんだよ、距離間って物を知らないのか?


いろんな所バグってないか、この残念美人系外国人。




「罪状は詐欺とか拉致とかその他諸々だよ。


俺の友人が被害にあってるらしいからな、どうにかしてやろうってことだ」



「左様ですかあ」



「左様でござんす」




敬語がおかしくなって侍みたいな話し方になっているがそれも外人だからだろう。



驚いた拍子に外れたヘッドホンからフランが何か叫んでいる声が漏れてきている。

どうやら心配をかけているようだ。




「ちょっと失礼」




落ちたヘッドホンを拾い、フランに現状を軽く説明をする。


クララが「これが げえーむ ですか。これはどう動かすのでしょう」とか言いながら俺のパソコンを勝手に触ろうとするのを阻止しながら、俺は自室に突然訪問しに来た留学生の事を伝えた。




『そうか成程。ではその客人も此度のラグナロクに参加してはいかがかな?』



「勝手に世界規模の大戦にするのやめなさい、詐欺師を捕まえるだけだろうが」




しかも関係無いコイツを巻き込むのはあまり気が進まない。


何より、クララに関しては俺とすら面識は浅いのだ。


見ず知らずの人を危ないカルト教団から救って下さい、なんてとても頼めない。




「私手伝いますよ?」




横から会話を盗み聞きしていたらしいクララが喜々とした表情で言ってきた。




「あのな、この神様は危ない連中なの。


好奇心だけで、あんたみたいなか弱い女子が手を出しても安全の保障は無いんだよ」



「左様ですか」



「左様でござんす」




さっきからなんだこのやり取り、デジャヴ感じる。




「では、四葉さんをお誘いしましょう」




「え、なんで?ちょ、待って・・・」




俺の静止を聞かず、クララは部屋を出て四葉の部屋の方に駆けていった。



やべえ、絶対怒鳴られるぞあいつ。

どうにかやり過ごす口実でも考えるか。




『まだ、人増えるのか。まるでゲームの勇者御一行様の様だな』




俺が冷や汗を掻きながら、考えこんでいるとゲーム越しにフランが言ってきた。


誠に遺憾ながら、同意見だった。




『心が躍るな』



「俺は心が沈んでいるよ」




『四葉とは妹君のことであったか?確かそなたの屋敷の暴君であったか?』



「俺の家は屋敷程でかくねえよ。一般家庭より大きいくらいだ。

後、妹についてだが暴君は生温い」



『、、、大魔王とか?』




それはちょっと・・・いや、合ってる気がする。


俺は妹の日頃の暴虐不尽っぷりと、奴が悪の女王みたいに世の男どもを下にして、


その上でふんぞり返って高らかに笑い声をあげている様を思い浮かんだ。




似合いすぎる。なんだったら実際にやってそう。

いや、そういう噂は一度も耳にした覚えはないのだが。




そんなこんなで雑談してしばらくしたところで、神妙な面持ちの四葉とクララが帰ってきた。




「兄貴、なんか面倒事に巻き込まれているって聞いたんだけど本当?」



「は、はい」




今にも雷が落ちてくると思っていた俺は、拍子抜けした。




「そう・・・」




嫌、やっぱり嵐の前の静かさを身に感じていた。




「私も同行するわ、捕獲するなら人数は多い方が良いでしょ」




そんな俺の心配をよそに、四葉は軽々と作戦に参加してくれる事を了承してくれた。




「いいのか?危険だし、何もお前に得が無いが」



「良いのよ、私にも得があるのよこの作戦は。アンタには分からないでしょうけどね」




そう言って四葉は自分のほどけた長髪をくるくると弄りながら、返事した。



年頃だからクララと同じくこういうオカルト関係にも興味があるという事だろうか。

俺は勝手に納得して「そうか」といってそれに対して了解の意を示した。




「ところで作戦名とか決まってるの?」



「・・・なんだって?」



「さく・せん・めい。打合せするにもあった方がいいわよ、こういうのは」



「・・・ないけどぉ」




随分とやる気だな、そんな作戦名とか考えるとか。



ということで本格的に話し合いを始める前にまず作戦名を話し合うことになった。










**  ********  *********  **








そして2時間程の時が過ぎた。




「ぜんっっっっっっっっっッぜッん、決まんねえじゃねえか!!」




「アンタが訳分からない、”くろにくる”とか”じーく”とかいれようとするからでしょ!

なんなのよ日本語で話しなさいよ!」




「なんだと、我の恰好の良さがわからぬというのか?

そも妹君よ、それを言うなら其処の少女が搔き乱すからからでは無いか」



「私ですかあ?私は”未確認宗教団体誘導捕縛作戦”が良いと思うのですが」



「意見聞いてねえよ、話聞けよ!後なんだ、その漢字ばっかな難しいの!?」




拉致が明かなかった。


俺達は作戦を開始する以前からチームワークが取れていなかった。

そんな事態を 収拾するために息を整えてから苦肉の策を放った。




「こうなったら奥の手だ、後が残るかもしれないから今まで出さなかったが」



「何?今から入れる保険があるのか黒いの」



「保険はねえよ、何ならもう事故現場だよ。この現状は」



「して、その方法は?」




三人が黙って俺の次の言葉を待つ。




「じゃんけんだ」






そんなこんなでじゃんけんゲームアプリを使って優勝した俺の「天岩戸作戦」が採用された。


登場人物


黒鉄 勇人           主人公 


黒鉄 四葉           妹


蛇喰 千里           図書委員長


クララ・プログレ        留学生


フランジェシカ・コルヴラド  ネット友達

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