プロローグ『夢現なヒーロー』
夢を見ていた。
ガキの頃はだれでも一度は見る夢だ。
女の子のために悪者を相手にするそんな夢。
「兄ちゃんに任せろ!」
幼いころはみんなの前でこういうのが口癖だった。
小さくて、かわいいおさげをしていた妹を守るのは俺の役目だった。
気弱な子や、女の子を守ってあげるのも俺の役目だった。
それを誇りに思ってたし、俺も好んでやっていた。
その当時戦隊物や、特撮物が好きな俺はその行いをすることで
少しでも自分の夢に近づいている気がしていた。
リーダー面してみんなの面倒を見て、勉強も出来て運動も出来た。
でも、現実は残酷でヒーローなんかいなかった。
俺には魔法とか、超能力とか使えないし。怪人も、秘密結社も存在しない。
すべての事柄は化学とか、方程式で成り立っていてなんだったら
不可能なことのほうが多かった。
それがわかると調子に乗っていただけのクソガキは勝手に絶望して、
勉強も運動も出来ないただのクソガキになった。
それが俺の過去、俺の夢、俺の悪夢。思い出すだけ吐き気がする黒歴史である。
「、、、、なさい」
頭痛もしてきた。
「、、、、起きなさい」
さっきより頭痛がする、なんと体も揺れてきた。
あの、本当に痛いです勘弁してください。
「起きろ!!」
暗くて居心地のいい夢の世界から、明るくて厳しい現実の世界に
強制的に引き戻された。