第8話 目覚め【序】
読了ありがとうございました!
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◇魔の巣にて
《獣王》ガリオンは、男の異質さを感じとっていた。
「おかしい………魔族の血を飲ませたのに、何故普通でいられる………!?」
ガリオンにとって、こんな経験は初めてだった。
魔族の血を飲ませれば、九割死に、一割は膨大な魔力と魔族の体を受けとる。
だが奴はどれでもなかった。
魔力こそは爆発的に上昇しているのは目に見えている。
だが、体の方はどこも変化していない。
いや、もしかするとこれが噂の〝例外〟というやつなのかもしれん。
風神以来………だな。
俺は不思議と、少年を解放した。
今でも何でこんなことをしたのか、俺にも分からない。
◇魔の巣 遥か上空にて
「魔の巣に入ったか、炎神の器。心配ないとは思うが、少し手を貸してやるか」
《炎神》ニル・バーンは、上空より魔の巣を伺っていた。
そして巨大な火の玉を、《獣王》住まう城に解き放った。
◇南の大陸にて
「魔の巣に収束していく、あの二つの巨大な魔力は一体………一つは炎神のものか、だとしたらもう一つは………」
南の《大陸王》は、魔の巣で起きようとしている異変を既に感じ取っていた。
◇魔の巣にて 再び
「何だこの火は!消えん、消えんぞ!何という高密度の魔力波なのだ!こんなことをできる奴は一人しかいない!」
《獣王》ガリオンは、必死に火を消していた。
炎神による急な襲撃に内心怯えながら………
◇北の大陸 北部にて
「………そろそろだな」
大予言者リーナは、山道を渡りながらそう呟いた。
まるで、何かが起きると知っていたかのように………
幾多もの強者共が、異変を感じとる中、その異変が今、起ころうとしていた。
◇魔の巣 本部にて
「「誕生!!」」
「「目覚める!!」」
「「笑らの王が!!」」
青紫色の巨大な繭を取り囲むようにして、魔族・獣族・鬼族がそう叫ぶ。
繭は、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。
やがてそれが止まると、繭の中心に亀裂が入った。
「来る!来る!」
そう言ったのは、大はしゃぎの鬼族だった。
亀裂はどんどん広がっていき、やがて繭に横一直線の亀裂ができた。
そして中から、人型の手が現れた。
次は頭。
次は体。
次は足。
そうして全身が出てきた。
赤黒い肌と尖った牙。
そして二頭身で人型の魔物。
いや、これは魔物とはまた別物。
こいつは………
「久しいな、お前達!」
「会いたかったです!《鬼王》様!」
魔王復活まで残り二十年となった今、災厄と呼ばれる存在が地上に降臨した。
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