第6話 初の正式依頼〜そして死迫
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大陸の南端にある、古くさい宿。
ここでは冒険者が集いあう場所、いわゆる《ギルド》という宿が置かれている。そして、依頼は主に《ギルド》で受けることができる。
そんな中、俺達は今その《ギルド》で、冒険者としての初仕事を探しているのであった。
「何かいい依頼はありますかね?」
「あっ!これはどうだ!?」
俺は良さげの依頼を見つけ、手に取った。
「なになに?『宿泊用の宿を占拠している盗賊を追い払ってほしい』……だと!」
「盗賊かぁ。危ないのは嫌だな……よし、やめ………」
と俺が言っている最中でロインが叫び出した。
「依頼達成報酬は5000Gだと!!」
5000G………!軽く一年は働かずに暮らせる額だぞ。
まずい、ここにはシェリアがいる。
金に目がないアイツならきっと………
「受けましょう!」
次はシェリアが叫んだ。
やっぱか。
くそ!そんなに目を輝かせてこっちを見てくんな!
「……はぁ。分かったよ」
こうして俺達の初の依頼が決まった。
◇占拠されている宿屋にて◇
俺達は、依頼場所へときていた。
「ここが………いかにもって感じですね」
宿屋の中は薄暗く、盗賊のアジトらしかった。
ガチャリ!
そんな金属音と共に、前のドアが開いた。
「何だお前らは!」
怒鳴り声と共に出てきたのは、十人ほどの男達だった。
「あなた達が盗賊ですか。ボスの居場所を吐きなさい!さもなければ痛い目に合いますよ!」
「誰がだよ!調子乗ってんなよこの女が!」
男達はそんなセリフを言い放ち、俺達へと襲いかかってきた。
「ここは私が………」
と、ロインが前にでてシェリアの言葉を制止した。
「いや、俺一人で充分だ」
そう言ってロインは大剣を横に一振りした。
瞬間、風を切るような音と共に男達が吹っ飛んだ。
「何だ今の!?」
俺はわけがわからなかった。
が、シェリアがすかさず説明を入れてくれた。
「あれは斬撃です。《闘気》と呼ばれる内なるエネルギーを剣に纏わせて放ったのでしょう」
何だそりゃ。
すげぇな。
説明されたはずなのに、それでも理解は追いついていなかった。
ロインとシェリアは俺にとって、別次元の存在すぎた。
そしてあまりにも………
「かっけぇ………」
カッコよく見えた。
「………何してんだ、お前ら」
「え?」
気づかなかった。
男達の後ろに、二人の強面の男が潜んでいたのだ。
「お前らもあいつらの仲間ってことでいいんだよな?」
「あんなゴミ共と一緒にするんじゃねえよ。俺とボスだけは格が違う」
茶髪の男がそう言った。
セリフから察するに、茶髪の男の後ろに立つやつがボスってわけか。
「気いつけろよサム、こいつら案外やれるぞ」
「分かってますよ、ボス」
サムと呼ばれる茶髪の男が、臨戦態勢に入った。
「サム、お前はあの女とガキを殺れ。あの男は中々やりそうだ、俺が殺る」
「了解です」
サムはそう答えた瞬間、弧を描くようにして俺達の方へと飛んできた。
サムの剣とシェリアの拳が、ぶつかり合った。
両者、隙を与えることなく、互いの剣と拳をひたすらにぶつけ合わせていた。それはまさに互角の戦いだった。
だが………
「ぐはっ!」
互角と思われたその戦いは、片方の一撃によって怪しくなってきていた。
「くっ!こいつ………!」
瞬間、サムの剣が弾き飛んだ。
そしてサムの腹部へと、シェリアの強烈な一撃が直撃する。
「ぐぶふあぁっ!」
血を吐いて吹っ飛ぶサム。
そう、優勢なのはシェリアだった。
互角のように見えたそれは、圧倒的にシェリアが優勢であったのだ。
そんな中ロインは………
「その程度か、拍子抜けだな」
片方が、片膝をついて倒れていた。
そしてもう片方は、剣を倒れた方へと向けていた。
「クソが………化け物め」
大剣を持った男は、長剣を持った強面の男の前にて倒れ散っていた。
「ロインッ!」
シェリアが気づき、飛び出す。
「バカが!」
ボスと呼ばれる男は、斬撃を放ってみせた。
無駄だ。
シェリアならあれくらいかわすか、いなすかできる筈だ!
ビュン!
しかし斬撃は、急激に軌道を変えた。
「えっ?」
斬撃はシェリアを通り過ぎた。
だとすれば向かう先はただ一つ………
「俺かよ!」
斬撃は、もう既に俺が避けられないほどのスピードと距離にあった。
終わった。
「アンドリュー!」
そう叫んだのは意外にも、シェリアだった。
案外、悪くない人生だったな………
ぐさっ!
そんな効果音と共に血が流れる。
そして血が流れていたのは………
「俺だ」
奇跡的にも、斬撃は肩を掠めただけですんだのだ。
一瞬、本当に死を悟ったよ。
俺はシェリアにグッドポーズをする。
「良かった………」
安心したようで、シェリアはすぐさまロインの方へと飛んでいった。
「交代です、ロイン!」
「ダメだ、こいつは俺達とは次元が違いすぎる………やめろ!」
ロインが倒れたままそう言う。
「こいつの言うとおりだ。何せ私は《鋭流》の上級剣士だからな」
「上級だと!」
ロインが本気で驚いていた。
そんなに恐ろしい奴なのかよ。
「そしてお前もコイツと同様に、地に這いつくばることになる」
「………坊ちゃんを傷つけた恨みです」
パコンッ!
そんな鈍い音と共に、シェリアの上半身が揺れた。
「テメェッ!」
ロインが激昂する中、俺はボスと呼ばれる男を見ていた。
俺は見た、男が思いっきりの反動をつけて、シェリアの頭部を殴りつけていたのを。
「シェリア!」
そのやばさに、俺はやっと気づいて叫ぶ。
あんな大男の、更に《闘気》とかいう未知の力を纏わせた怪力パンチ。それを頭部に直撃。
脳震盪どころの話じゃないぞ。
あれじゃもう………
「はぁ……」
「………はぁっ?」
男は呆然としていた。
そりゃそうだ。
俺も、ロインも、同じく呆然としていたんだから。
「シェリア………お前」
何事もなかったように、よっと体を起こすシェリアがそこにいた。
「今のは、坊ちゃんを守れなかった自分の不甲斐なさへの一発です………」
そして次の瞬間………
バコンッ!!!
そんな破裂音と共に、ボスと呼ばれていた男が倒れた。いや、叩きつけられた。
「え?」
「へ?」
ロインと俺は、気付かず内にそんな間抜けな声を出していた。
「これが、坊ちゃんを傷つけた恨みです」
シェリアはそう言って、男の血で血まみれになった拳を握りしめながら、男を見下ろしていた。
◇帰り道◇
「………なぁ、あれ見えたか?」
「いや、何も………」
俺とロインは、こそこそとそんな話をしていた。
シェリアが放った拳が速すぎて見えなかったという話だ。
気づいた時には、男が倒れていたんだ。拳が瞬間移動したみたいだったよ。
「………シェリアもロインも、すげえよ」
それに比べて俺は………
「坊ちゃんだって、すごいですよ!」
何がだよ………
「そうだぞ〜〜」
だから何が……
「今回ので分かった、俺は何にもできないってことが………」
「そんなこと………」
「………ッ!あるよ!」
俺は叫んだ。思いっきり。
「同情ばっかすんなよ!お前らだって、本当は内心、俺のこと馬鹿にしてんだろ!」
「どうしたんだ、アンドリュー?」
「もういいよ、お前らなんて大嫌いだ!」
何言ってんだ、俺
「待てよ、アンドリュー!」
謝れ俺、早く謝れ
「どうしたの、坊ちゃん!」
もう嫌だ、こんなの
「待てって!」
初めてできた友達を、何で俺はいつもいつも………
俺は必死になって走った。
気づけば森の中へと入っていた。
二人の声も遠くなっていった。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
俺は何してんだろ。
ホント馬鹿だよな。
さっさと謝ればいいものを………
何であんなこと、言っちゃったんだろう……
俺は、こんな自分が嫌いだった。
読了ありがとうございました!
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