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冒険記録-世界を救う30年間-   作者: 鮭に合うのはやっぱ米
第4章 世界均衡
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第60話 親友の帰還

「誰だか知らんが、中々やれるようだな、貴様」

「貴様じゃなくて、ロインな」


 現在、ここ中隊の持ち場にて、二人の強者が対立していた。


「………なんだ、もう始めていいのか?」


 この服装……大剣……間違いない、この人がアンドリューのいっていたロインさんだ!


 グリムは一人でに、そんなことを考えていた。


 アンドリューの話じゃ、ロインさんは上級剣士相当の実力者だ。

 相当な実力者ではあるが、さすがの鬼王相手にどこまでやれるのか……

 正直なところ、敗北が濃厚だろう。


 加勢したいところではあるが、僕も思ったより傷が深い。

 先程からずっと生じる腹の痛み。

 回復しつつあるとはいっても、まだ全然治ってない。


 そんな状態での加勢となれば、逆にロインさんの邪魔になりかねない。


 僕は覚悟を決め、この戦いの終わりを見届けようと思う。

 

 そして、先ほどのセリフに戻る。


「あぁ、好きに始め……」


 鬼王が答えている途中で………ロインさんが大剣を横に薙ぎ払った。


「ぐぉあぁぁぁぁ!」


 速い!


 一瞬の出来事だった。

 気づけばロインさんの大剣は鬼王の目の前に浮かび、そしてまた次の瞬間には……鬼王は吹っ飛んでいた。


 薙ぎ払いにより、鬼王の胴は両断され、上半身と下半身が宙で回転している。


「悪いな。急いでるもので、行かせてもらう!」


 吹っ飛んだ鬼王の半身に向けロインさんは追撃の斬撃を放つ。

 鬼王の半身はバラバラになり、地面へと急速落下していく。


 だが、完全に落下した時には……両断されたはずの胴がくっついていた。


「闘気術」


 大の字となった鬼の王は、そう小さく呟く。

 そして、鬼の王は起き上がると、より一層禍々しいオーラを纏い、ロインさんの前へ立ちふさがった。


「……何だそれは」

「はははははぁ!!闘気を全開にしたのさ!!」


 確かに、纏う闘気がより一層強まっていた。

 より濃く深く。


 素人の闘気は、軽い拳骨程度で簡単に割れてしまう。

 しかし、熟練の猛者が扱う闘気はどんな攻めも通じぬ鉄壁の守りとなる。

そして………


「己の闘気の限界値まで使いこなせる者のみが、この域へ入れる。次は切れんぞ、ロインよ!!!」

「それは凄えな。俺には自分の闘気の限界値が分からねえんだ……」


 ……遠回しに煽ってないか?


「お前なら、分かるかな?俺の限界値」


 瞬間ここら一帯に、闘気が……いや、闘気から滲み出る圧が広がった。

 ほんの一瞬の出来事、だけど、それだけで充分だった。

 ただそれだけで、力量を知れたから。

 

 ……いや、知れるはずがない。

 ……いや、底まで測れるわけがない。


 ロインさんの、圧倒的な闘気は、圧にもなって鬼の王に降りかかる。


「ぐおあぁぁぁぁぁっ!!?」

「教えてくれよ、俺の底を……」


 鬼の王の意識は、その瞬間、ぷつりと途切れた。

 そして途切れる瞬間、奴はこんな事を呟いていた。


「底が……見えない……」


 闘気の底が見えない。


 闘気とは、魔術士でいうところの魔力と同じようなもので、剣士や闘士にとっては必需要素となっている。

 

 闘気は、最初から全て扱えるわけではない。

 使用者の熟練度によっては、自らの闘気を全て引き出すこともできるが、それは逆に、全然引き出せない者もいるという事になる。

 闘気の量は、一人一人最初から決まっている。

 だから、どんな熟練者で己の闘気を全て引き出せる者でも、引き出した闘気の量は少ないかもしれない。


 つまり、闘気は才能が全て。

 生まれつきの素質と日々の努力の二つが必ずなければ、最強格の剣士や闘士になるのは厳しいと言える。


 そしてロインは、才能の塊であった。

 闘気の量だけで言えば、あの鬼神に匹敵するともいえた。

 だが、ロインが引き出せている闘気の量は、精々三割程度だった。

 そしてそれは、これからのロインの努力次第で、引き出せる量は相当変わってくる。


◇◇◇


 僕はこの時、ロインさんを見て、思いだしたんだ。


「人の域を外れた存在……」


 昔、父がよく読んでくれた本に登場する、古来の神様達の事。

 彼らは、人でありながら人から外れた存在である。

 人であり、人ではない。


 そんな化物の集団を恐れ、人間は媚びていた。

 その際、「象徴」として彼らを飾る「名」を人間は与えたそうだ。

 それが、「神証」。

 「王証」とは一段も二段も違う。

 そんな怪物達の存在を、現代の人間で信じている人はかなり少ないだろう。

 

 だけど僕は思った。


 もしも現代に、そんな怪物がいるのならば。


 それは、ロインさんなんだろうと……

 

 

 グリムは、ロインへの憧れと、強い恐怖を抱く事となった。


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