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冒険記録-世界を救う30年間-   作者: 鮭に合うのはやっぱ米
第4章 世界均衡
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第58話 破壊の権化

「何だ、この魔力は!?」


 俺でも察知できる程の、強大な魔力。

 身体中から、冷や汗という冷や汗が湧き出ている。

 

「ヤベェな……本能的に分かる……こいつには絶対に勝てない」

「あぁ……これは無理だ……」


 ほぼ不死身な状態の今でも、戦いたくないと思ってしまっている。

 それほどに、あの黒い怪物は危険だ。

 

「あ、あれは……何ですか……?」


 女騎士団長が、そう尋ねて来た。

 どうやら、なんとか生きていたみたいだ。


「起きたか、悪いが俺にも分からん。ただ、奴もきっと害獣だろう。やるしかない」


 覚悟を決め、俺達は戦う。

 それがどんな強大な化物であろうと……




◇◇◇


 時を同じくして、中隊では……


「おいおい、どうした!その程度か!」


 グリム・ウィザードは、鬼の王バランによって首を掴まれ、身動きのとれない状態にあった。

 他の部隊員達は皆やられ、地面に倒れ伏していた。


 そんな時……


「ボトッ」


 首を掴んでいたバランの腕が、ポロッと地面に落ちた。

 グリムはその隙に、距離をとるように離れた。


「誰だぁ!!?」


 バランはブチギレ、そこらか中を暴れ回っていた。


「ボトッ」


 そしてまた、今度は逆の腕が落ちた。

 バランはその瞬間、暴れるのをやめた。


 一体何が起きているんだ……


「自分の置かれている状況を理解したか」


 そんな台詞と共に、男は草むらから姿を現した。


「あ……あなたは一体……」


 グリムは尋ねた。

 男の正体を。


「私は北の大陸、聖天騎士団、副騎士団長、パール・ネパール。この戦いの加勢に来ました」


 北の大陸……じゃあこれで、助けは全員来たって事か。

 今頃はアンドリューのいる最前線にも、騎士団長がもう一人いってるって事か……


「私が来たならもう安心だ。君は後ろに隠れて見ていなさい、私の活躍っぷりをね!」


 相当な自信家のようだ。

 とはいえ、実力は本物だった。


 目にも止まらぬ高速の剣技で、あの鬼族に攻撃すらさせていない。

 

 そして剣撃が止んだ時には、鬼族の体はもうボロボロだった。


「凄い!凄いです!」


 グリムは、その圧倒的な様に見張れていた。

 そして、勝敗がついたと思われたその瞬間、副団長はこちらへと振り返りこう言った。


「君も励みたまえ。こいつは鬼王、鬼族のトップだ。それ相手に生き残れたとあれば、中々なものだぞ。才能ありありだ!」


 うぉー!ま、まじか!

 副団長にそんな事言われたら、なんか自信ついちまうなー!


「あ、ありがとうございま……」

「フンッ!!」


 一瞬だった。

 グリムが感謝を述べていた、その最中に。

 副団長の頭が掴まれ、そして地面に叩きつけられた。

 やったのはもちろん、あの鬼族だ。

 

「こ、こいつ!まだ生きてい……」


 ポキッ


「うぐああああああぁぁぁぁぁ!!?」


 そんな、軽い音がした。

 そして気づけば、副団長の右腕が、変な方向に曲がっていた。


「弱いな、お前も」


 そして鬼族の腕も、体の傷も、全て再生していた。


「くっ……………そがぁぁ!!」


 残った片腕で反撃を試みた副団長だったが、鬼族の膝蹴りを腹に受け、倒れ落ちた……

 ……という事もなかった。

 鬼族は、倒れ落ちそうになっていた副団長の頭を掴み、そして持ち上げた。

 

 そしてそこからは、酷いものだった。


 何発も何発も、腹に膝蹴りを行い、副団長の意識が途切れそうになると、次は顔面に膝蹴り。

 そうして無理矢理意識を起こして、殴って、蹴って、それをずーっと繰り返す。

 そんな光景を、グリムは何もできずに、ただずっと見ていた。


 ……いや、違うな。


 僕は何もできなかったんじゃない……何もしなかったんだ。

 ただただ怖くて、自分まで殴られるのが怖くて、僕はずっとずっと、逃げて来たんだ。

 そんな、弱虫の人間が、僕だ……


 こんな自分が、僕はずっと……


 嫌いだった。


 



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