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冒険記録-世界を救う30年間-   作者: 鮭に合うのはやっぱ米
第3章 三人旅 : 中央大陸編
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第42話 未来を見る能力

「僕の友達を、助けて欲しい」


 アンドリュー・サーバック、人生にして初のお願いを受けてしまう。

 一体何があったのかというと、それは十分ほど前に遡る。


 俺は《矛盾の里》にて、そこら辺を見回しながら歩いていた。

 そんな時、ある少年に声をかけられた。


「お兄さん!お願いです、助けて下さい!」


 この少年の名前はチャオ。

 彼にはどうやら双子の弟がいるようで、その子を助けて欲しいんだとか。


「えっと……別にいいけど、具体的に俺は何をすればいいの?」


「あ、その前に説明させていただきますね」


 と、話しを遮るようにそう言われた。

 俺の話が先だろ。くそがきめ。


 そこでチャオが語ったのはこうだ。

 チャオにはどうやら、信じられんことに《未来を見る能力》があるようで、その能力で弟が今日の夜に死ぬのを見てしまったみたいだ。


「弟は……落石に潰されて死んでいました。この未来を回避するためにも、どうか力を貸して下さい!」


「分かった。で、俺はその落石を無くせばいいのか?」


「はい!お願います!」


 俺はチャオに案内されるがまま、落石が起こると思われる場所まで連れてこられた。………はずだった。


「………おい、いつまで歩いてんだ?何かさっきから行ったりきたりしてるみたいだけど………?」


「え、えっと……じ、実は………」


 チャオはかしこまって言った。


「僕、未来は見えてもその場所とか詳しい事までは分からないんです………」


 じゃあ何でこんな自信満々に俺を連れてきたんだよ………


「はぁーーー………分かったよ、探してやるよ」


「え!?本当ですか、やったぁーー!」


 チャオは嬉しそうにはしゃいでいた。


「じゃあ、俺はあっち側探すからお前はそっちを頼む」


「わかりました!」


 俺たちは、分担して探すことにした。

 

 確か落石が起こるっていうことだし、岩の多い所を探すか………

 と、そんな事を考えていると俺はあることに気づいた。


 それは、この里に入ってきた時のことだ。

 確かこの里の門は、岩で作られた縦長の巨大な門だった。

 

 それを思い出した俺は、急いで門の前まで走り出した。

 

 そして門の前まで辿り着いた俺は唖然とした。

 

「………こんなにデカかったのか」


 入ってきた時は気づかなかった。

 高さ数十メートルはありそうな程の巨大な岩石で作られた門。

 これが落ちてきたら、ひとたまりもないだろうな。はっきり言って、即死だろう。


「お兄さん、何見てるの?」


 門を眺めていた俺は、突如そんな声が聞こえて振り向く。


「え?」


 そこにいたのは、チャオだった。いや、正確にはチャオそっくりの別人だった。

 てことはこいつがチャオの言っていた………


「お前がチャオの弟か」


「うわ!お兄さん知ってるんだ!」


 チャオの弟は、大袈裟に驚くポーズをしてみせた。

 

「僕はテオ。チャオとは双子なんだ!」


「てか双子なら、お前もチャオみたいに未来が見えたりするのか?」


「いや?〝それ〟はできないよ」


 意味ありげな言い方だな。


「僕は自分で未来を見れはしないけど、相手に未来を見せることはできるよ」


「………というと?」


「例えば………ほら!」


 そう言ってテオは、俺に向かって掌を向けてきた。


「ぐぁっ!」


 瞬間、俺の脳内に謎の映像が流れ出した。

 それはたった十秒程度の映像で、エドワード、グリム、ルーナの三人と一緒に馬車で里から出て行く映像だった。

 そしてこれがテオの言っていた、未来を見せる能力なんだろう。


「どう?これで分かったでしょう?」


「ものすごーく頭が痛えが、すげえ能力なのは分かったよ」


「でしょ!凄いでしょ!」


 褒められたのが余程嬉しかったのか、テオは無邪気に飛び跳ねていた。


「あ、アンドリューさん!それにテオも!」


 そんな話しをしていると、チャオが元気よくこちらへ走ってきた。


「なあチャオ、お前の言ってたのってこれのことか?」


 俺は岩石で作られた巨大な門を指差した。


「うん、多分それだよ」


「了解。少し離れてろ」


 俺は門に向かって、特大の《火球フレイムボール》を放った。

 その瞬間、《火球》は門に直撃し、大きく後方へと倒れた。


「……………………」


 今更だが、俺のしてることやばいな。

 門壊して怒られたらしないよな……………


 門は倒れたことで本来の大きさに劣るにしても、それでも立派といえるほどの高さをもったものであった。


「よーし、これで終わりだな!」


「あ、お兄さん!あれ!」


 ん?と思いみると、門の割れ目には光り輝く宝石が埋め込まれていた。


「ま、まじか!」


 よーし、今のうちに盗みまくるぞ!


「帰るぞー、アンドリュー」


 とその時、見覚えのある声が聞こえた。

 その声の主はエドワードだった。

 

「エドワード!」


 後ろには、グリムとルーナの姿もあった。

 タイミング悪いな………

 

「じゃ、じゃあ悪い二人とも。俺はそろそろ帰るわ」


「うん、バイバイ!」「またね!」


 そう言って笑顔で二人は俺を見送ってくれた。


 そしてその後、門の目の前では………


「よーし、テオの分の宝石は俺がとってきてやるからな!」


 と言って、チャオは勢いよく門の割れ目に向かって走っていっていた。


「うわー!すげぇ!」


 割れ目に辿り着いたチャオは、宝石を持って大はしゃぎでいた。そんな時だった………


 ガタッ!

  

 そんな音がし、チャオは上を見上げた。






◇馬車にて◇


 俺は、一つ疑問に思っていたことがある。

 未来は決定事項である。それを破った場合どうなってしまうのかということを。

 決定された未来を変えたということは、逆に他の決定された未来に辿り着いてしまうのではないかと。

 弟が死ぬはずだった未来は変わった。だとすると変わってしまった未来で死ぬ人は、きっと……………

 

 俺は嫌な予感がして、振り返った。

 振り返り見た岩石の門は、あの時よりも欠けていたような気がした………


「………気のせいだよな」


 俺はそう思った。いや、そう思うことにしたんだ。

 でないと、もうここには一生戻れそうになかったから……………


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