41話 知る男
「それが兄ちゃんの名か……」
俺は緊迫した空気の中で息を呑み、続く言葉を待つ。
「はぁーーー」
男は肩を落とし、「疲れたー」と言わんばかりにため息を吐いた。
「それが本当かは分からんが、間違っているという確証もない。今回はひとまず、見逃すことにしといてやる」
「あ、ありがとうございます……?」
なんとか助かったみたいだ。
それにしても、ホントに何で俺はこんな目にあっているんだろう……
「あの……さっきの怒っていた原因ってのは何なんですか?」
「悪いが、それは言えないんだ。それと、勝手に疑って悪かった。謝罪する」
そう言って男は、俺に深々と頭を下げた。
「ま、まぁ俺も怪我とかはないですし、俺も勘違いさせるようなこと言ってしまいました。俺もすいません」
俺も頭を下げておいた。
「案外、礼儀をわきまえてるんだな兄ちゃん。見た目はタチ悪そうだぞ」
ヒデェ言われようだな全く。
「そんじゃ、俺はここらで帰るとします」
「ちょい待ちな、兄ちゃん。これはお詫びだ」
そう言って男は、二つほどの杖を渡してきた。
「剣士のくせして杖を持ってるってことは兄ちゃん、杖コレクターだろ?お詫びとしてこれを持っていってくれ」
別にそんなのではないが……ありがたく貰っておくことにしよう。
「また会うかは分からないが、一応名前を聞いてもいいか?」
俺は男に、名前を尋ねた。
「……ダムルスだ。また会ったら、その時は宜しくな」
ダムルスか……この人には、また何処かで会いそうな気がするな。
鍛冶屋での一件はこれにて幕を閉じた。
感想、いいねよろしくお願いします。