39話 鍛冶屋
棘山を抜けた俺達は、次なる地へと足を踏み入れた。
【矛盾の里】
「おっ、見えてきたな!!あれが矛盾の里だ!」
エドワードは、里に向かって指を指して見せた。
大きさはそれほど大きくはなく、里と言えばこんな感じだろう。というようなものだった。
ラムード国の中じゃ、小さい方なんだろうな。
「さぁ、とっとと降りちまいな」
エドワードは馬車を止めると、俺達に降りるよう促した。
言い方に棘があるような……いや、いつものことか。
「この里にも何かあるのか?」
「あぁ、ここは里と言っても人が何人も住むような所じゃない。ここは市場みたいなものだ。それも、冒険者や騎士なんかに打ってつけのな」
「それってどうゆう……?」
「言った通りここは市場だ。じゃあ、冒険者や騎士用の市場と言ったら、何が売ってる?」
「……武器屋か」
「そう言うことだ。まぁ、そこらの武器屋なんかよりかはよっぽど良いものがあるし、見ていくといいぞ。特にグリムとルーナはな」
二人は、「はい」「うん」と返事をした。
思えば二人はここまで、武器無しで進んできたんだな。
それで使える武器があったら買っとけってことなんだとか。
ここらで、俺の愛用してる杖とも別れる必要があるのかもしれないな!!
俺はこの時、自分でも気づかずに口角を上げ笑顔になっていた。
「……嬉しそうだな、アンドリュー」
「え!?い、いや別に〜」
俺はあからさまに隠す。
まさか、二年も愛用していた武器を変えられるかもしれないからって、嬉しがってるなんて最低な奴、いるわけないよな。
「さてと…」
それじゃ、行くか。
『鍛冶屋』
里に入ってまず最初に目についたのがこの鍛冶屋だ。
店の外にはみ出る程の数の、多種多様な武器が揃っていた。
そしてなんといっても欠かせないのが、ここでは好きな武器をオーダーして作ってもらうことができるんだ。
まぁ、その分値段は上がるんだろうけど……
いつかまた来てみようと、胸の中にしまっておくことにした。
「……おい、兄ちゃん」
帰ろうとした俺を、誰かが呼び止めた。
「……はい?」
俺はその主を確かめようと振り向いた。
声の主は、ここの鍛冶屋の店員だった。大柄な男で、おそらくは店長なんだろうと一目で分かった。
「その背中にかかった剣、ちょっと見せてみな」
「あ、はい」
俺は言われるがままに男に近づき、剣を差し出した。
「んーーーーー」
男は、剣を品定めするようにジロジロと見だし、やがて───
「コイツはただの剣じゃねえな?」
そんなことを言い出した。
「あ、はい。一応《魔剣》らしいです」
「呪いは?」
俺が答えると、男はすぐに次の質問をくりだしてきた。
「の、呪い?」
俺は何のことだかわからず、そう問い返す。
「兄ちゃん、そんなことも知らねえのかよ?呪いってのはなぁ……」
男はそう言って、呪いについての説明をしてくれた。