38話 下山
それから俺達二人は、難ありながらも切磋琢磨と山を登っていき、遂に───
「着いたー!」
頂上には、エドワードとルーナが座って待っていた。
「おぉ、思ったより遅えな」
エドワードは、へとへとな俺達を一蹴する。
「元はと言えばお前が……」
俺は良い留まった。
背後から物凄い殺気を感じ、恐る恐る振り向いた。
「そうだな、元はと言えばお前が……お前もだな」
グリムがそんなことを言ってきた。
そうだ、確かグリムも寝ていた俺を運んできてくれていたらしい……
「わ、悪かった……」
俺は一応、謝っておいた。
まぁ、これもトレーニングの一貫だと思って頑張りたまえ。
そんなやりとりを終えると、エドワードは立ち上がってこう言った。
「さてと……それじゃ、そろそろ出発するとするか」
そうして、俺達は山を下るのだった。
----- 下山中 -----
「うわあああああああああああああああああぁ!」
下山を始めて間もなく、そんな悲鳴がそこら一帯に響いた。
一体何があったのか……
それは遡ること、5分前……
「何か見た感じ、登りより急じゃねえか?」
俺は崖すれすれの下山スタート地点から、見下ろす様にして下山ルートを見て言った。
これは、ほぼ90度と言ってもいいくらいの急差だ。
「俺、絶対無理だぞ?」
「お前じゃ無理な事は分かってるよ」
エドワードは、俺の呟きをまた一蹴して返した。
「……じゃあどうすんだよ?」
「そりゃあ……」
エドワードは、そう言葉を溜めると、俺達3人を一気に抱え出し、そして───
「……ちょっ!」
「跳ぶに決まってるだろ!」
エドワードは瞬間、地面を勢いよく踏みつけ、跳んだ。
ただただ単純に、ジャンプする程度の勢いで、地面を踏みつけて、上へ弾む。
ただそれだけの単純なこと。
だがそれは、一般人での話。
……もしもそれが、【騎士団長】という、人類トップクラスの能力を持つ《怪物》の場合だったら───
「……飛んだ」
「……飛んでるね」
「……飛んだな」
グリム、ルーナ、俺と順に、そうぽつりと呟く。
超人は物理法則すらも無視するのかね?
俺達は、今なら雲にも触れるんじゃ、というくらいの高さまで行きそうだった。
……だがその上昇も、ずっとは続かなかった。
ありえないほどの高さを浮遊……いや、上昇し続けている中、突然にポツリと、その勢いはなくなった。
そして勢いのなくなった俺たちは、そのまま下へと急降下していった。
ぎゅーーん!
凄まじい風を切る音が耳中に響く。
だがそんなのよりも、それをかき消すくらいの別の轟音も鳴り響いていた。
「ぎゃあああああああああああああああああああ」
ルーナの悲鳴だ。
それは、いつものクールで陽気な姿からは想像もつかないような怯えた表情だった。
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