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冒険記録-世界を救う30年間-   作者: 鮭に合うのはやっぱ米
第2章 一人旅 : 見習い騎士編
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37話 竜人族

「おい!起きろアンドリュー!」


 そんな声が聞こえ、俺はふと目を開ける。


「……グリムか、どうした?」


「どうしたっ?って、お前なぁ……」


 グリムは呆れたようにため息をついた。

 

「お前、今から山を登るって時にいきなり倒れたんだぞ!」


 なるほどな、それでここまで俺を運んで来てくれたわけか。


「……助かる」


「ホントだよぉ…」


 グリムは疲れたのか、その場に膝をついた。


「……それにしても、ここは山のどこ辺りなんだろうか?」


 ここら辺は案外、棘が少なくて動きやすそうだ、一休憩してってもいいかもな。

 疲れてるだろうし。

 ……俺以外は。


「登りの中間地点くらいだと思う。多分。」


 じゃあ、あと半分か。

 後半は楽な道のりだといいが……


「何者だ!貴様ら!」


 突然、そんな声が前方の穴から聞こえてきた。


 んー……何だ?

 暗くてよく見えないが、穴の奥に何かいるな。


 そしてドタドタという足音と共に、それが正体を現した。


「何だ、コイツら」


 それは、竜の頭を持った人型の生物だった。

 竜で、人……まさかこいつら!


「───竜人だ」


 隣で座っていた筈のグリムが、立ち上がってそういった。


 竜人……本で読んだことはあるが、実際には見たことないし、正直よく知らない。

 ただ知ってるのは、知性を持たぬ野蛮な魔物とは違い、知性を持ち、文明的で温厚な生き物だということだ。

 だからきっと、話せば荒事にならず片付く筈だ。


「我々は、この頂上にようがありまして、竜人様方の邪魔をするつもりは一切ございません。ですからここは穏便に去らせていただきます。さようなら」


 よし!自己ながら完璧な言い分。

 相手を褒めたたえ敬いつつも、自分を相手よりも低く言うことで、相手に不快な想いをさせぬ会話テクニックだ!

 これできっと───


「───信じられんな。こやつらを連れて行け」


 ……はっ?何でだよ!?

 これほどまでに完璧な言い回しでダメだったら、コイツらには何も通じないじゃんかよ!

 誰だよ、竜人族は温厚だなんて言ったやつ……




 こうして俺達は、竜人族に捕らえられた。

 そうして穴の中へと連れて行かれた俺達は、総勢50匹近くはいそうな竜人の群れの中にて、審判にかけられている。


「だから、俺達は何もするきは無くって!」


「だからそれは信じられんと言っておるのだ。何か証拠でもあるのなら別だが……な」


「……何か証拠あるか、グリム?」


 グリムはこちらを見るなり、"無い無い"と首を横に振った。


 証拠と言われてもなぁ……あの変態騎士団長が来てくれたら楽なんだが。

 というかあいつは何で一人で行ったんだよ。

 いっそのこと、俺ら二人も連れて行ってくれたら良かったのによ。


「……あの、ちなみに何ですけど。もしもこのまま証拠が見つからなかったら、どうなるんですか……?」


「無論、貴様ら二人は打首じゃ」


 だから誰だよ、竜人族は温厚だなんて言ったやつ。

 温厚どころか、これじゃ冷酷極まりない野郎だよ。

 傲慢で人の話も信じないやつ。

 ちっとはこっちの話しも聞けってんだ。


「はぁ……じゃあもう無理だは、証拠無し!」


「ッな!?何言ってんだアンドリュー!?」


「だってホントのことだろ?俺達はそんなことする気はない。けどコイツらはそれを信じない。そしてその証拠はない。これが事実だ」


「そうじゃな。ならば貴様らは打首の刑に処す!」


 審議をかけていた竜人がそう言うと、左右にいた竜人二匹が立ち上がり、剣を構えた。

 竜人二匹は剣を、俺とグリムの首近くまで動かす。


「悪いな……族長の命なんだ」


 俺の隣に立つ剣を構えた竜人は俺にそう言い残した。


「それは言い訳だろ、言い訳はダメだろ。……あっ、命だけにダメェ〜〜ってか!」


「……ふざけおって!」


 俺はそう言い残すと、今にも怒り狂いそうな竜人族の処刑役に向かって、ありったけの魔力を込めた手を向け、放った。

 瞬間、巨大な爆風と爆炎が洞窟内を包み込んだ。

 

「ッな!?貴様らー!」


 それに激怒した【族長】とやらは、剣を構え突撃してきた。


 俺はそれを何ごともなく躱すと、族長の胸辺りに杖の先端を押し付け───


「───そこまでだ!」


 入口の方から、そんな声が聞こえてきた。

 ……良いところだったってのに。


「……誰だお前?」


 俺は入口付近にいると思われるその男に、何者か尋ねる。


「我は竜人族が長、レバニアである!」


 長……てことは、こいつが本当の族長らしいな。

 まぁでも、アイツが何だろうと最初に仕掛けてきたのはそっちだし、今更話し合いをとる気はないが。


「レバニア殿、ここは話し合いで穏便に済ませてはどうだろうか?」


 バッカ!

 何してくれてんだよ!


「それは勿論のこと、だがその前に……」


 レバニアはそう言って俺の方を向く。

 正しくは俺ではなく、今俺が殺そうとしている【偽族長】の方をだ。

 

「同胞達を全員解放してくれ。頼む」


 レバニアは腰を下ろすと、深く頭を下げた。

 これは、一般的に言われている土下座というやつだ。


「……で、お前は何を差し出すんだ?」


「ッ!?アンドリュー!!」


 俺の冷酷無慈悲な発言に、グリムは反対の意志を示した。


「……はぁ、何言ってんだお前?こっちは被害者だぞ被害者。こういう時に取れるもんを取れるだけ取っておくのが大切なんだよ」


「……そういう話しじゃ───」


 グリムはいつになく深刻な表情をしていた。

 ……さすがにやりすぎたな。


「……すまん、言いすぎた」


 俺は素直に謝っておいた。

 正直いって、ここで俺が謝る必要性を感じないが。


「レバニア!」


 俺が大声でレバニアの名前を呼ぶと、奴はハッ!!と顔を上げた。


「今回だけは見逃してやる。次はないと思えよ」


「は、ははぁ……!」


 レバニアは嬉しそうにそう言って、再び頭を下げた。


 そして俺達は、そんなレバニアの横を抜けて洞窟の出口へと向かうのだった。

 





 

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