第35話 予言者と……
俺……いや、俺達は、南の大陸を目指して歩み始めていた。
そして、まず最初に到着するは……
「……見えてきたぞ」
エドワードがそう告げると、前方に巨大な建物が見えてきた。
「あれが……」
そう、あれこそが、北の大陸南部に位置する、大陸最大の国。
「ラムード王国」
「凄い大きいね!」
さすがは世界最大の国と言われるだけはある。
「よし、さっさと降りな」
馬車はラムード王国の目の前で止まった。
それとともに、エドワードは俺達に、降りるよう指示をする。
俺達は、よいしょと馬車から降りた。
そしてそのまま、目の前にある王国へと歩き始めた。
土っぽい地面は、踏む度にドシドシと音をたてていた。
「土地なんて久しぶり〜!」
ルーナは楽しそうに地面を踏みはしゃいでいた。
思えば二人はずっと、王国内にいたし、土の地面なんてのはあんま経験ないんだろうなぁ。
「というか、何でここで止まったんだ?急遽戻るのなら、こんなところで一々止まってるわけにはいかないんじゃ?」
俺はエドワードに問う。
「俺はここに、少しだけ用事があってな。それを済ませるまでの間は、お前らも自由に遊んでていいぞ」
遊ぶって……俺はガキじゃねえんだぞ。
「ヤッホー!遊ぼ遊ぼー!」
グリムがいつになくハイテンションでそう言った。
頭のネジでもぶっ飛んだのか、コイツ?
「行こうよアンドリュー!」
グリムはそう言って、俺の手を握ってきた。
「私もでしょ!」
ルーナもそれに続くように俺の手を握る。
「お、おう!」
そう言って俺達は走り出した。
王国に向かって。
無邪気に、無邪気に。
「……………」
エドワードは、そんな俺達の背中を寂しそうに見ていた……
--- ラムード王国入国 ---
「凄っげぇー!あれも……これも……何でもある!」
俺は入国すぐに、この国の凄さを知ることとなった。
この国には、まるで無いものが一つと無い。
それどころか、初めてみる物すらもあった。
この国一つ有れば、他国なんていらなくても良く無いか?とすら思えてくる程にだ。
「何だこれ!」
そして、俺が今手にしている物は、眼のついた剣だ。
いわゆる、【魔剣】と呼ばれている代物だ。
しかも、今しか買えない限定品で、数も一個だけ。
つまり、この世に一つしか無い限定魔剣なのだ!!
くぅー!買いたい!
別に剣術ができるわけじゃないけども……それでも持っておきたい!
……何故か?そりゃあカッコいいからに決まってる!
「なぁ二人とも!」
そう言って俺は後ろを振り返った。
……だがそこに、二人の姿はなかった。
「……あれ?」
これはもしや……迷子というやつなのでは?
「……君、もしかして迷子?」
案の定と言うべきか、そんな声が隣から聞こえた。
振り向くと、そこには小さな少女が立っていた。
迷子……というのは、どっちかというと……
「あんたの方が迷子だろ……」
そう言うと少女は赤面し、慌て出した。
「な、何ですってぇー!子供扱いして……私を誰だと思ってるのよ!」
「えっと……誰だ?」
俺は、知らね?と答える。
「なっ……!?」
少女は後ろによろめき、ガクッとしたポーズをし、驚いたような表情を見せていた。
「超!超超超超超!超有名人のこの私を!知らないですってぇー!」
「……そんなに言うなら、まずは名前でも教えてもらおうか」
すると少女はハッとした表情でこちらを見ると、失礼……と言わんばかりに、ゴホンッと一度だけ咳き込んで言った。
「そ、それもそうね。じゃあ、改めて言うわ。私の名前は『リーナ』。大予言者リーナよ!」
「大予言者……リーナ!?」
その名前は何度か聞いたことがある。
確か、冒険者時代に何度か、ロインが話してくれた、この世界の歴史のに関係のある人だ。
「そんなデタラメが信じられるかよ。大体、予言者リーナってのはもう何百年も前に死んでるんだぞ?ホラ吹きはここいらで終わりにしとけよ」
俺は相手にする気もないかのように、そう言って立ち去った。
「なーにが……ホラ吹きよぉー!」
そう言って偽予言者は、ポケットから手帳を取り出した。
そしてそれをパラパラとめくり、やがてめくる手を止める止めるとこう言った。
「……今から5秒後、そこの看板が落ちてくる」
「……はぁっ?」
俺は呆れたように答える。
まだやるのかよ……めんどくさいな……
……しかもあいつ、何か数えてるし。
「2……1……」
すると、偽予言者はニッと笑って言った。
「……0!」
ガタガタっ!
すると、俺の真上から何か音がする。
……まさか!
上を見上げると、店の看板が、俺目がけて落下してきていた。
「嘘だろっ!」
俺は瞬時に後方へと飛んだ。
ドサァン!
そして、看板も地面に落ちきったようだ。
「はぁ……はぁ……」
俺は何とか、看板の落下を回避できていたようだ。
そして安心したのも束の間、俺はすぐに偽予言者……いや、本物の予言者野郎の方へと向き直った。
「あっ!ギリギリ回避成功だね!」
予言者野郎は、こちらの様子を見て、嘲笑うようにそう言った。
「この野郎……よくも!」
「落ち着きなって、そもそも悪いのは君じゃんかよ。私の事を、ホラ吹きだなんて言って!」
予言者野郎は、フンッ!と首を横にふる。
何がフンッ!だよ!
「確かに俺も悪かったが……こんな危険なことなら、教えてくれてもよかっただろーが!」
「何言ってんの?ちゃんと教えたでしょ?『5秒後に落下する』って」
「……そんなの、誰が信じるんだよ」
俺はため息を一つついた。
「お疲れだね、アンドリュー」
「あぁ、本当にな……はっ?」
何でコイツ……俺の名前を……
「俺の名前……何で!?」
「知ってるよ、何もかもね」
コイツ一体……!?
「今の君の現状全て……そしてこれから君の身に、周りに起こる事も……全てね」
「お前は一体……」
「私?そりゃあ私は───」
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「───はっ?」
何を言ってるんだコイツは?
あぁもう、さっきから意味わからんことばかりすぎて、頭の整理が追いつかねぇ!
「それって───」
俺がそう尋ねようとした時、後ろから声をかけられた。
「おーい、アンドリュー!そろそろ出発するぞー!」
それは、エドワードの声だった。
なんてタイミングだよ!!
俺は思わず、そんなツッコミを心の中でいれてしまった。
「あ……えっと!あとちょっとだけ……」
「ふふっ…邪魔しちゃ悪いし、私はここらで帰ることにするわ。また会いましょう、アンドリュー……」
「ちょ、ちょっと待っ……!」
瞬間、予言者は風のようにしてフワッと消えた。
「……一体何だってんだよ」
これから……いや、既に前からかも知れない……
アンドリューに、そしてその周りに……
恐ろしい何かが、近づいてきているということを……
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