裏話2 ……本物の
「……全部消えちまったなぁ」
メイドも……友達も……恋人も……戦友も………………家族。
全部消えたな……。
本当に、自分のやったことに意味はあったのだろうか?
一体何のためにこんなことをしたのか?
自分でもよく分からなかった。
ただ、今は───
───魔神を復活させる、それだけが今の俺に残っていた、唯一の目的……生き甲斐であった。
復活に辺り、まず一つ確定なのは、復活は不可能ということだ。
復活と言っても、再生のようなものだ。
再生はできない。
ただ、魔王を復活させた時のような、魔族が作り出した特殊な機械を使えば可能かもしれないが……
ただ、現代にはもうそんな機械はない。
なぜなら俺が壊したからだ。
……今でもそれに後悔してる。
だから現代では不可能なんだ。
……『現代では』だが。
俺が【この世界に来た事】を思い返せば、この世の世界が一つではないことは明らかだ。
現世のように、こことは明らかに違うものも有れば、逆にここと何ら変わらん世界もあるだろう。
目指すはその『変わりのない世界』だ。
俺の現世では【異世界】や、【並行世界】といった言葉があった。
実際今いるところは、その【異世界】というやつっぽかった。
そして、もう一つの【並行世界】
それは、俺の目指す『あまり変わりのない世界』のことだ。
となると、次に目指すは、その【並行世界】だ。
さて、どうするか。
試しに、俺を召喚させた魔方陣の場所に行ってみるとする。
何か掴めるかもしれんからな。
「ほぅ……」
着いた。
魔方陣からは、凄まじい量の魔力を感じられた。
何故今まで、誰も気づかなかったのか……不思議なくらいに濃密な魔力だった。
魔方陣の紋様は、今まで見てきた魔方陣とは全くと言っていいほど違うものだった。
召喚魔方陣とも違う……おそらくこれが、別世界に通ずるための紋様なのだろう。
「……ん?」
俺はふと、魔方陣の違和感に気づいた。
魔方陣の紋様が、ずれはあるものの、一部だけ法則的に準えてあったのだ。
……なるほどな。
おそらく、この法則的な部分が、別世界へと召喚方向を定めているのだろう。
そして法則的でない部分。
これは……
「異世界か、並行世界か、或いは俺の知らぬ他の世界……その行先を定めるもの」
……だと思われる。
最も、予想に過ぎないが。
まぁ、まずは試してみるしかない。
俺は魔方陣に手を添えた。
すると、魔方陣の紋様が、みるみるうちに変わっていった。
「……まさか!」
俺は何かを試すように、その手を戻してからもう一度添えた。
すると……
ぼわああああぁぁぁぁ!!
魔方陣から、火が燃え上がった。
「やはりか!」
俺は予想が当たったかのような反応をした。
そう、この魔方陣は、手を添えた本人の思い通りの魔方陣を作り出すことができるようだ。
実際、今俺は火炎魔方陣を願って手を添えた。
すると、このように火が燃え上がった。
これが何よりの証拠だろう。
俺はすぐに魔方陣に再び手を添え、【並行世界】を願った。
「ぐおっ!」
瞬間、俺の魔力が一気に吸い上げられた。
俺の魔力量は相当だが、それでも、全部なくなりそうなくらいの勢いで吸い上げてくる。
ぐおおおぉぉー!
ほんの数十秒程度の、俺と魔方陣の葛藤が始まった。
「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……」
やっと終わった。
俺は、なんとか魔力が尽きることなく魔方陣を完成させた。
50近いおっさんに、こんな体力使うことやらせやがって……
まぁいいか。
そんなことよりも、早くこの魔方陣を使うとしよう。
俺はそうして、魔方陣に足を踏み入れた。
ピカーーーー!
瞬間、魔方陣からありったけの光が放出された。
眩しい……
だがそれも一瞬。
眩しさに瞑っていた目を開けると、そこにあったのは……
そこには、広大な街が広がっていた。そして───
「何でお前がいるんだ」
俺の隣には、小さな少女が一人立っていた。
こいつはリーナ。
今も生きている、俺の唯一の仲間だ。
「あんたが変な魔方陣に入り出したから、私もそれに入っただけよ」
……そういうことか。
俺が目を瞑っていた間に入ったわけだな……
「というか、ここはどこなのよ?」
「……並行世界と呼ばれる別世界だ」
「……はっ?」
リーナは驚いていた。
そりゃいきなりそんな事を言っても信じないか……
「あんたそれ……まだやる気なの!?」
……何のことだ?
「何のことか分からない」
「……あんた、ホントはわかってんでしょ!これ以上やったところで、あの子達は戻ってこないってことは!」
「ッ!?……何の……ことだ」
「魔神を復活させる……そんな事を言い出して、もう10年もいなくなったじゃない!」
リーナはそんな事を言い出した。
「そのために何人の人が死んだと思ってるの……何人の魔族を殺したと思ってるの……」
「魔族は人間の敵だ。それに、人間なんていうゴミどもが死んだところで、何だと言うんだ」
リーナは涙を流した。
そんな事はお構いなく、俺はリーナに罵声を浴びせる。
「それにな、お前に俺の何が分かる……親しかった人を全部失って……それでも進もうとしてるんだ!もう止めないでくれよ」
俺はそう言い残し、その場を後にした。
「うぅ……私じゃダメなの……」
去り際、リーナはそんな事を、ポツリと呟いていた……
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