第32話 巨大火槍
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--- 南の大陸にて ---
「……はっ!」
俺はベットから飛び起きた。
まるで、長い悪夢から目覚めた子供のように。
「またこの夢か……」
思い出したくもない出来事を……また蒸し返された気分だ……
だが安心してくれ、アリシアの仇は必ず……俺が討つ。
……こっちのも、俺みたいになってねぇといいが。
ーーーーー
「……あぁ」
目の前で起きていることは現実なのか……?
いや、疑いようもない現実だ。
だとしたら何で……?
カーナが……カーナが……
「……生きてる!」
「我の突きを受けて……それほどの血を流して……何故まだ生きていられるんだ!?」
鬼も困惑していた。
そりゃそうだ。俺から見てもカーナの出血量は、常人なら今頃死んでるレベルだ。
「まさか貴様……無属性魔術士なのか!?」
それはないな。
もしそうだとしたら、とっくに先生が言ってるはずだ。
カーナが生きてると分かりゃ、俺も容赦せずあいつを倒せる。
もう手は抜かん。
火槍は、作り方次第じゃ、どんな鋭さにだってできる。
勿論、時間をかければ、さっきまでのよりも鋭く、質のあるのを作ることだって可能だ。
「……いや、無属性魔術師ならば傷口から治るはずだ。だが貴様は、怪我の一つも治ることなく生きている。それはおかしい……おかしいのだ!」
鬼がぶつぶつと何か呟いていた。
まぁ何にしろありがたい。
この隙に、魔力を溜めさせてもらうとしよう。
俺は右手を前に出し、そこに向かってありったけの魔力を流し込んだ。
鋭く……鋭く……それでいて重く、大きく……質のあるものを……
「……できた」
それは、火と呼ぶには相応しくないものだった。
火とは思えぬ重量感や質感、そして何百年も磨かれ続けたような、光沢のある鋭い槍。
まるで火ではなく、一つの物体が浮いているかのようだった。
こうして、巨大火槍が完成した。
視線を戻すと、鬼はまだ困惑していたようで、カーナの方をずっと見ていた。
これが槍でよかった……
でなきゃ、カーナにまで被害が出てたかもしれない……
俺は意を決したように、鬼に向かって火槍を放った。
火槍は凄まじい速度で鬼へと直進していった。
「何ッ!?」
鬼はそれに気づくと、避けられないと悟ったのか、堂々とした格好でその場に立った。
ギャルルル!
凄まじい音をたてた槍は、鬼へと直撃した。
「よしっ!」
俺は喜び、笑顔でガッツポーズをしてみせた。
「どうなった?」
見ると、槍と鬼との衝突地点を中心に、煙がボワッと舞っていた。
煙が晴れてくるや、中に黒い影が見えた。
完全に晴れ切ると、黒い影の正体が姿を現した。
勿論、あの鬼だ。
「……まさか、俺の全力の闘気を打ち破られるとはな」
鬼はこちらを見るなり、ギロッと睨んだ。
「くそっ……!」
俺は即座に後ろへ飛び、鬼との距離をとった。
……あれ?
「グッ………」
俺は逃げる足を止めた。
鬼が痛々しい悲鳴をあげたからだ。
よく見ると、鬼の体には所々傷跡ができており、損傷部すら見つかった。
「ヒヒッ……」
俺は下卑た笑いをして、鬼の方へと目を向ける。
いい案見つけちゃった〜!
「おい鬼!さすがのお前も、これだけのものを受ければキツイだろう!そこで!寛大な俺は、お前が生き延びられるチャンスをやろう!お前達鬼族のボス。王を連れて来い!さすれば、俺はお前を逃してやろう!」
俺は提案というやつを持ちかけた。
だが何故だろう、失敗しそうな予感がする。
「王を、連れてこいだと……」
「そうだ!」
俺がそう言うと、鬼は笑い出してこういった。
「はっはっはー!馬鹿言え!王ならここにおるではないか!」
「何言ってんだ?」
俺はその発言に、困惑せざるを得なかった。
何故ならこの場には、あの鬼に俺にカーナと、1体2人しかいないからだ。
それともこの場に見えない誰かでもいるのか?
怖くて夜も眠れねぇよ……
「ん?まだ気づかぬのか?ならば分かるように教えてやろう!」
鬼は立ち上がり、周りを見渡してからこう言った。
「我が王だ。鬼族を束ねる……鬼の王、【鬼王バラン】である!」
バランは、気分良さげにそう言って見せた。
「お前が王……だと?」
俺は、驚きを隠せない!と言った様子でそう答えた。
「そして、もう手は抜かん。我が闘気は、如何なるものも寄せ付けん、無敵の盾なり!」
闘気……たしか、魔術士にはない技術だったか。
ロインやシェリアは使っていたと聞くが、さすがだな。
〜闘気とは〜
主に、闘士や剣士が使う技術である。
これは魔力とはまた違う、体の奥底に秘められた力であり、体に纏うことで、自身の身体能力を大幅に強化することができる。
例えば、一般人じゃ重症になるような攻撃も、闘気を纏えば、ほんの擦り傷程度……使い手の練度によれば、無傷でいることすらも可能。
「……だったら、もう一度だ!」
俺はそう言って、先程の巨大火槍よりかは少し小さいが、それでも普通のよりは明らかに大きいものを、ほんの数秒で作り出し、バランに向かってぶつけた。
「まだだ!」
バランと槍との衝突によって発生した煙に向かって、俺は更に火槍を撃ち込んだ。
先程の巨大火槍とは違う、普通の火槍だ。
威力は劣るが、発動時間は大幅に短縮される。
この数秒の間だけでも、10発近い数を撃てた筈だ。
「ふんっ!」
俺が火槍を再び放とうとすると、突如煙がブワッと空へ舞い、中からバランが出てきた。
「きかんなぁ!」
バランは無傷だった。
堂々とした姿勢でこちらへと歩みながらも、俺の撃つ火槍を、バッタバッタと薙ぎ払って行った。
「アンドリューよ、それが限界か?先程、我を穿った魔術を見せよ!」
バランがどんどんと近づいてくる。
俺は一か八かで、空に向かってありったけの魔力を撃ち流した。
誰かが気づいてくれれば……助けを願うしかない。
「何のマネだ?」
魔力が空な今、助けが来るまで生き延びるのは至難の業だ。
……ここは。
「お願いします!どうか、どうか命だけはお助けください!」
命乞いだ!
「……戦いというのは、命の取り合いだ。我は貴様のような、自ら戦いを逃げる者が、大嫌いなのだ!」
バランは激怒し、俺に金棒を振り下ろした。
(あっ……死んだわ)
俺は瞬間、グッと目を閉じた。
……それから数秒して、何も痛みが無かったため、目をゆっくりと開けた。
……するとそこには!
「やれやれ、まさかこんな形で再開するとはね……」
目の前には、俺に振り下ろされる筈だった金棒を、いきなり現れた男が、剣で受け止めていた。
「お、お前は……」
俺は、この男に見覚えがある。
北の大陸じゃない……どこか違う……シェリア達と一緒に……
「あっ……!」
瞬間、思い出した。
キーワードは、シェリアだった。
南の大陸の北部を彷徨っている時に出会った、騎士の格好をして、周りから歓声を送られていた、あの優男……
「お前は、シェリアに求婚してた奴だ!」
「騎士団長と呼べ!」
読了ありがとうございました!
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