第30話 震動
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※これまでの話で分からない点なども感想で記入してもらって結構です
昨日の剣魔闘祭のせいか、今日はどうも体のあちこちが痛い。
筋肉痛にでもなったのかも………
あんなに動いたのは久しぶりだったし、当然っちゃ当然なのかもしれないが。
そうしてまた一日、学校生活が始まろうとしていた。
今日の登校はいつもの4人ではなく、一人追加で5人となっていた。
追加されたのは、昨日戦った相手でもあり、新しく友達になった相手でもある、ランガー・ベイルだ。
「よっ!」
ランガーがそう俺に言った瞬間、ルーナ、グリム、カーナの3人が、一瞬ギョッ!とした表情になってランガーを見た。
全員困惑してんだろうなぁ………
なにせ、昨日の試合が終わってから、俺がコイツと友達になってたなんて誰も知らないんだからな………
「お、おう!」
初めて会った時は、あんな鋭い目で見てきたってのに、今じゃこうやって、元気のいい挨拶をかけてくれるとは………お母さん涙がでちゃうよ………
それにしてもコイツ、何で朝の集合場所を知ってんだ?
いや、来ちゃダメなわけじゃないけどさ、誰にも教えてないのに何でわかったんだろーなって思ったんだよ。
「あんた………何でここにいんのよ!それにその挨拶は何よ!アンドリューにあんなこと言ってたくせして!」
と、皆んなが思っていたであろう事を代弁してカーナが言ってくれた。
みんなも ウンウン と頷いていた。
「あ?そりゃあ勿論、アンデューが俺の友達だからだよ!」
あ、あんでゅー???
俺はいきなりのアンデュー発言に驚いていたが、皆はその事に驚いたわけではないらしい。
「ちょ、ちょっと待って!アンドリューがあんたの友達ってどういうことよ!」
カーナがランガーに問いただす。
2人もまた、 ウンウンと頷いていた。
それに対しランガーは、はぁーっ、と一つため息を零し、そして言った。
「どうもこうもねぇよ。俺達は昨日の試合の後、友達になったんだよ………なっ?アンデュー!」
と、遂には俺にまで回ってきた。
3人の視線が俺へと移る。
ジリジリとした空間………まるで、浮気相手とデート中に嫁と出会ってしまったような緊張感があった。
だが、ここで断るわけにはいかない。
俺はアイツに、昨日言ってしまったんだ、あんなにはっきりと。
「お、俺はランガーの友達だ!異論なんて認めさせねーぞ!」
途端にみんなから向けられる、 えっ?引くわー、、という表情。
だけど決して悲しくなんてないぞ!
俺は正直に言ったんだ!
別に悲しくなんて……悲しくなんて………あれ?何でだろな……突然、目から海水がぁー!
「ほら見てみろ!アンデューは俺のダチだぞ!」
「もう、分かったわよ!私達が別に言うことじゃないんだし、アンドリューが良いなら別にいいわよ!」
カーナは、フンッ という風に首を振っていじけた。
めんどくせぇ女だな……………
「というか気になってたんだけど、そのアンデューって呼び方はどうしたの?」
ここでルーナが、俺が思っていたことを言ってくれた。
ルーナ輩先……………マジ感謝っすうぅぅぅー!
「ひひひ〜〜、言いだろこれ!やっぱダチにはあだ名だろ!」
アンドリューをどう変えればアンデューなんてかわった呼び方になるんだよ!?
「ぶっきらぼうなあだ名ね!?私だったらもっと上手く……そうね、アリとかにしたわよ!」
俺は何処ぞの昆虫じゃねえぞ……………
「アリってえぇぇっ!おまっ!ぷふふふうぅぅぅぅ!」
何故かランガーは、一人で爆笑しだした。
つぼにハマったんだろうか、何が面白かったのか分からんが。
そんな事を喋っているうちに、とっくに時間は過ぎ、朝のチャイムが校内に鳴り響き出した。
「やべえ!」
俺達慌てて、校舎へと走り出した。
こうして俺達は、何とか一限目までには間に合わせ、授業を今日も受けるのであった。
今日の授業は、一から六限全て、剣術の授業となっていた。
「な、何でよりにもよって剣術なのよ!?」
カーナは剣術が嫌いなのか、嫌々な反応を示していた。
「勿論、昨日のアンドリューの試合を見て思ったからですよ。アンドリューは体術に少し知恵があるようですが、三人は魔術以外からっきしです。そこで、魔術がなくても戦えるようにと、私が特別にこんな授業にしてあげたんですよ!感謝してくださいね!」
嬉しそうに言う先生に対して、三人は嫌そうな表情を隠しきれていなかった。
まぁ、体術は森で三年も、シェリアという神コーチに教えてもらっていたから、そこそこはやれる方だけども、剣術の方は俺もからっきしだ。
俺は、確かまだ城にいた頃、剣術の英才教育を受けていた。
だけどまぁ、これが本当にダメで、剣を持つことすら恐れてしまうほどに臆病な俺には、剣術なんてできっこなかったんだ。
…………そんな小さい頃の話しはやめだ!
今は今何だ、昔を引きずって生きてちゃ、一生前なんて向いていけない。
「それではまずはーーーーー」
そう先生が言い切る瞬間、突如地面がガタガタと震れ出した。
いや、地面どころか、学校が揺れているじゃねえか!
「な、何これ!?」
「落ち着いてみんな!今は動かず、この結界の中で安全にしているんだ!分かったね?」
よく見ると、俺達の周りには透明な膜のようなものが張り巡らされていた。
魔力の塊のようだが、相当頑丈でビクともしない。
「というか何なのこれ?いきなり揺れ出したと思ったら!」
「先生にも分からない。けれど今は、原因よりも次にどう行動するべきかの方が大切だ。みんなは今から一列になって、先生についてきてください。くれぐれも、走ったりしないように!」
そして俺達は、先生の指示に従うようにして教室から出た。
教室を出たところにある廊下、俺は廊下にある窓から、外の様子を眺めてみた。
「マジかよ……」
外は……一言で言うと、悲惨そのものだった。
地面には、大きな亀裂やヒビの跡が残っており、花壇に添えられていた花はぐちゃぐちゃに踏み散らかされ、おまけに周りには赤色の液体が飛び散っていた。
……いや、赤色の液体と言ったが、これは紛れもなく『血』だ。
「グチャッ………」
瞬間、グチャッ……という何かを踏みつけたような不快音が、廊下に響き渡った。
全員が、音のした右へと振り向く。
そこには、トゲトゲしい金棒を持った鬼がいた。
その鬼は、地面に転がっていたグチョグチョになった何かを、何度も何度も棒で叩きつけていた。
そしてその『何か』からは、『血』が大量に流れ出していた。
周りには、赤く染まった制服が破り落ちており、『何か』の正体が何なのかを物語っていた。
俺は振り返り、みんなを見た。
見ると、カーナが今にも叫び出しそうな表情をしていた。
まずい……!
「い、いやあああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁー!」
予想通り、カーナは凄まじい絶叫をあげた。
そして案の定、鬼はその声に気づき、振り下ろそうとしていた金棒を止めた。
鬼はこちらへ視線を変えると、金棒を強く握りしめて、恐るべき勢いで向かって来た。
途端、先生が俺達の前へ立ったかと思うとこう言った。
「死ぬなよ……お前ら!」
先生は俺達四人を巨大な水の球に閉じ込め、そのまま球ごと、勢いよく窓に向かって吹っ飛ばした。
「うわぁぁぁー!」
その速度は、まるで自分が隕石にでもなったかのようなもので、さすがの俺も叫び声をあげていた。
球はそのまま減速していき、落下していった。
奇跡的に、落下地点は水の中だった。
……いや、もしかしたらこれも奇跡なんかじゃなく、先生によるものだったのかも。
俺は勢いよく水の中へと落下したため、思いの外、水の底まで沈んでしまっていた。
俺は、何とか平泳ぎで水面まで上がると、勢いよく陸へと顔を出し、急いで呼吸をした。
「ぷはぁっ!」
肺が落ち着いたかと思うと、俺は急いで周りを見渡した。
しかし、他の三人の姿は見当たらなかった。
「みんな別々の場所に落ちてしまったのか……」
それにしても先生、一人で大丈夫なのか……?
助けてくれて感謝だけど、だからこそ心配だな……
そして俺は、……ハッ!として、もう一人の死人を思い出した。
多分あれ、この学校の生徒だよな……
あれじゃ助からないだろうな……
こうやって悲しんではいるが、俺も冒険者だった時は、魔物だとか盗賊だとかを、何度も殺してきてるわけだからな……
こういうのを、人は偽善と言うんだろうか……
「ドガー!ドガー!」
そんな重苦しい雰囲気をぶっ壊すかの如く怒号が、大陸中に響き渡った。
俺も即座に、音の鳴る方へと顔を向ける。
音の発信源は、どうやら森のようだった。
リ・グランデの森
あれは、俺が転移された場所だ。
その瞬間、俺の脳裏に二つの出来事が浮かんだ。
俺を助けてくれた……鬼族の男……
学校を襲った……鬼……
間違いない、あの森が原因だ。
俺は目に魔力を込め、森を凝視した。
これは、闘気を使った肉体の強化と似たものだ。
闘気のように、その部位に魔力を込めることで、一時的にだがその部位の能力を大幅に強化することができる。
今のように、目に魔力を込めれば、一時的にだが視力が強化される。
「な、何だよあれ……………」
俺が見た先には、森から、隊列を組んで歩みを進める鬼達の姿があった。
数にしておよそ五十……いや、もしかすると百近い数がいるかもしれない。
鬼は、五族の中で最も少数であると言われている。
だが鬼にとっては、それで十分だった。
鬼は、一体一体の武力で言えば、どの族よりも上であったからだ。
故に、過去に起きた数々の戦争で、滅亡することなく生き残って来たんだ。
だが、そんな鬼達にも弱点はある。
それは、状況判断能力の高さだ。
鬼は知能の高い族であり、当然、大勢で行動することが多い。
だがそれ故に、王が負けた時にどうすべきかも分かっている。潔いのだ。
王が負けても戦うのが他の部族なのに比べ鬼族は、王が負けた時分かるとすぐさま撤退する。
力の差があることをよく理解しているんだ。
だから、最初に王を叩けば、勝つことは容易なんだ。
今回の軍勢にも、必ず王がいる。
そして王は、そう安易と姿を見せない。
つまり、王は本拠地で待機していると考えるのが妥当。
「……やれるか?」
いいや、やれるかじゃない。やるんだ!
今こそ男を見せる時だろ!アンドリュー!
何のために冒険者になったんだ!
「……よし、よし!」
やってやる……やってやるぞ!
そうして俺は、鬼達が蠢く森の中へ、足を踏み入れるのだった。
読了ありがとうございました!
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別連載作品である【無力な勇者ー勇者を名乗って生きていくー】も見てみてください。